ありふれた幼馴染が世界最強 作:麦わら
今後はないように気を付けます
白崎香織は美少女ある。それは当人が自覚していたわけではないが、客観的な立場で見た場合の事実であった。
それから時は経ち小学校高学年の頃、今度は香織は女子に嫌われた。なんでもイケメンでサッカーをやっているK君が香織に好意を寄せていることが気に入らなかったようだった。何もしなくても男子は顔面に寄ってくる、そんな香織に女子は嫉妬する。どうすればいい、どうすればいい、悩んだ香織は仮面を被った。誰にでも優しく平等に扱い、その子が気に入っている男の子をそれとなく紹介し、頑張ってみんなが笑顔でいられるようにするそんな子に
第三話「出会い」
「なあ、婆さんこの服どうしてくれんの?」
休日、雫を連れショッピングモールに行こうとした時の出来事だった。
ふと聞こえたどすの利いた声に反応するそこには歳を召した女性とその孫と思われる男の子とその二人を威嚇する男三人組が立っていた。
恐らくアイスでもつけてしまったのであろうか、中心にいた男のシャツは白い円形の色がついており非常に不格好になっている。
こんなとき白崎香織ならどうするだろうか、そう考えた結果女性を庇いに行こうとした瞬間。その少年が現れた。
「呼ばれず飛び出てパパパパーン。よぉ兄ちゃん。お金払うから許してや」
明らかにでかい巨体。190㎝にも届くだろうか、この場にいる誰よりも高い体躯をした男がその場に入ってきた。
「てめえ舐めてんのか?」
「舐めてないですよ。それに舐めたら塩の味しかしないでしょうに」
場の空気が悪くなってくる。この男は本当にこの場を抑えるために来たのだろうか、それとも馬鹿で場を修めようとしてやったのだろうか。どっちにしろ悪影響しか与えていない。そう考えた香織は全速力でその場に駆け寄り男を回収した。
「おっ?なんだ新手の逆ナンか?でもすまんな友人を待たせてるんだ」
「違うに決まってんでしょバカ‼」
「そうか…」
「しょぼくれんな‼」
逆ナンじゃないのか。そんなことを呟きながらへこたれた表情を浮かべる男に感動すらおぼえる。
この男は何なのだろうか。このような男。いや人間にはこの十数年間の人生で見たことなかった。大体の男は香織の姿に感嘆し目を引かれ、下卑た視線を送ってくる。
だがこの男はどうだ。香織をみたところで何も反応せず瞳にすら映さない。この人間の反応を一言で表せば『無』だ。
「大体ね、なんであんな入り方したのよ。もっと、こう‼あるでしょ」
「例えば?」
「喧嘩で追っ払うとか」
「そんなことするわけないだろ。子供に悪影響だ」
「真面目か‼」
こいつとやり取りしているだけでも疲れる。いつもつけていた仮面は自然にはずれ、いつの間にか何も仮面を着けていない香織の顔が出て来ていた。
「それより婆ちゃんの方行かなくていいのか?まだ金払ってないぞ」
「もう‼お金はいいから早くいくわよ」
こいつに何かを言うのは無駄だと悟った香織は再びお婆さんが不良に囲まれていた場所に向かう。
だがそこには先程までの不良はいなくなっており、ポツリと立っているお婆さんとその孫らしき少年の姿があった。
「さっきはありがとね。飴ちゃんでもいる?」
「ええ、いただきます。それとお荷物お持ちしましょうか?」
「あら、ありがとね。孫に持たせるのもどうかと思ったし、頼むわね」
さらっと老人の荷物を持ち、その場を去っていく男。そのまま見送ればよかったのだが、その時の香織は何かが違かった。
「あんた、友達と待ち合わせてんじゃなかったの?」
「ああ。だから少しカフェで待っといてと伝えておいた」
荷物を持って送っていこうとする男について行くことにしたのである。
「意外だな。こういうことする奴じゃないと思ってた」
「お婆ちゃんの荷物を持ってかない奴って思ってたの?」
「いや、初対面の男と二人きりにならなそうな感じ」
「っそ。さっきなってたけどね」
「あれれ~?おかしいぞ~」
いきなりボケ始める男に思わず侮蔑の目を浴びせる。
「そんな目で見られて興奮する趣味はないぞ?」
「その言葉を聞いて安心したわ」
暇つぶしに男と会話しているとその姿を見ていた少年から思ってもいなかった言葉が出てくる。
「お兄ちゃんのお姉ちゃん仲良しさんだね」
「は⁉そんなわけないよ。この人とは初対面だからね」
「ふーん。そうなんだ」
少年は興味を無くしたとばかりに老人の方に寄っていった。
それから数分たっただろうか、特に会話をするでもなく着いた家はとても大きな豪邸だった。
「ありがとね。こんな遠くまで」
「いえいえ、当然のことをしたまでですよ」
案外年配の方への対応は普通なのだろうか。お礼をいう男の姿を横目で見てそんなことを考える。
家に引き込もうとする老人の言葉を友人を待たせているからという言葉で断り、待ち合わせ場所まで帰っていく。
特にその間に会話はなかったが、香織は男に聞いておきたいことがあった。
「私を見ても何も思わなかったの?」
「なんのことだ?」
「……。私を見た男はみんな私に見惚れるわ」
「……?自慢か?」
「そうだけど、そうじゃない‼」
絶妙に会話のテンポが噛み合わないことに頭を抱えながらも続けていく。
「私はこの容姿のせいで、男には下卑た視線で見られて、女には嫉妬の視線で見られてたってこと‼」
「それは、残念だな」
「あーもう。なんかもっとこう、ないの?」
慰め下手どころの騒ぎではない。この男は壊滅的に人を慰めることが下手だった。
「別に
「それは、そうだけど」
「なら、いいじゃないか」
「だけど、きっと普通の容姿で生まれてたらこんなことにはならなかったわ」
「こんなはずじゃない。ってか?」
「そうよ。きっとね」
それは希望であり逃避でもあった。きっとこうだった、今と違ったら何かが出来た。誰もがしてしまう妄想でもあった。
「そういうもんだよ。なんでもな」
「悟ってるわね」
「まあね」
そう答えた男の眼差しはいままでのものとは違い鋭く、どこか遠くに思いをはせているようだった。
「まっ、初対面の人にする話題じゃないわな」
「あんたねぇ」
正論。圧倒的正論ではあるがどうなのだろうか。こいつの脳みそを一回覗いてみたい。そう思った香織であったが握っていた拳を解き、一つ深呼吸をする。
「なにも解決してないけど良かったわ。あんたに話を聞いてもらって」
「それはなにより」
「褒めて遣わすわよ」
「ははぁ。ありがたき幸せ」
わざわざその場で止まり、平伏し始める男。その行動に思わず笑ってしまう。
「初めて笑ったな」
「?なにが?」
「あの気持ち悪い笑顔をやめたってことだよ。あの男の子がいるとき出てたぜ」
思わず頬に手を添えてしまう。しっかりと上がっていた口角は香織が笑っていたことを意味していた。
「ふんっ」
「おいおい、どうした?」
「別に」
「別にじゃないだろうに。全く学園のマドンナって聞いてたけど、とんだ娘だな」
「?」
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。誰にでも笑顔を振りまく学園一のアイドル。白崎香織。ってね?」
「あ、あんたまさか」
「どうも初めまして、立てば騒音、座れば熟睡、歩く姿はトラクター。学園一の問題児
明らか同級生に見えない身長だし、こんな奴いたら目立ちまくりだろうに初めて見た。と言いたいことは色々あったが、一瞬で頭に浮かんだ言葉を叫んだ。
「忘れなさい‼」
ロマンチックの欠片もないとんでもない出会い。それが白崎香織と峯崎十四郎の初めての出会いだった。