『三年間』から抜け出せない   作:高々鷹々

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蛇足になると思って敢えて一話で終わらせたんですが、続きを希望されたので書きました。というか、こんな暇つぶしやストレス発散で書いた作品を読んでくださってありがとうございます。

アオハル杯、やってますか? 新しい育成は楽しいですね! おかげで彼の苦しみは増えましたよ!


ア オ ハ ル

「やっと・・・・・・やっと終わった・・・・・・」

 

 そう言いながら、()は布団に倒れ込んだ。すり切れた精神に疲弊した身体を労る余裕はなく、彼はそのまま微動だにしない。

 

 長かった。本当に長かったと彼は薄れた記憶を思い返す。ずっと抜け出せない『三年間』に囚われ続け、ひたすらにウマ娘の育成に励んだ日々だった。しかし、それも今日できっと終わりだ。トレセン学園に存在する全てのウマ娘を担当にして、URAファイナルズを戦い抜いたのだ。たった一人、同僚である桐生院葵の担当ウマ娘であるハッピーミークにはスカウトする機会すら訪れなかったが、彼女の育成をしなければならないとしても、後三年間だ。

 

「これでようやく、終われる──」

 

 布団の感触すら感じなくなってきた頭で、彼はぼんやりと思う。ようやく死ねる、と。

 

 長かったのだ。本当に長い時間を過ごしてきた。自殺しても事故にあっても()()()まで戻され、死ぬことすら許されない日々から、ようやく解放されたのだ。

 

 トレーナーとして優秀であった彼は、ウマ娘一人一人に真摯に向き合い、己の持てる全てを注ぎ込み、途中で狂うことすら出来ず、数え切れないほどの『三年間』を走り抜けてきた。今こうして自我が残っていることが、彼は不思議でならなかった。

 

 しかし、そんな日々もようやく終わりが見えてきた。達成感や充足感とはほど遠い、死ぬことへの安堵という生物として異端な感情を抱えながら、彼は泥のような眠りについた。

 

――――――――――――

 

『全生徒、全トレーナーに告ぐッ! 本日より、アオハル杯を復活ッ!』

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

 放送から聞こえる秋川やよいの言葉の意味が、彼には理解できなかった。

 

 アオハル杯。その単語は記憶にある。以前トレセン学園で行われていたチームレースのことだ。最低五人でチームを組み、短距離から長距離、ダートの五つの条件でレースを競い勝ち星の多いチームの勝利となる──今は廃れて失われていたレース。

 

 それを? 復活する?

 

「どう、いう・・・・・・」

 

 意味がわからなかった。これまでの『三年間』に、こんな出来事はなかった。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()新しいレースが始まろうとしている。

 

『集まったチームメンバーと一致団結ッ! 切磋琢磨ッ! そして青春謳歌ッ!

 諸君らの更なる成長に期待しっ! ここにアオハル杯の復活を決めたっ!』

 

 ふざけるな。余計なことしやがって。尊敬する理事長へ向けた怨嗟の言葉が、胸の中を渦巻く。

 

 最悪だった。まだ理事長は何か話している様子だったが、それすら意識に入らない。だが、最後の言葉だけが耳に纏わり付いた。

 

『諸君らの活躍、期待しているッ!』

 

「・・・・・・ッ!」

 

 思わずトレセン学園の外壁を殴ろうとした彼だったが、ぐっと堪える。トレーナーが暴力を振るうだなんてあり得ない。代わりにそのまま右手を壁に押しつける。歯を砕かんばかりに噛み締め、拳は白くなるほどに握りしめられ、爪の食い込んだ肌からは血が垂れていた。

 

「あ、あの・・・・・・大丈夫ですか?」

 

「顔がまっしろだよ? わ、血も出てる!」

 

 声の方向へと振り返ると、ライスシャワーとハルウララだった。二人の仲が良いことは、よく覚えていた。二人で歩いていたのだろう、優しい彼女達は、こちらを気遣ってくれたらしい。

 

「いや、大丈夫だ。ちょっとフラついてしまっただけだから」

 

 精一杯の作り笑いでそう告げる。自分のせいで二人が気を病むのは、どうしても避けたかった。

 

「あ、あの、ごめんなさい・・・・・・ライスが近くに居たせいで、()()()()()()()が貧血になっちゃって・・・・・・」

 

 申し訳なさそうにライスシャワーが謝る。そうだ、()()彼女は自分のせいで誰かが不幸になると思い込んでいる。彼は一瞬だけ酷く顔を歪めると、それをできる限り取り繕って困った顔をする。

 

「君のせいだなんてことは無いよ。俺が昨日夜更かししちゃったからだ。

 それじゃ、保健室で絆創膏貰ってくるから。トレーニング頑張って」

 

 そう口早に言って、彼は校舎裏を後にする。

 

 トレーナーさん。ライスシャワーは自分のことをそう呼んだ。自分はもう(まだ)『お兄様』ではなく、ただの新人トレーナーなのだと、言外に告げられたような気がした。

 

「クソッ、まだ俺に苦しめっていうのか。みっともなく足掻けっていうのか・・・・・・!」

 

 誰の姿もない通路を、彼は悲しみや憎しみ、怒りや嫌悪の混ざった表情で歩く。およそ彼の年齢からは想像できない、複雑な表情だった。

 

「ようやく、ようやく終われると思ったのに・・・・・・」

 

 彼はそう呟いて崩れ落ちると、喉元まで迫り上がってきた酸味を、床にぶちまけた。




主人公
ループから抜け出せると思ったぁ? 残念、おかわり(新シナリオ)だよ!
なんならイベント時空とか未消化なので、これでも終われなかった可能性はあった。


漫画『シンデレラグレイ』によれば、トレセン学園所属のウマ娘は二千弱──さて、何通りの組み合わせがあるでしょうか? 胸が踊りますね!


因みに、今後書く予定がないのでここに書いておきますが──

彼が最初(チュートリアル)に育成したのはダイワスカーレットです。でも上手くいかなかったらしく、二回目でようやく目標を達成し、URAを勝利することが出来ました。いやぁ、彼女を()()に出来て良かったですね! ()()最初の彼女は犠牲になりましたが。
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