ダンジョンに、ダンジョンマスターが現れた! 作:ずぼらさん
最近オラリオで、問題になっている本があります。
BLと呼ばれる男性同士の愛が描かれた物語。
百合と呼ばれる女性同士の愛が描かれた物語。
今までに無い、絵と文字で表現された画期的な本。
これだけなら問題になりません。
架空の物語だし、見たくない人は見なければいいだけ。
では、何が問題なのか?
一部の本には、有名な冒険者達が登場人物として、描かれているからです。
無断で。
しょ、しょうがなかったの!
描きたかったから!
主神が言う、萌えだもん!尊みだもん!
私の名は、ゼーリエ。
レベル2の冒険者で、とあるファミリアの団員。
先にも述べたオラリオを騒がせている本。
これを描いているのは、私達のファミリアです。
ダンジョンで発見した宝箱。
その中には、金銀宝石を凌駕する宝が、聖典が入っていました。
見てしまった私を含め、団員全員が、真実の愛を知ったのです!
主神様は鼻血を流しながら、笑顔で叫びました。
下界に聖典を広めよと。
勿論です!
ただ、普通に広めると…残念な事ですが捕まります。
故に私達は、暗躍しました。
本を扱っている店の本棚に、こっそりと入れたり。
誰か拾って見る事を計算し、人通りの少ない場所に置いたり。
闇のオークション会場にて、出品者不明のまま出品したり。
他にも色々やりました。
ええ、頑張りましたとも!
全ての本は、作品達は、私達の手作り!
同じ本はありません!
睡眠時間を削って、生み出し続けます。
もっと多くの人達に真実の愛を伝え、同志を増やしていく為に。
だからこそ、この危機を乗り越えなければ、なりません。
フード付きのローブと仮面で、素顔と姿を隠しつつ、秘密のアジトへ向かいます。
「探せ!くそったれ野郎共は、この辺りに居るはずだ!」
くっ、もう嗅ぎつけましたか。
真実の愛を否定する者達。
私達の本を無残にも破り捨て、燃やして消し去る悪魔の所業。
許せない!
でも、でも、でも!
「本当に、この辺り何だろうな。
「黙れ、疑うなら自分で探せ。
ありがとうございます!
推しの声が聞こえて、凄く幸せです!
秘密のアジトへ入ると、作業している団員達に知らせます。
「ここの存在を気づかれました!逃げて下さい!女神の戦車と凶狼が来ます!」
「嘘でしょ!?もうちょっとで原稿が仕上がるのに!」
その気持ちは分かります。
ですが、捕まったら2度と描けません。
血の涙を流してでも、原稿を放置して逃げて下さい。
「やばっ!女神の戦車×凶狼の組み合わせ、萌えるわ!」
私も萌えました!
しかし、萌えるのは逃げ切った後です。
1人でも捕まったら、私達のファミリアが、壊滅の危機に晒されます。
一応掟はありますが…。
推しに吐けと言われたら、口を割ってしまうかも。
なので、全力で逃げて下さい。
秘密のアジトは、個人を断定されない様に、厳格な管理体制です。
証拠隠滅の必要はありません。
「隠し通路Bで逃げます!急いで!」
灯りを消して、速やかに移動しました。
いくつかある秘密アジト。
使う際は、隠し通路を覚えるのが義務です。
「ひっ!し、静かに移動を…。」
隠し通路を塞いだところで、何かが粉砕される轟音と激しい振動を感じました。
おそらく、アジトの扉を破壊されました。
あ、危なかったです。
その後、無事に別のアジトへ生還しました。
まだまだ理解されないBLと百合。
だけど、私達は負けません。
真実の愛が、下界に広がるまでは!
「団長!団長が、ベートさんと×××の○○〇って、本当なんですか!?」
「ははは、どこでそんなデマを。違うよ。本当に。」
勇者の二つ名を持つ、ロキ・ファミリアの団長フィンは疲れきっていた。
同じ質問してくる団員達に。
特に、双子のアマゾネス。
その片割れに信じてもらうまで、大変苦労した。
それもこれも、ある本のせいである。
「団長、よく効く胃薬をもらって来たっす。」
「ありがとう、ラウル。是非使わせてもらうよ。」
胃薬を服用するようになったフィンに、ラウルは言えなかった。
新たに、
更に主神のロキが、
先程、リヴェリアに地下室へ連れて行かれた事を。
【ゼーリエ】
本来は、語られる事のない冒険者。
ファミリアも、ダンジョン探索系ファミリアのまま。
しかし、BL本を拾った為に運命が歪んだ。
ゼーリエ以外の団員達にも、歪みは浸透した。