原点ポケモンプレイヤー「なんだかぷかぷか浮いてて和むポケモンだなぁ」
ジュースのおかげで体力が回復したキリンリキだがやはりポケモンセンターに連れて行った方が良いと言うクリスの主張によりポケモンセンターに向かったクリスとレイ。キリンリキとクリスの手持ち(ついでに行うことになった。彼等もキリンリキとのバトルで体力を消耗していた)の検査を二人は待っていた。
「それにしても良く育てられてるんですね。あのキリンリキ」
「え?」
「私、あそこまで強いエスパータイプのポケモンはそんなに知りませんよ」
これがクリスの率直な感想だった。
あのキリンリキ。バトル中はスピードやパワーと言った基礎的なポケモンの
ポケモンは四つまで技を習得することができる。あれ程のキリンリキがまさか使ってきた二つしか技がないという事は無いだろう。恐らく四つの技を使えるはずだ。
勿論あの戦闘中には使う機会のない技だったのかもしれないがそれを踏まえても大したキリンリキだ。
「そうだね。キリンリキは強いよ……もっとも本人にそう言うと決まって『私なんてまだまだです』って言うんだけどね」
「へえ。そうなんですか」
「そう。そうなんだよ。キリンリキは謙遜と努力が人一倍好きな奴だから」
あたかも自分の事のように嬉々としてキリンリキの事を話すレイ。彼はキリンリキの事が大好きなのだろう。キリンリキも同じく。二人に間には強い絆が感じられた。
「まあキリンリキがすごく謙虚なのはキリンリキ以上の実力を持っているポケモンが身近にいたからって言うのもあるんだけどね」
「へえ。そうなんですか?」
「うん。例えばさ」
そこでレイはポケモンセンターの窓の外にある木を指さした。古くて太い大きな木。長い時を過ごしてきたであろう巨木を指さして
「あの木位なら一撃で切り倒せるポケモンとかね」
「あの木を!?」
「うん。『リーフブレード』って技でね」
「『リーフブレード』?」
「そうだよ……あれ、クリスさん? どうしたの?」
クリスは今までにも多くの数、そして種類のポケモンを捕獲してきている。彼女の捕獲の専門家としての活動は何も今に始まったことではない。
そしてたくさんのポケモンを捕獲していると言うことは彼らの使う技や生態についてだってそれなりの知識がある。
しかしそんな彼女でも『リーフブレード』なんて技は聞いたことがない。
……しかしこれは仕方のないことである。なぜならば、今現在において『リーフブレード』を使えるポケモンは一体も発見されていないからだ。また、仮に使えたとしても、覚えた例は一件も報告されていない。当然クリスが『リーフブレード』を習得したポケモンを、いくら捕獲の専門家だからと言って捕まえたことが有る筈もない。よってクリスが知らないのも仕方の無いことなのだ。
何はともあれそのような聞いたこともない技名を聞いたとあれば怪訝な顔をするのが当たり前の反応である。
「クリスさん?」
「……あ、ごめんなさい。少し考え事をしていました」
「そうですか?」
クリスのレイに対する印象は『何だか謎めいた不思議な子』と言うのだ。額の傷と言い人間の言葉を話せるキリンリキを連れていることと言い『リーフブレード』なんて詳細不明の技名を口にしたり、かと思えばクリスの蹴ったボールを釘を投げて撃ち落とすなんて高等技術をやってのけたりポケモンの傷をたちどころに癒すジュースを作ったり……とにかく謎めいている。
「あ、クリスさんのポケモン。検査終わったみたいですよ」
レイの声を聞いてみるとポケモンセンターの係りの人が彼女の手持ちをつれてやってくる所だった。
「本当だ。……じゃあ私は行きますね」
検査が終わったからにはもうポケモンセンターに用事はない。そもそもクリスには本当はポケモンセンターに行く用事などなかったのだから。あのキリンリキとのバトルがなければ当初の目的……オーキド博士の元へまっすぐ向かっていたはずなのだ。オーキド博士と約束した時間もそろそろ危ない。本当はもっと早くに向かうつもりだったのだが正直あれ程のレベルの高いポケモンとバトルすることになるとはクリス自身思っていなかったのだ。
(ってまあバトルをしかけたのは私の方だし悪いのは私なんだけど……)
しかしそれだけあのキリンリキには魅力があった。あのレベルならばクリスのパーティでも即戦力だ。野生でなかったのが悔やまれないと言ったら嘘になる。捕獲用の技こそないかもしれないがあのキリンリキのスピードなら使い用は幾らでもある。それに捕獲用の技がなくても後でもう一度覚えさせる方法は幾らでも有るのだ。
「じゃあ、縁があったら。また」
「ええ。さよなら」
味気ない別れの挨拶を経てクリスはヨシノシティ北のオーキド博士の第二研究所へ向かった。
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・・・
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「……えーとこれはどういう事なのかな?」
「……僕も知りたいです」
オーキド博士の第二研究所の前で二人はばっちりと対面することになった。ちなみに先ほどポケモンセンターから離れてわずかに十五分後の出来事である。
「えーとクリスさんもやはりオーキド博士に用事があるんでしょうか?」
「え、ええ。そのつもりですけど。ひょっとしてレイ君も?」
「ええオーキド博士に聞きたいことが有るので」
「ああ、そうなんですか」
なんと言うか気まずい。「縁が有ったらまた」とさっきレイは言っていたがあるにしてももう少し先の出来事かと思った。わずか十五分後に再会するというのは予想外すぎる。それを思っているのはレイも同じでやっぱりきまずそうにしている。
「……お先にどうぞ。私はかなり長い話になりそうだし」
「え!? いや、クリスさんこそ先にどうぞ。僕は特に約束もせずに来てるので」
「いやいや、レイ君こそ」
「クリスさんこそ……」
レイにクリス。二人とも他人に親切な性格――でありながら芯の強い部分がある――をしているためかどうにもこうにも譲り合いになってしまった。お互いに遠慮と譲りを繰り返し。そんな時間を浪費するだけの不毛な事を
「君たち二人は何をやっているのじゃ……」
二人はみかねたオーキド博士がわって入るまで続けていたとさ。合っているようで、合っていない二人である。少なくとも今は。
結局二人同時に話を聞こうとオーキド博士が言った為それで落ち着くことになった。
……といってもクリスにする話は彼女がヨシノシティ近辺のポケモンは全種類『ここに来るついで』で捕獲してしまっていたため無いも同然だったのだが。最初こそ彼女は「話が長くなる」と言っていたが実際にはそんなことはなかったぜ、と言う訳である。
むしろ長くなるのは少年の話の方だった。
「願いを叶えてくれるポケモン……じゃと?」
「ええ、僕はそのポケモンを探しています」
なぜかクリスの頭に一瞬だけ目がルビー色で体の白い「僕と契約して魔法少女になってよ」なんてことをのたまう意味不明な生物が浮かんだ。全力で頭を横に振ってそのイメージを追い出す。なぜかソイツと関わると碌でもないことが起こる予感がした。
それはそれとして
「願いを叶えてくれるポケモン……とはのう」
「信じられないかとは思いますが確かな文献もあります。読みますか?」
そういってレイはポーチから石板を何枚か取り出しオーキドに手渡した。クリスも気になったので横から覗いてみる。そこにはクリスの見知らぬ文字が羅列されていた。
「……この文字は?」
「アンノーン文字とそう呼ばれる古代文字です。ここに記載されているのは『千年彗星』についての記述ですね」
「解説されんでもわしはポケモン博士じゃ。アンノーン文字位読めるぞ……ふむ。確かに。『千年彗星』によってやってくる……いや、『目覚める』かの? そのポケモンが願いを叶えると書いておる」
「そしてこちらが天体観測のデータです」
「古代のと現代のデータ。両方用意してあるのか?」
「はい。それで古代の天体から彗星をピックアップして、今からちょうど一千年前程度にこの彗星が接近しているのがわかりますか? この一際大きい奴です」
古代の図に指をさした部分には確かに大きい瞬く彗星がある。図にはほかの星と比べても非常に大きな輝きを放っている星として描かれている。
「そしてこちらが現代のデータです。ココ見てください」
「ふむ……? ん、これは!」
レイの指さした先ではまたしても彗星が……それも全く同じように輝く彗星が観測されている。少なくとも図を見比べる限り、そっくりだ。そしてその星は今まさに地球から観測できる位置へ向かっている。
「コイツが『千年彗星』ではないでしょうか? 年代も一致します」
「……なるほど。筋は通っておるの」
あごひげを撫でながらオーキド博士は唸る。素晴らしく正確なデータだ。そして良く作りこまれている。そして恐らくオーキド博士にも見やすいよう配慮して作られているのだろう。いくつもの彗星を調べた跡があるがそれがキチンと消されていることからもそれが伺えた。
「君の名前は?」
「レイと言います」
「ふむ、レイ君か……わしの知る研究社にレイと言う名前の若者はいなかったのう……新参者か?」
「あ、違います。単純に僕がこのポケモンに関心があるから調べているだけですよ」
「ふぅむ……そうか」
何というか自分の助手としてほしい人材だなとオーキド博士は感じた。物腰は柔らかく口調は丁寧で真面目。少し前に図鑑を渡した
「ごめんなさい。このポケモンの名前も生息地もわからないので、かの有名なオーキド博士なら何か知っているのではないかと思ってここまで来てみたのですが……」
「そう言われてものう……残念ながらわしも願いを叶えるポケモンなんて言うのは流石に初耳じゃ」
「そうですか……」
落ち込んで黙ってしまう少年。しかし知らない物を知っていると言っても仕方がない。しかしここまで正確なデータを提出されたのになにも知りませんではなにか不憫だ。
そして何よりオーキド自身願いを叶えるポケモン、と言うのには心惹かれた。間違いなく伝説や幻とされるポケモンの類だろう。ポケモンの研究社としてはそんな存在に心が踊らされないはずが無い。
しかし――
「……一つ聞かせてもらってもいいじゃろうか?」
「ええ。構いませんよ」
そういうポケモンを追い求めるのならオーキド博士は大人として、これだけは聞かなければならない。願いを叶えるなどと言う途方もない力。それをどう使うのか。即ち
「そうまでして叶えたい君の願い事とは一体何なのじゃ?」
(・×・)「ジャーンジャーン!」
ポケダンプレイヤー「げぇっ! フワライド!?」