ポケットモンスター不思議のSPECIAL   作:Nフォース

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Q.ポケダン皆のトラウマと言えば?
A.モンハウ! モンハウ!


第十一話「VSヌオー」

 これまでは何だがグダグダだったクリスとレイのコンビネーションは、あのニョロトノの一件を経てかなり良くなってきていた。勿論まだまだ至らない部分は多いが、それでもレイとキリンリキの敵ポケモン=倒すの癖は段々と緩和されつつあった。これは立派な進歩だ。何せ圧倒的な実力を持つレイとキリンリキのコンビの唯一つにして最大の欠点は手加減できない事、それだけだったのだから。

 そしてそれさえ解消されるのなら

 

「カラぴょん! 『ほねブーメラン』!」

 

 カラぴょんの投擲した骨がヌオーの腹へ見事に命中。かなり大きなダメージに堪らずヌオーは逃走を始める。ここはあのニョロトノ達と戦った所とは離れているがそれでも川沿い。川の中へと逃げられれば如何にクリスでも追撃は難しい。

 だが――

 

「今よ! 回り込んで!」

「オッケー、任せて!」

 

 レイの知覚はクリスのそれを遥かに超えている。と言うよりも手持ちがキリンリキ一体と言う条件をそれでカバーしているのがレイと言う少年なのだ。川沿いの不安定な岩場を難なく走り抜けてヌオーの行き先を塞ぐように立ちはだかる。

 しかし、レイは超人的な知覚を持っているとはいえポケモンにとってみればただの人間。必死になって逃げようとしているヌオーはレイを『みずでっぽう』で吹き飛ばそうとする。人間であるレイは、ポケモンの技を食らえばやはり吹き飛ばされてしまうだろう。

 

「無駄です」

 

 しかしその事実は彼の相棒によって容易く覆される。

 レイの背中。ヌオーにとっての死角から颯爽と飛び出したキリンリキはヌオーの放った『みずでっぽう』そのものに『サイコキネシス』で働きかける。捻じ曲げられた『みずでっぽう』はもはやヌオーではコントロールがきかない。そのまま近くの岩にぶつけられ、当然レイにはかすりもしない。

 自分で放った技のコントロールを奪われる。そんな不可思議な経験をしたヌオーの思考は一瞬空白となった。そしてそれを見逃すキリンリキではない。全身に力を込めてヌオーにタックルをかまし、クリスの方へ突き飛ばす。

 

「ナイス!」

 

 賛辞の掛け声をクリスはレイ達へかける。レイはサムズアップで、キリンリキは胸を張ってそれに答えた。この期を逃す手はない。ヌオーを捕獲する。そう考えボールをとりだして右手で弱い力で上へ投げて――

 

「いっけぇ! レベルボール!」

 

 ヌオーの力の堪る場所は背中のヒレの真ん中あたり。そこへ正確にボールを蹴りこむ。まるで吸い込まれるかのような精度で命中し、体力も減っていたヌオーは簡単に捕獲された。

 

 

 

 

「ヌオーは中々手ごわかったね」

「うん、本当にね」

 

 流れるような捕獲の流れであったがそれでもほかのポケモンよりは苦戦した。勿論ニョロトノをリーダーとした群に囲まれた時よりは遥かにスムーズに捕獲できたが一匹のポケモンとしてならばキリンリキを除けばもっとも捕獲に手まどった。特にレベルが高かったわけでもなく、強烈な技があったわけではないがすぐに川へ逃げようとしていたのでそれを防ぐのに戦力を割かねばならなかったのである。

 さらに言えば今の時間はもう夜七時。辺りは暗くなりはじめ視界も良くはない。本来なら二人とももう休もうと思っていたがまだクリスが捕獲していないヌオーを見つけたため急遽捕獲することとなった。

 

「じゃあ早速ヌオーを転送するわね」

「じゃあ僕は近くを探ってみるよ」

「うん。お願い。私は転送がすんだら先にポケモンセンターへ戻ってるわね」

「わかったよ」

 

 テキパキと役割分担を決める二人に少なくとも昨日までのどこかモヤモヤした空気は無い。――本来はこうなる方が自然なのだ。なにせクリスもレイも主義主張の面で差こそあれど二人の性格はよく似ている。善良で真面目な二人は間に妙なとっかかりがなければ上手くいかない筈がない。

 

 必要だったのはお互いを認める為の切欠だ。より正確にいうならばお互いの能力を認める為の。当初クリスはレイについて、彼の相方であるキリンリキの事を高く評価しすぎていたがゆえにどうしてもレイの実力を低く、とまでは言えないがポケモンを偵察と称して勝手に離したりするなど妙な考え方を持つこの少年を認める事ができないでいた。

 

 一方のレイも同じ。彼は捕獲の専門家と言うものがどう言うものかは正確には理解できなかった。と、言うよりもレイは本音を言うならばポケモンを()()すると言う事自体に疑問を抱いていたのである。そんな彼にとってポケモンを倒さず弱らせろと言うクリスの考えは理解できないものだったのだ。

 

 ――しかしお互いに、お互いの誇る武器を見てその考えをすぐに改める。

 そして同時に二人は頼れる仲間を持てたことに深く感謝した。

 

 であれば二人がお互いの事を尊重しあえるのは自然の道理である。

 しかし――

 

「モンスターボール……捕獲、か」

 

 レイの右手にはモンスターボールが握られていた。クリスから半ば強引に押し付けられたのだ。ニョロトノの一件の前にクリスから尋ねられたことが有る。何故キリンリキをボールに入れないのか、と。

 レイが初めてポケモンを捕獲するという話を聞いて、まずその捕獲と言う言葉の響きがどうにも気になった。そもそも野生で自由に生活しているポケモンを人間の都合で勝手に捕獲してもいいのか? そんな風に彼は思ったのだ。

 そんな時に起こったのがあのニョロトノの事件だ。誰かが使った『ほろびのうた』により縄張りを荒らされ烈火のごとく――いや、みずタイプのポケモンの話なのだから『げきりゅう』のようにと言った方が良いだろうか――とにかく怒り狂ったニョロトノを相手に真っ先に『倒す』と言う考えが出たレイは。捕獲され、ポケモン図鑑の為のデータを取られた後は野生に帰ることを許されたニョロトノ達の様子を見て思ったのだ。これはこれで平和的な解決方法なんだろう、と。捕獲の際に多少はダメージを負わせてしまったがそれでも彼らは五体満足。これから先の生活に特に不自由はあるまい。

 

 ――しかしそれとこれとは話は別だ。

 

 レイはボールを自分のバッグの奥底に落とし込む。クリス個人にも好感は持てたし、捕獲すると言う事にもそれなりの意味があることはレイにもわかった。

 だからと言ってキリンリキをボールに入れる気にはレイはなれなかった。

 

 その様子を傍から見つめていたキリンリキは何も言わない。モンスターボールの中は心地が良いと言う言葉はチコリータ……メガぴょんからキリンリキは聞いている。しかし彼女もレイに同じくボールに収まっている気は無かった。別に閉じ込められるのが嫌とか、そういう理由ではない。ただ単純にレイがボールに収めたくないと考えているのならばキリンリキもそれに従うだけの事。

 

「さて、と。ここは『つながりの洞窟』だったっけ」

 

 辺りを見渡す。洞窟、と言うよりは通路のようだなと言う風にレイは思った。歩けばわかるのだ。ここは人の手のかかったことのある道だと言うのは。ここは地面の起伏が洞窟と呼ぶには無さすぎる気がする。

 実際にレイの考えは当たっていて、この『つながりの洞窟』は今でこそもっと整備された道が有るため使われていないが昔は実際に多くの人に通路として使われていた道だったのである。ちなみにこれは偶然だが、クリスもメガぴょんに同じようなことを今説明している所であった。

 

「特に妙な事は無いな……て言うか一本道だし」

 

 レイに言わせればこんなものは洞窟とは言えない。レイの知っている洞窟……と言うか()()()()()はもっとオカルト染みている。一度突破した洞窟が同じ通路でまた通れる。これは普通の人間からすれば常識だがレイはそうは思わない。比喩でもなんでもなく中の構造自体が入るたびに変わる。そんな迷宮をレイはいくつも知っている。そんななかにはまるで悪意しか感じられないような悪辣な罠や難攻不落な天然の仕掛けがいくつもあった。それをキリンリキや仲間たちと力を合わせて突破していたことには良い意味でも悪い意味でも思い出深い。

 ――ちなみに悪い思い出の最たる物として、部屋に入った瞬間に自分たちに敵意を持つポケモンが山のような数、頭上から文字通り『降って』きて一斉に襲い掛かってくると言うのが有る。一体どこから湧いてきたのか、だとかなんで降ってくるのか、とか、疑問は尽きない現象だが実際目の当たりにするとそんなことを考えている場合ではなく、言葉で言い表すのなら『悪夢のような現実』としか言えないほどの怖い怖い現象だ。と言うかあれを経験して良く生きているな自分、とさえ思う。

 ちなみにこれは有るポケモンがレイに教えてくれたことだがその現象は『モンスターハウス』と言うらしい。これを聞いてレイは成程と思った。言い得て妙だ。『怪物の部屋(モンスターハウス)』の名にあの現象は相応しい。そうレイに言わせるほどの恐怖体験だった。

 

「でもここで『モンスターハウス』なんて起きそうにないな……一本道だし狭いし」

 

 レイもキリンリキも偵察を行うときは必ず警戒するほどの『モンスターハウス』だが、これの一つの特徴に『ある程度広い空間でしか起きない』と言うのが有る。と言うかそうでなければ大量のポケモンが一気に降ってくるなんて不可能だ。そもそも彼らの着地するスペースがない。

 

「仮に起きたとしてもこの通路でなら簡単に対処できますしね」

 

 とキリンリキも付け加える。『モンスターハウス』を彼らが恐れるのは山のような数のポケモンに一気に()()()()の圧倒的に不利な戦闘を強いられるからだ。部屋にその中が有る程度見渡せるところまで入った瞬間、眠っている草食動物の横っ腹に極限まで飢えた獣が飛びかかるような勢いで四方八方から凶暴なポケモンが迫ってくる。その様は脅威的な暴力だ。立ち位置が悪ければ反撃すら満足にできず袋叩きにされる。

 しかし通路の中であれば如何にに大量のポケモンが降り注いで来ようと四方八方から囲むなんて真似はうできない。精々前と後ろから挟み撃ちされる程度が関の山と言った所だろう。勿論挟み撃ちされるのは危険だが、『広い部屋、四方八方どこを見渡しても敵ばかり』『安全地帯なしで超絶不利なデスマッチ』なんて物に比べれば天国のようにすら思える。と言うか実際そうだ。

 

「まあ特に変わったことは無いとクリスさんに報告しに行きますか」

「そうだね」

 

 他愛もない話をしながら、ふと思う。

 キリンリキはこの洞窟に入ってから何だか嬉しそうだ、とレイは思っていた。別にジメジメした暗い洞窟が彼女の好きな環境と言う訳でもないだろうにどうしてだろう、と考えていたが離しているうちにわかった。

 この洞窟は昔こそ人が良く通った道だが今はレイが足で感じられる程度の面影しかない。そういう場所ならばキリンリキだって普通に喋れるから彼女は喜んでいるのだ。何せキリンリキにとっては人間と同じくらい言葉を喋ると言う事が普通の事なのだから。別にキリンリキは特別おしゃべりが好きと言う訳でもないが沈黙を街中では強いられる今は普通に言葉を発せると言う事自体が嬉しいのだろう――それもあってクリスに対して口を滑らせてしまったのかも知れない。しかし、もっと喋らせてやりたいのは山々だがこればかりはどうしようもない。誰もがクリスのように口の堅い人間とは限らないのだから。

 

(できることと言えば僕がもう少し一緒にいて、話し相手になってあげること位かな?)

 

 そんな事を思いながら入口の方へ振り返る。これで偵察は終わり。そして次にすべきことは

 

「明日に備えてゆっくり。休む事」

 

 寝れる時に寝ておけ。旅の基本である。




この小説やっぱり感想少ないね。(´・ω・`)
もっと書いてくれてもいいのよ|ω・`)←物欲しそうな眼光


用語解説
モンスターハウス
だいたい作中でレイが説明してくれているがポケダンにおける特定の部屋に存在するトラップ。入った瞬間に背筋が凍りそうになる。モンスターハウス内ではBGMも通常の物から独特なBGMへ変化する。(プレイヤー)処刑BGMである。トラウマになっているかたも多いのでは?
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