ダンジョンに、ダンジョンマスターが現れた! 作:ずぼらさん
「お、遅れて、すみません!」
「大丈夫よ。」
待ち合わせの場所に、
うんうん、偉いぞ。
10分前行動で、人を待たせない。
当たり前だけど、大切な事よ。
身だしなみも、バッチリね。
「先輩は…その…どのくらい前から、ここに?」
「30分かしら?」
「早いですね!?」
お礼をする側が、後から来るのは格好悪い。
そう思って早く来たのは、内緒。
今から1週間前。
過労で倒れかけた私を、ゼクスが抱き留めてくれた。
運が悪かったら、頭を打って怪我をしていたかも。
まったく情けない。
人には無理するなと言っておいて、自分がこの様である。
猛省したわ!
2度と倒れるような無茶はしない。
ギルドにも迷惑がかかるし。
多忙で余裕がない時期に、1人でも減れば、他の職員達へ負担がいく。
それだけは避けないと。
「さあ、行きましょうか。」
「はい!」
向かう先は『舌が歌う御馳走』という名の料理店。
お礼をしたいと言ったら、一緒に食事しませんかと誘われた。
なるほど。
お姉さんは理解しましたよ。
奢って欲しいって、意味でしょ?
任せなさい!
贅沢してないし、ギルドの給料良いし、お財布の中身は充分にあるわ。
「楽しみですね!」
満面の笑みを浮かべるゼクス。
尻尾を振って喜んでいる子犬に見えた。
頭をナデナデしたい。
周りから御主人様と飼い犬…ではなく、きっと姉弟に見られているわね。
「先輩!今日は、もう仕事の話は無しにしましょう。」
「別にいいけど、どうしたの?」
「食事の時ぐらいは仕事を忘れて、楽しまないと損です!」
「…そうね。」
ダンジョンの異変は、全然収まらない。
ううん、混迷を極めている。
行方不明者や死亡者が増加し、冒険者達が慎重になると思った矢先で…。
宝箱の出現。
中身は、大量の金銀宝石。
発見された宝箱にハズレはなく、どれも相当な金額になっていた。
多い時には1日で、2~3個も発見される。
一攫千金を求める冒険者達が、急増してしまった。
危険と注意しても、聞いてくれない冒険者達の方が多い。
案の定、行方不明者と死亡者が更に増加。
はあー、嫌だなー。
どんどん死んで逝くから、悲しみが薄れていく。
また死んだのね。
それで終わらす自分が、堪らなく嫌だ。
………ふうー、いけないわね。
ゼクスに言われたばっかりじゃない。
忘れて楽しみましょう!
「あれ?先輩?」
「ゼクス君もいるね。」
声がした方を向けば、
2人も食事に行くところかしら?
「あっ、もしかして…。」
「まさかテリア先輩とゼクス君が…へえ、そうなんだー。」
ちょっと2人の様子が、おかしい。
エイナは何か察した感じで、ミィシャはニヤニヤしている。
一体どうしたの?
「やるわね、ゼクス君。
デート!?
いいえ、それよりもミィシャ!
難攻不落って何!?
冒険者の二つ名みたいな呼び名は!?
「ま、待って。」
落ちつきなさい私。
ミィシャ達の勘違いを訂正して、呼び名について問い質すのよ。
食事があるから、明日がいいわね。
「ミィシャ。ギルドの第3倉庫に、朝一で来なさい。」
「テリア先輩!?笑顔が怖いです!それに第3倉庫って、滅多に使用されない…。」
「分かった?」
「は、はいぃっ!」
涙目で返事するミィシャは置いといて…。
いつの間に、変な呼び名を付けられたのかしら?
思い当たる節がない。
しかし、デートとは思わなかったわ。
相手が私なんて、ゼクスに申し訳ない。
男性より背が高いし、
「いい、2人とも。デートじゃなくて、お礼の「デートです!」…はい?」
訂正しようとしたら、ゼクスが勘違いを肯定した。
大声で。
私も、エイナ達も、周りの人達も、吃驚している。
「先輩、行きましょう!」
「ちょっ!?」
手を掴まれ、引っ張られていく。
ゼクスの顔は、林檎のように赤い。
あれ?
もしかして、食事に誘ったのは…本当にデートのつもりで?
「っ!」
ま、まずいかも。
そう意識したら、私の顔も赤くなった。
掴まれている手が熱い。
料理店に着くまで、互いに何も喋れなかった。