漂雲記   作:古本

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刺客・Ⅲ

 

 

「場所は分かってるの?」

「ああ、もうすぐのはずだ。そろそろ準備しておけよ」

「言われなくとも」

 

 政から聞いていた道を辿ってゆくとやがて一つの部屋が見えてきた。

 この部屋から王宮の外に出る抜け道があるのだ。しかし、ここに辿り着いたからと言って微塵も安心はできなかった。

 

 ここの存在を知るものは限りなく少ないという話だったのにもかかわらず部屋の中から多くの気配を感じるのだ。もっと言えばかすかに剣戟を交わす音すら聞こえてくる。

 それは紅炎にも分かったのだろう、俺たちは今まで以上に気配を消して慎重に部屋に近づいてゆき、あけ放たれた扉越しに部屋の状況を確認する。

 

 数多くのーー十人以上いるーー暗殺者たちが背中を晒していた。その装いからして号馬という暗殺集団だろう。そしてその横には三人の朱凶が立っていた。

 そして部屋の一番奥、抜け道があるはずの扉の前で政と貂、宮女の姿が見えた。

 

「……燕呈」

 

 傍らがすぐ横にいる俺にしか聞こえない小さな声でそう呟いた。

 血を吐くようなその言葉で朱凶の中に族長がいることが分かった。まぁ見るからに真ん中の男だろうな。

 

 さて、気配を消しているとはいえ凄腕の暗殺者たちが背後を取られているのに俺たちに気付いていない理由は一つ。彼らの前、部屋のど真ん中で凄まじい斬り合いを演じる二人に意識を奪われているからに他ならなかった。

 

 その二人とは信と羌瘣だ。

 羌瘣というのはこの前、蛇甘平原での戦争にて信と伍を組んでいた者の一人。凄まじい戦闘ぶりだったらしくなんども尾兄弟から羌瘣の話を聞いたし、戦争が終わった後、少し話す機会もあった。そんな彼女がここにいる理由は……政の首を狙っているのだろう。羌瘣の戦いぶりというのは話を聞いているだけでも尋常のものではなかった上、王宮に長くいた鯉郭が暗殺者の流れを汲む者ではないか、という話をしていたのでそこまで驚きはなかった。

 

 信は全身から血を流しているし、信も羌瘣もお互いに強力な剣を繰り出してはいるもののお互いにいまいち殺気を感じられないし、曲がりなりにも信と言葉を交わしているのでまぁそっちはあいつが何とかするだろう。

 

 そうこうしているうちに号馬が動いた。

 突然、朱凶の一人に斬りかかったのだ。信たちに意識を取られていた朱凶は為すすべなく背後からの一撃を受け崩れ落ちた。

 一瞬、場が停滞する。どうやら信と羌瘣の戦いに集中していたせいか皆号馬がいることに気づいていなかったらしい。信たちも剣を収めたのが見えた。

 

 

 なににせよ、号馬らの背後を取っている以上、俺のすることは一つだった。

 ちらりと横に目をやるが、紅炎にはそんな合図は必要なかったらしい。抜き身の剣を構えたまま、足音を出さないようにしながら身体を滑るように動かす。そしてそのままーー。

 

「「なッ!!」」

 

 俺と紅炎はそれぞれ号馬の背中に剣を突き立てた。

 部屋にいる全員の目が崩れ落ちる号馬へ、そして俺と紅炎に集中していくのを感じた。それを気にせず信たちに向かって呼びかける。

 

「よぅ、まだこんなところでぐずぐずしてたのか。もしかして道にでも迷ってたのか?」

「へっ、もう追いついてきたのか。おい羌瘣! 一時停戦だ、一回手ェ組んであいつら先にぶっ倒すぞ!」

「嫌だ」

「……、ふざけんなてめェ!!」

 

 信たちがじゃれている間も、俺は剣を下ろしている暇はなかった。自ら飛び込んだとはいえ、今は暗殺者に囲まれているのだ。

 周りにいる号馬たちが俺と紅炎を睨みつけ、からからと剣を引き抜いていく。そして俺たちに襲い掛かろうとした瞬間、号馬のうちの一人が声を上げた。

 

「待て、このガキ共は三人でやる。他の者は全員で蚩尤を名乗ったガキを確実に殺せ」

 

 蚩尤というのはどうやら羌瘣の事だ。

 何のことかは知らないが、正直今は都合がいい。その言葉の通り、号馬たちは信と羌瘣の方へ、彼らに指示を出した男を含めた三人は俺たちに向かってきた。指示を出した男を初めとして三人とも強いのは間違いないが、俺と紅炎二人で相手取れば瞬殺できるだろう。

 

 紅炎と共にさっさとこいつらを倒して信たちの援護に向かおう。そう思ったその時俺の横を紅炎が横切った。

 

「ここは任せる。私は燕呈の首を取ってくる」

「……は? え、おい、待てよ紅炎」

 

 思わぬ行動に一瞬思考が止まった。慌てて声をかけるも俺に見向きもせずに紅炎は燕呈に向かって真っ直ぐ進んでいく。

 それをみてもう何を声をかけても彼女は止まらないだろうと悟らざるを得なかった。何せ彼女も目的は初めから朱凶の長なのだから。

 

「はぁ、分かった。だけど族長じゃないほうの朱凶は殺さず残しておけ」

 

 諦めから溜息を吐きつつ紅炎は、ちらりと俺を見やっただけで返事もせずにずんずんと進んでいく。伝わったかなぁ。

 そんな紅炎の行動を許すはずもなく号馬は紅炎に攻撃を繰り出すが、何でもないかのようにそれをひょいとかわして走っていった。

 

 その行動に馬鹿にされたと思ったのだろうぴきぴきと額に青筋を立てる号馬にむけて、俺は剣を構えながら俺はもう一度溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 数分後、俺は倒れ伏す号馬たちを見下ろしていた。

 やはり相手は強く、身体に幾筋か傷口を新たに拵えたものの、俺は特にさほど苦戦することもなく暗殺者を下した。紅炎がいないからと言って負けることはなかったが、やはり当社の予定よりは手こずった。

 

 ふぅと息を吐きつつ部屋に目をやるとそこには死屍累々としか言いようがない光景が広がっていた。この光景を作り出したのは羌瘣である。

 何か制約があるのか、信が初めに時間稼ぎを行い、その後に満を持して羌瘣が剣をとったのだ。

 

 戦いながら横目で見ていたのだがその戦いぶり、否、蹂躙ぶりは凄まじかった。

 切られながら号馬がこいつは人じゃないと呟いていたがそう思うのは無理はない。なにせ俺が三人の号馬を斬っている間に羌瘣はその三倍の敵を屠ってしまったのだ。全ての号馬を斬り殺した後に意図が切れたように倒れてしまったがそれにしても凄かった。にしても立て続けに女暗殺者のえげつない戦闘を見てしまった。やっぱりこの世界おかしいよ……。

 

 それはさておき、問題は紅炎である。

 紅炎は宣言通り真っ直ぐに燕呈に向かってその刃を振るい、それに応えた燕呈との戦闘は未だに続いていた。両者の足元には顎に打撃を受けたらしいもう一人の朱凶が倒れていた。紅炎の手によるものだろうが殺してないだろうな。

 

「紅炎、やはり我らを裏切ったか」

「裏切った? 違う、私は初めから朱凶じゃない」

 

 紅炎は短剣を手足の延長のように扱い、予想しにくい動きにより燕呈に攻撃を加え続け、燕呈は一本の長剣でよくそれを凌いでいた。凄まじく高度な技の応酬。その合間にも彼女たちは言葉を交わしていた。

 

「くく、ここまで朱凶の技を高度に受け継いでおいて朱凶じゃないだと? いや、紅炎、お前は生粋の朱凶だよ」

「……うるさい。これは貴方を殺すために磨いた私だけの技。朱凶の技じゃない」

「ああ、知っているとも! お前の戦技は教えをさらに発展させ自身がもっとも上手く使えるよう工夫されている。やはり惜しい。お前の才は間違いなく朱凶に利するものになるだろう……。どうだ、紅炎。もう一度朱凶に戻らないか」

「絶対にいや。私はもう縛られない、あなたたちに脅されることなく自由に生きる。それにあなたは一度でも自分に反抗したものを許さない。そんな戯言に私が揺れると思わないで」

 

 紅炎の攻撃を燕呈ががっちりと受け止め弾き飛ばすことで両者の距離が開いた。

 

「ならば仕方ない。この場で決着をつけるほかないようだな」

「初めからそのつもり」

 

 二人はそういうと同時にそれぞれの得物を構えた。

 武器の種類は違えど、奇しくも二人の構えは似通っていた。一瞬の停滞の後、二人が同時に駆けるッ!

 

 両者は丁度真ん中でぶつかり合った。

 燕呈が突きを放ち、それに一瞬遅れる形で紅炎の短剣が煌めいた。

 

 刹那の攻防。

 瞬きの後、血を吐いたのはーー燕呈だった。

 

 紅炎は燕呈の攻撃に少し遅れて放った左の短剣により突きの軌道を僅かに捻じ曲げ、そのまま体当たりをするように右の短剣を燕呈の心臓に突き立てたのだ。

 しかし、紅炎も無傷ではなかった。その横腹は燕呈の突きによって食い破られていた。しかし、彼女はしっかと両の足で立っていた。 

 

「見事……。やはりお前は最高の弟子だ」

「……私は貴方の弟子なんかじゃない」

「ふっ、最後まで強情な……やつ…め……」

 

 紅炎の目の前で朱凶の族長の体が崩れ落ちた。

 

 その時、キンッという硬質な音が部屋に響き渡った。

 倒れ伏していた朱凶が紅炎に向けて短刀を俺が剣で払った音だ。こいつが懐を探っているのが見えたので対処できる位置に移動していたのだ。

 

「ーー紅炎ッ! よくも燕呈様を……ッ!!」

 

 短刀を放った朱凶は血を吐くような声で吐き捨てた。

 そして、紅炎と朱凶の間に立ちふさがっていた俺に向かって剣を引き抜き襲い掛かってきた。

 

「そこを退けェ!!」

 

 しかし、朱凶はまだダメージが残っていたのかふらふらとした歩きではっきり言って敵ではなかった。

 俺は自ら距離を詰め剣を振るって朱凶の手から剣が弾き飛ばす。流れるように無手となった朱凶の腹に剣柄を叩きつけ、続けて膝に向かって蹴りを放つと朱凶は呆気なくその場に座り込んだ。

 

 ここに至ってようやく俺の方を真っ直ぐに見た朱凶の首筋に俺は剣を突き付けたーー。

 

 

 

 

 

 

 蓮荷は王宮の廊下を疾走していた。

 その周りには、自分が危機を伝えた昌文君や壁、その他衛兵たち、そして蓮荷とは別ルートで襲撃の計画を知り昌文君に伝えに来たという元王弟陣営の重鎮肆氏もそこにはいた。

 彼の話により大王の元に漂だけではなく信も共にいることを知り、蓮荷たちは一応の安心は得たがそれでも一刻も早く大王の元へと駆けつけなければならないことは変わりなかった。

 

 やがて戦人ならば嗅ぎ間違える事のない匂いが感じられた。すさまじいまでの血と臓物、排泄物の臭い、死臭だ。

 その元となっているの部屋に辿り着いた彼女たちは息を整える間もなくその部屋に突入した。

 

 そんな彼らが目にした光景は、両の手でも足りない暗殺者たちの死体の数々に部屋の奥に立つ信たちの姿、そして部屋の真ん中で暗殺者に剣を突きつける大王の姿だった。

 

 そう、この時部屋に入った者は皆彼は大王であると誤認してしまった。

 なにせ暗殺者に剣を向ける彼は容姿と言い服装と言い余りにも大王に姿形が似ていたし、なにより彼が放つ雰囲気が常人の者ではなかったのだ。彼はただそこにあるだけで思わず跪きたくなるような、周囲の人の視線を自然と集めてしまうような、そんな不可視の引力を纏っていた。

 

 しかし、この数か月間誰よりも漂も近くで過ごした蓮荷だけは彼は大王に扮した漂であり、信たちに守られるようにしていて眼光鋭く事態の推移を見守る男こそが大王であると気付いた。

 ハッとした蓮荷はまずは事態の沈静化に動かねばと足を勧めようとしたその時漂がさっと手を蓮荷達に向けた。それだけで部屋に突入しようとした蓮荷は足を止めてしまった。昌文君や肆氏たちすらも同じように。

 

 漂は蓮荷たちに見向きもせずに真っ直ぐに朱凶の目を見つめ、そしてゆっくりとその形の良い唇を動かした。彼が発した言葉は不思議と抗いがたい強制力を含んでいた。

 

「お前、名は?」

「……寛延」

 

 思わず、といった様子で朱凶が自分の名を口にした。

 それを聞くと漂は少し空に視線を飛ばして何かを思い出そうとするようなしぐさを見せた。その間にも剣の切っ先は首筋から全くずれていない。

 

「寛延……確か息子がいるそうだな。確か名は寛向だったかな」

「なっ!? ちっ、紅炎か」

「まぁな、だがお前が今気にすべきは誰が伝えたかではなく誰が知っているか、だろう?」

 

 漂がそういうと朱凶は歯噛みしたもののしばらくすると観念したように目を閉じた。

 

「くっ、何が望みだ」

「その前に一つ聞くが、朱凶はこのままだと紅炎への報復をやめないな?」

「……ああ、我らは裏切りを許さない。それに今日族長が死んだことを知れば紅炎の裏切りと関連付けるものも多いだろう」

 

 その言葉を聞きやはりな、と一つ頷いた漂は何でもないことのように言葉を放った。

 

「お前が紅炎への報復をとめろ。あ、勿論彼女の家族にも手を出させるな」

「なに……? 狂ったか貴様! 報復をやめさせることは俺にも難しい上、そもそもそんなことをする理由がない! こいつは燕呈様を殺したのだぞ!!」

「それでも、だ。紅炎は()()()()保護下に入れる」

「ハッ、大王ともあろうものが薄汚い暗殺者の女に惚れたとでもいうのか!?」

 

 蓮荷はその言葉を聞いて朱凶すらも漂のことを大王であると誤認していることに気が付いた。しかし蓮荷はそれも無理ないだろうと思う。自分を含め、昌文君達を身振り一つで止められるものなど大王くらいしかいないのだから勘違いしても仕方ない。

 

 ーーいや、漂様がそう思われるようにわざとふるまっている……?

 

 蓮荷の推論を裏付けるように漂はそれを否定しなかった。

 

「なんとでも思えばいい。だが、お前が俺の言葉を無視して報復に出たならばお前たちは高い代償を払うことになるぞ」

「幼稚な脅しだな。実権のない若王なんぞに何ができるというのだ」

「俺はお前たちの隠れ里、そしてそこが見つかった際の緊急避難先の位置を知っている」

 

 漂が淡々とそれを口にした瞬間、どこか余裕のあった朱凶の顔からそれが吹き飛んだ。

 

「なっ!? 避難先までは紅炎すら知らぬはず……」

「ふっ、実権がないとはいえ仮にも一国の主。貴様ら暗殺者の隠し事が通用するとでも?」

 

 はったりだ。

 蓮荷はそう直感した。いくら漂様や大王であっても暗殺者の避難先なんてものは知らないだろう。もし知っているならば自分にもその情報が回ってきているはずだ。

 

 しかしそれが分かるのは蓮荷が大王や漂の側近であったから。朱凶にそんなことは分かるはずがない。事情を知る蓮荷ですら目の前の少年は何か知っているのではないかと思ってしまうような奇妙な説得力があったのだから。

 存在すらも秘匿していたはずの避難先がバレていると思えば朱凶は恐怖しかないだろう。なにせ暗殺者たちは強力と言えど所詮は少数。軍を送り込める立場の人間ならばどうとでもしようがあるのだ。

 

 朱凶の顔に恐怖の色を読み取ってか漂はいくらか声の調子をやわらげた。

 

「お前たちにも悪い話じゃないだろう。今日の襲撃でお前たちの戦力は半減しただろうしこれ以上被害を増やす必要もない」

「ぬっ」

 

 それは図星だったのだろう。

 大王の襲撃という大仕事のために送り込んだ精鋭部隊は壊滅、そしてなにより彼らは族長を失っているのだ。

 

「それにな、寛延。お前たちは襲撃に失敗したわけだが……お前たちの雇い主が大王暗殺に失敗したお前たちを許すと思うか? もし許されたとしてこれから重用されると思うか?」

「そ、それは……」

「まぁまずないだろうな。最悪、口封じに殺されても全く不思議はない」

 

 漂の言葉を聞くうちに朱凶の顔色がどんどん悪くなっていく。

 自分の立場をようやく自覚し始めたのだろう。

 

「ところで、俺たちはお前もよく知っている通り敵が多い小勢力だ。しかしだからこそ必要なものや活躍の場が与えられるものも多くあるし、俺たちが勝ち馬だった場合ーー勿論俺はそうなると確信しているがーー協力してくれた者に褒賞は惜しまない」

「……何が言いたい?」

「分かっているだろう? お互いに得のある選択肢を提示したつもりだが?」

 

 漂がそういうと朱凶は黙り込んで……やがて腹を決めたように顔を上げて口を開いた。

 

「分かった。俺たちは大王陣営につく。反対もあるだろうが……俺が説得して意見を纏めたらまた使者を送る。勿論紅炎にも手は出さない」

「よし、交渉は成立だな」

 

 漂はそういうと自ら手を貸して朱凶を立たせ、耳元で何事か囁くとようやく蓮荷たちの方を見た。

 

「衛兵!! 話は聞いていたな。聞きたいことを聞いたらそのまま放してやれ」

「「ハッ!!」」

 

 漂の指示を受けて衛兵たちはてきぱきと動き出した。

 朱凶は抵抗なく彼らに連れていかれた。

 

 

 

 

 

 

 寛延が完全に部屋から出たことを確認して俺は剣を鞘に戻しながら政のほうに向きなおった。

 

「政、悪い。勝手なことをした」

「……いや、お前を咎めるつもりはない。今回の襲撃だけでも借りがある上、朱凶が我が陣営に入るのは俺に利することになるだろう」

「それでも、悪かった」

 

 政は許してくれるらしいが、今俺がやったことはとんでもない越権行為だったからな。これで打ち首を命じられてもおかしくないレベルだ。

 まぁこれでうまく収まったならば何よりなんだが。

 

 早速政が、混乱している昌文君らに指示を出して後始末をしているのを横目にぼーっとしていると紅炎が近寄ってきていた。

 一応警戒しているのか蓮荷が俺の横に来てくれていたがそれを気にすることなく紅炎が俺に話しかけてくる。

 

「貴方には助けられた。でもなぜここまでしてくれたの? もしかして私の体目当て?」

「まぁ、そうだな」

「漂様、流石にそれは……」

 

 真顔のまま起伏に乏しい体をかき抱きながら紅炎がふざけたことを言ってくるので思わず軽口を返すと蓮荷が絶対零度の目線を向けてきたので慌てて訂正する。

 

「も、もちろんそういう意味じゃなくてだな。俺はこの前の戦争の功績を認められ百人将の位を得た。そして俺はこれから天下の大将軍を目指す以上俺の隊には有能なものがいくらでも欲しい。そして紅炎、お前ならば申し分ない。俺の隊に来てくれないか?」

「……分かった」

「いいのか? 本当に」

「うん、どうせお母さんたちの食い扶持は稼がないといかないし。……あなたのとこならくいっぱぐれはなさそう」

「……ありがとう。ならこれからよろしく頼む」

 

 こうして、この日俺は強力な仲間を得た。

 

 

 

 

 

 

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