TSしたら足が動かなくて親友が過保護になったけど、優しくされると惚れちゃいそうなので乱暴に扱って欲しい。   作:貯水庫

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8話 いろいろ買い物 2

 

 

学校用の上履きを買ったら一旦家に帰って荷物を置き、それから近くの大型ショッピングモールに来た。あとはだいたいここで揃うだろう。

 

ぶかぶかな服を着た儚げな女の子とその車椅子を押す男子......平日の昼間でも意外と人はいるもので、なんだかとても目立ってしまっているようだが、周りの目を極力気にしないようにしながら目的地へと向かった。

 

まずは......女性下着だ。

 

「お、俺は外で待ってるから......」

「嘘だろ?」

 

こ、こいつ、見捨てやがった。

俺1人でここに入るのか?この、女性下着専門店に?

いや、見て呉れは女だから排斥の目を向けられることはないんだろうけど......なんか抵抗感どころか背徳感すらあるんだが。

 

「いらっしゃいませ。お押しいたしますね」

「あ、ありがとうございます」

 

店に近づくと若い女性の店員さんが迎えてくれた。車椅子を押してくれている。助かるけど、ちょっと待って。まだ心の準備が......あ、紐パン。

 

「何をお探しでしょうか?」

「え、えーっと、下着一式、揃えたいのですが......」

「どのようなデザインをお求めですか?」

「......なるべく地味なやつで」

「承知いたしました」

 

店の中を進んでいき、パンツがいっぱい陳列されている場所で止められる。ショーツと書いてあるが、まあパンツだろう。

 

店員さんが俺に合うサイズのものをいくつか提示してくれたので、その中から適当に白いのを何枚か手に取る。

俺はかわいく着飾る趣味なんてないので、パンツはこういう、何も飾らない白で、なるべくおしゃれから遠いようなのがいい。これはこれで清純っぽい魅力があるのがやっかいなんだけどね。

 

 

次はブラジャーだ。ブラも白がいいと店員さんに伝えると、今度は試着室に入れられた。

 

「採寸いたしますね」

「えっ」

 

店員さんはどこからともなくメジャーを取り出し、俺の胸部に巻き付けた。そのまま軽く締められたと思ったら、また別の位置に巻かれて......

 

な、なんだこれ。女性に、されるがままになっている。なんかドキドキする。

 

「少々お待ちください」

 

メジャーをしまったと思えば店員さんは俺を置いてどこかに行き、すぐに白いブラジャーを持って戻ってきた。

 

「こちらはC65のブラなんですけど、一度付けてみてください。おひとりで大丈夫でしょうか?」

「あ、はい」

「では、試着なさったらお呼びください」

 

ブラを受け取ると、試着室のカーテンを閉めてくれた。

 

C......Cなのか。

いや、別に俺の胸が何カップでも全然いいんだけど、なんかこう......自分の女性的特徴がこうして文字で表されると、複雑な気分になってしまう。

 

とりあえず、付けてみるか......

正直かなり抵抗はあるが、ここまで来てしまったんだ。もう引くことはできない。

一応ブラの付け方は来る途中に調べたので、多分大丈夫だ。

 

俺は服を脱いで、ブラの紐に腕を通した。しっかり車椅子の奥深くに腰掛け、猫背を使ってできるだけ前屈みになり、ブラの位置を合わせてホックを留めた。それから手で胸を寄せてブラに収めて............うん。多分できた。これで合っているはずだ。

 

「で、できました」

「はい。入りますね。......ちょっと失礼します」

 

店員さんは俺の前にしゃがみ、ブラを引っ張ったり、紐の長さを調整したりしてくれた。もしかして、全然できてなかった......?

 

距離の近い店員さんに少しドキドキしていると、まもなくブラジャーがぴったりフィットした感じがした。

おぉ......すごい。これがブラジャーか。なんかめっちゃやわらかい謎の生地に胸をまるごと包み込まれて、護られている感じ。思っていたよりずっと心地いいな。

 

「サイズはこちらでよさそうですね。デザインは白の無地でよろしいのでしょうか?」

 

店員さんは車椅子を回して俺を姿見の方向に向けた。

ブラを付ける俺の姿が映される。

 

うわぁ......なんかすごい似合っている。

清楚感のある白が儚げな容姿とマッチしていてか弱さに拍車が掛かっているような気がするのだ。

俺がブラジャーを付けているっていうのに、見た目だけは本当にそれっぽい。

 

やっぱり恥ずかしいし抵抗があるけど、なんとなくこうあるべきという感じがするのと、単純に付けていて心地がよくて、なんだか外したくない感じがする。

 

「はい、これにします」

「承知いたしました」

 

そう言うと店員さんは突然悪戯な笑みを浮かべ......

 

「では、彼氏さんに見てもらいますか?」

「え?彼氏?」

「あれ、違いましたか?外で待たれてる方とおふたりでいらしたのですよね?」

 

中島のことか?あいつが彼氏って、そんなわけあるか。

あいつは親友だ。それ以外の何者にもならない。

 

俺は女になったけど、今でも女の子が好きなのだ。いくら体が女でも記憶は俺なんだから、それが変わるはずもない。

その意味では、俺は普通の恋愛をすることができなくなってしまったと言える。

といっても、俺はまだ高校生なので結婚願望なんてものもなければ、子の顔を見せる親もいない。正直、普通の恋愛ができなくなったからといってそんなに悲しさは芽生えてこないかな。

 

「あいつは親友ですよ」

「そう......ですか」

 

いきなりあいつを彼氏とか言われてびっくりしたが、確かに傍から見たらそんな風に映ってしまうのかもな。

これからもそういうことはしばしばあるかもしれない。面倒だけど、都度訂正していこうか。

 

そうして俺は白のブラとパンツをいくつか買って、中島のところに戻った。試着したブラは付けて帰ることにした。

 

それからいろいろ店を周り、洋服類を一通り揃えた。下着、パジャマ、外着など、女性物の中でもあまり洒落てないやつを試着しながら決めた。

中島に試着を手伝ってもらっている時にブラを見られてしまってめっちゃ恥ずかしかった。

 

洋服類を買った後は、リンスと、夕飯の買い物をして、家に帰った。

 

もう日が沈んでいたので今日も中島に夕食をご馳走して、その後は2日学校を休んだ分の勉強をした。

買い物はあらかた済ませたので、明日は学校に行こうと思う。足のことなど、嫌なことや不安なことはいろいろあるが、いつまでもうじうじはしていられない。

 

それから今日は1人で風呂に入った。寝椅子を経由すれば安全に浴槽を出入りできたし、寝椅子に寝転がって1人でも楽に体を洗うこともできた。足を伸ばしたまま容易く足の裏まで手が届いたので、俺の足は動かないけど結構柔らかいらしい。

 

中島はまた俺が寝るまでいると聞かなかったので、明日の準備をして、今日も早めに寝ることにした。

 

 


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