ポケットモンスター不思議のSPECIAL   作:Nフォース

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オリ敵登場
苦手な方はゴメンナサイ(土下座


第二十話「VSオクタン」

「見てたわよ! ああやって人にたかっているのね!」

「な、何のことかねクリス?」

 

 詰め寄るクリスの勢いに後ずさり、口元をひくひくさせながらミナキは答える。

 

「ひ、人聞きの悪い事を言わないでくれ。大体いつ私がたかったと言うのかね?」

「簡単な手品だわ!」

 

 バッサリと切り捨てられそのタネまで明かされてしまう。最早ミナキはクリスの攻撃、もとい()撃にたじたじであった。捕獲の専門家であるクリスはポケモンにしろ人間にしろ何かを観察する力に優れている。そんな彼女の目をチャチな奇術で誤魔化す事など不可能だ。よってミナキが言い逃れできる余地は、ない。

 そのようすをはた目から苦笑いしながらレイとキリンリキは眺めていた。クリスは基本的には優しく、親切な少女だ。間違っても鬼のような剣幕で一回り年上の男をたじたじにしてしまえる様な少女には見えない。しかしレイはこの豹変っぷりを予想できなかった訳ではない。寧ろクリスを本当に知っている人間なら誰もがこう思うだろう。ああ何時ものクリスだ、と。

 

(捕獲の専門家としてのクリスだって似たような顔してるよね)

(二面性と言う奴でしょう。そのオンオフの切り替えができる事こそ彼女の魅力だと思います)

(まさしくプロフェッショナルだよね)

 

 のんびりと考えているレイ達。しかし彼らも決してクリスの口撃に晒されたことがない訳ではない。寧ろつい最近、彼女からこっぴどく怒られたことが有った。言うまでもなくこの間のライコウとの戦いでレイが負った右腕の怪我についてだ。

 

(いーやー、あの時は大変だったな……)

 

 包帯を巻いた右腕をさすりながら回想する。あの時のクリスの怒り方と言ったらもう半端な物ではなかった。ライコウとキリンリキの攻撃が引き起こした爆発。その余波を受けた右腕はかなり広い範囲を火傷していた。普通の人間なら痛くて泣き叫ぶような怪我だとさえ医者からは言われそしてクリスからは怒られ、そして

 

(心配してくれた、のかな?)

 

 それだと嬉しい。怒られたことにもそれなりの意味があったように思える。怒ると言う行為はどうでも良い相手には決してできない事なのだから。クリスがレイに対してどこか恐れのような感情を持っている事はレイも察している。レイ自身にとっては当たり前の事であってもクリスにはそうとは言えない事がある。それゆえの距離間だと言う事も。

 

(僕と彼女では生まれてきた環境も育ってきた環境も違う。だからこれは仕方の無い事なのかもしれない)

 

 しかし、だからと言ってそれでレイの方からクリスを拒んでいればきっとこの距離は永遠縮まらない。ならばレイの方から彼女を積極的に、そして前向きに理解して行こうとレイは思う。

 

(なんて思ってもやる事は変わらないんだけどね)

 

 普通にしてればいい。自分は何ら恥じる事はしていないのだから。……今現在クリスに詰め寄られているミナキとは違って。手品の種も完全に明かされ、言い訳までしようとしたミナキに最早弁解の余地はない。正直かわいそうに感じてきたレイはここらへんで助け舟でも出そうかなと思って近づき――

 

「クリス! 危ない!」

 

 ――やはりその殺気に真っ先に反応した。クリスを背中から抱えて左に思い切り飛ぶ。一拍遅れてミナキも続いた。そして直前まで彼らがいた場所に『れいとうビーム』が撃ち込まれる。

 

(……攻撃地点はあそこからか!)

 

 普通のポケモントレーナーなら今の攻撃からは精々放ってきた角度を読み取るのが限度だっただろう。しかしあいにくレイは普通ではなかった。そして攻撃を先に仕掛けられたからには容赦する気は微塵もない。

 まずレイはバッグから石を取り出して左手で思い切り放り投げた。無作為に投げた石だが、まるで意志が有るかのように軌道を変えてレイが予測した場所へと飛んで行った。今投げた石は『ゴローンの石』と呼ばれる特殊な石でおよそ30m程度の距離にいる敵意のあるポケモンに対してすっ飛んで行く性質を持つ石だ。攻撃は勿論、敵を察知して飛んでいくと言うその性質上探知にも使う事ができる便利な代物だ。利き手である右手を怪我しているレイでも問題なく使う事ができる。『ゴローンの石』は視界の先に或るぽっかりと空いた穴に吸い込まれるように入っていく。そして着弾しポケモンの物と思しき悲鳴が上がる。

 

「クリスさん! 図鑑を!」

「わ、わかったわ!」

 

 すぐさま懐から図鑑を取り出し敵ポケモンの検索にかかる。『れいとうビーム』なんて強烈な技をこちら目がけて使ってきたのだ。どう考えても敵意が有る。攻撃に備えキリンリキに何時でも指示が出せるように気を配りながらクリスを待つ。

 そして直ぐにクリスは声を上げた。

 

「レイ君!」

 

 図鑑が検索したデータが直ぐに表れる。レイもその画面を見た。

 

オクタン

あなにはいりたがるせいしつで

ほかのポケモンがつくったすあなを

よこどりしてねむる。

 

 

 なるほど。ゴローンの石があの穴に向かって飛んで行ったわけだ。図鑑の説明の通りオクタンは穴に潜むポケモン。そして同時に口からさまざまな砲撃のような攻撃を放つスナイパーだ。

 

(『れいとうビーム』はまず間違いなくコイツが放ったと見て間違いない)

 

 『れいとうビーム』のような強烈な技を使えるポケモンがそう何体もいるとは思えない。特に野生では。こおりタイプの技の中でもかなり上に位置するこの技をそうホイホイ撃たれても困る。

 

「キリンリキ!」

 

 颯爽とレイは指示を下す。こういった手合いが相手ならば先ずは穴からいぶりだす所から始める。それが定石だ。先ずキリンリキは颯爽と『ゴローンの石』が着弾した地点に駆けそしてその中に向かって得意の『サイコキネシス』を放つ。念力で持って空洞を揺らし、地崩れを起こす狙いだ。地崩れが起きてしまっては穴のなかにいるオクタンはひとたまりもないだろう。

 

(……ひとたまりもない、筈なんだけどなぁ)

 

 これは一体どういう事だろう。幾らキリンリキがサイコキネシスで穴の入り口からその中に至るまで滅茶苦茶に崩壊させてもオクタンは出てこない。クリスもミナキもその違和感に気が付いたようで目を丸くする。その傍らでレイは徹底的に分析する。

 

(オクタンは確かに穴を好むポケモンだ。そして穴の中から獲物を口から吐く様々な光線のような技で持って狙い撃つ。その威力は確かに驚異的で、その狙いは正確だ。けれどその代償としてオクタンは素早さを犠牲にしている)

 

 足の吸盤で自身の体を固定するオクタンの狙撃の狙いは確かに驚異的な制度を誇るが、吸盤何て物を使ってがっちりと自分自身を固定する以上オクタンは素早く行動できない。ならばこそ、居場所を特定されたことを悟ったのならばすぐに出てきそうなものだが……思わずクリスの方を見る。レイのはオクタンが出てきたところをキリンリキの念力でもって締め上げてしまおうと考えていたのだったが……

 

(出てこない)

 

 見逃したか、いやそれはない。そんな自問自答を行う。流石に動きの鈍く、そして目立つ体色をしているオクタンの移動を見逃すほどレイは甘くはない。すると穴の中でひたすら耐え続けているのだろうか。

 

(いいや、それもない。そこまで体力が有るポケモンじゃあオクタンは無い)

 

 別段無い方でもない。至って並の体力をオクタンは持っている。しかしその程度では地中に生き埋めにされたら堪らずダウンする。しかもオクタンは『あなをほる』なんて技も覚えない為生き埋めの状態から脱出できる方法は無いのだ。

 これはどういう事だろう? そう思って思案するレイ。彼にとってこの謎はある意味先日戦ったライコウよりも手ごわかった。ライコウの電撃も土壇場で放ってきた『めざめるパワー』も驚きこそすれど理解できないものではなかった。だがあの穴の中からオクタンが消えてしまえる方法などレイには理解できず、また思いつかない。

 しかし戦いの場で悩んでいるのは下策中の下策だ。とにかく何か行動しなくては。

 

「クリスさん!」

 

 レイの傍らで険しい顔をしていたクリスはレイの声に振り向く。 

 

「レイ君? どうしたのかしら?」

「クリスさんはオクタンを穴の中からパッと消してしまえる方法を何か思いつく?」

 

 レイのそんな言葉にクリスはポカンとした顔になった。まるで訳が分からない。一体何故この少年はこんなことを考えているのだろうか、と。

 

「まさかレイ君……あのオクタンが野生のポケモンだなんて思ってない、よね?」

 

 恐る恐ると言った様子でクリスはそう切り出す。誰がどう考えても水中にすんでいるオクタンが地上で暮らしているなどと思うようなことが有る筈が

 

「へ?」

 

 そんな間抜けな返答にクリスは頭を抱えたくなった。ちなみにこれがオクタンが穴の中からいきなり消えたトリックである。て言うかトレーナーがボールに戻しただけ、であった。

 

 

 

 

 

「ほぉ……」

 

 オクタンをボールに戻したトレーナーはレイを見つめながら思わず感嘆の声を漏らした。

 

「あの小僧……何と言う反射神経だ。あんな小僧がいるとはな……」

 

 木の陰から見つめながら手を口元にあてる。この態度から、あの『れいとうビーム』は悪意を持って放たれたのだと言う事がうかがえる。もしこのトレーナーの声がレイに聞こえていれば今頃キリンリキに死ぬほど追い回されているに違いない。勿論聞こえていないからこそこんなことを言っているのだが。

 

「――面白いじゃないか」

 

 笑みを零しながらポケギアを懐から取り出す。とりあえずこの結果を連絡しなければならない。

 

「こちらコシュマール。作戦は失敗だ。スイクンに変身したメタモンを投入するタイミングを失ってしまった……ふむ? いや違うな。私のミスではない。そもそも作戦自体に難があったと私は思うがね?」

 

 あんな反射神経を持った少年がいる事を予想できたわけではなかったが、そもそも他人に依存する作戦は美しくない。そうコシュマールと名乗った男は考える。そもそも他人を意のままに操る事は人間の身には決してできない。つまり誰かの行動を何の制限もせずに寸分違わずに予測することは不可能なのだ。なのにそんな穴のある作戦にダグトリオを三匹も使って穴を掘らせ、そしてそこにオクタンを潜ませると言う手間をかける事にはコシュマールは馬鹿らしいとしか思えなかった。

 

(さて、どうしようか)

 

 やたらと煩いポケギアを切って懐にしまい、モンスターボールを弄びながら思案する。作戦が敗れたと言うのにコシュマールはいたって冷静だ。そもそもこの作戦に意欲を示してはいなかったと言うのは勿論そうだが、なんと言うか作戦の遂行以上に面白そうな物を見つけてしまった今、彼の興味は完全にそちら側に向いている。

 

 ――そして彼の笑みが歪みを増した。悪意を持っているのに、愉快さをも孕んだ歪な笑み。それこそがこの男の本質をも表しているのだ。

 

「少し、遊んでみようか」

 

 懐から別のボールを取り出して、軽く前方へ放る。

 ポケモンバトルの開幕だ。




ポケダン要素と図鑑要素を実験的に増やしてみたらちょっとつぎはぎっぽくなってしまった。むずかちい(´・ω・`)
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