TSしたら足が動かなくて親友が過保護になったけど、優しくされると惚れちゃいそうなので乱暴に扱って欲しい。   作:貯水庫

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1話 女になったけど足が動かない

 

 

「明日体育かー、だりぃなあ」

「なんだ清水。バスケは嫌いか?」

 

学校の帰り道。

いつものように幼馴染で親友の中島としゃべりながら歩いている。

 

「俺は運動全般駄目だからね。特にバスケみたいな少人数のチーム戦は絶対に足引っ張るから、申し訳なくて仕方なくなる」

「あー」

「個人競技なら俺が恥をかくだけだからまだマシなんだけどね?」

 

今まで体育の成績は全部2。

背は低くて足が遅いし、力もない。加えて体は硬いし、泳げもしない。本当に運動全部だめなのだ。

 

「どうやったらお前みたいに運動なんでもできるようになるんだよ」

「知らん。俺は普通にやってるだけだ」

 

こいつは俺と同じく帰宅部で何もやってないくせに、何をさせても運動部1歩手前くらいにはできてしまうのだ。この格差を呪いたい。

 

「あー、俺だけ体育で女子の方に混ざれたら、普通くらいには活躍できると思うんだけどなー」

 

運動できない男子は絶対に1回は考えたことがあるだろう。

こんな俺でもさすがに女子と比べれば力はあるし、バスケだったら普通の女子と遜色ないくらいには動けると思う。

 

女子と遜色ないって。なんか悲しくなってきた。

 

「ははは、そりゃいいな。周りに女の子だらけだ」

「まあさすがに叶わない願いだとはわかってるさ。はあ、もし俺が女だったとしても、結局身体能力は最底辺なんだろうなあ......」

「オイオイ、元気だせよ」

 

そう言われても明日体育があるという事実が重くのしかかってきてどうも鬱っぽくなってしまう。

 

「くそっ、朝起きたら明後日だったなんてことねえかなあ」

「どんだけ寝んだよ」

 

ずっと寝ていられるならどれほどよかったことか。

 

って、こんなこと考えてたら、もう家に着いてしまったな。

 

「じゃ、中島、また明日な」

「おう、じゃあな清水」

 

そう言って中島と別れる。

中島も家はこの辺なので、朝もいつも一緒に登校している。あいつとは幼稚園の頃からの仲で、よく俺の家でゲームなどをして遊んでいる。

 

「ただいまー」

 

家には誰もいない。幼い頃に両親を亡くしているので、ずっと1人暮らしだ。孤独を埋めるために飼っていた猫も、去年死んでしまった。

 

「さて、宿題やるか」

 

高校2年にもなると、もう授業もなかなか難しい。今日は数学の課題が山盛りだ。がんばろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アラームの音。

 

 

腕を伸ばし、アラームの位置を探る。

どうやら思っていたよりも遠くにあったようで、なんとか指先でボタンを押した。

 

体を起こそうとする......が、起き上がるのがなんかやたらと難しい。

ここで何か違和感を覚えた。

 

 

......足の感覚がない?

 

 

まさか。と思い足を動かそうとするが、やっぱり感覚がなく、動かす以前に動かし方をよく掴めない。

 

ま、まじで?

俺の足どうしちゃったの?

 

腕の力でなんとか起き上がり、バサッと布団をめくってみると、これまた物凄い違和感。

 

......なんか俺の足、短くなってね?

 

つんつるてんだった俺のパジャマが、ぴったり......いや、少し大きいくらいになっているように見える。

 

ひとまずそれは置いといて。

俺は動かない足を両の手でパンパンと叩いてみた。

 

 

......いやまじで感覚がない!

 

えっ?なにこれ?怖い。病気?

どっと不安が押し寄せる。

 

と、とりあえず、スマホ。

助けを呼ばなきゃ。

 

スマホを手に取り、起動しようとするが、なんか指紋認証が通らない。くそっ、何だよ。

 

てか思ったよりスマホがデカい。

というよりもなんか、俺の手が、指が、小さくなっているような......まるで、別人の手みたいな。

 

「なんなんだ......うぁ!?」

 

知らない人の声が聞こえた。俺がしゃべったのに。

女の声だ。結構可愛い系の、トーンの高い声。

 

ここまできたら、俺は自分の身に何が起こっているか、嫌でも1つ見当がついてしまった。

 

まさか、俺が女になってたりしないよな?

 

おそるおそる下を見てみると、そこにはあるはずもない、2つの膨らみが見えた。

 

なっている。

女に。

そう判断せざるを得ない。

 

「どういう......」

 

何気なく出たつぶやきも女の子の声。

一縷の望みを胸に、俺は下腹部に手を伸ばす。

 

ない。どこにもない。男を象徴する器官が。

 

意味がわからなくて、パニックで目の前が暗くなってきた。

手が震える。

なんで、俺が女の子になってるの。

俺のベッドで。朝起きたら。

 

ついでに足が動かない。

これも意味がわからない。

 

俺をパニックにさせるのに十分な事象が同時に2つも起きている。

 

俺はどうしたらいい?

 

救急車を呼ぶ?それとももう1回寝たら次起きる頃には戻ってたりする?

 

 

思案した結果、とりあえず中島に助けを求めることにした。

 

スマホをパスワードでロック解除し、中島にメッセージを送る。手が震えて、うまく入力できないけど。

 

『中島、助けて欲しい』

『どうした?』

『起きたら女の子になってた。あと足が動かない』

『は?』

 

とは言ったものの、さすがにこんなこと信じてくれるわけが......

 

『よくわからんが......すぐ行く』

 

ああ、そういえばこいつめっちゃいい奴だった。

こうして平日の朝っぱらでも助けに来てくれる。

 

『ベランダまで、登れるか?』

『やってみる』

 

俺が今いる寝室は2階。

玄関は当然鍵を閉めているので入れないし、開けようにも俺が階段を降りられない。

 

俺は細くなった腕を使ってほふく前進で進み、カーテンと、窓の鍵を開けた。

 

このまま中島が来るまで待つが、俺はふと自分の見た目が気になり、スマホのカメラを起動する。

 

自分の顔を映すと......

 

「......っ!」

 

完全に女の子の顔になっている。

前の自分とは似ても似つかない。

 

寝起きだからかちょっとくしゃっとなっているセミロングストレートの黒髪。

シミひとつない白い肌に、形のいい鼻と口。

丸っこい大きな目と垂れた眉はどこか儚げな雰囲気がある。

守ってあげたくなるような、そんな美少女がスマホの中で悲痛な面持ちをしていた。

 

触れたら壊れてしまいそうな儚げな女の子がこのような哀れみを誘うような表情をしているのはどこか様になっていて、不覚にも俺は、可愛い、と思ってしまった。

 

これが、俺なのか......?

 

変わり果てた自分の容姿に茫然自失としていると、何やら窓の外から物音がしてきて、少し待つと、窓をノックする音が聞こえた。

 

「清水?大丈夫か?」

 

もう中島が来てくれた。ちゃんとベランダを登れたらしい。

俺はスマホを置き、窓を開ける。

 

「な、中島......」

「......!?」

 

目を見開く中島。

 

「し、清水、なのか?」

「うん」

「本当に、女の子に......?」

 

やっぱり、信じられるはずがない、か。

そりゃそうだ。親友が突然女の子になるなんて、どう考えてもありえない。ドッキリか何かだと思って当然だ。

 

こいつにまで信じてもらえないとなると、俺はこれからどうすればいいのか。巨大な不安が襲ってくる。なんだか泣きそうだ。

 

「うぅ」

「わ、わかった!わかったから、そんな顔するな」

「し、信じてくれるのか?」

「ああ、信じるさ。清水は冗談で朝っぱらから人にベランダを登らせたりしない」

 

う、うん、確かにそうだけど......

まあ、信じてくれるなら、それでいいや。

 

よかった。こいつに信じてもらえなかったら、誰が俺を信じてくれるのだろうか。

 

ひとまず、少し安心した。

 

安心したら、なんか、トイレに行きたくなってきた。

 

「ね、ねえ中島」

「なんだ?」

「足が動かないんだけど......トイレまで運んでくれない?」

「............え?」

 

 

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