余計な事を考えずにチートハーレム物が読みたいと思われた方だけお読みください。
『なあ、アンタに頼みがあるんやけど』
オカンからの念話に俺は思わず顔をしかめた。
―――今度はなんですか?
『な、なんや。そんな警戒したような声出して』
そりゃ前科(スパロボ短編)がありますからね。まあ、最終的に天寿全う前に返してもらえたからいいですけど。
『えー、でもアンタやって時間が出来たらちょくちょくあっちに行くようウチに頼んでくるやん』
……まあ、あれだけ一緒に過ごしたんですから会いたくなりますよ。……とりあえず、話を進めましょう。頼みってなんですか?
『ああ、それなんやけど。実はな、ウチ、アンタみたいに気に入った子に色々お節介焼かせてもろうとるんやけど、その中の一人がな、アンタに会ってみたいって言うんよ』
俺みたいって……死んでから別世界に行った人って事ですか? え、何でそんな人が俺の事知ってるんですか?
『そらウチが教えたからな』
あ、そっスか……。
『そこの世界のゴタゴタも落ち着いたみたいやし。ウチの顔を立てると思って行ってもらえんやろか』
確かに、ここ最近事件も起こってないし。……まあ、それくらいなら。
『そうか! いやあ助かるわ。ほな、早速送らせてもらうな!』
だと思いましたよ。……あ、肝心な事を聞いてなかった。その会いたいっていう方の名前は?
『名前は織江ちゃんや。ごっつう優しい子やからきっとアンタも可愛がってもらえるはずやで~』
そんな声を聞きながらフッと意識が遠のいたと思ったら、次の瞬間俺は一軒の建物の前に立っていた。
「佐山雑貨店……」
恐らくこの中に織江さんがいるんだろう。にしても、俺なんかに興味って変わった人だなぁ……
若干緊張しつつ俺は店の扉を開いた。備え付けてあったベルが店内に鳴り響く。
「は~い。いらっしゃいませぇ」
奥の方から一人の女性がゆっくりと姿を現した。年は六十代くらいだろうか。なんとも柔和な笑みを浮かべるその顔は見てるとこちらも笑みを浮かべてしまいそうだった。
「すみません。織江さんでしょうか? 俺は神崎 亮真と申します」
「神崎? ……あらまあ! ひょっとしてあなたがオ・クァーン様お気に入りの?」
「はは、お気に入りかどうかはわかりませんけど」
「ふふ、あの方の言う通りとっても男前ねぇ。……あらいやだ。私ったら自己紹介もせずに」
そういうと、織江さんは美しいお辞儀をしながら俺に自己紹介をしてくれた。
「改めまして。佐山 織江です。この度はこんなおばあちゃんのわがままを聞いてくれて本当にありがとうございます。さ、どうぞこちらへ」
織江さんに促され、店内に設置された席に座る。その間に彼女は店の入り口のシャッターを閉めてこちらへと戻ってきた。
「少し早いけれど、今日は店じまいね。亮真さん……でいいかしら? あなた紅茶はお好き?」
「え? あ、ええ。あまり飲みませんけど、好きな方ではあります」
「そう。なら用意するからちょっと待っててね」
そう言って奥に引っ込む織江さん。……とりあえず、店の中を見渡してみる。雑貨店というだけあって、アクセサリーや日用品、文房具まで置いてある。
「素敵なお店ですね」
「うふふ、ありがとう。ここは学校に近いから学生さんもよく来てくれるのよ」
それからしばらくして、織江さんが紅茶とお茶菓子を持って俺の前の席に着いた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
早速紅茶を頂くことにした。……銘柄とか詳しくないが、美味い。
「お口に合うかしら?」
「はい。美味しいです」
「それはよかったわ」
「それで、いきなり本題に入って申し訳ありませんが、何故、俺に会いたいと?」
俺の問いに、織江さんは口元に手を当てて上品に笑った。
「ごめんなさい。本当に大した理由なんてないのよ。最近、オ・クァーン様がよくあなたの事を話すから。どんな子なのか気になっちゃって」
「あの人とはよく話をされるんですか?」
「ええ。この年になると誰かとお話するくらいしか楽しみがないのよ。……私ね、前世にあまりいい思い出がなくて。体も丈夫じゃなかったから、オ・クァーン様がそれなら思いっきり運動できるようにってこの世界に転生させてくれたの。ええっと、なんだったかしら? ま、まじ……なんとかっていうゲームの世界らしいわ」
「ゲーム?」
「ええ。でも私そういうのに疎くて。結局どういう世界か知らないままこの年まで生きてきたの。でも、私、幸せよ。お友達もたくさん作れたし。若いころには武術なんかにも挑戦したりしてみたりね」
「武術……ですか?」
「こう見えても結構強かったのよ? 今も現役の鉄心ちゃんやヒュームちゃん……あ、今のはお友達の名前ね。他にも何人からか再開してみないなんて言われてるの。まあ、私はもう満足してるからいいんだけどね」
へえ、そこまで言われるって事は本当に凄腕だったんだろうな。
「っと、いけない。こんなおばあちゃんの話じゃなくて、今度はあなたのお話を聞かせてくれないかしら?」
といわれても。面白い話なんか……いや、ダメだ。こんなキラキラした目で見られたらありませんなんて言えん……!
「ええっと、それなら……」
何とか話題をひねり出しながら会話を続ける。そうしている間に窓から見える景色はすっかり暗くなってしまっていた。
「あらあら。もうこんな時間なのね。そろそろ夕飯の支度をしないと」
「そうですね。では、俺はこれで失礼を……」
「え? 何を言うの? 今日からしばらくここで暮らすんでしょう。お部屋も準備してるのよ」
「……はい?」
オカン! オカン!! オカン!!! どういうことか説明してくりゃれろ!
『……』
俺の訴えに対するオカンの回答は……満面の笑みにサムズアップだった。最初からこうするつもりだったなあの人ぉ!
「亮真さん、お肉とお魚どちらが好きかしら?」
「……肉です。あと、手伝います」
「まあ、助かるわ。ならお米の準備お願いできるかしら」
……まあ、いいか。こんな嬉しそうにされたらぼやいてる自分が情けなくなるし。
そんなこんなで、俺はしばらくの間織江さんの元でお世話になる事になったのだった。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
翌日、朝食を済ませた俺は店内の清掃をする事にした。お世話になる以上これくらいはしないと気が済まない。
そうこうしている間に開店時間が近づいて来た。とそこへ織江さんが唐突にお札を数枚差し出してきた。
「織江さん、これは?」
「せっかくだし、亮真さんにもこの町の事を知ってもらおうと思って。これで遊んでらっしゃいな」
どうやら外出用のお小遣いのようだ……じゃなくて!
「そんな、ここまでしてもらうわけには……!」
「いいのよ。お小遣いをあげるおばあちゃんって一度やってみたかったのよねぇ」
よねぇって……。うわ、凄いニコニコしてる……。
(……よし、とりあえず受け取るだけ受け取って、一切使わずに帰ってきたら返そう)
(……って思ってるんでしょうねぇ)
「い、行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
こうして、軍資金(使用不可)を手に、俺は町の散策へと出発したのだった。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「ふう……」
たまたま見つけた公園のベンチに腰掛け、ぼんやりと空を見上げる。店を出てから大体二時間くらいはたっただろうか。
「……疲れた」
目的もなくただひたすらにうろつきまわっただけだしな。まあ、いい運動になったと思えばいいか。
とはいえ、ただブラブラするくらいなら店に戻って織江さんの手伝いでもした方がずっと有意義だし、そろそろ戻って……
「おい、お前!」
突然の声に空から視線を下すと、胴着姿の小学生くらいの女の子が腕を組みながらこちらを睨みつけていた。ええ……何事ぉ?
「……おや?」
あれ、なんかこの子見覚えが……ああ! そうだ、散策中に走っているこの子の姿を何度か見かけたような。ひょっとしてランニングコースだったのかな?
「お前、変質者だろ」
「ん?」
「さっきから私の後をずっと追いかけて来てただろ」
「んん?」
「まあ、私の様な美少女に目を奪われるのはわかるけどな」
「んんん?」
「けど、変質者に追いかけられてもキモイだけだし。とりあえず百代ちゃんに成敗されろ」
組んでいた腕を下し、拳を握る女の子。これは……うん、盛大に誤解されてるな。
「ちょっと待ってくれないかな。確かにキミの事は何度か見かけたけど、決して追いかけまわしていたわけでは……」
「問答無用!」
叫ぶや否や、女の子は驚くべき速度で拳を放ってきたのだった。
というわけで、衝動的に書きなぐった短編第二弾。こっちは数話続く予定です。とはいえ、本編までがっつり書けるとは思ってませんが。
今回、織江というオリジナルキャラが出てきましたが、この人もチート持ちです。言うなれば人脈・人望チートとでも言いましょうか。武の方もそれなりです。何せまじこいですから。
こんな内容ですが、よければ感想をいただけると嬉しいです。
前書きに重ねて申し上げますが、スパロボ編と同じく設定等は深く考えてません。頭からっぽにしてチートハーレム物が読みたいと思われた方だけお読みください。