TSしたら足が動かなくて親友が過保護になったけど、優しくされると惚れちゃいそうなので乱暴に扱って欲しい。   作:貯水庫

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9話 学校

 

 

アラームの音で目が覚める。

腕を伸ばしてアラームを止め......

 

「うっ」

 

ようとしたらめっちゃ腕が痛い。筋肉痛だ。昨日ホームセンターから自力で帰ったのがかなり効いたようだ。

 

今日は女になって初めての学校だから意気込んで行かなきゃなのに、出鼻をくじかれた気分だ。腕がこんなだと、さらに大変そうだな。

 

ふいに、玄関のドアが開く音。中島だな。時間ピッタリにくるとは律儀なことだ。とりあえず2階から下ろしてもらおう。

 

......

 

「おはよう」

「ああ、起きてたか」

 

起き上がって待っていると、中島がこちらにやってきて俺の背と足に手を添えた。

 

「持ち上げるぞ」

「いっ......」

「えっ、ど、どうした?」

「ん、大丈夫、腕が筋肉痛なだけだよ」

「そ、そうか。すまん」

 

丁重にリビングまで運んでもらったら一旦ソファーに置いてもらい、中島はまた2階に車椅子を取りに行った。

 

俺はソファーで寝てもいいと言っているのだが、これ、毎日やるつもりなのだろうか?嬉しいのだが、さすがに申し訳なさが大きい。

 

戻ってきた中島に車椅子に座らせてもらう。

 

「じゃあ俺も家で支度してくるが、1人で大丈夫か?」

「ああ」

「すぐ来るから、腕痛かったら無理するなよ」

「大丈夫、8時までには終わらせるよ」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

登校中。

俺は荷物を膝に乗せて車椅子に座り、中島に押してもらっている。

 

もちろん、服は女子制服だ。紺のブレザーと薄紫チェック柄の短めのスカートにピンク色のリボンという非常に女の子らしい服装。俺が着ていても違和感がないのはわかるが、やはり女装して出掛けているようでなんだか落ち着かない。ちなみに、ちゃんと中にブラジャーも付けている。

 

高校には家から徒歩10分程度で着くので、電車は使わない。でも今日からは倍の20分くらいはかかってしまうだろうか。

 

 

駅から来る人が通る道と合流すると、うちの生徒の数が一気に増える。俺たちはペースが遅いので何人にも抜き去られているが、みんな追い越すときにこちらを見ていて、1度前を向いたと思ったら、それから2度見する。特に男にはガン見されてしまう。

 

「あの子可愛くね?」

「ああ。あんな子いたっけ?」

「車椅子は見たことないよな」

「足どうしたんだろうな......」

 

そんなヒソヒソ話が聞こえてくる。

 

まあ、車椅子で目立つばかりか容姿でも惹きつけちゃうからね......こうもなるとはわかるんだけど、みんなこぞって足や見た目の話をしていて少しうんざりだ。

話しかけられはしないのは中島がいるおかげだろうか?

とりあえず、うちのクラスの人とはすれ違いたくない。そんなことを願いながら、徐々に近づいてくる学校に憂鬱な思いを膨らませていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

学校に着いてしまった。

5階建ての校舎がいつもより大きく見える。

玄関は生徒用と職員用の2つあって、職員用の方はスロープがあるので俺はこちらから入る。なんか特別感があるけど、それに浸っている余裕はない。

 

職員用玄関でタイヤカバーをつけながら待っていると中島が生徒用玄関の方からやってきて、スロープを上らせてくれる。それから初めて高校のエレベーターに乗り、2年生の教室がある3階へ向かった。

 

 

 

「清水、大丈夫か?」

 

教室のドアの前。

俺は緊張している。不安だ。みんながちゃんと俺を清水だと信じてくれるか。信じてくれたとしても、この見た目や足を見られたくない気持ちがかなり大きい。

清水は足が動かなくなった。清水は女になった。そう思われると、自分の価値がなんとなく下がってしまいそうで、前の俺が消えてしまいそうで、それがたまらなく怖い。

 

なんだか目の前のドアがやたらと大きく見える。心の準備は十分してきたつもりだが、ここに来て逃げ出したい気分になってきた。しかし生憎、俺は逃げるための足を動かすことができない。だから俺は、弱音を吐いた。

 

「中島、やっぱり怖い。このことを知られるのが。そもそも、ちゃんと信じてもらえるかもわからない」

 

正直に内心を言うと、少しして、後ろから頭にポンと手を置かれた。な、なんだ......?

 

「大丈夫だ、先生だって信じてくれたろ?説明すればみんな信じてくれるさ。そもそも、誰がなんと言おうがお前は清水なんだよ。俺が言うんだから、間違いないだろ?」

「......」

「見た目のことだって、足のことだって、気にすることじゃない。お前がなんと思っていようが、他の奴になんて思われようが、お前のことは俺が知ってるから」

「......!」

 

お前のことは俺が知ってる......つまり、俺の見た目が変わろうと、足が動かなくなろうと、こいつだけは俺の価値を分かっているし、前までの俺もこいつの中にだけは存在し続けると?

だから他の奴なんか気にするな、俺だけ見てろ、って感じか?

な、なんだそれ......口説いてるのか?

 

......でも、確かに親友のこいつさえ俺を清水として接してくれるのであれば、俺の価値を知ってくれるのであれば、俺は十分なのかもしれない。少なくとも、そういう心構えで行った方がだいぶ楽だ。

 

信じてみても、いいのだろうか。

 

「......そうかよ」

 

とりあえず一度深呼吸をする。少なくともこいつだけはずっと俺を分かってくれる。そう思うと、なんだか嘘のように気楽になってきた。

なんか女になってからよくこいつに励まされている気がするな。

 

「じゃあ、入るぞ?」

 

こく、と頷くと、中島がドアを開き車椅子が教室に進んでいった。するとみんながこちらを注目し、喧騒がしんと止んだ。

 

なんだあの車椅子の奴は。みたいになっているのだろう。なんとなくいたたまれなくなって目を伏せてしまうが、ややあって、クラスメイトの男の1人が話し掛けてきた。

 

「な、中島、久しぶり......」

「ああ、2日ぶりだな」

「.........その子は?」

「清水だ」

「え?」

「清水だ」

「......??」

 

またしんとしてしまった。俺からも声を掛けてみる。

 

「や、やあ、長谷川」

「あ、はい長谷川です」

 

敬語で話された。悲しい。

 

「俺だよ俺。清水。2日ぶりだな」

「......え?マジなの?」

「マジだよ。こんなになっちゃったけどね」

 

唖然として俺を見る長谷川。

ぼつぼつと、他のクラスメイトからも反応が出てきた。

 

「え?どゆこと?」

「あの子が清水くんってこと?」

「そんなわけなくない?」

「何があったの?」

 

そうだな。まずは説明しようか。

 

「えーと、なんか一昨日朝起きたらこうなってて......その時から足が動かなくなっちゃったんだよ」

「それで病院とか行ってたから、今日まで休んでたって訳だ」

 

中島が付け加えてくれる。

 

「信じられないなら、俺が知ってることで何か質問してみてよ」

 

先生はこれで信じてくれた、と思い言ってみると、じゃあ、と口を開いたのは長谷川。

 

「俺が得意なモノマネは?」

「化学の先生の唸り声」

「おお......じゃあ、うちのクラスの生徒で同じ中学だったのは?」

「中島と、長谷川、沢田、あと荒さんだな」

「まじかよ......ガチで清水なのか?」

 

ここまでくると、信憑性はなかなか高いんじゃないかな?

長谷川の狼狽に、まさか、というかのようにクラスメイトの1人が席を立ち、それを皮切りにみんなが俺を近くで見るようこちらに集まってきた。

 

「清水ってあの清水?」

「長谷川くんもグルってことでしょ?」

「いや違う!俺は何も知らない!」

「ほんとー?」

「いやでも中島くんが言うんなら本当に......」

「確かに中島はそういう冗談言うタイプじゃないよな」

「じゃあ本当に清水くん......清水、さん?」

 

「あ、呼び方は今まで通りで」

 

「じゃあ、これが清水なのか......」

「す、すごい変わったね」

「ずっとそれに座ってるの?」

「どうやってここまで来たんだ?」

「清水ーその服は?」

 

「これは昨日買ったんだよ。先生に言われてな」

 

「清水くん1人暮らしじゃなかったっけ?」

「だ、大丈夫なの?」

「ずいぶんと可愛くなったな」

「さ、触っていいか?」

 

「え、ええと......」

 

なんだか、みんな信じてくれる流れになっているみたいだ。中島の言った通りだな。少し安心した

でもこんな風に詰め寄られるのはなんか嫌だな。座っているからみんなの目線が高いのと、思ったように身動きが取れないので、窮屈というか圧迫感があるというか......

 

「そこまでだ。質問なら俺が答えるから、とりあえず席着け」

 

縮こまっていると、中島が場を収めてくれる。

ありがたいな。こういう時気を使ってくれるのはとても心強い。

 

するとみんな俺が困っているのを察したようで、ぞろぞろと席に戻っていった。

一息ついて中島と後ろのロッカーに荷物を仕舞っていると、ふと、教室の前のドアが開いた。

 

「あ、清水くん、いらしてたんですね」

 

先生だ。

 

「その様子だと、もうみなさん聞いたみたいですね。いろいろ気になると思いますが、清水くんは今とても混乱しているので、あまり触れないようにお願いしますね」

 

さすが先生。ありがたいことを言ってくれる。

これからいろいろ聞かれるだろうことを憂鬱に感じていたから、それが減るのであればとても過ごしやすい。

 

「それと、清水くんの席を一番後ろにしましょうか。この列の人は1つずつ前にズレてください」

 

ああそうだな。車椅子だと教室の座席間は窮屈だ。一番後ろであればある程度スペースがあるので、身動きが取りやすいだろう。

 

クラスメイトが俺の机を後ろまで運んでくれる。椅子は中島が物置部屋まで持って行ってくれるようだ。俺はみんなにお礼を言って、腕の痛みを我慢しながら席まで車椅子を動かした。

 

あ、ここだと中島の席が斜め前にあるね。

少し嬉しい気分になっていると、隣の席から声が掛かった。

 

「清水くん、よろしくね」

「あ、うん、よろしく」

 

クラス委員長の三川さんだ。地味だけど、よく見ると肌が綺麗だし割と可愛い顔をしている女の子。

 

「三川さんが隣ですか。ちょうどいいですね。いろいろ面倒を見てあげてください。特に......」

「ああ、なるほど。わかりました」

 

なんだか通じ合っている様子だが......うん、トイレのことだろう。

まじで女子トイレを使わなきゃいけないのか......女子に手伝ってもらうのはかなり気が引ける。というか委員長は俺を持てるのだろうか?中島なら楽に俺を便座まで移せるだろうけど、中島が女子トイレに入るわけにはいかないし......

 

「ご、ごめんね......」

「ううん、いいよ。いつでも言ってね」

 

委員長は優しい笑みでそう言ってくれているが、なるべくトイレは家で済ませよう、と強く心に刻むのであった。

 

 

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