ダンジョンに、ダンジョンマスターが現れた! 作:ずぼらさん
あー、忙しい忙しい。
私が働いているのは、迷宮都市オラリオのギルド。
ダンジョンで異変が起きてから、てんてこまいだ。
ゴブリンの集団行動。
謎の爆発、落とし穴、石が張り付く現象、桃色の霧。
調べる事が多過ぎ。
勘弁してよー。
「痛っ!気をつけろ!」
「す、すいません!」
あら?
誰かと誰かが、曲がり角で、ぶつかったみたいね。
1人は口うるさい上司。
もう1人は…見た事ない顔ね。
ギルド職員の服を着ているから、新人さんってところかしら。
「大量に本を持って歩くからだ!今後注意しろよ!」
「申し訳ありませんでした!」
「まったく、最近の若い奴らは。」
「はあー、また失敗してしまった。」
ガクッと肩を落とし、落ちこんでいる新人。
しょうがない。
声をかけて、あげますか。
こう見えても私は、10年も勤務しているベテランなのだ。
「君、大丈夫?」
「えっ?は、はい!」
「私は、テリア。貴方は?」
「ゼクスです!3カ月前に、ギルドへ入りました!宜しくお願いします!」
緊張しちゃって、初々しいわね。
私も昔は、こんな感じだったわ。
「大変だったね。あの人、ちょっとした事でも口うるさいから。」
「い、いいえ!俺の前方不注意だったので!」
床に散らばっている大量の本は、魔物関係ばかり。
なるほど。
ゴブリンの集団行動を調べる為の資料ね。
ギルドにある資料は膨大。
過去の記録を調べるだけで、ウンザリするわ。
とりあえず、本を拾うの手伝いましょうか。
「あっ!俺が1人でやりますので!」
「いいのいいの。2人でやった方が早いでしょ。」
「先輩…ありがとうございます!」
先輩か。
何度聞いても良い響きね。
後輩の面倒を何人もみてきたけど、教育するのは楽しい。
みんな素直で、立派に成長したし。
ギルド職員じゃなくて、教師になるべきだったかしら?
でも、ギルドのお給料は高いから、辞められないのよねー。
ゼクスは私と同じ、ヒューマン。
10代後半ってところかな。
背は低く、可愛い系の顔。
羨ましいなー。
私は背が高く、凛々しい系の顔。
思い出すわ。
異性より同性にモテてしまった過去を…。
今でもそうだけど。
「はい、これで全部ね。」
「助かりました!」
「いいのよ、気にしないで。」
「本当にありがとうございました!では、俺はこれで。」
大量の本を抱えて、歩き出そうとする後輩。
前、見えてる?
学習しないのは駄目ね。
また誰かとぶつかるわよ。
「待ちなさい。」
「はい?」
「半分持ってあげるわ。」
「そんな!いいです!先輩に、ご迷惑をお掛けするわけには!」
怪我でもされた方が迷惑よ。
今回は口うるさい上司が正しかったわね。
ギロリと睨んで、駄目なところを指摘した。
シュンと落ち込む後輩。
クスッ。
怒られた子犬みたいで可愛い。
「ほら、行くわよ。どこに運ぶの?」
「第三会議室までです。」
「じゃあ、行きましょうか。」
「はい!」