【探偵ならば言葉を紡げ -オッドアイキャット連続消失事件―】   作:玉兎たまうさぎ

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第2話 探偵とは、解決へ。

【1月 21日 14時】

 

「はぁ・・・・・・」

 

何度目かわからないため息が、無人の公園の中に静かに鳴る。

捜索開始から5時間。

商店街の裏路地から公園、林の中や駐車場の隅まで駅周辺のめぼしい場所を探りはしたが、猫の1匹見つからなかった。

 

猫の好物も習性も、なんなら探偵として何を観察すればいいのかもわからない僕がいきなり猫探しなんて無理だったんじゃないだろうか。

 

今のところ僕の『名探偵体質』とやらも発現する様子もない。

そもそもこんな猫探しなんかで、僕の体質が活きるんだろうか。

 

それよりも猫が見つからない不幸に進んで、言の葉くんの評判を落としてしまうんじゃないか。

 

1度マイナスの方向に進んでしまった思考は決して止まらず、どんどん深みにハマっていく。

 

「やっぱり僕は結局・・・・・・」

 

次第に頭が真っ黒に染まっていき、体が震えてくる。

震える手でポーチを開き、常備していた自決用の薬に手を飛ばし───

 

「───ひゃいっっ!!!」

 

突然首ものに冷気を感じ、体が跳ね上がる。

咄嗟に後ろを振り返ると、ヘラヘラと笑う言の葉くんが缶ジュースを持っていた。

 

「流石にこの時期でも、5時間ぶっ通しだと暑いでしょ」

「そ、そうだね・・・・・・」

 

そう言って僕の隣に座り、缶ジュースを手渡される。

缶ジュースはキンキンに冷えていて、長時間の運動と行き詰まった思考をクールダウンするにはピッタリだった。

思わぬ気遣いに、渡された缶ジュースを両手で握りしめじっと見つめる。

 

「不幸ちゃんは飲まないの? スポーツドリンクは嫌い?」

「いやっ、あの、全然嫌いって訳ではなくて・・・・・・あの、その」

 

いつの間にかちゃん付けになっていた呼び名は、探索の間に慣れてしまった。

さっきまで自害しようとしてました。なんて言えるはずもなく言葉に詰まる。

詰まったことを誤魔化すように、缶ジュースを勢いよく開け、一気に飲み干す。

 

「んっ・・・んっ・・・んっ・・・ぷはっ!」

「おぉ〜、いい飲みっぷりだね」

 

諦めちゃダメだ。

言の葉くんはこれだけノーヒントで探し回り続けて全然へこたれていないんだ。

僕も頑張らないと。

 

一気飲みの反動で息を切らしながら覚悟を決めた僕を、言の葉くんはじっと見つめていた。

 

「えっと・・・・・・ありがとう。ご馳走様」

「はい、お粗末さまでしたっと」

 

ジュースへのお礼を言うと、満足したのか言の葉くんは視線を変えた。

 

「まぁ良かったよ。不幸ちゃんが落ち着いたみたいで」

「えっ!あぁっ、あの・・・」

 

まさか自害しようとしていたのを見られていた?

僕がどう誤魔化そうか思考を巡らす様を見て、言の葉くんはまたヘラヘラ笑う。

 

「いやさ、捜索中ずっと血眼になって探してたから。気になってね」

「あぁ・・・それは・・・あの、ごめん」

「謝ることじゃないよ。むしろ助かってる」

 

自害がバレていた訳ではないことに少し安堵する。

バレていた時、また僕は自分の悩みを人に打ち明けなければいけないところだった。

だけど、捜索中にそんなに必死になっていたなんて、自分じゃ全く気づかなかった。

 

「不幸ちゃんは初仕事だから張り切ってるのも分かるけど、少し落ち着こう。ぶっちゃけた話、探偵の仕事なんて、最悪成功しなくたっていいからね」

「えっ・・・・・・それは、いいの・・・?」

「いいんだなこれが」

 

いきなりとんでもないこと言う言の葉くんに驚きを隠せない。

探偵の仕事は、人からの依頼から生まれるもののはず。

それが成功しなくていいなんてありえるのだろうか。

 

「例えば『迷子になった猫を探して欲しい』って依頼があったとして、探した結果猫が死んでたとする。」

「う、うん」

「それを依頼者に伝えた場合、その依頼は成功か?失敗か?」

「えっ? えっと・・・・・・」

 

突然投げかけられた問題に困惑する。

依頼の内容は猫を見つけること。

死んでいたとしても、消えた猫を見つけることは出来ているんだから・・・

 

「成功・・・・・・だと思う」

「その心は?」

「見つけること自体が依頼であって、そこに生死は関係ないから・・・とか・・・」

 

僕の答えに言の葉くんは少し目を丸くした後、またすぐヘラヘラ笑い出す。

 

「不幸ちゃんは結構残酷なんだね」

「えっ・・・・・・」

 

全く予想していなかった返答に、つい言葉が漏れる。

僕が残酷・・・・・・?

 

「きっと不幸ちゃんの答えは正解だと思うよ。俺も依頼は成功だと思う」

 

言の葉くんはヘラヘラした顔つきから一変し、真面目な顔つきで僕を見る。

 

「でもそれは探偵のエゴなんだよ」

「エゴ・・・?」

 

探して欲しいと言われた猫を見つけ、死んでいたことを伝えることが探偵のエゴ。

イマイチ理解が出来ず、反応に困ってしまう。

 

僕が上手く飲み込めていないことを汲み取ってか、言の葉くんは少し言葉を探しているようだ。

 

「じゃあ依頼者の目線で考えてみよう」

「う、うん」

「ある日いつの間にか可愛がっていた猫が家から消えていて、自分でいくら探しても見つからない。最終的に頼ったのが、たまたま近くに事務所のあった君の所来た」

 

そう言って僕に指を指した。

 

「『迷い猫を探して欲しい』、依頼者は報酬金を掲示し頼み込む。そして君はもちろん?」

「それを・・・引き受けると思う・・・」

 

ただの猫探しの依頼。

きっと探偵なら誰しもいつもの事と割り切って引き受けるだろう。

 

「で、君はすぐに真実にたどり着く。」

「・・・・・・」

「猫はもう死んでいて処分された後だということにね」

 

言の葉くんは残っていた缶ジュースを飲み干す。

 

「ここからが君の選択だよ。不幸ちゃん」

「・・・・・・うん」

「君が『猫は死んでいました』と言えば、きっと依頼は成功だ。涙を流して悲しむ依頼者に対して報酬金を求めるといい」

 

やっと探偵のエゴだということの意味を理解した。

でもそれは───

 

「決して間違いではない選択だ。結果がどうであれ報酬金を貰うのは当然だし、探偵としても真実にたどり着くことは最も重要だ」

 

そう、間違いではない。

だがそれはエゴだ、依頼者の気持ちを一切考えない。

ただ自分の満足の為に、金の為、信念の為に残酷な真実を伝えただけ。

自分が目指していたものの不完全さにゆっくりと俯いてしまう。

 

真実を暴くことは必ずしも良い結果になる訳じゃない。

なら探偵は必要なんだろうか・・・・・・。

 

「じゃあ・・・僕たちはいったい・・・どうすればいいだろう・・・・・・」

「簡単だよ、不幸ちゃん」

 

俯いた視線を上げ言の葉くんを見ると、もう真面目な雰囲気は消えていて、またヘラヘラと口角を上げている。

 

「嘘でもつけばいいじゃないか」

「う、うそ?」

「『申し訳ありません、猫は見つかりませんでした。』この一言を伝えるだけでいい」

「それは・・・・・・」

 

あっていいことなんですか、と口にしようとするが、言葉が出ない。

残酷な真実を伝えるくらいなら、甘い嘘をつく。

それが探偵のあるべき姿なんだろうか。

 

それは救いになるのだろうか・・・・・・。

 

「俺が思うに探偵の仕事は、依頼者を納得させることだと思ってる」

 

言葉を続けながら、言の葉くんは空き缶を放り投げる。

 

「その為にどんな嘘を吐こうと。探偵として間違っているとしても。」

 

投げられた空き缶は放物線を描き、公園の隅にあったゴミ箱に綺麗に収まった。

 

「それだけが俺の探偵だと思ってる」

 

これが探偵同盟に選ばれた人の考え方。

歳は近いものの、僕とは見えている世界が違いすぎる。

 

「凄いね・・・言の葉くんは・・・・・・」

「凄いのは不幸ちゃんの方じゃないか」

「えっ?」

自己嫌悪から零れた言葉に予想外の返しがきて、困惑する。

 

これまで周りに迷惑ばかりかけてきた僕のなにが凄いっていうんだ。

 

「社畜さんから聞いてるよ。殺人事件を解決したんだろう?」

「あれは社畜さんの推理を手助けしただけで・・・」

「才能のある人間にしか、殺人事件の推理の手助けなんて出来ないよ」

 

僕の言葉を遮るように、言の葉くんは言葉を続けた。

僕の才能なんて、不幸をばら撒くこと以外のなんでもない。

そんな僕に探偵としての才能なんて・・・・・・。

 

「まぁ長くなっちゃったけど、要約すると仕事は気楽にやろうよってこと。今回みたいなゆる〜い仕事なんかは特にね」

「・・・・・・うん、わかった」

 

言の葉くんの言葉を受け、かなり落ち着いてきた。

言の葉くんはゆっくり立ち上がり、伸びをする。

時計を見ると、もう20分近く経っていた。

僕も続いて立ち上がる。

 

制限時間は20時頃まで、それ以上になると暗くなって捜索はまともに行えないし、見つけたとしても社畜さんに引き渡せなくなる。

 

急がないと。

力む手からペコッと空き缶の凹む音がした。

 

「空き缶、捨ててこようか?」

「いいよ、これくらいは自分で」

 

そう言ってゴミ箱の方に歩きだしたが、さっきの言の葉くんの空き缶投げを思い出す。

これくらいの距離なら・・・

 

「えいっ!」

 

勢いよく放り投げた空き缶は大きく膨らんだ放物線を描き、ゴミ箱を通り越して公園の外を歩いていたおばさんの頭に当たった。

 

「あっ」

「すいません!」

 

急いでおばさんの元に走る。

当たり所が悪かったのか、おばさんは頭を抱えてしゃがみこんでしまっている。

 

「大丈夫ですかっ!」

 

おばさんに駆け寄り、俯いた顔を覗くと、鬼のような形相で僕を見ていた。

 

「あんたねぇ!いい歳して空き缶投げて遊んでんじゃないよ!」

「ひぃぃぃぃぃ!」

 

胸ぐらを掴まれ凄まれると、思わず情けない声が漏れてしまう。

そんな僕を見かねたのか、言の葉くんが間に入って仲裁に入る。

 

「まぁまぁ落ち着いてくださいよ、ご婦人」

「なに?」

 

おばさんは少し考えたあと、やれやれと言った感じで手を離した。

 

「・・・ったく、今回だけだからね。」

「本当に、ごめんなさい」

 

しっかりと頭を下げて謝罪する。

他人に不幸が降りかかったことはあったけど、まさか自分でこんなことをするなんて・・・。

 

「お心遣い感謝します、ご婦人。お詫びと言ってはなんですが、あなたのお悩みを一つだけ解決しますよ」

 

僕が頭をあげると、言の葉くんは丁寧な立ち振る舞いでおばさんに接していた。

顔つきも口調もまるで別人だ。

 

「悩み・・・・・・?今はいいわ、あたし急いでるの」

 

おばさんは付き合ってられないとばかりに振り返り僕らから離れていく。

確かによく分からない男にいきなり悩みを解決してあげると言われても、怪しくて頼れないだろう。

当然の反応だ。

 

「ウソ、ですね」

 

言の葉くんは、離れていくおばさんに届くようにか、大きめの声でそういった。

おばさんもいきなりそんな事を言われて驚いたのか、勢いよく振り返る。

 

「何言ってんだい?あんた、人をいきなり嘘吐き呼ばわりして」

「あなた、たいして急いでいないでしょう?」

 

おばさんは少しイラついているのか口調が荒い。

それに対して言の葉くんは何故か相手を煽るような口調に切り替わっている。

 

「ほんとに急いでいる人間は、缶をぶつけられた程度じゃわざわざ絡んでこないでしょ」

「はぁ?」

「やめなよ言の葉くん……」

 

あまりのケンカ腰につい言の葉くんの袖をつかんで制止しようとするが、言の葉くんは止まらない。

おばさんも明らかに怒っている。

ものすごい剣幕で近づいてくる。

 

「あんた何なのよ。ツレが空き缶ぶつけといて絡んでくるって、どういう神経してるわけ?」

「俺は、悩みを解決しますよって言ってるんですよ」

 

こんな状況で何言ってるんだ。

おばさんが目の前まで近づいてくる。

おばさんは今にもビンタでも繰り出してきそうだ。

 

「あんたみたいなガキにね、相談するような悩みなんてないよ!」

 

おばさんは手を大きく振りかぶり、それが言の葉くんの顔面に振り下ろされ───

 

「───猫、探してるんでしょ?」

「なっ!?」

「えっ?」

 

おばさんの手が寸前で止まる。

おばさんは図星だったのか、明らかに動揺している。

猫を探しているなんて、そんな素振り全くなかったの、なんでわかったんだろう。

 

「あんた、なんでわかったの……」

「自分、実は探偵をしておりまして、人の悩みに敏感なんですよ」

 

言の葉くんはここぞとばかりに名刺を差し出す。

 

「服に付着した猫の毛、そして公園の前を通りすぎる時、あなたは異様に周囲を見渡していた」

「えっ、そんなところ……」

 

そんなところを観察していたなんて、いつの間に……。

服に猫の毛と言われ、おばさんは自分の服についた猫の毛を確認する。

僕も注意して見てみると、言われた通り少量ではあるが猫の毛が見える。

 

「でもあんた、それだけじゃ猫探してるなんてわからないじゃない」

「そうでもないんですよ、ご婦人」

 

いつの間にか言の葉くんは丁寧な口調に戻っていた。

 

「あなたみたいなマダムが、バックも持たずに何かを探しているとなれば、だいたい当たりはついてきますよ」

「……あんた、見かけによらず意外とやるのね」

 

言の葉くんの推理に納得したのか、おばさんの怒りは引っ込んでいた。

おばさんは携帯を取り出し、画面をこちらに向けた。

 

「はい、これがあたしんちの猫。シェリーっていうの」

「どうも」

 

言の葉くんは携帯の画面をじっと見つめる。

画面には茶色の毛並みの猫が愛らしく映っていた。

 

「オッドアイなんて珍しいですねぇ」

「あらわかるぅ?」

 

言われてみると、確かに猫の両目の色が違う。

右目が青く、左目が少し茶色い。

猫を褒められ、あからさまに機嫌をよくしたおばさんは写真をスクロールした。

 

「オッドアイってだけでも珍しいのに、白猫でもないし、いいもの見た気分ですよ」

「そうそう、白猫じゃないオッドアイなんて滅多に見られないんだから」

 

言の葉くんは僕の予想以上に猫の話に夢中だ。

そこからはおばさんのかわいい自慢が暫く続いた。

 

そういえば、言の葉くんはなんでわざわざ見ず知らずの人の猫まで探そうとしているんだろうか。

今のところ三匹の迷い猫について全く情報を取れていない以上、さらに仕事を増やすなんて無茶じゃないのか。

 

時計は14時40分を超えようとしていた。

タイムリミットは刻一刻と迫っていた。

 

「じゃあ、何かわかり次第連絡させてもらいます」

「わざわざありがとうね。意外とあたし、イライラしていたみたいで。帰って少し頭を冷やすわ」

 

言の葉くんとおばさんの話は終わったらしい。

おばさんは頭をさすりながら、こちらに向き直る。

 

「あなたも、ほんとにごめんね。いきなり胸ぐらなんか掴んじゃって…」

「いえいえ、きっかけを作ってしまったのは僕なので…。ごめんなさい」

 

お互い頭を下げ、最終的におばさんとは円満に解散となった。

 

 

 

 

【1月 21日 15時】

 

「さて、ここからどうしようか」

「どうしましょうかね……」

 

あの後、言の葉くんと共に駅前まで戻ってきた。

日は少し沈み始め、人通りも朝と比べればかなり落ち着いている。

朝ほど気分が悪くなることもない。

 

捜索については、目ぼしい場所は既に調べ終わったいるので、駅前から仕切り直しといったところだろうか。

でも正直八方塞がり感は否めない。

 

あれだけ周辺を捜索しても猫一匹見つからなかったんだ。

捜索範囲をさらに広げるほども時間もないし、目ぼしい場所もあまり見当たらない。

 

───猫一匹見つかっていない……?

 

「そういえば言の葉くん、今日一匹も猫見てないね」

「確かに、ここまで見ないのは珍しいな。運がいいのか悪いのか…」

「不自然じゃない?」

「まぁ不自然っちゃ不自然だね」

 

言の葉くんはうんうんと頷きながら、携帯を眺めている。

言の葉くんの反応は適当だ。

理由もわかっている。

不自然だとしても、『だからどうした』で終わる話なのだ。

 

それが手掛かりになるわけではないのは、言の葉くんも気づいているんだろう。

 

でも、ここで立ち止まるわけにはいかない。

何もせず考えるより、少しでも行動したいところだ。

 

「僕、やっぱりまたいろんなとこ見てくるよ!」

 

勢いよく立ち上がり、声を上げる。

隣の言の葉くんはそんな僕をヘラヘラ笑いながら見ている。

 

「不幸ちゃん、気楽に、ね?」

「大丈夫です…しっかり覚えてますよ…」

「じゃあ、安心だ。行ってらっしゃい」

 

言の葉くんに見送られ、歩き出す。

 

気楽に、落ち着いて、仕事をする。

公園でしていた話を思い出す。

 

大丈夫だ、呼吸も荒くない。落ち着いてる。

まずは携帯の地図で、また大体の目星をつける。

さっきは含めなかった細かい部分も検討してみよう。

 

「不幸ちゃん前見て!」

「えっ?」

 

後ろから言の葉くんの声が聞こえて、振り返った瞬間

 

───どんっ

 

背中に強い衝撃を受けて転んでしまう。

どうやら携帯を見てて前方不注意だったらしい。

言の葉くんに声をかけてもらえなければ、真正面からぶつかっていただろう。

 

「うぅ…いたた…」

「あっ!すいません!」

 

ぶつかった相手は僕よりも少し若いくらいの少年だった。

髪の毛は伸びきっていて、長袖のセーターは緩み切っていてだぼだぼだ。

 

少年に手を貸してもらい立ち上がる。

少年はペットを入れる用の持ち運びできるケージを持っていた。

 

「あの…ほんとにすいません…」

「いや、僕の方こそ。不注意だったよ…」

「あの…じゃあ僕急いでるので…」

 

少年は気まずそうに逃げていこうとするが───

 

「───待ってくれ」

 

いつの間にか僕の後ろに立っていた言の葉くんが引き留める。

少年は足を止めるが振り返らない。

 

「急いでいるので…」

「道を聞きたいんだよ、すぐ終わるからさ」

 

言の葉くんはゆっくり少年に近づいていく。

 

「この場所への行き方を教えて欲しくてさ」

「…はい」

 

言の葉くんは少年の肩に腕を回し、携帯を見せる。

少年はおびえてしまっている。

 

「ここなんだけど……あれ、そのケージって、ペットでも飼ってるの?」

「えっ!?……あの、はい飼ってます」

「そうなんだ。で、ここなんだけど」

「そこだったら───」

 

言の葉くんは何かするわけではなく、少年からただ道を教えて貰っているだけだ。

 

でもなんでわざわざ道を聞くんだろう。

さっきまで携帯で調べていた場所への道がわからなかったのだろうか。

 

「ありがとう助かったよ。引き留めてごめんね」

「いえ…全然、そんな…それじゃ行きますね」

 

少年は少し駆け足で行ってしまった。

言の葉くんは満足そうに携帯をしまい、探偵デバイスを取り出した。

 

「言の葉くん、何か手がかりがあったの?」

「あぁ不幸ちゃん、お手柄だよ」

 

いきなりお手柄と言われ困惑する。

僕は何もしてないけど……。

 

「手がかりのありそうな場所でも聞けた?」

「いや、今回の───」

 

言の葉くんは探偵デバイスをしまい、僕に視線を向ける。

 

「───事件の真相と犯人が分かった」

 

僕の気づかぬ間に事件は解決に進んでいた。




あと少し続きます
最後だけでもみてくだしあ
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