『三年間』から抜け出せない   作:高々鷹々

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みんながウマ娘ばっかり曇らせるので、トレーナー君も曇らせてみました。
タグにもありますが、胸糞注意です。閲覧は自己責任でお願いします。苦手な方はブラウザバックしてください。

あと、少しだけ隠し要素が少しあります。興味のある方は探してみてください。


『三年間』から抜け出せない

 ジリリリリ! と目覚まし時計の音が鳴る。それを耳にした()は目を見開くと、そのまま時計を掴んで床に叩きつけた。

 

「クソがッ! なんでだよ、()()()()()()()()()!!」

 

 彼は汗で重くなった身体を振り払うように跳ね起き、苛立ったように片手で頭を掻き毟る。

 

「クソッ、どうして()()・・・・・・!」

 

 スマホの画面に映る、()()()()()()を睨み付ける彼の脳裏をよぎるのは、沢山の『三年間』の記憶。ウマ娘()と共に、喜びや楽しさ、挫折や苦難、後悔を乗り越え、そしてまた()()()()()記憶。

 

「クソッ! クソクソクソクソ、畜生ッ!」

 

 ギリリと歯が欠けるほどの力で歯軋りして、彼はいまだにけたたましく鳴る目覚まし時計を()()()()()。どうせ()()には直っているのだ、どうなろうと構わない。

 

 そして、()()()()()()()()()()()()世界への八つ当たりを終えた彼は、時計だったものの破片を掴んで、首を掻き切ろうかと逡巡するが・・・・・・。

 

「どうせまた戻るんだろうな・・・・・・クソッタレ」

 

 そう吐き捨てるように呟いて、ガラクタを放り投げた。

 

「ああ良いさ、やってやるよ・・・・・・どこの誰だか知らねぇが、テメェらが満足するまでな・・・・・・!」

 

 彼は吠えるようにそう言うと、新品のトレーナー服へと()()()()()()着替えはじめた。

 

――――――――――――

 

 走るために生まれてきたとされる少女達、ウマ娘。彼女達を支え、レースでの勝利へと導くのが、『トレーナー』の仕事だ。()は今日から中央トレセン学園にて新人トレーナーとして就任する運命にあった。

 運命だなんて大層な言い方かもしれないが、彼の脳内にはそれ以外のことに逃げようとして()()()()()によって死んだ記憶があるため、そう呼ぶしかない。そうでなければ宿命か、あるいは因果か。どちらにせよ、碌な物ではないだろう。

 

「・・・・・・クソッタレ」

 

 渋面を作った彼だったが、こんな調子ではウマ娘をスカウトしても断られてしまうだろう。頭を振って意識を切り替えると、負け戦に行く兵士のような心持ちで、トレセン学園の門へと向かう。

 

「新しいトレーナーさんですよね? ようこそ、トレセン学園へ」

 

「トキノ、じゃなかった、たづなさん」

 

 門の前に立って、こちらを出迎える女性へと、彼は視線をやった。

 

 駿川たづな。トレセン学園の理事長補佐であり、緑の制服が特徴的なその姿も、もう何度見たかわからない。まだ記憶の混濁が抜けきっていないのか、随分古い呼び方をしそうになってしまった。

 

「うふふ、初対面で名前呼びだなんて、大胆な方なんですね」

 

「ぁ・・・・・・すみません。駿川さん」

 

 それでも尚、失敗してしまったが。しかし、これは仕方ないだろう。彼女との初対面は三年ぶりであり、彼はウマ娘を育成する中で、彼女を頼ることが多くあった。

 ばつが悪そうにする彼に、たづなは再び微笑んで、校舎へと向かう。

 

「たづなで構いませんよ。なんだか、初めて会う気がしないので」

 

 そう言って歩き出した彼女には、酷く泣きそうな彼の表情は見えなかった。

 

 

 選別レースとは、トレーナー達のスカウトの場だ。彼らがウマ娘達の実力を見て声をかけ、彼女たちもまたトレーナーに選ばれるために全力で走る。

 

「はぁ・・・・・・」

 

 ここまで案内してくれたたづなに悟られないようにため息を零した彼は、胡乱げな瞳でターフを走るウマ娘達を見る。

 最初は、期待や興奮があった。二度目は不信感はあったものの、幸運だと喜んだ。三度目には恐怖を、四度目からは絶望を感じた。そんな彼に残ったのは、慢性的になって薄れた悲観と、再び彼女たちと顔を合わせなければならないという苦しみだ。

 

「あ、たづなさんだー!」

 

 レースへと目を向けていた彼の耳に響いたのは、明るい声だ。隣のたづなが振り返るのに合わせて、彼もそちらを向く。

 

「あら、ハルウララさん。レースはどうでしたか?」

 

「楽しかった!」

 

 天真爛漫な笑みでそう答えたのは、ハルウララ。桜色の髪に、小柄な体躯の彼女のことを、彼はよく覚えていた。

 当然だ。彼には彼女との三年間の記憶もある。一緒にトレーニングし、有記念で挫折し、それでもとURAファイナルズを優勝した、輝かしい思い出がある。

 だからこそ、彼女の純粋さは、彼にはひたすら残酷だった。

 

「ウララ・・・・・・」

 

「えーっと、貴方は、トレーナーさん?」

 

 まるで()()()()()()へ向けるような目線に、彼は泣きそうになる。

 そう、初対面なのだ、自分たちは。繰り返しているのは己だけで、共に歩んだ彼女たちにその記憶はない。

 

「・・・・・・あぁ。今年からトレーナーに就任したんだ。また会うことになるだろうから、よろしくな。

 たづなさん、俺ちょっと飲み物飲んできます」

 

 そう作り笑いを浮かべて、彼はその場を離れた。ハルウララは不思議そうな顔をしていたが、そちらを気遣う余裕は、彼にはなかった。

 

「クソ、あんまりだろ、こんなの・・・・・・!」

 

 目尻に浮かんだ涙を拭いながら、彼は静かに慟哭する。

 ハルウララを再び育成しようとは思わない。だって、彼女は違うのだ。彼が育成し、共に歩んだハルウララではなく、彼と出会う前のハルウララだ。そんな彼女と共に居ては、どうしても二人を重ねてしまう。そんな苦しみ、二度と御免だ。何より、ハルウララに対して失礼だろう。

 

「はぁ、クソッタレ・・・・・・」

 

 レース場の外にある自動販売機で買った水を口に含みながら、彼はまた悪態を付いた。昔はコーヒーも好きだったし、紅茶も飲んでいたが、彼女たちのことを思い出してしまうから、避けている。

 無味無臭の液体を喉に流し込んで、空を見上げる。

 

 いつまでこんなことを続ければ良いのだろうか。どうしようもなく、そう思ってしまう。

 色んなウマ娘達を育成した。レースに勝って共に喜び、URAファイナルズを優勝して歓喜に震え、ライバルに負けて奮起した。その過程でたづなや同僚である桐生院葵と仲を深めたこともあったし、担当ウマ娘と温泉に行ったこともあった。それらは間違いなく、大切な思い出だ。

 けれど、それは自分だけの思い出なのだ。三年が過ぎれば、目標を達成できなければ、己が死ねば。勝手に時間は巻き戻り、再び()()()へと放り込まれる。

 

「いつになったら、終わるんだ・・・・・・」

 

 彼の絶望は、憎たらしいくらいに眩しい晴天に消えた。




主人公
ループ系主人公。明るい性格で、ウマ娘を思いやる気持ちは人一倍強い。
初めはウマ娘を勝たせてあげられず、次こそはと意気込んだ。
その()において、同じウマ娘を担当にURAを勝ち抜くも、「彼女は最初の彼女とは違う」ことに気づいてしまい、以後同じウマ娘は担当にしていない。
一人でいると悪態をつくのが癖になっているが、根が真面目なので他人が居るときには汚い言葉を使わない。
アプリ版主人公。


補足
・こんな主人公君だけど、トレーナーとしては優秀だしウマ娘のことを大切に思っているので、育成する際には真摯に挑みます。流石主人公!
・ウマ娘側も、こんなトレーナーに最初は不安感を覚えるでしょうが、大丈夫! いずれ悲壮感漂う彼を支えたくなって、良いパートナーになれるよ! やったね!
・沢山の思い出(ノウハウ)があるから、トレーニング方法や一緒に練習する相手も的確! 対戦相手のクセなんかもわかっちゃう! これ以上ないトレーナーだね!
・新キャラが実装される度に思い出(絶望)が増えるよ! おめでとう!

因みに──
彼に『ハルウララで有記念優勝チャレンジ』をやらせた場合、優勝できたとしても、

・優勝できたのは今回のウララであって、思い出の中の彼女たちは負けたままであるという事実
・今回の一人のために、沢山のウララを犠牲にしてきたという罪悪感
・(脚質なども合ってないので)無理をさせてしまったという後悔

の三コンボで、底知れぬ絶望の闇に沈みます。次回以降、彼はウララの顔を見るだけで泣き出してしまうでしょう。思い出って素敵だね!

さて、これでも皆さんは育成を続けるんですか?
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