風太郎「ぜぇ…はぁ…、ぜぇ…はぁ…」
優助「何やってんだかあいつは…」
五月「本当です…」
四葉に勉強をさせるために必死に追いかけっこしているが、体力がないあいつに四葉を追いかけることは無理だろうな。
長距離やってた俺だったら何とかなるね。まぁ前世の話だけど…。
すると躓いた所を四葉に支えられ、こちらに連れてこられる風太郎。
風太郎「ぜぇ…はぁ…」
四葉「真田さん、上杉さんをお願いします」
優助「おっけー、任せときな。でも四葉…」
四葉「はい?」
優助「風太郎の気持ちも分かって欲しい。それに、四葉もいくら体力があるとはいえ、人間の体力は無限じゃないから無理しすぎないよう気をつけてね」
四葉「…はい、分かってます。でも私は大丈夫ですから…!」
そう言って練習に戻って行った。
優助「行っちゃった…。本当に大丈夫かな?」
一花にも聞いたけど相当無理してるっぽいから心配だな…。
それよりも………
優助「…風太郎、お前大丈夫か?」
風太郎「あ、あぁ。なんとかな…」
恐らく五月から飲み物を受け取ったのだろう。
半分くらいまで飲んだペットボトルを片手に返事をする風太郎。
優助「何か収穫はあった?」
風太郎「あぁ。思ったより勉強したことは覚えているようだが、全部微妙に間違えていた」
五月「四葉なりに頑張っていたのでしょう」
風太郎「優助は二乃の方はどうなんだ?」
優助「二乃なりに、この前のこと反省して勉強してたよ」
風太郎「なんだと…!それは本当なのか?」
優助「おん、本当」
風太郎「じゃあ後はアイツだけって事か…」
風太郎は四葉の方を見てそう言う。
優助「とりあえず今日のところは一旦帰ろう」
風太郎「そうだな。週末にどれだけ詰め込めるかにかかっている…」
数日後……
俺たち、風太郎と一花と五月は朝早くから駅前に来ていた。
風太郎「ったく…、試験前だってのに。とことん勉強を疎かにしやがって…。三玖とは連絡がつかないのか?」
一花「あの子携帯の電源切ってるみたい…。けど任せて、居場所は分かってるから」
優助「頼むよ一花」
昨日、一花から電話が来たため出たところ、四葉の本心を聞きに行くらしいので、俺にも聞いて欲しかったとのことだった。
そこでは、四葉も無理はしてないと言っていたが、一花に対して“部活辞めちゃダメかな”と言っていた。
俺はそれを聞き、風太郎にも連絡。
更には、合宿まで行うという陸上部から、俺たち二人は四葉を解放してやるという方向に決定したのだ。
五月「…大丈夫でしょうか……?」
風太郎「四葉が断れないのなら、お前たちが断ればいい」
優助「入れ替わり作戦…。もうこれしか手段がない…」
五月「わ、私は少し苦手なんですが…」
風太郎「知ってるよ。だから三玖が来たらお前のジャージを着てもらって…」
優助「まずいぞ風太郎、あいつらもう出発するみたいだ…!」
五月「ど、どうするんですか?」
俺たち二人は五月の方を見る。
五月「…えっ?」
場所は変わり二乃の宿泊しているホテル……
二乃「何を言われようと帰らないわよ」
二乃は紅茶に砂糖を入れながら三玖に言う。
三玖「そんなに入れると病気になる」
二乃「そんなのアタシの勝手よ。おばあちゃんみたいなお茶飲んでるアンタにはわかんないわ」
三玖はお茶をひと口すする。
ホッと一息ついて…
三玖「このお茶の渋みが分からないなんてお子様…」
二乃「今日はなんの用でここに来たのよ…」
三玖「もちろん二乃を連れ戻しに来た」
二乃「だから戻らないって言ってるでしょ!バラバラのアタシ達がそこまでして一緒にいる意味って何よ!」
三玖「家族だから…、だけじゃ変?」
三玖「二乃から見れば、私たちが変わったように見えるかもしれないけど、私から見たら二乃も十分変わってる」
二乃「…!」
その言葉で、優助のことを思い出す二乃。
“二乃も変わってない訳では無いと思うよ”
アイツも確かにそんなことを言っていた。
でも、やっぱり自分でも具体的には分からない。
二乃「どこが変わったのよ…」
三玖「コレ」
そう言い、三玖は紅茶を指さす。
三玖「前は紅茶なんか飲まなかった」
二乃「それだけ?」
三玖「私たちは一人20点の五分の一人前だから。例えばこの問題…」
三玖は近くにあった問題を取り出して…
三玖「この問題は長篠の戦い」
二乃「何よ、自分は勉強したって言いたいわけ?」
そう言うと三玖は首を横に振る。
三玖「元々好きだから…、戦国武将」
二乃「戦国武将って、あんな髭のおじさんが…?」
三玖「うん。これが私の20点。そして…」
三玖は飲みかけの紅茶のカップを手に取り一口。
三玖「…甘すぎる……」
二乃「なにやってんのよ…」
三玖「でもこの味は二乃がいなければ分からなかった。確かに昔は五人そっくりで、いさかいもなく平穏だったでもそれじゃ一人20点のまま。一人一人が違う経験をして、足りないところを補いあって、私たちは一人前になろう?」
三玖は二乃にそう呼びかける。
三玖「だから私たちは違っててもいいんだよ。それに、二乃がいないから家の食事はめちゃくちゃ…。栄養バランスもボロボロ…」
二乃「そこは自分たちで何とかしなさいよ!」
そう言って二乃は椅子に座り直して、三玖の飲んでいた緑茶を手に取って1口飲む。
二乃「苦っ!やっぱり緑茶なんか飲むんじゃなかったわ!紅茶の方が勝ってる!」
三玖「紅茶だって元は苦い」
二乃「こっちは気品のある苦味なのよ!きっと高級な茶葉から抽出されてるに違いないわ!」
三玖「緑茶は深みのある苦味、こっちのほうがいい葉を使ってる」
二乃「じゃあ調べるわよ…」
二乃「紅茶も緑茶も同じ葉…?」
三玖「発酵の度合いの違い…」
そのことで二人は笑い合う。
二乃「何それ、今度みんなにも…」
何か言いかけた二乃だったがそれ以上は言わなかった。
そして立ち上がって…
二乃「そろそろ過去を忘れて今を受け入れるべき…。いい加減覚悟を決めるべきなのかしらね…」
引き出しからハサミを取り出す二乃。
二乃「三玖…、アンタも覚悟しなさい…」
ハサミをみせられながらそう言われ、虎に睨まれた獲物のような恐怖を覚える三玖だった。
そして場所は戻り、元の駅前……
五月「部活を辞めさせていただきたく…」
風太郎「違う!もっとアホっぽく!」
五月「もう無理です!こんな役目もう辞めたいですー!」
風太郎「そう、それそれ!五月、今のお前は四葉だ!」
こいつ何言ってんだよ、さっきから…。
五月の方も中々に演技下手なんだな。
確か四葉も嘘つけなかったよな…。
一花が横にいるから俺もちょっと感覚がズレてきてるのか?
五月「本当に上手くいくのでしょうか…」
すると大きく息を吸う風太郎。
痴漢だー!!痴漢がでたぞー!!!
痛ッ!耳ぶっ壊れるかと思った…。てかアイツ自分を犠牲にして行くのか…。
そしてそのまま、四葉が風太郎のことを追いかけて行った。
優助「仕方ない五月。行ってくるしかない!」
五月「わ、分かりました!」
そう返事をして四葉のいたところに五月が行く。
今思ったけど…。
見た目全然違くね?
後ろ姿とかもう別人やん!
とりあえず風太郎のところに行くかって、階段登ってすぐのところで捕まってるーー!?
体力ないとかそういう次元じゃないぞ…。
そこまで駆け寄っていく。
四葉は戻ろうとするが、俺は止める。
優助「待って四葉。お前が無理してることは聞いてる」
四葉「でも急に断ったら迷惑かけてしまいます…」
ん?
下から声が下ので見てみる。
優助「ちょっと下見てみなよ…」
四葉と風太郎も五月のいる方を見る。
風太郎「ど、どういうことだ」
四葉「つ、ついに出た…」
そこに居たのは、顔、髪の長さが全く一緒で、四葉と同じリボンをつけた女の子がいた。
四葉「ドッペルゲンガーだー!死にたくありませーん!」
優助「いや五つ子のうちの誰かだって…。多分」
一花「良かった〜、間に合ったみたいだね」
風太郎「間一髪だったぜ…!お前が三玖を連れてきてくれなきゃ………」
そこに居たのは一花と三玖だった。
優助「ん!?どういうこと?頭ごちゃごちゃなんだけど?あそこにいるのは本当にドッペルゲンガー?」
四葉「どうしましょう真田さん…」
風太郎「一旦整理しよう。今いるのは、五、四、三、一…」
ってことは…
一花「ホテルに行った時、ハサミを持った三玖が立ち尽くしてたの…。何があったかは分からないけど、なにか気持ちの変化があったんだよね?二乃」
そこに居たのはいつも通りの髪飾りをつけた、ショートカットの二乃だった。
一花「そんなにバッサリいくなんて失恋ですか〜?」
二乃「別にそんなんじゃないわよ…」
そして二乃は四葉のところに歩いていく…。
二乃「四葉、私は言われた通りやったけど、このままでいいの?本音で話し合えば、きっと分かってもらえるわ。アンタも変わりなさい、辛いこともあるけど、きっと変われるわ…」
この前俺が二乃に言った言葉と似ていた。
変わる決意ができたんだな、二乃…。
四葉「私、行ってくる!」
そう言って四葉は陸上部の所へ行く。
みんな成長していく。
出会った時とは、もうまるで別人…だな。
これが成長を見守る親の気持ちか…。
五月「二乃、先日は……」
二乃「待って、謝らないで。アンタは間違ってないわ、悪いのはアタシ。ごめん…」
本当に凄いな…。あの二乃が…。
二乃「ひとつ間違ってるとすれば、力加減だわ。すごく痛かった…」
五月「二乃…。そうです、お詫びを兼ねてこれを渡そうと思ってたんです。この前二乃が見たがってた映画の前売り券です。今度一緒に見に行きましょう」
良かった…。コレで全ての問題が解決だな。
でも残された時間は少ない…。これからどこまで詰め込んで行けるかな〜…。
二乃「アンタ」
優助「ん?どうした二乃」
少し考え事をしていると二乃から話しかけられた。
周りを見ると、みんなはもう帰り始めてるみたいだった。
優助「あぁ、悪い。考え事してたわ。今行く」
二乃「そうじゃなくて、アンタがいなければ私は変われなかったかもしれない…。だから、ありがと」
優助「だから、気にしなくていいって。そこまでバッサリいくとは思わなかったけど」
二乃「そうかしら…。アンタはどう思う…?」
優助「俺はすげー似合ってると思うよ。ショートカットの方が俺は好きだよ」
俺はロングかショートかと聞かれたら、真っ先にショートと答えるくらいショートの方が好みである。
二乃「っ!///そっ、そう…」
優助「ほら、顔赤くしてないでさっさと行くよ?」
二乃「別に赤くなんてしてないわよ!」
そう言って、すぐにみんなのところに追いつく俺らであった。
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推しの子ルートはありですか?
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あり。優助、役者の道へ……。兄妹ルート
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あり。優助、役者の道へ……。五つ子ルート
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なし。優助に役者の才能なし。兄妹ルート
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なし。優助に役者の才能なし。五つ子ルート