作者警部「何があった!?」
「あくのだいまおうが大変なものを盗んでいきました! 大量のふっかつのたねです!」
作者警部「なんだと!?」
キキョウシティ。
ここはジョウト地方において多くのポケモンチャンピオンを目指すポケモントレーナーが最初に目指す街である。
なぜならばこの街にはポケモンリーグを目指す上において避けては通れない施設、ポケモンジムがある街だからだ。各地方に八つあるポケモンジム。ポケモンジムにはジムリーダーと呼ばれる凄腕のポケモントレーナーがいる。彼らはそれぞれジムバッジを持っていて彼らにポケモンバトルで勝利することができればそのバッジを受け取る事ができる。
そしてジムバッジを八つ。つまりその地方においての全種類のジムバッジを手に入れた時ポケモンリーグの決勝戦に無条件で参加できるようになるのだ。――否、正確にはなったと言う方が正確だがそれはこの際置いておく。
そしてそのポケモンリーグで勝ち上がり、優勝する事こそがポケモンチャンピオンになる唯一にして最大の条件である。
ゆえにポケモンチャンピオンを目指すトレーナーはジムの門を叩き、ジムバッジを何としてでも手に入れようとする。そしてポケモンチャンピオンになるのは多くのポケモントレーナーの夢だ。
しかしそれだけではキキョウシティを最初に目指す理由にはなり得ない。なぜならば如何にジムバッジを手に入れたいというポケモントレーナーが多くともポケモンジムは各地にある。わざわざ最初にキキョウシティのジム、キキョウジムを訪れる必要はないからだ。にもかかわらず、トレーナーの多くはキキョウシティを目指す。何故だろうか?
その答えがこの町にある大きな塔……『マダツボミの塔』にある。この塔は修行の塔。多くのポケモントレーナーがポケモンのレベルアップの為の修行に活用する塔だ。ここで鍛えてそれからキキョウジムに臨むという流れが確立されている町。それがキキョウシティなのである。
しかし今回の物語の始まりは、そのどちらでもないらしい――
ひっそりと町はずれに、一見廃墟にも見える程に腐敗した建物がある。
失礼な話だがとてもまともな建物には見えない。塀はボロボロに崩れ、窓ガラスは割れ、鉄筋には半分ヒビが入り、挙句建物が傾いてすらいる。正直崩れ落ちないのが不思議なほど、ボロボロだ。
そんなボロボロの建物だが表札には『ポケモン塾』とある。その名の通りポケモンについて教える施設なのだろう。ぼろいが。
実際何人かの子供たちもいる。まだポケモンを持って間もない小さな子供たちだ。驚くべきことにちゃんと塾として機能しているらしい。
「ほらね、『きのみ』を持たせておけば自分で回復したでしょ」
子供たちの中心には星の形をしたイヤリングをを付けた少女が箒を片手に子供たちの面倒を見ていた。塾らしく言うのならばポケモンに道具を持たせるという授業の一環と言ったところだろう。
彼女の言葉通りきのみを持たせたポケモンは自分できのみを食べ、体力を回復した。
「ほんとだあー」
「ね?」
その様をみた女の子は大はしゃぎだ。ポケモンに振れ始めて間もない彼女からすればポケモンの一挙動に興奮するのも無理はない。むしろこのような子供心こそポケモントレーナーたる第一条件なのだとも言える。
そんな子供の様子を少女は笑顔で見守っている。彼女もまた子供たちが喜んでくれれば嬉しいのだ。そんな彼女に一人の小太りした男がクルクル回りながら近づいて声をかける。
「おーいつもすまないアルー」
「ジョバンニ先生」
どうやらこの小太りした男は塾の先生らしい。
「ボランティアで塾を手伝ってくれるなんて本当に頭が下がるアルー」
「そんな、ボランティアだなんて」
少し照れた様子で箒を握りしめた。彼女に言わせれば子供たちと遊んでいるだけなのでボランティアなどと言われても恥ずかしい限りなのだ。
それに彼女はここが大好きなのだ。安心してポケモンと遊べ、安心してポケモンの事を学べる。そんな施設であるここが――
「うわっ!?」
「キャッ、危ない!」
もろくなっていた塀がべりべりと音を立てて倒れた。それも危うく子供が巻き込まれそうになる位置の塀が。この惨状をみたジョバンニ先生はしみじみと
「安心して遊べないアルね……」
やはりぼろい物はぼろく、危ない物は危ない。
通常ならこの建物を管理しているジョバンニが非難されるべき場面であるがそうも言ってられない。この塾がどうしようもないほどボロボロなのには理由があるのだ。
もともと生徒からお金を取らずにやってきた塾。それでは経営が立ち行くはずがない。さらに最近は行くところのないポケモンや子供まで預かる孤児院のような役目までしている。ジョバンニは自分にもっと経営手腕があればと嘆くが、これで経営が立ち行く方が不思議だ。建物の維持などできるはずがない。悲しげな声を上げるジョバンニに少女も何も言えず立ち尽くしていた。
そんな時だった。
倒れた塀の隙間を縫うように火の粉が飛び、子供たちに襲い掛かる。
「きゃあああ!!」
「あ!? 逃げて!」
当たれば子供の命を容易く奪ってしまうであろう火の粉。直撃する前に少女が気づいてよけさせなければどのような事態に陥ったことか。
「い、今のは一体」
「みなさん地下室へ逃げてくだサーイ!」
少女は塀の隙間を油断なく伺い、ジョバンニは子供を逃がす。
そして今、火の粉を放った凶悪なポケモンが姿を……あらわさない。
「え。どういう事?」
あの火の粉は間違いなくポケモンの手により放たれた物だ。とすれば放ったポケモンが近くにいる筈だが……
少女は恐る恐る塀の向こうへ行って様子を確かめてみる。
そこには火を放ったと思われるマグマッグが倒れていた。近くに他の炎タイプのポケモンはいない。とすれば火の粉を放ったのはこのマグマッグだろう。しかしこのマグマッグ、様子がおかしい。
「ごぼ、ごぼぼ」
「瀕死になっているわけじゃない?」
そう、瀕死になっていないのだ。にも関わらず倒れて動かない。だれか他のポケモントレーナーに倒されたと言う訳でもないらしい。それなのに何故か動かない。正確にいうならば動こうとはしているが動けていない。
「なのにどうして動けないのかしら……。ん? これは?」
そこで少女は気づいた。よく見るとマグマッグ達の首筋には薄い針が刺さっている。鉄釘を薄く良く刺さるように加工したものだろう。これが原因なのだろうか。
「でもいくらなんでもこんな針で黙らせられるとは思えないんだけどな……」
本当に薄い針だ。よく刺さるだろうがこれでは大したダメージにはなり得ない。相手が人間ならまだしもポケモンならなおさらだ。
「おーい。大丈夫か!?」
その声にハッとなって気づく。一人の老人が駆け寄ってきた。少女はまだこの老人の名を知らないが彼はオーキド・ユキナリ。人呼んでオーキド博士。ポケモンの研究社である。
(今は考えても仕方ないかな……)
倒れたマグマッグを背に少女……
……一方そのころキキョウシティ郊外にて
「ふう。いきなり戦闘になるなんて」
少年は鉄の針を弄びながらそう呟いた。その傍らにはキリンリキの姿がある。
少年の手にある鉄の針はマグマッグに刺さっていた物と全く同じものだ。あのマグマッグは少年にも襲い掛かったのだ。対して少年はあの細い針で応戦した。応戦と言ってもやったことは単純で襲い掛かってきたマグマッグの首筋めがけて針を一直線に投げた。
しかしこの針の細さでは大したダメージには到底なり得ない。マグマッグの体力を奪いきることは不可能だろう。
しかしこの針はただの釘を削っただけの物ではない。
「『しばられのタネ』のエキスをしみこませて作った特性針! いっぱい作っておいてよかったよかった」
この針の力をもってすればあのマグマッグにうっかり誰かが触れてしまう等の事故が起こらない限りマグマッグは動くこともできない。あのマグマッグは『しばられ』ていたのだ。『しばられ』たポケモンは動くことも技を放つこともできないのだ。尤もふとしたはずみに解けてしまう事があるのが『しばられ』の難点だが……もとより倒すことを目的にはしていないので問題はない。
「さて、僕も調査を始めなきゃ」
そう言って少年は輝く太陽を見上げる。
少年にとって
「……必ずやり遂げてみせるよ」
少年のつぶやきが日の光にとけて消える。
今はまだその言葉に耳を貸すのはキリンリキしかいない。
しんぴのもりにて
主人公「プクリン……オンドゥルルラギッタンデスカー!!」
あくのだいまおう「ぷ、プクリンなんて知らないなぁ」
解説 状態異常『しばられ』について
原点ポケモンには存在しない状態異常。この状態異常になったポケモンは攻撃を受けるまで移動と攻撃ができない。
……これなんてチート? ポケダンのままだとあまりにも強すぎるのである程度の制限は設けるつもりですがそうでなくてもポケダンはヤバいアイテムいっぱいあるんだよなぁ(遠い目)