TSしたら足が動かなくて親友が過保護になったけど、優しくされると惚れちゃいそうなので乱暴に扱って欲しい。   作:貯水庫

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3話 かわいそうはかわいい?

 

 

「そういえば中島、さっきの電話って」

「あ、ああ、担任に連絡したんだ。今日は学校行ってる場合じゃないだろ?」

「そうだけど、お前も休むことはないんじゃない?」

「だってお前、1人じゃ動けないんだろ?」

 

学校休んでまでこいつが運んでくれるってのか?優しいな。

 

「足が動かないって、どういうことなんだ?」

「ももから下の感覚が全くないんだ。起きたらこうなってた」

 

足をポンポンと叩きながら説明する。

 

「尻は......こっちも感覚が鈍いな。痺れてる感じだ」

「そうか、じゃあまずは病院行くか」

 

病院か。そうだな。病院に行けば足のことが何かわかるかもしれない。それに女になったって時点で病院には行くべきだろう。

 

「連れてってくれるのか?」

「任せとけ」

 

こういう時に助けてくれるのは本当にありがたい。今度何か奢ろう。

 

「とりあえずなんか食えよ。俺が作ってやるから」

「じゃあ、パン焼いてくれない?」

「あいよ」

 

台所に行って朝飯を作り始める中島。

中島はよくここに遊びに来るので、うちのことは結構勝手を知っている。

 

 

中島がパンを焼いている間に、今俺に起きていることが何かを考える。

 

なぜ女になったのか。わからない。病気ってレベルではないし、体が作り変わったか、もしくは別の体に乗り移ったと考えるべきだろう。

 

俺が元々女で、後から男の記憶を植え付けられた可能性は、中島も俺を元男だと認識している時点でないだろう。少なくとも自分の記憶は信じていいはず。

 

昨日は普通にベッドに入って寝た。異常はなかったはずだ。だから寝てから起きるまでに何かがあった。宇宙人が来たか、それともファンタジー的なことか...

 

ではなぜ足が動かないのか。これもわからない。

一晩で体が作り変わったが、それが完全でない状態で終わってしまったとか、足の動かない体に入れられたとか...

 

こっちは病院に行けば何かわかるかもしれないし、今日いろいろ調べてもらうとしよう。

さすがに足が動かないのは不便だし、男に戻れないとしてもせめて足だけは動かせるようになりたい。

 

 

いろいろ考えている間に、どうやらご飯の用意ができていたようだ。

 

「清水、できたぞ」

「ああ、ありがとう」

 

中島が俺を食卓の椅子まで運んでくれたので、ありがたく朝食を頂く。

 

「じゃあ、俺も急いで飯食って着替えてくるから、そこで待てるか?」

「ああ、大丈夫だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が朝食を食べ終わってしばらく待つと、中島は父親の車に乗ってやってきた。

 

俺は女の子でもギリギリ着られるような地味なパーカーとズボンに着替え、中島パパに近くの病院まで送ってもらった。

中島パパは普通に仕事があるのでそこで別れ、俺は中島にお姫様だっこされながら病院に入った。

 

周りのおじいちゃんおばあちゃん達に訝しげな視線を向けられながら待合室のベンチに座らされ、そのまま中島は受付の方に向かっていった。

 

 

 

しばらくすると、中島が戻ってきた。

車椅子を押しながら。

 

「清水、車椅子借りてきたぞ」

「く、車椅子か」

 

車椅子。

足が動かないなら、確かに車椅子があれば便利だ。しかし俺が使う立場になるとは......なんだか、これからの不自由な生活を示唆しているみたいで少し不安な気分になる。

 

さっそく中島が俺を車椅子に座らせてくれる。

 

座り心地は......感覚がなくてよくわからないけど、背中に張られた布に寄りかかればバランスは取れる。肘をかけられる部分もあるので、ある程度は揺れても平気だろう。

 

試しに、両腕で車輪を前に回してみる。うん。前に進んだ。思ったよりは重くない。

続いて右側だけ回すと、左の車輪を軸に回転して方向を変えられた。

 

「うん、問題ないけど、できればこれにはお世話になりたくないな」

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

車椅子の調子を確かめながら待っているとようやく俺の名前が呼ばれ、医者の元に案内された。道中は中島が車椅子を押してくれた。

 

「えーと......元々男だったのが今朝起きたら女の子になっていて、足の感覚がなくなっていたと」

「はい」

「うーーん。困ったな」

 

頭を掻く医者のおじさん。俺も困った。この主張を他人から見たらどう考えても頭がおかしい女にしか見えない。

 

「それを信じるとして、足の方はうちでいろいろ検査できるけど......性別が変わったってのは、どうしようもないよ?」

「で、ですよね」

「ただ、それが本当なら前の清水さんと今の清水さんが同一人物だと証明できないといろいろ大変だよ。健康保険とか使えないからね。何か方法はある?」

 

前の俺と今の俺が同じ人かどうか。

正直、俺もよくわからない。

少なくとも記憶は同じだけど、それを証明する方法が思い浮かばないし、できたとしてそれで同じ人と判断されるかもわからない。

 

「いえ、わかりません......」

 

もし証明できなければどうなるのだろうか。

前の俺は、死んだことになるのだろうか。俺は赤の他人として過ごさなければならないのだろうか。大きな不安が押し寄せる。

 

「そっか......同一人物の証明としてうちで提案できるのはDNA鑑定くらいなんだけど、やっておくかい?」

 

DNA鑑定か。見た目が完全に違う時点で望み薄な気がするが、同一人物だと示すなら最も説得力がある方法だろう。ダメ元でもやってみる価値はある。

 

「お願いします」

「うん。そしたら、以前の清水さんの頭髪か何かを用意できるかな?」

「なら、俺が今からとってきます」

 

と、中島。

 

「うん。毛根付きのをなるべくいっぱいよろしくね。あと一応、清水さんの家にあったことがわかるような写真を撮ってね」

「わかりました」

 

じゃあ、髪の方は中島に任せるとしよう。

 

「頼むな。風呂の排水溝になら多分あると思う」

「あいよ」

「じゃあ、清水さんは足の検査やろうね」

「はい」

 

 

それから俺はいろんな部屋に連れ回され、いろいろ検査を受けた。

血液検査や髄液検査、あとは体に電極を貼ってビリビリするやつや、台に寝そべって白いドーナツ型の機械に入っていくやつもやった。

 

中島は検査が一通り終わったときに戻ってきたので、俺もDNA鑑定用の検体を採ったら、2人で診断結果を待った。DNA鑑定は1週間くらいかかるらしいが、他の検査はすぐに結果が出るらしい。

 

しばらくすると俺の名前が呼ばれ、またさっきの医者のおじさんのところに案内された。

 

「血液、髄液は異常なし。伝導も問題ないし、神経が圧迫されてる様子もないね」

「ええと、つまり?」

「うーん、原因不明だね」

 

原因不明。

考えうる限り、最も恐ろしい答え。

 

「じゃあ、治療は......」

「症状からして末梢神経に障害があるんだと思うけど、原因がわからないんじゃ、うちじゃ何もできないね。力及ばずでごめんね......」

 

治療ができない。

なら、この足は、もしかしたら一生......

 

「......っ」

「清水......」

 

覚悟はしていたが、これは思ったよりも重すぎる。

 

これからずっと、この足と付き合っていかなければならない。障害者という肩書きを元に、周りの人のお世話にならなければならない。これが一番つらい。迷惑をかけるのが嫌とかいう綺麗な理由じゃなくて、自分が介助が必要な体になってしまったという事実が俺のプライドをめちゃめちゃに削いでくるのだ。

 

それも、原因がわからない。普通に暮らしていたはずなのに、誰が何をしたのかもわからずに女になって、足が動かなくなった。

あまりに理不尽すぎるだろう。これじゃ誰を恨めばいいかもわからない。まるで悲劇のヒロインだ。

なぜ、俺がこんなことに......あまりの理不尽に、溜まっていた涙がとうとうポロリと落ちた。

 

 

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