ポケットモンスター不思議のSPECIAL   作:Nフォース

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久々の投稿……って評価下がってるぅ!?
い、いかん。進歩しなくちゃ。実習何て言ってる場合じゃねえ!

……つっても次の投稿はまた先になりそうですorz


第二十二話「VSムウマ 前編」

「行くぞ」

 

 精々私を楽しませてくれ。

 コシュマールは誰よりも真摯に恐ろしく歪んだ祈りを捧げる。気乗りしない任務で見つけた面白そうな玩具。幼児のように無邪気に、されどメスを握る医者の如く冷徹ににこの男は手を伸ばす。

 

「ムウマ『シャドーボール』。ブーバー『かえんほうしゃ』」

 

 まずは様子見の遠距離攻撃。しかしただの攻撃ではつまらない。戦いを楽しむためには自分のできる事と言う奴を相手にしっかりと見せてやる必要がある。そしてその上で相手が自分の攻撃に対策をして、さらにコシュマールが新たな手を繰り出して――この無限のループこそが戦いであるのだから。

 ゆえに彼のポケモンが放つ技はそれぞれ普通の攻撃ではない。

 

「なっ!? 『シャドーボール』が曲がった!?」

「速い、速すぎる!? これが『かえんほうしゃ』だと!?」

 

 彼らの困惑と驚きに満ちた声にコシュマールは内心でニンマリと微笑み、そして顔には鉄面皮(ポーカーフェイス)を張り付ける。戦いの場において心の内は晒すものではない。相手に感じさせる物だ。相手が感じられないのであればそれまでの事だしそんな相手はその場で『潰す』。感じられるのであればそれは相手に思いが通じたと言う事でありそれ以上に喜ばしく愉快な出来事は無い。――故にその相手を全力で『壊そう』。要するにやる事は変わらないと言う訳だ。

 

(さて、戦局に目を向けてみようか)

 

 心底楽しく、それでいて表面的にはこの上なく冷徹に戦いの様子を見る。ムウマの放った弾道が曲がり相手をホーミングする『シャドーボール』はあの鋭い感覚を持った少年がキリンリキであえて受け止める事によって攻略した。まあそれが妥当だろう。あんな物に気を取られていたらまた何時『ほろびのうた』を歌われるかわかった物では無い。それを踏まえた上で受け止めると言う選択肢は是だ。

 そして『かえんほうしゃ』だが、そもそも『かえんほうしゃ』と言う技は炎を口から熱線として吹き出し放つ技である。事実最初の『かえんほうしゃ』はブーバーもそのように使っていた。しかしコシュマールのブーバーは『かえんほうしゃ』を放射状に吐くだけでなく炎の弾丸のようにして超スピードで放つ事もできる。威力はほぼ同等で射程距離とと速度に優れた弾丸だ。まあこれにも難点はある。通常の『かえんほうしゃ』に比べれば格段に攻撃範囲が狭い事だ。敵を『狙い撃つ』には最適だが、多数の敵を『薙ぎ払う』事にかけては格段に通常の『かえんほうしゃ』に劣る。殊更に素早いポケモン――例えばマルマインやウインディ――を相手にするならばその欠点は如実に表れる。

 あのクリスと呼ばれていた少女は最初こそそのスピードに驚いていたが直ぐにその特徴に気づいたようでウインディの『しんそく』で翻弄しながら即座にネイティを繰り出し『ひかりのかべ』を定点に張る事で薄い弾道を的確に妨げた。素早いウインディを撃つには狙いを絞らえばならない。故にクリス達からしてもブーバーの狙いが解りやすいのだ。

 

(まあこの程度で仕留めれても興醒めだが)

 

 内心でそんな事を呟く。もし彼の仲間――飽くまでも今の所だが――が見ればコシュマールに対して怒りの声を飛ばすだろう。作戦を蔑ろにした挙句に自分の楽しみを優先し要らぬ戦いまでしている。それは全く持って褒められた事ではない。そんな事コシュマールは知ったことじゃ無いが。

 

「クリスさん! ミナキさん! ムウマは僕が押えます! お二人はブーバーを!」

 

 そうキリンリキに乗った少年は叫ぶ。良い判断だ。コシュマールは益々嬉しくなった。あの少年はこの戦闘で何が一番重要なのかをもう理解している。問答無用で敵を全滅させる『ほろびのうた』を歌えるムウマを抑えることがこの戦いでは最も重要だ。そしてムウマのゴーストタイプの技をキリンリキはノーマルタイプを含んでいるため無効化できる。結果としてムウマを抑えやすいのだ。

 

「キリンリキ!」

 

 特に少年は技の指示を出さず、キリンリキを呼んだだけだがそれだけで意志が通じるらしい。キリンリキは即座に『サイコキネシス』をムウマに向かって放った。

 

「『まもる』だムウマ」

 

 強烈な威力の『サイコキネシス』だが防げない事は無い。思念による防壁を発生させたムウマはその攻撃を難なく防ぎそして接近する。

 

「『10まんボルト』」

 

 ムウマの首飾りから電撃が迸る。『シャドーボール』が通じないならば別の攻撃に切り替えれば良いだけだ。電撃ならばキリンリキにも問題なく通じるだろう。そう思っていたがキリンリキに命中する前に電撃が掻き消されてしまった。

 

(ほほぉ……器用な真似をする。『サイコキネシス』でもって空気を取り除き真空を作り出したか)

 

「電撃なんか食らうか! 追撃するぞキリンリキ!」

 

 反撃に迷いはない。即座に攻撃態勢を整え『サイコキネシス』を放ってくる。素直に感服する。あのキリンリキは戦い始めてからこの方『サイコキネシス』しか使っていない。攻撃にも防御にもだ。

 

(余程得意な技なのだろうな。面白い)

 

 心の中で笑みを浮かべ、されどコシュマールは同じ心でこうも問いかける。知っているか少年君? と。

 

(戦術と言う物は、長所から折れ始める物だと言う事を)

 

 

 

 恐るべき敵だ。レイは額から落ちる汗を拭う。

 

「行くぞ」

 

 最初にあの青年がそう言った時。特にそこまで追い詰められていた訳でもないのに全身の毛が逆立った。あの台詞を、戦いの始まりを宣言するまではヘラヘラと道化師のように振る舞っていた青年は一瞬にして死神へと変貌したように思えた。それ程の殺気。それ程の強者の気配。あの様な気迫を出せる男の潜ってきた死線とは如何程の物か。

 

(この男は危険だ……油断はできない)

 

 この戦いで一番重要なのはムウマの行動を抑える事。聞いたものを問答無用で死に至らせる『ほろびのうた』を歌える状況を封じ込めねばならない。コシュマールの思った通りレイはその事に仕掛け人のコシュマールを除けば誰よりも早く気が付いていた。

 

「キリンリキ! 動きを封じるよ。ムウマに『ほろびのうた』を歌う暇を与えるな!」

 

 キリンリキは声ではなく仕草でもって了解とレイに伝える。念力を角に集中させ得意技である『サイコキネシス』を発生させその強力な念力でもってムウマを縛りつけようとする。ムウマを初め、ゴーストタイプのポケモン多くは実体がない。それ故にノーマルタイプやかくとうタイプの技が通じず、そしてかつてレイが挑んできた『不思議のダンジョン』の中でもその性質を発揮し壁の中をすり抜けたり壁の向こうから攻撃を行うなんて言う掟破りな戦術をも取って来た。勿論壁の中を移動したり壁の中から攻撃なんて行いにはそれ相応のスタミナが必要……俗っぽい言い方をすればお腹が減るのだが、それはまあさておきそもそも実体がないゴーストタイプのポケモンを『縛る』なんて事は普通はできない。

 しかし、それでも方法は有る。実体のない相手を縛るのにはこちらもまた()()()()()()()()()()()()()()()()。例えば()()の様な実体のない力を持って縛ってしまえばそれがムウマを縛る事ができる。

 つまりキリンリキの『サイコキネシス』が有効なのだ。

 

(ただし当てれれば、の話だけど)

 

 問題なのはあのムウマが予想以上に素早い事だ。ひらひらと揺れるように漂いながら時に鋭く飛ぶ。単純な素早さならばキリンリキが圧倒的に勝っているのになかなか捕える事ができない。小回りを効かせてキリンリキを翻弄していた。

 

(厄介だな……あの軌道)

 

 捕え所のないと言う言葉がしっくりくるその姿はやはりゴーストタイプらしい。純粋な混じりけ無しのゴーストポケモンはジョウト地方にはムウマしか生息していないと言う。であればムウマはこのジョウト最もゴーストらしいポケモンと言えるかも知れない。それでいて時折鋭い反撃を飛ばしてくるのだから侮れない。『ほろびのうた』だけが能と言う訳ではないのだろう。

 

(だが――)

 

 レイの脳裏にはとあるポケモンが思い出される。一つ目で腹に巨大な口を持ち、途轍もない怪力と優れた頭脳を持つゴーストポケモンだ。拳の一発で岩に風穴を開け、嫌になるほど頭も切れるあのポケモンに比べればこのムウマなんて大した事は無い。レイとキリンリキにはそう思えた。

 

(電撃は先日のライコウのお蔭で目が慣れてるから避けやすい。『シャドーボール』はそもそもキリンリキには通じない。現状はこっちが有利だ)

 

 あのムウマが如何に鍛え上げていられようとも伝説のポケモンであるライコウに匹敵する強さかと言えば決してそんな事は無い。なにせライコウはそこにいるだけで自然災害を発生させることのできるポケモンだ。そんなポケモンの放つ電撃を軽々避け、或いは防いだレイに電撃が通じるはずもない。

 

(問題は……右腕だな)

 

 ライコウとの戦いで負った腕の火傷。これが最大の懸念事項だ。右腕は使えないと考えた方が良いだろう。一応両方の腕を器用に使える様に鍛えてはいるがそれでも利き手は右手だ。それが使えないと言うディスアドバンテージは決して無視できるものではない。

 

「引き続き『10まんボルト』だムウマ」

(おっと行けない)

 

 相手の攻め手は休まっていない。当然だ。一度避けられたぐらいで相手も攻撃をやめる理由にはならないだろう。寧ろ避けられたなら、その追撃を考えるのも戦略だ。

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