あっ、タイトルにそんなに深い意味はないです。全部その場の勢いなので。
それでは、どうぞ!!!
鳶一さんから飛び出した言葉で盛り上がっていた空気が一気に死んでいき、一瞬で静かになる。
隣にいるも目を見開いて驚きの表情になっている。
「......隠し事ですか?」
「えぇ、村雨。この苗字だけなら偶然で済む。探せばこの苗字の人なんてそこらにいるから」
俺から目を離さずに、鳶一さんは淡々と語る。
「でも、苗字も同じで尚且つその容姿。偶然で片づけることは私にはできない。みんなも、口に出していないだけでそう思っている。……もう一度聞く、あなたは何を隠してるの?村雨令音に関係があるの?」
「……」
俺は、無言で手元にあるジュースを呷り、空になったコップをテーブルの上に戻し、静かに息を吐く。
「ふぅ…成程、あなた方に会ってから、ずっと好奇の視線に晒されていた理由が分かった。俺がその村雨令音なる人物に関係していると思われているからか」
「早く答えて」
鳶一さんからの圧が増す。
俺は、腕を組み、うんうんと頷き、こちらを見ている全員の顔を見回し、鳶一さんの方に向き直り一言。
「結論から言えば、関係はしてますよ。そりゃあ、鳶一さんの言う通り、苗字は兎も角容姿まで似ていたら疑いますよね」
俺のその言葉に誰かが息を飲んだ。
「でも、今はあえて答えない」
「答えない?答えられないとかではなくて?」
「えぇ、別に俺がここで答えてもあなた方に何かしらの影響があるわけでもないし、バレたから消すってこともないですからね」
「それは、何故?」
俺の態度が気に食わないのか、無表情ながらも少しイライラした様子で詰め寄ってくる鳶一さん。それを両手で制しながら、俺は席を立つ。
「まぁまぁ、少し落ち着いて下さい。なにも答えないって言っているわけではないので。俺の正体が知りたいのならば、少し着いてきてください。あぁ、琴里、今からフラクシナスを呼んで全員乗せてくれ。もちろん俺も乗せてくれよ?」
****
「それで、フラクシナスを呼んで全員乗せたけど、あんたは何を教えてくれるのかしら?」
フラクシナスの艦長席に座り込んだ琴里は足を組んで俺を睨みつける。
「おーけーおーけ。分かってる、嘘はつかないよ。俺の秘密を言えばいいんだろ?」
まずは何から話そうか、そうだな、あれにしよう。
「俺の部屋の本棚、その3段目の右から3冊目の本」
「........なんの話?」
「まぁ、最後まで聞け、その本は俺にとってめちゃくちゃ重要なもんなんだよ。まさしく俺の秘密だ」
ゴクリ、と誰かが唾を飲み込む音が聞こえた。
「......その本は何かと言うと、俺のお気にのアレな本だ」
空気が、凍った。
「あ、あれな本って...つまり...」
「あぁ、エロ本だな」
堂々と言い放つ俺に対して、琴里は惚けた顔をしている。
しかし、直ぐに咳払いをして元の表情に戻した琴里は、声を震わせながら問いかけてくる。
「そ、それは...何か関係のあることなの?」
「大ありだろ、お前らの知りたがってる
少し呆れたふうに喋る俺を見ている琴里は、青筋を立てながら、口元をひくつられせている。
うん、少しからかいすぎたかな。
「終、あなたは私達をおちょくってるのかしら?」
「うん、まぁ、割と」
「あんた!ふざけるのもいい加減に!」
「悪かった、悪かった」
キレだした琴里が、立ち上がって俺に詰め寄ろうとしてくるのを手を出して静止する。
......うん、そろそろいいかな。
「冗談だよ冗談。張り詰めてる空気を和ませようとした俺の小粋なジョークさ」
まぁ、別にあの話が冗談な訳では無いけど。
「話すよ、ちゃんと。でもまぁ、ついでに奴らのことも話そうかと思ってたからさ」
「奴ら...?」
「そっ、奴ら。最近、噂で聞いたことない?怒りっぽい人が怒らなくなった。仕事に真面目な人が怠惰になった。愛していた人に無関心になった。楽しかったことがつまらなくなった。突然、人生がつまらなくなって死にたくなった。っていう噂。学校とかでも流行ってるでしょ?ね、士道さん?」
急に話を振られた士道さんは、少しあたふたしながらも、心当たりがあったかのように頷いた。
「確かに、俺の大学にもいたな。急に大学に来なくなった奴。しっかり者だったって話を聞いたことある」
俺は士道さんに礼を言い、指を立てる。
「そう、今まであった感情が急になくなり、無気力になる。これは、明確な外的要因が存在する」
「その存在は──『お話途中にすいませんが、敵性反応、それも多数です』
突如、けたたましく鳴る警報音。フラクシナスの管理AIが俺の話を遮る。
「敵性反応ですって!?どこのどいつ!?精霊はもういないはずでしょう!?」
動揺で声を荒らげた琴里は、フラクシナスのクルー達に確認を急がせる。
『琴里、この反応は霊力です。恐らく精霊に近しい何かかと』
「精霊に近しい何か...?それって──「
俺は、琴里の言葉を遮って、その名を出す。
「
「人の感情を喰らい、糧として、いつか本物の精霊になることを夢見る悪魔の事さ」
「本物の精霊?」
「あぁ、奴らは言わば大気中に散らばるマナが何らかの影響で集まり、形をなした現象だ。本来ならなにも出来ず、自然と自壊していく存在なんだが。あんたらが言う世界の意識におけるとある人物の再構築で行われた時のバグが影響して、こいつらにはある意思が芽生えた」
「それが.....本物の精霊になること、ですわね?」
重々しい様子で口を開いたのは、時崎狂三。そんな彼女に正解と、手で丸を作り、話を続ける。
「
奴らは『せや!自分に感情がないなら人間の感情を奪えばいいんや!』と言った結論に至ったのだ。
「なら早く、人に被害が出る前に倒さなければ!琴里!早く私を外に出てくれ!」
「ダメよ、もう精霊じゃないのだから。そんな危ないことさせれないわ」
声を張り上げた夜刀神さんを一蹴する琴里。そんな二人の前に祟宮が近づいてくる。
「なら私と折紙さんが出ます。いいですよね、折紙さん?」
祟宮が鳶一さんの方を向くと、真顔で頷いていた。
「そう、ね。数は少し多いけど、霊力は大したことないし、お願いしてもいいかしら?でも、気おつけて」
「分かってますよ。大したことないからって慢心はしねーですから」
ニッと笑った祟宮は、鳶一さんを連れてフラクシナスから出ようとする──所を俺が引き止める。
「二人は出なくていいよ。俺が出るから」
「何も言ってるんですか?確かに、あんたは何かを知ってる感じですが、魔術師でもねーあんたに戦闘能力があるとは思えねーですよ」
眉をひそめながら言ってくる祟宮に俺は苦笑しながら返す。
「大丈夫だよ、アイツらとやり合うの慣れてるから、俺」
そう言いながら数歩歩き、全員と少し離れる。そして───。
「──
光が俺を包み込み、霊装を形作る。
黒いコートに黒いパンツ。街中に出ると一瞬で不審者扱いされそうな全身黒ずくめの格好になりその両指にはそれぞれ単色の指輪が嵌められていた。
「──
第六のセフィロト、
左手の親指の桃色の指輪が光り、形を変えて大きな鍵になった。
されど、
「なっ!?それはむくの!?」
星宮の驚いたような声が聞こえる。いや、星宮だけじゃない、この場にいる全員が驚きの声を上げている。
「まぁ、驚くよな。少し待ってて、あれ片付けてきたら話すからさ」
そう言いながら、虚空に鍵を差し込み、捻る。その場の空間が歪んで人一人分の穴が開く。
「んじゃま、行ってくるわ」
軽い調子で、俺は外に飛び出した。