ダンジョンに、ダンジョンマスターが現れた!   作:ずぼらさん

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※運命が変わった冒険者達の話その6「夜の花」を、一部修正しました(=゚ω゚)ノ

11月11日から出張なります。
25日までとなっており、更新は遅くなります。
申し訳ないです(≧◇≦)








頑張るギルド職員達その1

【テリアパート】

ずっと後悔していた。

あの時。

逃げている時に、ミィシャと逸れていなければ…。

 

「はあー。」

 

私は大きな溜息を吐く。

エイナと一緒に、ミィシャの所へ来た。

ダンジョンからの魔物侵攻で、ゴブリンに攫われた彼女は…。

 

「はあーー。」

 

予感はしていた。

行方不明になった女性の冒険者達。

恩恵を与えた神々との繋がりで、生きている事は分かっていた。

ゴブリンに捕まった目撃情報も、多数あった。

何故、殺されなかったのか。

………勇者(ブレイバー)の報告を聞いて、ゾッとした。

ゴブリンの子を孕ませる為の苗床。

ダンジョンから産まれるゴブリンより、強いゴブリンが産まれる。

ギルドに届けられた、魔法を使うゴブリンの情報。

あのゴブリンは、女冒険者達から産まれたのだ。

ミィシャも、ゴブリンの毒牙に。

孕まなかったのは幸い…いいえ、幸いなんかじゃない。

身体を汚され、心に消えない傷を負った。

彼女だけじゃない。

女性の冒険者達や攫われた女性達も。

 

「はあーーー。」

 

救出されてからミィシャは、ずっと部屋に閉じこもっていた。

何度か会いに行ったけど、会うのを拒絶された。

理由は分からない。

でも、心配で堪らなかった。

だからエイナと協力して、強引に会った。

 

「ミィシャ。」

 

久しぶりの彼女は、眠れてないのか。

目の下のクマが酷かった。

声をかけても返事はなく、視線すら合わせてくれない。

元気を出して欲しくて、色々と言葉をかけたけど。

それが、ミィシャを刺激してしまった。

 

「ほっといて!私の苦しみは、エイナや先輩には、分からないよ!」

 

ああ、失敗した。

憎しみに歪んだ表情で叫ばれた。

もっと時間を置くべきだったかもしれない。

もっと彼女の気持ちを考慮べきだったかもしれない。

もっと…もっと…もっと…。

 

「どうして私だけ!あんな目に!」

 

酷い言い方をすれば、運が悪かった。

ミィシャだけじゃない。

攫われた同僚は他にもいるし、男性職員は大勢死んだ。

ゼクスより先に、ゴブリンが見つけていたら、私も同じ運命を辿っていた。

だけど、納得できない…よね。

 

「………2人が無事で嬉しかったの。良かったって、ほっとしたの。」

 

「ミ、ミィシャ。」

 

エイナが手を伸ばすけど、ミィシャは振り払った。

憎しみに歪んだ表情は消え、泣いていた。

 

「でも、恨んでしまう私がいるの。醜い私が叫ぶの!許せないって!」

 

ミィシャの慟哭は、涙と同じように止まらなかった。

 

「そんな自分が嫌い!大嫌い!もう…楽になりたいよ…。」

 

「ミィシャ!」

 

泣き崩れた彼女を、エイナが抱きしめた。

 

「ごめんね、ごめんね、ミィシャ。」

 

私も抱きしめて、3人で泣いた。

無力な自分が悔しい。

こんなに苦しんでいるのに。

何も出来ないなんて!

 

 

 

 

 

【ゼクスパート】

先輩は大丈夫かな。

ミィシャのお見舞いに、エイナと一緒に行った。

ずっと会う事を拒否されている。

今回は会えるといいけど。

 

「さて、仕事仕事!」

 

魔物の侵攻で、1番被害が大きかったギルド。

同僚を沢山失った。

もう会えない人達が多過ぎる。

思い出す度に、胸が締めつけられた。

………俺だけじゃないか。

 

「みんな、同じだ。」

 

悲しんでいる暇は無い。

少なくとも今は。

ギルドは人手不足で忙しい。

職員の募集をしているけど、どれだけ入ってくれるか。

不安だ。

 

「あっ、ハオルタさん!ご苦労様です!」

 

「よっ、見張りに来たぜ。」

 

「皆さんも、宜しくお願いします!」

 

冒険者のハオルタさん達に頭を下げる。

バベルの塔の1階中心部にある広間(ホール)

地上とダンジョンを繋ぐ場所だ。

ここは各ファミリアが、交代で見張る事に決まった。

今日の担当は、ガネーシャ・ファミリア。

凄く安心する。

ギルド職員達も、オラリオの人々も。

もう地上は、安全でなくなった。

強い守り手が求められる。

 

「そういえば、恩恵の話はどうなった?」

 

「えーと、無しになりました。ウラノス様は中立を守りたいって。」

 

「ありゃま、残念だったな。」

 

ギルド職員に恩恵を授けては?

そんな話が持ち上がった。

魔物に襲撃されても対処できる上、身を守れるから。

でも、ウラノス様は認めなかった。

批判はあったけど、なんとなく分かる気がする。

ギルドはあくまで、ダンジョンが生み出す富を管理する組織。

公平でなくては駄目だ。

ウラノス様が恩恵を与えれば、当然眷属となり、問題が発生してしまう。

ウラノス・ファミリアが、オラリオの富を支配していると。

今は良くても、中立は1度でも揺るげば、信頼が無くなる。

火種になりかねない。

それを危惧したのだと思う。

 

「ゼクス、こいつが仕掛けか?」

 

ハオルタさんの言葉に頷く。

恩恵の話は無くなったけど、何もしなかったわけじゃない。

広間(ホール)の大改造。

有事の際、出入口を完全に塞ぐ、大規模な仕掛け(巨大な蓋)を設置。

壁も強固に作り直された。

魔物を1匹たりとも、バベルの塔から出さない為に。

他にも、迎撃機能・緊急通信網・職員避難経路と、色々できている。

ギルド長代理のレッガス様は、金がー金がーっ!て、頭を抱えていたけど。

今月の給料…心配だな。

 

 

 

 

 

【レッガスパート】

胃が痛い。

胃薬を飲んで、投げ捨てたい書類に目を通す。

うん?

誰かが走って来る。

常日頃からギルド内では、走るな!と言っている。

怪我の恐れもあるし、大きな組織で働く者として、相応しい態度ではない。

エレガントでなくては。

とはいえ、今は注意している余裕がない。

多目にみるとも。

だから頼む。

厄介事を持ち込まないでくれ!

 

「レッガス様!また手紙が届いています。」

 

「………いつものか?」

 

「いつものです!」

 

ふっ、厄介事かああああああああっ!

職員の持って来た大量の手紙に、また胃が痛くなった。

胃薬を飲んだばかりなのに。

18階層、別名は迷宮の楽園(アンダー・リゾート)

そこへ行きたいという貴族や大商人達からの手紙だ。

自殺志願者共め!

ダンジョンは危険なのだぞ!

何故それが分からん!

異変が起きてからは、熟練の冒険者達ですら危うい。

これも全て、18階層で発見されたアレのせいか。

恐るべき効果を持った温泉。

どんな怪我や病気でも治してしまう。

ディアンケヒト・ファミリアの戦場の聖女(デア・セイント)も、吃驚の効果だ。

 

「ど、どうしましょうか?」

 

「置いといてくれ。」

 

「はい!」

 

見なかった事にして燃やしたい。

だが、今後の事を考えると無下に出来ない。

ギルドは人材不足もあるが、資金不足でもある。

魔物侵攻の傷跡は、多大な出費を余儀なくされた。

胃だけでなく、頭も痛い。

貴族や大商人達は大金を払うから、許可と斡旋を求めてきた。

ダンジョンに入る許可。

護衛としてファミリアの斡旋。

普段なら、お断りするが…。

問題が発生してしまった。

大金に目が眩んだ冒険者達(愚か者達)が、ダンジョンへ入った。

貴族を荷物の中へ隠して。

その結果は、貴族の死亡。

ふざけるなよおおおおおおおおぉっ!

 

「あの後、どれだけ大変だった事か!」

 

「レッガス様!?」

 

いかんいかん。

怒りのあまり、つい口にしてしまったか。

 

「すまない、何でもない。お茶を煎れてくれないか。熱いのを頼む。」

 

「すぐに!」

 

まあ許可は出してもいい。

何があってもギルドは一切責任を持ちません(死んでも自己責任だぞ!わかった、コラ!)

…という書類に、サインしてくれれば。

ただ斡旋が、非常に困る。

どのファミリアも、当たり前だが嫌がる。

18階層まで、恩恵のない者を護衛するのは至難。

自分の命を危険に晒す行為だ。

しかし、断り続ければ、また同じ問題が発生するだろう。

 

「レッガス様、お茶です!」

 

「ああ、ありがとう。」

 

はふー。

心身共に疲れた時は、熱いお茶が美味い。

現実逃避したいが、私はギルド長代理だ。

やるしかあるまい。

早急に、何か案を考えよう。

………ロイマン様。

貴方が生きていたら、どうしていただろうか?

 

 

 

 

 

【ルッツエパート】

苦情の報告と原因の対処を求めて、テアサナーレ氏がやってきた。

正直に言うと、知らんがな。

 

「うわー、エロっ。」

 

「ここで見ないで下さい!」

 

本を読んだら怒られた。

いやね、苦情内容を知る為にだよ。

悪気はないの。

BL本という男同士の絡みが、オラリオで広がっている。

正確には、広げようとしている団体がいた。

調査しているけど、尻尾を掴ませない。

かなり慎重に動いているみたいで。

百合本という女性同士の絡みも、同じくらい広がっている。

どちらも被害者(登場人物)は、有名な冒険者達。

 

「人気者は辛いね!」

 

あっ、ごめんなさい。

鈍器を振り上げないで。

でもさー。

うちらに言われても、対処は難しいのよ。

ロキ・ファミリアの凶狼(ローガ氏)と、フレイヤ・ファミリアの女神の戦車(フローメル氏)

一時この2人を中心に、犯人捜しをしたけど、捕まらなかった。

つまりね。

ギルドも、お手上げなのよ。

最近さー、色々と忙しいし。

 

「はいはい、受付の前で崩れ落ちないで。」

 

相手するの面倒なんで、もう帰ってくれません?

ぐえっ、マジすいません。

首絞めないで。

 

「真面目に、うちの意見を言うと…。」

 

この男と女の絡みが描いた本。

BL本と百合本を描いている団体と、別物だと思いますよ。

何度が回収された本を読んだけど、違う点が多々あるんで。

まあ一応、調査はしておきます。

当てにしないで下さいね。

場合によっては、ヘルメス・ファミリアに依頼します。

資料として、この本を渡しますので、御了承を。

えっ?駄目?

まあ登場人物が、テアサナーレ氏だもんね。

同じ女として、同情しますよ。

それにしても、ぷぷぷっ。

タイトルがうけるーw

『お医者様、胸が苦しいから診て欲しいの~淫乱聖女編~』って。

 

「………(怒)(ニコリ)

 

「ほわっ!?」

 

片手で顔面を掴まれた!?(これって、アイアンクロー!?)

笑ったの謝るから!

恩恵のないうちが、レベル2にされたら…。

いだだだたたたあああぁっ!

わ、割れるうーーーっ!

 

 

 

 

【ケビンパート】

昨日も今日も、ダンジョンの新たな異変報告が届く。

きっと明日もかな。

勇者(フィン)の活躍で、ゴブリンの強化種が倒された。

攫われていた女性達も救出された。

ダンジョンは以前とまで行かないけど、平穏を取り戻していた。

…はずだった。

それが、5日前から突如崩れた。

ゴブリンの強化種が、また産まれた!?

それとも別の原因が!?

 

「オラリオの平和は遠いなー。」

 

魔物の侵攻があった日。

妻のエリアスは無事で、最愛の我が子を産んだ。

可愛い女の子。

ニニアと僕が名付けた。

同僚(テリア)冒険者(ベル・クラネル)の助けがなかったら、会えなかった。

本当に感謝している。

助かった命で、家族を大切にする。

そして、ギルド職員として、冒険者達を支えよう!

 

「うん?ルッツエの悲鳴が聞こえたような…まあいいか。」

 

ギルド長代理(レッガス様)に渡す資料を、しっかりとまとめるぞ。

最初は、1階と12階層の異変。

抱きしめると、魔石になる熊のぬいぐるみ。

冒険者達にとって、危険のない楽な稼ぎだ。

記憶が、あやふやになるという報告がなければ…。

階層全体に降る桃色の雨。

その…エッチな気分(ムラムラ)が…止まらないらしい。

耐媚薬雨用の雨合羽も、効果が無かったとか。

前者は拾わないよう注意して、後者は新しい特殊装備と薬の開発を頼もう。

次は、ミノタウロスとアルミラージ。

斧を使わない代わりに、格闘術を使うようになった牛鬼。

信じられない回復力も備わったと、報告が届いている。

喋って盗んで逃げる一角兎。

何度見ても報告を疑ってしまう。

魔物が喋るはずがないし、魔法で下着や服を盗むって…。

有り得ないよ。

 

「えっ!?」

 

最後の報告書を見て驚いた。

イシュタル・ファミリアからだ。

怪物の宴(モンスター・パーティー)に遭遇の際、レナ・タリーが行方不明に。

彼女とは、何度か話した事がある。

アマゾネスの少女で、レベル2の冒険者。

無事だと良いのだけど、ゴブリンに捕まったら…。

 

「いや、大丈夫だ!」

 

悪い方向に考えるのは駄目だ。

捜索依頼か。

直ぐに手配しよう!

 

 

 

 

 

【シャーセリパート】

ギルド職員に採用されました!

家族には、危険だから止めろと言われましたが、反対を押し切りました。

魔物の侵攻。

あの晩の恐怖は、多分一生忘れません。

怖かったけど、生まれ故郷の為に、何か力になりたかった。

臆病な私には、冒険者は無理です。

だからこそ、ギルド職員に!

 

「新人、この手続きを頼む!」

 

「はーい!」

 

先輩に呼ばれ、渡された書類は…入院手続きですね。

タルウィ・ファミリアの治療施設へ。

凄いと思いました。

魔物に攫われた女性達を救いたい為に、自費で建設したそうです。

しかも、治療費は破格!

本来は化粧品をメインに扱う、生産系ファミリア。

それなのに、第二級冒険者(レベル3~4)の団員が多く、団長と副団長は第一級冒険者(レベル5)

上位ファミリアです!

魔物侵攻の時は、人々を助ける為に尽力。

復興中も、多大な支援をしていました。

人々からの人気は、ロキ・ファミリア並みです。

臆病じゃなかったら、タルウィ・ファミリアに入団していたかも。

確か金持ちの人を、18階層に連れて行く難しい依頼。

どのファミリアも断っていたけど…。

引き受けたのが、タルウィ・ファミリアです。

そういえば…。

会った事はないですが、先輩にあたるミィシャさん?

魔物に攫われた女性の1人で、治療施設に通い始めたとか。

 

「おーう、新人!こっちを手伝ってくれ!」

 

「は、はーい!」

 

ううっ、忙しいです。

でも、オラリオの為に頑張ります!

 


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