真剣で騎士(笑)に恋しなさい!   作:ガスキン

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Q:なんで幼少期?

A:幼少期にトラブルのあるキャラ達の為。あとヒロインを年上趣味にするため(これ重要)

七月九日、ランキング入りできました。読んでいただいてありがとうございます。


真剣で騎士(笑)に恋しなさい! その二

 どうも、突如として変質者扱いされてしまった神崎 亮真です。

 

「とりゃあぁぁぁぁ!」

 

 変質者は成敗してやると意気込む少女の拳が迫る。この体なら別にこのまま受け止めてもいいんだけど、それでこの子の手を負傷させるのもあれだし……。

 

(とりあえず……避けよう)

 

「ッ!?」

 

 殴られる寸前、右半身だけ動かしてそれを避ける。そのまま回り込むようにして少女の背後に移動してもう一度声をかける。

 

「キミ、落ち着いて―――」

 

「せりゃっ!」

 

 止まるどころか俺の声をさえぎる様に振り向きざまにハイキックをかまして来たよこの子!?

 

「俺は別に―――」

 

「うりゃあ!」

 

「キミの事を―――」

 

「せいっ!」

 

「追いかけていたわけじゃ―――」

 

「やかましい! 黙って私にぶちのめされろ!」

 

 嫌です(迫真)。……うん、仕方ない。このまま避け続けてこの子が落ち着いてくれるまで待つか。

 

「お前、何で反撃してこない! それでも男か!」

 

「反撃する理由がないからな。とにかくキミが落ち着いてくれるまでは何もしないさ」

 

「なら避けずに私に殴られろ!」

 

「生憎とサンドバッグになる趣味は無いからね」

 

 時たま言葉を交わしながらひたすら少女から逃げ続ける。……どれくらいそうしていただろうか。少女の動きが少しずつゆっくりになってきた。

 

「はあっ……はあっ……。クソ、走り込みさえしてなけりゃ……」

 

 いや、トレーニングの方が大事だと思うよ? というか、そうだ。この子こんな所で時間つぶしてていいんだろうか。

 

「なあ、キミ」

 

「なんだ変質者!」

 

 おうふ……。今更ながらこんな小さな子に変質者呼ばわりは地味に傷つくな……。と、俺の事は今はいいか。

 

「キミの言い分だと、鍛錬中に俺を見つけたからここに来たみたいだが、時間とかは大丈夫なのかい?」

 

 公園の端に設置された時計を指さす。それを確認した少女の顔色が瞬く間に変化した。

 

「げっ! もうこんな時間!? 早く戻らないとジジイのゲンコツが……。クソ、なんでこんな日に限って制限時間なんか設けるんだあのジジイ!」

 

 忌々しそうに舌打ちして少女は公園の出入り口へ駆ける。そのまま去っていくかと思いきや、こちらへ振り向き俺に向かって指を突き出して来た。

 

「おい変質者! 明日またこの公園に来い。次こそ私がぶちのめしてやるからな!」

 

 逃げるなよ! と言い残し、少女は去って行った。いや、俺はまだ答えてないし。そもそも変質者扱いしている人間にもう一度会おうと思ったらだめだと思うんだが……。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

「その子は川神 百代さんね」

 

 店へ戻り、預かっていたお金をきっちりお返した後、公園であった出来事を織江さんに話すと、彼女はそう断言した。

 

「そういえば、あの子は自分の事を百代ちゃんと言っていました。織江さんのお知り合いなんですか?」

 

「ええ。亮真さん、川神院という寺院には訪れてみたかしら?」

 

「いえ、生憎」

 

「ただのお寺じゃないの。武の総本山って呼ばれるほどの由緒正しい場所でね、たくさんの人が体と心を鍛えるために日々鍛錬を行っているの。百代さんはね、その川神院の総代さんのお孫さんなの」

 

「その方、もしかして織江さんのお友達という?」

 

「ええ。川神鉄心ちゃんっていうひょうきんな方よ。ちょっと助平なところがたまに傷だけれど、武に関してはとっても真摯なのよ」

 

 そこまで話すと、織江さんはふと表情を陰らせた。

 

「……百代さんはね、武術の才能が素晴らしいの。天才って彼女の様な子の事を言うんでしょうね」

 

「何か心配事が?」

 

「既に川神院でもあの子とまともに手合わせ出来る人は数えるくらいしかいないらしいの。……だからなのかしら。百代さん、鍛錬も必要最低限しかこなしていないんですって。その程度の鍛え方でも勝ってしまうから……」

 

 なるほど。それで天才か。

 

「武術というのはもちろん「力」が大切だけれど、それと同じくらい「心」も大切。だから川神院でも心を鍛える修業はしているみたいなんだけれど、百代さんはそれにも消極的みたいで。……このままだといつか取返しのつかない事になるんじゃないかって私も心配しているの。あの子はね、私の事も「おばば様」って慕ってくれているの。だから、私も百代さんの為に何かしてあげたいの」

 

 自分が百代ちゃんの鍛錬に付き合ってあげられればいいけれど、すでに引退して長い自分がでしゃばるのはあの子は嫌がるだろうからと織江さんは言う。

 

「……ねえ、亮真さん。こうして私のわがままを叶えてくださったあなたに図々しいのは百も承知なのだけれど、しばらく百代さんに付き合ってあげてくださらない?」

 

「俺がですか?」

 

「オ・クァーン様から聞いています。あなた、とってもお強いんでしょう? それに、大切なものの為に努力する大切さもご存じだと。そんなあなたなら、百代さんもきっと……」

 

「織江さん……」

 

「本格的な教えを施してもらいたいわけじゃないの。それは川神院の……鉄心ちゃんやルーちゃんの役目だから。……どうか、百代ちゃんの「心」を育む為に力を貸してくださいな」

 

 深々と頭を下げる織江さん。……ああ、本当にこの人にとってあの子は大切なんだなというのがこれだけで十分理解できた。

 

 ―――ここまでされて断れるか? いいや無理だね。

 

「わかりました。俺でお役に立てるかわかりませんが、明日もあの子に会いに行ってみます」

 

「……ありがとう、亮真さん」

 

 こうして俺は再び百代ちゃんに会いに行く事となった。あ、ちなみに変質者云々の誤解は織江さんの名前を出せばきっと大丈夫との事だ。

 

・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

 そして翌日、昨日と同じ時間に例の公園でベンチに座っていると、本当に百代ちゃんがやって来た。また殴りかかって来そうだったが……。

 

「逃げずによく来たな変質者!」

 

「織江さんに頼まれたからな」

 

「ッ!? お前、おばば様の知り合いか!?」

 

 織江さんの所でお世話になっている事を伝えると、百代ちゃんはあっさりと構えを解いた後、頭を下げてきた。

 

「おばば様の知り合いが変質者なわけない。……勘違いしてすみませんでした」

 

 織江さんすげえ! 名前だけでこの態度の変化って。よっぽどこの子に信頼されてるんだな。

 

 それにこの子も。昨日の様子や織江さんの話を聞いた時はもっとオラついてるかと思ったら、こうやって素直に謝れるし、いい子じゃないか。

 

「ッ!? な、何をする!?」

 

 あ、しまった! 無意識に百代ちゃんの頭を撫でてしまっていた。

 

(コイツ、動きが読めなかった!? それに、何だ今の。撫でられたところがほわほわする)

 

「百代ちゃん?」

 

「な、何でもない! それで、あなたの名前は? 私の名前を知られているのにこっちが知らないのは気に食わない」

 

「ああ、すまない。俺の名前は神崎 亮真だよ」

 

「神崎さんですね。おばば様に頼まれたって言いましたけど、何なんですか?」

 

「ああ、実は……」

 

 しばらくはキミの相手をするように言われたと伝えると、百代ちゃんは途端に目を輝かせた。

 

「それはつまり私の鍛錬に付き合ってくれるという事ですね!」

 

「それがキミの希望なら構わないけど」

 

「ふふふ。さすがおばば様! 私の事をよくわかってくれてる! 小言ばかり言うジジイとは大違いだ」

 

 あ、なんか嫌な予感がしてきた。

 

「では神崎さん、早速始めましょう! 昨日みたいに好きに動き回ってください。私はその動きを読んで、あなたの体に一発叩き込んでやりますから!」

 

 この後滅茶苦茶逃げ回った(一時間)。そして帰宅後、織江さんに滅茶苦茶褒められた。

 

・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・

 

 百代ちゃんとの鍛錬(という名の鬼ごっこ)三日目。この日も公園で百代ちゃんと待ち合わせ。

 

「遅いですよ神崎さん」

 

 すでに到着していた百代ちゃんが屈伸しながらぼやく。いや、一応待ち合わせ時間五分前何ですけど。

 

「す、すまない」

 

「ま、遅れた分はこの後返してくれればいいですよ」

 

「準備運動はもういいのかい?」

 

「ええ。なので早速始めましょう……と言いたいところなんですが」

 

「?」

 

「……いい加減ウザったいしな。おい、そこに隠れているヤツ、出てこい!」

 

 百代ちゃんが木々の植えてある方を睨みつける。するとガサガサと草むらが揺れたと思ったら、そこから一人の女の子が姿を現した。

 

「お前、私が神崎さんと出会った日も、私達の鍛錬してた日も陰でジッと見てたよな。何が目的だ?」

 

 百代ちゃんの質問に女の子は俯いたままだったが、やがて意を決したように俺達に近づいて来ると、右手に乗せた物を差し出してきた。

 

「……マ、マシュマロ……食べる?」




関係作りのため、時系列を都合のいいように変えます。

オリ主の口調がやけに柔らかいのは子どもが相手だからです。

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