ダンジョンに、ダンジョンマスターが現れた! 作:ずぼらさん
蹂躙される迷宮都市オラリオ。
我が物顔で暴れるゴブリン達は気がつかない。
反撃の牙が、己の首に突き刺さる寸前だという事に。
人々の絶望が、希望に変わる。
英雄達が来た!
【ロキ・ファミリアの団員ニーテルパート】
はうー、眠れません。
気分転換に散歩でもしようかなー。
ボクは、ニーテル。
フィン団長に憧れて、ロキ・ファミリアへ入団したパルゥムです。
冒険者になって6年。
レベル2。
槍術は、そこそこ。
魔法も、そこそこ。
平凡でした。
現実は甘くなく、フィン団長のような英雄には、
これがボクの限界。
ダンジョンの異変が起きてからは、足手まといになる事も増えて…。
一時は冒険者を辞めようかと考えました。
いえ、ラウルさんやアキさん達の励ましがなかったら、辞めていました。
歯を食いしばって頑張って、数日前にランクアップ。
レベル3になりました!
おまけに、
嬉しかったです。
フィン団長も喜んでくれて、ついはしゃぎ…それが失敗でした。
ティオネさんの視線が痛いです。
怖いです。
逃げたいです。
ボクは、
そして、追い撃ちのような
はい?
罠感知の効果を、フィン団長と確かめて来いと?
はひーっ!?
凄まじい殺気が!?
ティオネさん、違うんです。
誤解です。
命令なんです。
ボクは本当に、
ううっ、
フラフラと中庭の訓練場に行くと、先客が居ました。
「フィン団長!?」
「ニーテル、君も眠れないのかい?」
座って話そうと誘われ、一緒に訓練場の
勿論、フィン団長とは少し離れて。
ティオネさんに見つかったら、
「はあーーー。」
深い深い溜息を吐く、フィン団長。
酷くお疲れのご様子。
多分、ギルドのせいです。
ダンジョンの異変を調査して欲しい。
そんな依頼がありました。
他のファミリアも調査していますが、原因は不明のままです。
更にフィン団長を苦しめている存在があります。
BL本と呼ばれている書物です。
えーと、その…だ、男性同士の絡みを書いた本です!
登場する
特に被害を受けているのが、フィン団長です。
おいたわしや。
えっ?
常備している胃薬をくれんですか?
ありがとうございます!
胃が助かります。
お礼を言い、ついでに気になっている事を聞きました。
「親指、どうしたんですか?」
さっきからずっと、握ったり摩っています。
「夜になってから疼くんだ。段々強くなっていてね。」
疼く?
凄く嫌な予感がします。
だって、フィン団長の親指が疼いた時は…。
「魔物だあああああああああああぁっ!」
魔物!?
街の中に!?
「ニーテル!全員起こせ!」
「は、はいっ!」
ボクも急がなきゃ!
オラリオで何か、とんでもない事が起きようとしていました。
【ゴブリンキングパート】
アレハ!?
冒険者共ガ、塔ニ向カッテ進ンデイル。
配下共ガ手モ足モ出ナイ。
俺ニハ分カル。
冒険者ノ中ニ、化物ガ2人イル。
ドワーフノ爺ト人間ノ小娘。
カ、勝テナイ。
戦ッタラ瞬殺サレテシマウ程ノ実力差。
ダンジョンノ出入口ヲ封鎖スルツモリカ?
不味イナ。
「オイ!」
「
「撤退スル。急ゲ。近クニイル奴ラニ知ラセロ。」
「
「聞コエナカッタカ?」
「
「…馬鹿ガ。」
口答エシタ配下ノ頭ヲ掴ンデ、地面ニ叩キツケタ。
飛ビ散ッタ血肉ニ、他ノ配下共ガ怯エル。
「モウ1度ダケ言ウ。撤退ダ。」
「「「「「
ダンジョン・リザードニ乗リ、全力デダンジョンノ出入口ニ戻ル。
先ニ、アノ化物共ガ着イタラ、オシマイダ。
少々物足リナイガ、十分ナ成果ハ出タ。
苗床モ大量ダ。
更ニ数ヲ増ヤシ、俺ガ強クナッテカラ、再度侵攻スレバイイ。
「
「捨テテイク。」
手遅レダ。
アイツラハ全テ倒サレルダロウ。
残サレタ使イ道ハ、精々足止メクライ。
アトハ巣ニ戻ルマデノ、時間稼ギダ。
「ヨシ、間ニ合ッ、ウオォッ!?」
塔ノ出入口ニ到着シタ同ニ、背後カラ凄マジイ悪寒ヲ感ジタ。
迷ワズニ、ダンジョンノ出入口ニ飛ビ込ンダ。
後ロニイタ配下共ハ来ナイ。
冷汗ガ止マラナイ。
「危ナカッタ。アト1歩遅カッタラ俺モ…。」
短剣ヲ2本トモ壁ニ突キ立テ、削リナガラ落チル。
途中デ2本トモ折レテシマッタガ、上手ク減速シタ。
身体ニ、ダメージハナイ。
ダンジョンニ帰ッテ来タゾ!
「イヤ…マダ安心デキナイナ。」
俺ハ急イデ、巣ニ向カッテ走ッタ。
【ギルド職員テリアパート】
………あれ?
身体が揺れている?
もうちょっと振動を抑えて欲しい。
あちこち痛いから。
痛い?
いつ怪我したんだっけ?
少し考えて、私は最悪な記憶を思い出した。
ゴブリンの襲撃。
信じられなかった。
ダンジョンでなく、オラリオの郊外でもなく、ギルドでだよ?
逃げるのに必死だった。
途中で、ミィシャと逸れてしまい、それから…。
同僚のケビンを庇った。
我ながら無茶をしたと思う。
おかげさまで、身体に何発も受けた。
その後から記憶は途切れている。
生きているだけでも、運が良かったかも。
ケビンは結婚して、奥さんが妊娠中。
死なせたら駄目だよねー。
一緒にいたエイナは無事かな?
ミィシャと合流していたら、いいのだけど。
「………ゼクス。」
こんな事になるなら、ちゃんと返事しておくべきだった。
吃驚したよね。
人生で初めての経験。
同性に言われた事は、…
年下で可愛い後輩。
嫌いじゃない。
むしろ、好感度は高い。
恥ずかしくて、返事せずに逃げたけど。
………私、ヘタレだわ。
彼もギルドに居た。
どうか死なないで、生きて欲しい。
「テリア先輩、気がつきましたか?」
「ふえっ!?」
目を開けると、ゼクスの顔が近くにあった。
えええっ!?
状況を確認すると、お姫様抱っこされてました。
「ゼ、ゼクス「先輩、静かに」むぐっ。」
口を閉じた。
簡単に説明を聞くと、私は倉庫の中に隠されていて、ゼクスが偶然発見。
救助を求めて、ギルドから外へ移動中らしい。
多分私を隠したのは、ケビンとエイナ。
気を失った負傷者を連れて行くより、隠した方が安全と判断したのね。
よく見ると、ゼクスはボロボロだった。
大きな怪我は無いものの、服は汚れて破れている。
息が荒く、かなり疲労していた。
きっと彼も、大変な目に遭っていたはず。
無事で良かった。
でも、このままじゃいけない。
閉じた口を開こうとしたら…。
「絶対に先輩を離しません。死んでも離しません。」
「なっ!」
「生きて、告白の答えを聞きたいですし。」
「………馬鹿。」
子犬みたいだった後輩の癖に。
今は頼りになる異性だった。
「よし、外に出れた。先輩、もう少しの辛抱です。」
「ゼクス待って!ゴブリンが!」
すぐ近くに、短剣を持ったゴブリン達がいた。
こちらに気がつき、向かって来る!
疲労しているゼクスと動けない私。
絶体絶命の危機。
お願い!
どうか彼だけでも助けて!
そう願った時、風が吹き荒れた。
「もう大丈夫…だよ。」
ゴブリン達は斬り倒され、美しい女性が立っていた。
ロキ・ファミリア所属の
剣姫アイズ・ヴァレンシュタイン。
「た、助かったー。」
「最強の救助が来ましたね、先輩。」
本当にね。
剣姫の事は、よく知っている。
有名なのもあるけど、彼女の冒険者登録をしたのは、私だから。
あの小さい女の子が、ここまで立派になるとは。
うん、
しみじみしていた私は聞こえなかった。
バベルの塔の中を覗き、呟いた彼女の言葉を。
「あのゴブリンは…居ない…見失った。」
【タルウィ・ファミリアの団長メビアパート】
斬って、踏み潰して、また斬った。
突如オラリオに現れたゴブリンの大群。
ダンジョンの異変といい、厄介な事ばかり起こるなー。
………まあ、厄介な存在は身近にいるけど。
私達の
自分の作った
それが最高の喜びと、恍惚な表情で語っていた。
うん、下界の子供達には迷惑極まりない。
あと金儲けも大好き。
表向きは化粧品をメインに、アクセサリー等の装飾品も担う商業系ファミリア。
裏の顔は、毒や危険物を販売する犯罪系ファミリア。
あー、やだやだ。
もう
入団当初は知らなかったものの、もう引き返す事は出来ない。
数えきれない程、犯罪の手伝いをした。
それに…。
団員の大半が、
はあーーー、私もそうだし。
「メビア、あっちから逃げてきた人達を助けて。ほら、急いで急いで。」
「はいはい。主神様は危ないから、隠れていてよー。」
「護衛も頑張れ。」
「………はーい。」
主神様は、本当に眷属使いが荒い。
仕事優先で、よく睡眠時間を削られる。
最近は、ダンジョンへ素材取りに行かされたり、新薬の実験体にされる事が多い。
邪神ではないかと思う。
「大丈夫ですか!こちらへ避難を!」
「タルウィ・ファミリアだ!た、助かった!ありがとうございます!」
ゴブリン討伐と人々の救助。
あははは。
そんなわけ、ないない。
裏の顔を隠す為に、普段から善神の振りをしているだけ。
一緒になって善人の振りをするのは、正直疲れる。
「主神様。」
「なんだい?」
「
「ああ、
うわー。
笑顔で言ったよ、主神様は。
こんな大変な時に、裏の顔の仕事をさせるなんて…。
顔に出ていたのか。
楽しそうに理由を話してくれた。
「こんな時だからこそだよ。不幸が起きても、誰も気にしないだろ?」
「………ダンジョンとは違いますよ。」
「心配性だな、メビアは。ゴブリンも弓を使っていたし、大丈夫さ。」
「………さいですか。」
もう好きにして。
何を言っても、主神様は聞いてくれないし。
副団長が、どこで仕事しているか分からない。
今更止めようがなかった。
「さあ、今日は
「「「「ゴ、ゴブリン共があああああぁぁっ!」」」」
睡眠時間が無くなった事で、団員達の怒りが爆発した。
矛先は全て、ゴブリン達へ。
ごめんね。
でも、貴方達が悪い。
私達の睡眠を妨害したから…。
【
やれやれじゃ。
地上で良からぬ事が起こったらしい。
しかし、驚いたのう。
ゴブリン達を統率する王のような存在に、なっていたとは…。
フェルズも本人を見るまで、気づかなかったそうじゃ。
もはや正気では…ないか。
異端児から、もとの魔物に戻ってしまったか?
その影響を受けた可能性もある。
長生きしとるが、そのくらいしか分からん自分が恨めしい。
「オレっち、ちょっとゴブリン共を見てくる。」
もう我慢できない。
そんな思いが顔に出ている
1匹で行って、何が出来る?
正気でないペパ坊が、話に応じるはずがあるまい。
最悪、殺し合いになるぞ。
お前さんが行くなら、他の面々も着いていくだろうし。
「私も行ク!」
「おいらも!」
「僕モダ!」
ほれみたことか。
古参の者達が注意しとるが、言う事きかんじゃろ。
本当に、やれやれじゃ。
暴走するぐらいなら、何人か行かせてやればいい。
そう言ったら、
「ジャジャ、無責任ナ発言ハヤメロ。」
「だったら、お主が一緒に行けばいい。のう、
「………今、人間共ハ危険ダ。」
ダンジョンの異変で、冒険者達は殺気立っておる。
今後の事を考えれば、大人しくした方が賢明じゃろう。
しかし、このままリド坊達は、居ても立っても居られなくなる。
そっちの方が、危険かもしれんわい。
故に、ガス抜きが必要じゃ。
一応言っておくが、わしも行くのは反対じゃからな。
約束を決めて守るべし。
それが行く為の最低条件よ。
破ったら、2度と許可せぬ。
よいな?
「わかった!感謝するぜ、ジャジャ!」
「………イイダロウ。コチラカラノ条件ハ、オ前ガ着イテイク事ダ。」
喜ぶリド坊と渋い顔のグロス。
うん?
ちょっと待て。
今、わしに行けと言ったか?
「頼むぜ!人数は最小限で、オレっちとジャジャ。あと2人だな。」
「待たんか「ワタシガ、イク!オネガイ。」いいっ!?」
「………。」
ええい!
わしの言葉を遮るんじゃないよ、
あと行きたいのは分かるが、
喋れんお前さんは、態度で示さんかい!
「メンバーは決まりだな!」
「話を聞けえええぇっ!」
わしの叫び声が、隠れ里に空しく響いた。
おのれ、グロス。
自分が行けばよかろうに、面倒事を押し付けよって。
許すまじ!
【ギルド職員ケビンパート】
くそおおおおおおおおおおおおっ!
エイナが、ゴブリンに連れ去られた。
守れなかった!
「がはっ。」
口から血を吐いた。
脇腹に短剣が突き刺さっている。
血が止まらない。
歩く度に、激痛が走る。
ここまでか…。
エリアス、僕の可愛い奥さん。
ごめんよ。
産まれてくる最愛の我が子を見れない。
「うぐっ。」
地面に倒れた。
僕を庇って、大怪我したテリアは大丈夫だろか?
倉庫に隠してきたけど、不安だ。
どうか見つかりませんように。
ああ…意識が…薄れて…。
「大変だ!痛いですけど、我慢して下さいね。」
誰かが僕に声をかける。
痛い?我慢?
ぐっ、ぐああああああああっ!?
短剣を抜かれた。
そして、液体をぶっかけられた。
何するんだ…って、あれ?
「痛くない!?」
「良かった!ポーションを使ったので、もう傷は大丈夫です。」
そう言ったのは、白髪で赤目の少年。
知っている子だ。
ヘスティア・ファミリア所属で、エイナが担当している冒険者。
ベル・クラネルだ。
奇跡だと思った。
僕は彼の手を掴んで、お願いした。
「頼む!エイナを助けてくれ!」
事情を話し、連れ去られた方角を教えた。
任せて下さいと頷き、ベル・クラネルは疾走した。
は、早い!
もう姿が見えなくなった。
冒険者は…いや、彼が凄いのか?
「ははは、情けない。」
今日は助けられてばかりだ。
立ち上がり、我が家に向かって急ぐ。
こんな僕だけど、奥さんと産まれてくる子ぐらいは、守りたい。
【イシュタル・ファミリアの団員キリシパート】
いい男が捕まらなくて、不貞寝していたら、この騒ぎだよ。
歓楽街に、お帰り頂きたい
丁度良かったかも?
憂さ晴らしに、
踊るように剣を振るえば、血肉が舞い。
御ひねりの代わりに、濃い血の匂いが充満する。
くふ、楽しい。
快楽とは違った高揚感が、心と身体に広がる。
「「「きゃああああっ!」」」
恩恵のない娼婦達が、悲鳴を上げながら逃げている。
おっと、守らなきゃ。
死人が出たり建物が壊されると、後で
あっ、きたきた。
他の
「ゲゲゲゲゲゲッ!」
うげっ、
はあー、溜息をつく。
ちょっと前まで、そこそこいい男なら捕まえられたのに。
とある獣人が、処女を卒業したら…。
凄い色気が出て、大人気になった。
そこから歓楽街は、
うぬぬ。
猫耳バンドでも、付けてみようかなー。
【ヘルメス・ファミリアの団員バーノパート】
報酬が良いからって、
いや、断っても無駄か。
きっと
「あ、あの、私達…。」
「大丈夫、安心して。必ず地上まで、俺達が守るから。」
不安げな女性達に、笑顔で対応した。
頭の中は、絶賛混乱中だけどな!
依頼が終わり、ダンジョンから地上へ帰還する途中。
数名の女性を保護した。
ゴブリンに運ばれていた女性を助けたり、倒れていた女性を発見したり。
彼女達が冒険者なら問題なかった。
違ったんだよ。
全員が、ただの一般人。
オラリオに住む一般市民だ。
なんで、ダンジョンにいるの!?
と、思わず叫びそうになった。
事情を聞けば、ゴブリンに襲われ攫われたとか。
………おお、ジーザス。
ダンジョンの異変だけでも、クソ面倒なのに。
オラリオにゴブリン共の襲撃?
誰か嘘だと言ってくれ。
「バーノ、魔物の気配がする。」
「OK、ルルネ。俺が倒してくるから、彼女達を頼む。」
先行して、魔物を確認する。
コボルト共が3匹。
ゴブリン共じゃなくて安心した。
最近あいつら、妙に厭らしい手を使ってくる。
知恵をつけたと言うべきか。
油断すると、レベル2ですら危ない。
「はああぁっ!」
「「「グギャアアッ!?」」」
コボルト共を瞬時に倒す。
戦闘音で、ゴブリン共を引き寄せたくない。
隠れているルルネ達に、進むぞと合図する。
さあ、俺。
気を引き締めろよ。
彼女達を地上まで、無事に送り届けるぞ!
【ディオニュソス・ファミリアの団員ジッカロパート】
全員の準備が出来た。
主神のディオニュソス様に報告しなければ!
忙しい副団長のアウラさんに頼まれた。
本当は団長のフィルヴィスさんが報告に行くのだが…。
さっきから姿が見えない。
ディオニュソス様の所に居るのか?
急いで向かうと…バルコニーの方から笑い声が聞こえた。
「くひ、くひひひひひっ!」
だ、誰だ?
いや、この声は…ディオニュソス様?
「なんと素晴らしい
そっと覗けば、神が嗤っていた。
燃え盛る建物を見て、泣き叫び人々を見て、ゴブリン達の暴れる姿を見て。
「だが足りない!こんな程度では、私は満たされない!」
信じられない。
あの優しいディオニュソス様が、オラリオの惨状に喜んでいる。
「もっともっと大きな!壮大な!愛しき狂乱の宴が見たいのだ!」
何を…何を言っているのだ!?
思考が定まらない。
驚きと恐怖で、足元が覚束ない。
「まあいい。私の計画が実れば、極上の葡萄酒にも勝る狂乱が見れる。」
計画だと?
やばい、やばい、やばい、やばいぞ!
ディオニュソス様は、とんでもない事をしようとしている。
「しかし、いい気味だ。ウラノスの老害め!」
なっ!?
ウラノス様を老害呼ばわり!?
ギルドの活動に不満を持っているのは、聞いた事がある。
でも、敵意を通り越して、殺意を抱いてないか!?
「祈祷の効果がなかったのは、ダンジョンの異変のせい?」
地上に出て来れないはずの魔物。
それが今、覆されている。
ダンジョンの異変が原因なら、大変な事だぞ!
「ふっ、私には関係ない事だ。今までの憂さ晴らしに、たっぷりと糾弾してやろう!」
俺の心の中で、大事な物が砕けた。
ディオニュソス様…貴方は…邪神だ。
「早く誰かに知らせ、がふっ!?」
喉に剣が突き刺さった。
うぐお…馬鹿な…誰の気配も感じ…なかった…の…に。
相手の顔は…団…長…っ!?
「秘密を知られたからには、生かしておけない。」
【フレイヤパート】
ふと目が覚めた。
はだけた寝間着をそのままに、ベッドから降りる。
葡萄酒をグラスに注ぎ、窓からオラリオを見下ろした。
ここはバベルの塔の上層階。
深夜でも灯りは消えず、子供達の営みが見えた。
いつもと変わらない光景。
今頃あの子は、何をしているかしら?
普通に考えれば、寝ているのだろうけど。
ふふふ。
私の夢を見ていたら嬉しい。
あら?
地上から騒ぎが聞こえてくる。
次に、
まさか…ダンジョンから魔物が出てきた?
ウラノスの祈祷を破って?
興味深く観察していたら、アレを見てしまった。
王冠と赤マントを装備した
「気持ち悪い。」
真っ白なあの子と、正反対の真っ黒な魂。
それだけなら、なんとも思わなかった。
禍々しい
「駄目ね。」
見ていたら吐き気が止まらない。
下界に…いいえ、どこにも存在してはイケナイ存在。
あの子と会わせるのは許されない。
「オッタル。」
「はっ、ここに。」
「魔物を一匹残らず排除しなさい。特に、あの魔物は。」
「仰せのままに。」
陽が昇った頃に、ゴブリン達は残らず倒された。
消火活動も終わり、本格的な救助活動が始まる。
英雄達の活躍で、オラリオの危機は防がれた。
しかし、大きな傷跡が残った。
大切な人を失った者、住む家を失った者、重傷を負った者。
被害を受けなかった者達も、魔物の地上侵攻に慄いた。
またあるのではないかと。
次は我が身ではないかと。
ダンジョンの異変から始まった暗雲は、更に濃くなっていた…。
リリルカ・アーデの大ピンチ!
「ベル様は、どこに!?」
「天に向かって昇る…巨大な光の柱。」
「神の強制送還!?」
「あ、あれ?」
「恩恵が消えて…まさか、ソーマ様が!?」
「ひいっ!?」
「ゴブリン達に囲まれた状態で、そんなあああああぁっ!?」
という事があった、リリちゃんですが…
ヴェルフや他の冒険者がいたので、無事でした。