ダンジョンに、ダンジョンマスターが現れた!   作:ずぼらさん

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小鬼の祭典・後編(パート)

蹂躙される迷宮都市オラリオ。

我が物顔で暴れるゴブリン達は気がつかない。

反撃の牙が、己の首に突き刺さる寸前だという事に。

人々の絶望が、希望に変わる。

英雄達が来た!

 

 

 

【ロキ・ファミリアの団員ニーテルパート】

はうー、眠れません。

気分転換に散歩でもしようかなー。

同室の仲間(ルームメイト)を起こさない様に、そっと自室を出ます。

ボクは、ニーテル。

フィン団長に憧れて、ロキ・ファミリアへ入団したパルゥムです。

冒険者になって6年。

レベル2。

槍術は、そこそこ。

魔法も、そこそこ。

平凡でした。

現実は甘くなく、フィン団長のような英雄には、程遠いです(なれない)

これがボクの限界。

ダンジョンの異変が起きてからは、足手まといになる事も増えて…。

一時は冒険者を辞めようかと考えました。

いえ、ラウルさんやアキさん達の励ましがなかったら、辞めていました。

歯を食いしばって頑張って、数日前にランクアップ。

レベル3になりました!

おまけに、罠感知(トラップセンシング)のアビリティが発現。

嬉しかったです。

フィン団長も喜んでくれて、ついはしゃぎ…それが失敗でした。

ティオネさんの視線が痛いです。

怖いです。

逃げたいです。

ボクは、恋の宿敵(ライバル)じゃありません。

そして、追い撃ちのような主神(ロキ)の言葉に、愕然としました。

はい?

罠感知の効果を、フィン団長と確かめて来いと?

はひーっ!?

凄まじい殺気が!?

ティオネさん、違うんです。

誤解です。

命令なんです。

ボクは本当に、恋の宿敵(ライバル)じゃありませんから!

ううっ、精神的苦痛(プレッシャー&ストレス)で胃が…。

フラフラと中庭の訓練場に行くと、先客が居ました。

 

「フィン団長!?」

 

「ニーテル、君も眠れないのかい?」

 

座って話そうと誘われ、一緒に訓練場の長椅子(ベンチ)へ座ります。

勿論、フィン団長とは少し離れて。

ティオネさんに見つかったら、大変まずいので(命が危ないので)

 

「はあーーー。」

 

深い深い溜息を吐く、フィン団長。

酷くお疲れのご様子。

多分、ギルドのせいです。

ダンジョンの異変を調査して欲しい。

そんな依頼がありました。

他のファミリアも調査していますが、原因は不明のままです。

更にフィン団長を苦しめている存在があります。

BL本と呼ばれている書物です。

えーと、その…だ、男性同士の絡みを書いた本です!

登場する人物(男性)は、有名な冒険者の人ばかり。

特に被害を受けているのが、フィン団長です。

おいたわしや。

えっ?

常備している胃薬をくれんですか?

ありがとうございます!

胃が助かります。

お礼を言い、ついでに気になっている事を聞きました。

 

「親指、どうしたんですか?」

 

さっきからずっと、握ったり摩っています。

 

「夜になってから疼くんだ。段々強くなっていてね。」

 

疼く?

凄く嫌な予感がします。

だって、フィン団長の親指が疼いた時は…。

 

「魔物だあああああああああああぁっ!」

 

黄昏の館(ホーム)の外から、叫び声が聞こえました。

魔物!?

街の中に!?

 

「ニーテル!全員起こせ!」

 

「は、はいっ!」

 

勇者(ブレイバー)の顔になって、フィン団長は駆け出します。

ボクも急がなきゃ!

オラリオで何か、とんでもない事が起きようとしていました。

 

 

 

【ゴブリンキングパート】

アレハ!?

冒険者共ガ、塔ニ向カッテ進ンデイル。

配下共ガ手モ足モ出ナイ。

俺ニハ分カル。

冒険者ノ中ニ、化物ガ2人イル。

ドワーフノ爺ト人間ノ小娘。

カ、勝テナイ。

戦ッタラ瞬殺サレテシマウ程ノ実力差。

ダンジョンノ出入口ヲ封鎖スルツモリカ?

不味イナ。

 

「オイ!」

 

グギャゴギャ(なんでしょうか?)?」

 

「撤退スル。急ゲ。近クニイル奴ラニ知ラセロ。」

 

ギャ!ギャゴギャゴギャゴギャギャ!(なっ!何故撤退などするのですか!)

 

「聞コエナカッタカ?」

 

ナギャギャ!ゴギャギャゴギャギャ!(もっと殺し!もっと攫うべきです!)

 

「…馬鹿ガ。」

 

口答エシタ配下ノ頭ヲ掴ンデ、地面ニ叩キツケタ。

飛ビ散ッタ血肉ニ、他ノ配下共ガ怯エル。

 

「モウ1度ダケ言ウ。撤退ダ。」

 

「「「「「タギャ!(はい!)」」」」」

 

ダンジョン・リザードニ乗リ、全力デダンジョンノ出入口ニ戻ル。

先ニ、アノ化物共ガ着イタラ、オシマイダ。

少々物足リナイガ、十分ナ成果ハ出タ。

苗床モ大量ダ。

更ニ数ヲ増ヤシ、俺ガ強クナッテカラ、再度侵攻スレバイイ。

 

グギャギャゴグギャギャ、ダギャギャ?(撤退の間に合わない者達は、どうしますか?)

 

「捨テテイク。」

 

手遅レダ。

アイツラハ全テ倒サレルダロウ。

残サレタ使イ道ハ、精々足止メクライ。

アトハ巣ニ戻ルマデノ、時間稼ギダ。

 

「ヨシ、間ニ合ッ、ウオォッ!?」

 

塔ノ出入口ニ到着シタ同ニ、背後カラ凄マジイ悪寒ヲ感ジタ。

迷ワズニ、ダンジョンノ出入口ニ飛ビ込ンダ。

後ロニイタ配下共ハ来ナイ。

冷汗ガ止マラナイ。

 

「危ナカッタ。アト1歩遅カッタラ俺モ…。」

 

短剣ヲ2本トモ壁ニ突キ立テ、削リナガラ落チル。

途中デ2本トモ折レテシマッタガ、上手ク減速シタ。

身体ニ、ダメージハナイ。

ダンジョンニ帰ッテ来タゾ!

 

「イヤ…マダ安心デキナイナ。」

 

俺ハ急イデ、巣ニ向カッテ走ッタ。

 

 

 

【ギルド職員テリアパート】

………あれ?

身体が揺れている?

もうちょっと振動を抑えて欲しい。

あちこち痛いから。

痛い?

いつ怪我したんだっけ?

少し考えて、私は最悪な記憶を思い出した。

ゴブリンの襲撃。

信じられなかった。

ダンジョンでなく、オラリオの郊外でもなく、ギルドでだよ?

逃げるのに必死だった。

途中で、ミィシャと逸れてしまい、それから…。

同僚のケビンを庇った。

我ながら無茶をしたと思う。

おかげさまで、身体に何発も受けた。

その後から記憶は途切れている。

生きているだけでも、運が良かったかも。

ケビンは結婚して、奥さんが妊娠中。

死なせたら駄目だよねー。

一緒にいたエイナは無事かな?

ミィシャと合流していたら、いいのだけど。

 

「………ゼクス。」

 

こんな事になるなら、ちゃんと返事しておくべきだった。

食事(デート?)の最後に、「好きです」と告白された。

吃驚したよね。

人生で初めての経験。

同性に言われた事は、…まあ忘れましょう(ノーカウント)

年下で可愛い後輩。

嫌いじゃない。

むしろ、好感度は高い。

恥ずかしくて、返事せずに逃げたけど。

………私、ヘタレだわ。

彼もギルドに居た。

どうか死なないで、生きて欲しい。

 

「テリア先輩、気がつきましたか?」

 

「ふえっ!?」

 

目を開けると、ゼクスの顔が近くにあった。

えええっ!?

状況を確認すると、お姫様抱っこされてました。

 

「ゼ、ゼクス「先輩、静かに」むぐっ。」

 

口を閉じた。

簡単に説明を聞くと、私は倉庫の中に隠されていて、ゼクスが偶然発見。

救助を求めて、ギルドから外へ移動中らしい。

多分私を隠したのは、ケビンとエイナ。

気を失った負傷者を連れて行くより、隠した方が安全と判断したのね。

よく見ると、ゼクスはボロボロだった。

大きな怪我は無いものの、服は汚れて破れている。

息が荒く、かなり疲労していた。

きっと彼も、大変な目に遭っていたはず。

無事で良かった。

でも、このままじゃいけない。

お荷物(わたし)を連れていたら、危険にさらす。

閉じた口を開こうとしたら…。

 

「絶対に先輩を離しません。死んでも離しません。」

 

「なっ!」

 

「生きて、告白の答えを聞きたいですし。」

 

「………馬鹿。」

 

子犬みたいだった後輩の癖に。

今は頼りになる異性だった。

 

「よし、外に出れた。先輩、もう少しの辛抱です。」

 

「ゼクス待って!ゴブリンが!」

 

すぐ近くに、短剣を持ったゴブリン達がいた。

こちらに気がつき、向かって来る!

疲労しているゼクスと動けない私。

絶体絶命の危機。

お願い!

どうか彼だけでも助けて!

そう願った時、風が吹き荒れた。

 

「もう大丈夫…だよ。」

 

ゴブリン達は斬り倒され、美しい女性が立っていた。

ロキ・ファミリア所属の第一級冒険者(レベル6)

剣姫アイズ・ヴァレンシュタイン。

 

「た、助かったー。」

 

「最強の救助が来ましたね、先輩。」

 

本当にね。

剣姫の事は、よく知っている。

有名なのもあるけど、彼女の冒険者登録をしたのは、私だから。

あの小さい女の子が、ここまで立派になるとは。

うん、歳取ったなー(20台後半)

しみじみしていた私は聞こえなかった。

バベルの塔の中を覗き、呟いた彼女の言葉を。

 

「あのゴブリンは…居ない…見失った。」

 

 

 

【タルウィ・ファミリアの団長メビアパート】

斬って、踏み潰して、また斬った。

突如オラリオに現れたゴブリンの大群。

ダンジョンの異変といい、厄介な事ばかり起こるなー。

………まあ、厄介な存在は身近にいるけど。

私達の主神様(タルウィ)だ。

自分の作った良薬(麻薬)オモチャ(危険物)を、人々に愛用してもらう。

それが最高の喜びと、恍惚な表情で語っていた。

うん、下界の子供達には迷惑極まりない。

あと金儲けも大好き。

表向きは化粧品をメインに、アクセサリー等の装飾品も担う商業系ファミリア。

裏の顔は、毒や危険物を販売する犯罪系ファミリア。

あー、やだやだ。

もう闇派閥(イヴァルス)と変わらない。

入団当初は知らなかったものの、もう引き返す事は出来ない。

数えきれない程、犯罪の手伝いをした。

それに…。

団員の大半が、知ったところで脱退できないのだ(・・・・・・・・・・・・・・・)

はあーーー、私もそうだし。

 

「メビア、あっちから逃げてきた人達を助けて。ほら、急いで急いで。」

 

「はいはい。主神様は危ないから、隠れていてよー。」

 

「護衛も頑張れ。」

 

「………はーい。」

 

主神様は、本当に眷属使いが荒い。

仕事優先で、よく睡眠時間を削られる。

最近は、ダンジョンへ素材取りに行かされたり、新薬の実験体にされる事が多い。

邪神ではないかと思う。

本気で(マジで)

 

「大丈夫ですか!こちらへ避難を!」

 

「タルウィ・ファミリアだ!た、助かった!ありがとうございます!」

 

ゴブリン討伐と人々の救助。

眷属達(私達)にやらせているのは、困っている下界の子供達を見捨てられないから?

あははは。

そんなわけ、ないない。

裏の顔を隠す為に、普段から善神の振りをしているだけ。

一緒になって善人の振りをするのは、正直疲れる。

 

「主神様。」

 

「なんだい?」

 

無愛想エルフ(フォビーヌ)の姿が、見えないんですけど?」

 

「ああ、副団長(フォビーヌ)かい。いつもの仕事(暗殺)をしているよ。」

 

うわー。

笑顔で言ったよ、主神様は。

こんな大変な時に、裏の顔の仕事をさせるなんて…。

顔に出ていたのか。

楽しそうに理由を話してくれた。

 

「こんな時だからこそだよ。不幸が起きても、誰も気にしないだろ?」

 

「………ダンジョンとは違いますよ。」

 

「心配性だな、メビアは。ゴブリンも弓を使っていたし、大丈夫さ。」

 

「………さいですか。」

 

もう好きにして。

何を言っても、主神様は聞いてくれないし。

副団長が、どこで仕事しているか分からない。

今更止めようがなかった。

 

「さあ、今日は徹夜で仕事(オールナイト)だよ!」

 

「「「「ゴ、ゴブリン共があああああぁぁっ!」」」」

 

睡眠時間が無くなった事で、団員達の怒りが爆発した。

矛先は全て、ゴブリン達へ。

ごめんね。

でも、貴方達が悪い。

私達の睡眠を妨害したから…。

 

 

 

異端者(ゼノス)のジャジャパート】

やれやれじゃ。

雌鹿魔物(ソードスタッグ)のわしは、溜息を吐いた。

行方不明の小鬼(ペパ坊)が見つかったと、情報を持ってきたフェルズが、大慌てで帰ったわい。

地上で良からぬ事が起こったらしい。

しかし、驚いたのう。

ゴブリン達を統率する王のような存在に、なっていたとは…。

フェルズも本人を見るまで、気づかなかったそうじゃ。

もはや正気では…ないか。

異端児から、もとの魔物に戻ってしまったか?

(ダンジョン)とは違う力を、度々感じたのう。

その影響を受けた可能性もある。

長生きしとるが、そのくらいしか分からん自分が恨めしい。

 

「オレっち、ちょっとゴブリン共を見てくる。」

 

もう我慢できない。

そんな思いが顔に出ている蜥蜴人(リド坊)

1匹で行って、何が出来る?

正気でないペパ坊が、話に応じるはずがあるまい。

最悪、殺し合いになるぞ。

お前さんが行くなら、他の面々も着いていくだろうし。

 

「私も行ク!」

 

「おいらも!」

 

「僕モダ!」

 

ほれみたことか。

古参の者達が注意しとるが、言う事きかんじゃろ。

本当に、やれやれじゃ。

暴走するぐらいなら、何人か行かせてやればいい。

そう言ったら、噛みついてきよったわ(文句いってきよったわ)

 

「ジャジャ、無責任ナ発言ハヤメロ。」

 

「だったら、お主が一緒に行けばいい。のう、石竜(グロス)よ。」

 

「………今、人間共ハ危険ダ。」

 

ダンジョンの異変で、冒険者達は殺気立っておる。

今後の事を考えれば、大人しくした方が賢明じゃろう。

しかし、このままリド坊達は、居ても立っても居られなくなる。

そっちの方が、危険かもしれんわい。

故に、ガス抜きが必要じゃ。

一応言っておくが、わしも行くのは反対じゃからな。

約束を決めて守るべし。

それが行く為の最低条件よ。

破ったら、2度と許可せぬ。

よいな?

 

「わかった!感謝するぜ、ジャジャ!」

 

「………イイダロウ。コチラカラノ条件ハ、オ前ガ着イテイク事ダ。」

 

喜ぶリド坊と渋い顔のグロス。

うん?

ちょっと待て。

今、わしに行けと言ったか?

 

「頼むぜ!人数は最小限で、オレっちとジャジャ。あと2人だな。」

 

「待たんか「ワタシガ、イク!オネガイ。」いいっ!?」

 

「………。」

 

ええい!

わしの言葉を遮るんじゃないよ、半人半蛇(ラウラ)

あと行きたいのは分かるが、戦影(オード坊)や。

喋れんお前さんは、態度で示さんかい!

 

「メンバーは決まりだな!」

 

「話を聞けえええぇっ!」

 

わしの叫び声が、隠れ里に空しく響いた。

おのれ、グロス。

自分が行けばよかろうに、面倒事を押し付けよって。

許すまじ!

 

 

 

【ギルド職員ケビンパート】

くそおおおおおおおおおおおおっ!

エイナが、ゴブリンに連れ去られた。

守れなかった!

 

「がはっ。」

 

口から血を吐いた。

脇腹に短剣が突き刺さっている。

血が止まらない。

歩く度に、激痛が走る。

ここまでか…。

エリアス、僕の可愛い奥さん。

ごめんよ。

産まれてくる最愛の我が子を見れない。

 

「うぐっ。」

 

地面に倒れた。

僕を庇って、大怪我したテリアは大丈夫だろか?

倉庫に隠してきたけど、不安だ。

どうか見つかりませんように。

ああ…意識が…薄れて…。

 

「大変だ!痛いですけど、我慢して下さいね。」

 

誰かが僕に声をかける。

痛い?我慢?

ぐっ、ぐああああああああっ!?

短剣を抜かれた。

そして、液体をぶっかけられた。

何するんだ…って、あれ?

 

「痛くない!?」

 

「良かった!ポーションを使ったので、もう傷は大丈夫です。」

 

そう言ったのは、白髪で赤目の少年。

知っている子だ。

ヘスティア・ファミリア所属で、エイナが担当している冒険者。

ベル・クラネルだ。

奇跡だと思った。

僕は彼の手を掴んで、お願いした。

 

「頼む!エイナを助けてくれ!」

 

事情を話し、連れ去られた方角を教えた。

任せて下さいと頷き、ベル・クラネルは疾走した。

は、早い!

もう姿が見えなくなった。

冒険者は…いや、彼が凄いのか?

 

「ははは、情けない。」

 

今日は助けられてばかりだ。

立ち上がり、我が家に向かって急ぐ。

こんな僕だけど、奥さんと産まれてくる子ぐらいは、守りたい。

 

 

 

【イシュタル・ファミリアの団員キリシパート】

いい男が捕まらなくて、不貞寝していたら、この騒ぎだよ。

歓楽街に、お帰り頂きたいお客様(ゴブリン)が大勢押し寄せてきた。

丁度良かったかも?

憂さ晴らしに、愛して(殺して)あげる。

踊るように剣を振るえば、血肉が舞い。

御ひねりの代わりに、濃い血の匂いが充満する。

くふ、楽しい。

快楽とは違った高揚感が、心と身体に広がる。

 

「「「きゃああああっ!」」」

 

恩恵のない娼婦達が、悲鳴を上げながら逃げている。

おっと、守らなきゃ。

死人が出たり建物が壊されると、後で主神様(イシュタル様)が怒る。

姉御(アイシャ)にも怒られるだろうし。

あっ、きたきた。

他の戦闘娼婦(バーベラ)達も、お客様の対応に(ゴブリン皆殺しに)

 

「ゲゲゲゲゲゲッ!」

 

うげっ、団長(フリュネ)の笑い声だ。

お客様(ゴブリン)、良かったですね。

当店きっての美女が(本人が思っているだけ)、お相手して下さいますよー。

はあー、溜息をつく。

ちょっと前まで、そこそこいい男なら捕まえられたのに。

とある獣人が、処女を卒業したら…。

凄い色気が出て、大人気になった。

そこから歓楽街は、獣人人気(ケモノブーム)が来ている。

うぬぬ。

猫耳バンドでも、付けてみようかなー。

 

 

 

【ヘルメス・ファミリアの団員バーノパート】

報酬が良いからって、勇者(ブレイバー)の依頼を受けるんじゃなかった。

いや、断っても無駄か。

きっと主神様(ヘルメス様)が勝手に受けていた。

 

「あ、あの、私達…。」

 

「大丈夫、安心して。必ず地上まで、俺達が守るから。」

 

不安げな女性達に、笑顔で対応した。

頭の中は、絶賛混乱中だけどな!

依頼が終わり、ダンジョンから地上へ帰還する途中。

数名の女性を保護した。

ゴブリンに運ばれていた女性を助けたり、倒れていた女性を発見したり。

彼女達が冒険者なら問題なかった。

違ったんだよ。

全員が、ただの一般人。

オラリオに住む一般市民だ。

なんで、ダンジョンにいるの!?

と、思わず叫びそうになった。

事情を聞けば、ゴブリンに襲われ攫われたとか。

………おお、ジーザス。

ダンジョンの異変だけでも、クソ面倒なのに。

オラリオにゴブリン共の襲撃?

誰か嘘だと言ってくれ。

 

「バーノ、魔物の気配がする。」

 

「OK、ルルネ。俺が倒してくるから、彼女達を頼む。」

 

先行して、魔物を確認する。

コボルト共が3匹。

ゴブリン共じゃなくて安心した。

最近あいつら、妙に厭らしい手を使ってくる。

知恵をつけたと言うべきか。

油断すると、レベル2ですら危ない。

 

「はああぁっ!」

 

「「「グギャアアッ!?」」」

 

コボルト共を瞬時に倒す。

戦闘音で、ゴブリン共を引き寄せたくない。

隠れているルルネ達に、進むぞと合図する。

さあ、俺。

気を引き締めろよ。

彼女達を地上まで、無事に送り届けるぞ!

 

 

 

【ディオニュソス・ファミリアの団員ジッカロパート】

全員の準備が出来た。

主神のディオニュソス様に報告しなければ!

忙しい副団長のアウラさんに頼まれた。

本当は団長のフィルヴィスさんが報告に行くのだが…。

さっきから姿が見えない。

ディオニュソス様の所に居るのか?

急いで向かうと…バルコニーの方から笑い声が聞こえた。

 

「くひ、くひひひひひっ!」

 

だ、誰だ?

いや、この声は…ディオニュソス様?

 

「なんと素晴らしい狂乱(オルギア)!」

 

そっと覗けば、神が嗤っていた。

燃え盛る建物を見て、泣き叫び人々を見て、ゴブリン達の暴れる姿を見て。

 

「だが足りない!こんな程度では、私は満たされない!」

 

信じられない。

あの優しいディオニュソス様が、オラリオの惨状に喜んでいる。

 

「もっともっと大きな!壮大な!愛しき狂乱の宴が見たいのだ!」

 

何を…何を言っているのだ!?

思考が定まらない。

驚きと恐怖で、足元が覚束ない。

 

「まあいい。私の計画が実れば、極上の葡萄酒にも勝る狂乱が見れる。」

 

計画だと?

やばい、やばい、やばい、やばいぞ!

ディオニュソス様は、とんでもない事をしようとしている。

 

「しかし、いい気味だ。ウラノスの老害め!」

 

なっ!?

ウラノス様を老害呼ばわり!?

ギルドの活動に不満を持っているのは、聞いた事がある。

でも、敵意を通り越して、殺意を抱いてないか!?

 

「祈祷の効果がなかったのは、ダンジョンの異変のせい?」

 

地上に出て来れないはずの魔物。

それが今、覆されている。

ダンジョンの異変が原因なら、大変な事だぞ!

 

「ふっ、私には関係ない事だ。今までの憂さ晴らしに、たっぷりと糾弾してやろう!」

 

俺の心の中で、大事な物が砕けた。

ディオニュソス様…貴方は…邪神だ。

 

「早く誰かに知らせ、がふっ!?」

 

喉に剣が突き刺さった。

うぐお…馬鹿な…誰の気配も感じ…なかった…の…に。

相手の顔は…団…長…っ!?

 

「秘密を知られたからには、生かしておけない。」

 

 

 

【フレイヤパート】

ふと目が覚めた。

はだけた寝間着をそのままに、ベッドから降りる。

葡萄酒をグラスに注ぎ、窓からオラリオを見下ろした。

ここはバベルの塔の上層階。

深夜でも灯りは消えず、子供達の営みが見えた。

いつもと変わらない光景。

今頃あの子は、何をしているかしら?

普通に考えれば、寝ているのだろうけど。

ふふふ。

私の夢を見ていたら嬉しい。

あら?

地上から騒ぎが聞こえてくる。

次に、魔物(ゴブリン)が見えた。

まさか…ダンジョンから魔物が出てきた?

ウラノスの祈祷を破って?

興味深く観察していたら、アレを見てしまった。

王冠と赤マントを装備した一回り大きな魔物(ゴブリンキング)

 

「気持ち悪い。」

 

真っ白なあの子と、正反対の真っ黒な魂。

それだけなら、なんとも思わなかった。

禍々しい瘴気(ナニカ)を放っていた。

 

「駄目ね。」

 

見ていたら吐き気が止まらない。

下界に…いいえ、どこにも存在してはイケナイ存在。

あの子と会わせるのは許されない。

 

「オッタル。」

 

「はっ、ここに。」

 

「魔物を一匹残らず排除しなさい。特に、あの魔物は。」

 

「仰せのままに。」

 

 

 

 

 

陽が昇った頃に、ゴブリン達は残らず倒された。

消火活動も終わり、本格的な救助活動が始まる。

英雄達の活躍で、オラリオの危機は防がれた。

しかし、大きな傷跡が残った。

大切な人を失った者、住む家を失った者、重傷を負った者。

被害を受けなかった者達も、魔物の地上侵攻に慄いた。

またあるのではないかと。

次は我が身ではないかと。

ダンジョンの異変から始まった暗雲は、更に濃くなっていた…。

 

 

 

 

 

 




リリルカ・アーデの大ピンチ!

「ベル様は、どこに!?」

「天に向かって昇る…巨大な光の柱。」

「神の強制送還!?」

「あ、あれ?」

「恩恵が消えて…まさか、ソーマ様が!?」

「ひいっ!?」

「ゴブリン達に囲まれた状態で、そんなあああああぁっ!?」

という事があった、リリちゃんですが…
ヴェルフや他の冒険者がいたので、無事でした。
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