魔王に侵攻されてるらしいね   作:ぜろぜろん

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勇者(笑)の憂鬱

残暑がまだまだ残るこの季節、ミンミン蝉の合唱が終わりつくつく法師が鳴いていた。

いい声で鳴くじゃねーか……

そんな中俺は家のベッドにくるまっていた。

前に単位がどうのと脅されたが良く考えたら引きこもりにそんな脅しは効かない。

単位上等だ。いや、数は取らないが。

昨日のように怖いメールも来たが電源をOFFれば関係ない。一応電話線も抜いた。

これで何も怖くない。そう思っていたのに……

 

 

しばらく気持ちよく寝ているとインターホンが鳴る。

前頼んだゲームかな? そう思い玄関を開ける。

「あのー、ハンコ無いんでサインで……」

 

「おはよ、晴也君?」

 

「お、おはようこざいます先生……」

まさか、来るなんてな……

「上がらせてもらえる?」

先生は笑顔で聞いてくるがどこか怖い。

「はい、どうぞ……」

俺はその恐怖に勝てなかった……

 

 

家に入るとお手洗いを貸せというので案内してリビングで待っていた。

一応二人分のお茶を入れているとドアの外から声が聞こえた。

「入っていいー?」

なんで今更そんな確認をする……

「いいですよ」

ドアを開けて入ってきたのは、

「はろはろー」

ナース姿の先生だった。

すぐに俺は顔を逸らす。いや、見間違いだ。先生があんなに色っぽい訳が無い!

「晴也くぅーん……こっち見てよぉ……」

背中に柔らかい感触を感じる。この人、でけぇ……

「な、何やってんすか!」

一応注意する。聞かないと思うが一応それくらいはしておかないとね。

「この反応、キミ、童貞だね?」

先生がそんなことを聞いてくる。この展開と来ればこう返すしかないな。

「ど、どどどど童貞だし!!」

間違えた。緊張しすぎて童貞を肯定してしまった。

「おお、童貞を肯定したねー」

語呂が良いせいか気に入った。童貞を肯定する、か……いや、やっぱいらねぇ。

改めて先生を見る。なかなかに似合っている。しかもサイズが小さいせいか特に胸の部分がはち切れそうになっていてボタンが開いて谷間が凄く見える。

先生がその大きな胸を腕で持ち上げる。止めて下さいそれ、巨乳好きの俺には眩しいっす。

「学校に来ないならいいけど、」

先生が俺の耳元で囁く。

「これから君の家に行かせてもらうよ……?」

その言葉はこそばくて重い一言だった。

 

 

翌日、放課後

「お、お邪魔しまーす……」

 

「あら、こんにちは船上君」

談話室に入ると初草先輩が挨拶をしてくれる。見たところ岐阜先輩がいない。

「う、うす……えと、岐阜先輩は?」

 

「喉が渇いたと言ってジュースを買いに行ったわ。どうしたの? なんか疲れてそうだけど……」

 

「いえ、ただ負けましてね……」

俺が答えると初草先輩が首を傾げる。大人っぽい人だがそんな反応も似合う人である。

あえて昨日来なかったのを聞いてこないのは優しさだろうか。

しかしここで会話が終わる。いや、これだけ話せただけでもいいだろう。何か話のネタないかなーとかんがえていると、

初草先輩が本に目をやる。ブックカバーをしていなかったのでタイトルが見えた。

本の話題なら食いついてくれるか? 幸い俺も知っている本だ。

「それ……『ゲームの世界』ですか」

 

「ええ、結構面白くてね」

ゲームの世界、最近ベストセラー賞を取った作品だ。

この世に魔物や魔王が存在するのはありえない。なのになぜ存在するかというとここがゲームの世界だからだ。とか言う変わった作品である。

確かに侵攻されるまでは架空の存在だったらしい。

「そ、その本なら俺も読みましたよ」

 

「へぇ、あなたも本を読むのね」

一応話題は広がった。

にしても岐阜先輩といい、先輩達は普通に話してくれるな……緊張とかしないのかな?

「ねぇねぇ、何読んでるのー?」

 

「これはですね……って岐阜先輩!? いたんすか!」

ビックリして大声を出してしまった……昨日会ったばかりなのにめちゃくちゃ近づいてくるな……

「居たよ! 失礼な!」

どんなステルス能力だよ。もうシャ○ーモセスにも潜入できるレベル。

「ところでハレルヤ君、魔物って見たことある?」

 

「え、そりゃあ、ありますが……」

突然ふられた話に頷く。まあ、嘘ではないし…

「おおー!」

岐阜先輩が目を輝かす。そんなに珍しい物なのか?

「今なら日本でも普通に見れますよ。」

これは戦争だ。戦争では捕虜が出来たりする。それを日本にも収容している。

「あんな恐そうな所わざわざ行かないよ!」

まあ、好き好んで捕虜収容所に行く奴もそうそういないか。

「ねぇ、魔物ってどんなの?」

初草先輩も興味が湧いたのか聞いてきた。

「魔物っていっても目が赤くて耳がとんがっている以外は人間と大体同じですよ。後は人間を遥かに凌ぐ身体能力を持っているくらいですかね」

よし、話すのが慣れてきた。

「特別な力とかはないのー?」

今度は岐阜先輩だ。

「ないと思いますよ。相手も銃火器で攻撃してくるし銃で撃てば普通に死にます。でも接近戦となると魔物が圧倒的に有利ですね。」

岐阜先輩とも難なく話せた。これだけフレンドリーだったら話しやすいな。

「へぇ……」

二人が納得したように声を出す。

今度はこっちから話してみるか……

「で、その接近戦にも対応するために作られたのが勇者ですよ。実は勇者に目をつけているのは日本だけなんですよ」

二人がほうほうと、相槌を打つ、こんなに興味を持たれる話題なのか。

「だから政府は勇者の軍隊を作ろうと考えてるわけですよ。少し前に強化人間という計画もあったらしいですよ。ま、相次ぐ失敗と高いコストで成功せずに終えたらしいですが」

 

「それはどんなの?」

 

「人間をサイボーグ化させるらしいです。でも失敗に終わり被験者には死亡者、麻薬中毒者もいるとか」

この事件は世間を騒がせた。計画の指揮者は逮捕され事件は終わった。

「それは、残酷ね……」

空気がすごく静かになる。

「そうだ! ハレルヤ君! ジュースいる?」

先輩はそういいながらジュースを注いでくれる。

「あ、ありがとうございます」

「ほら、かえでんも!」

 

「あ、ありがとう」

空気を壊せるのが彼女の美徳なのかもしれないな。これからはこの手の会話は出来るだけしないでおこう……

先輩が入れてくれたオレンジジュースは苦かった。

きっと、果汁100%なんだろう。

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