「何でお前がここにいるんだ……風丸!!」
フードの中から見えた顔は俺達がよく知る顔だった。ずっと会いたかった、けどこんなところで会いたくなかった。だって、この男……研崎と一緒に出てきたってことは、そういうことなんだろ?クソッ、この野郎どんな手を使いやがった?まさか人の心を操る技術まで持ち合わせてやがったのか。
「……俺だけじゃないぞ」
「……よう」
「……!!染岡っ」
それだけじゃない。風丸に続いてもう一人がフードを外すと……その正体は染岡だった。更に他のメンバーもフードを外す。半田にマックス、影野に宍戸。少林、栗松。チームから少しの間抜けていた皆が全員そこにはいた。しかも、後ろには木戸川の西垣。イナズマキャラバンのバックアップチームとして活動していた杉森、シャドウまでいる。
「……研崎。お前、皆に何しやがったッ」
「ようやく私の野望を実現する時が来たのですよ」
「野望……?」
「ふっ……これは再会の挨拶代わりだ」
「あれは!!」
その時、風丸が懐からあるものを取り出す。それはエイリア学園の黒のサッカーボール。それを風丸は躊躇なく撃ち出す。そのパワー、スピードは……以前の風丸ではありえないレベル。
「うぐ……ぐあッ!?」
「守ッ!!」
「いてて……風丸、なんでこんなことを!?」
「……俺達と勝負しろ!!雷門イレブン!!」
風丸がそう俺達に突き付けると、その胸元には黒い光が煌めいている。何だ……あの光?
「あれはまさか……エイリア石!?」
「馬鹿な、エイリア石は研究施設と共に破壊されたはずだ!」
「ククク……まずは皆様にお礼を申し上げましょう。皆様のおかげで無駄極まりないジェネシス計画に固執していた旦那様、吉良星二郎を片付けることが出来たのですからね」
「……まさか、あの爆発は!!」
「その通り、私がやったのです。エイリア石を私だけのものにするために!!」
「テメェ……あの爆発のせいで何人の命が危険に晒されたとおもってやがる」
「そんなことはどうでも良いのです。それより加賀美柊弥くん、キミにはより特別にお礼を言わなければなりませんね」
「……どういうことだ」
「貴方達も見ていたでしょう?吉良のあのプレゼンテーションを。その中に映っていたエイリア石は……何色でしたか?」
「……確か、紫色」
「そこのお嬢さんの言う通り。では、今皆様が目にした光は?」
「黒色……」
「そう!!従来の紫色のエイリア石が100%の出力だとしたら、この黒のエイリア石……真・エイリア石の出力は200%!!この石のおかげで私は究極のハイソルジャーを生み出すことに成功したのです!!」
「それが俺と何の関係があるんだよ」
「まだ分かりませんか?この真・エイリア石は……貴方のおかげで完成したのですよ!」
「……は?」
俺の……おかげ?どういうことだ、意味が分からない。コイツに協力した憶えなんて全くない。
「分からないのも無理はありません。福岡で貴方達雷門イレブンとジェネシスが初めて戦った時、何かおかしいとは思いませんでしたか?」
「……何がだ」
「エイリア学園最強のチームだというのに、まだジェミニストームしか倒していない貴方達の前に現れたのですよ?イプシロンとは引き分け、同じマスターランクとはいえダイヤモンドダスト、プロミネンスとは戦ってすらいない。そんなチームに対し、最強のチームをぶつけるはずがないとは思いませんか?」
「言われてみれば、確かに……」
「あの時、執拗に痛めつけたのは加賀美君、貴方の潜在能力を100%引き出すためだったのですよ。イプシロンとの試合の中で確認された石の変化。それを貴方の影響と判断した私は、ジェネシスを差し向けるように吉良を誘導したのです」
「なんと外道な……!」
「結果はどうでしょう!!予想以上の大成功でしたよ!!200%までの出力の向上!!あの戦いを通しての雷門イレブンのパワーアップによるジェネシスの撃破!!吉良の失脚!!そして全てを手に入れた私が作ったのがこのチーム……ダークエンペラーズなのです!!」
「く、狂ってる……」
「本当に感謝しますよォ加賀美君!!キミのおかげで私はこの世界の神になれるんですからねェェ!!」
「……柊弥」
「大丈夫だ、修也」
狂ったように語る研崎。その矛先である俺を心配してか修也が俺の肩に手を添えてくれるけど、大丈夫だ。爆破で皆の命を危険に晒したこと、風丸達を貶めたこと。この2つだけで確かに相当キレてる。けどここで我を失うほどにキレてしまったら、今ここでコイツの目論見を止めることは出来ない。
「今日は我がハイソルジャーの本当の力を証明しに来たのです。彼らが……君達雷門イレブンを完膚なきまでに叩き潰し!!私の計画の価値を最大化にするのですッ!!!」
「……ッ、こんなの嘘だ!!」
「守!!」
「お前達は騙されてるんだろ!?なあ!!風丸ッ!!」
「……ふッ」
研崎がそのまま自分の目的を語る。すると、守が飛び出して風丸の肩を揺らしながら問いただす。揺さぶられる風丸は何も語らず、握手を求めるようにただ手を差し出すだけ。応えるようにその手を掴もうとした守に返ってきたのは……無情な平手打ちだった。
「……ッ」
「……俺達は、自分の意思でここにいる!!」
「嘘だろ……風丸」
「この真・エイリア石に触れた時、力が漲るのを感じた。俺は強くなりたかったんだ……加賀美、お前みたいにな」
「……」
「そんな俺に真・エイリア石は信じられない程の力を与えてくれたんだ……俺のスピードとパワーは、桁違いにアップした!!この力を、思う存分に使ってみたいのさ!!」
「おい風丸……俺がエイリア石に頼ったことがあったか?そんな力に意味なんてないだろ!?」
「それは違うでヤンス!強さにこそ意味があるでヤンスよ!」
「俺はこの力が気にいったぜ……もう豪炎寺にも吹雪にも、お前にも負けねえぞ、加賀美!!」
「お前ら……」
「俺達は誰にも負けない強さを手に入れたんです」
「エイリア石の力がこんなに素晴らしいなんて思わなかったよ」
「いつまでも走り続けられる、どんなボールだって捌くことが出来る!」
「全身に漲るこの力を見せてあげますよ!!」
「俺はもう影じゃない……ついに存在感を示すときが来たのさ」
皆が次々に真・エイリア石で得た力を語る。皆どうしちまったんだ……フットボールフロンティアで優勝した時、俺達はそんな偽物の力に頼ってなかっただろ?
「雷門イレブンはダークエンペラーズの記念すべき最初の相手に選ばれた。さあ、サッカーやろうぜ……円堂」
「……ッ!!」
「守……」
風丸が再び手を差し出す。それに対して守は……さっきやられたようにその手を弾いた。
「……嫌だ。こんな状態のお前達と試合なんて!!」
「そうっス、嫌っス!!」
「ああ。お互いに得るものは何も無い!!」
「……ふっ、試合を断ればどうなるのか教えてあげましょう。染岡」
「おう」
「まずは、雷門中を破壊します」
「ダメだ染岡!!やめろ!!」
「お分かりでしょう?貴方達に試合をしないという選択肢はないのですよ」
「……いいぜ、受けてやる」
「……ッ、柊弥!?」
守に壁山、鬼道までもが試合を拒否する意志を示す。しかしそれに対して研崎は脅しを掛けてくる。指示された染岡は黒いサッカーボールを校舎に向け、俺達に見せつける…俺達に選ぶ権利は無いってことだ。
俺も皆と同じ意見だ、こんな状態で風丸達と試合なんてしたくない。けど、ここでやらなきゃ研崎の計画を放置することになる。風丸達の間違いを正すことが出来なくなる。それだけはダメだ、仲間として……友達として、俺達が止めなきゃいけない。
「やるぞ守。俺達が止めてやるんだ」
「……分かった!勝負だ!!」
「やっとその気になりましたね」
「円堂、加賀美。人間の努力には限界があることを教えてやる」
そうして俺達とダークエンペラーズの試合が決定する。皆の空気は……当然重い。そりゃそうだ、俺だって皆と戦いたくない。けどやるしかないだろ。まさか、こんな形で風丸達とサッカーすることになるなんて思わなかったけどな。
「……加賀美」
「はい?どうしました、響木監督」
「……」
試合の準備をしていると、響木監督が俺に話し掛けてくる。その表情はどこか曇っていて、何か後ろめたさを感じる。一向に言葉を切り出さない……いや、言葉を選んでいる?
「お前は聞きたくないかもしれないが、これは監督としての判断だ……聞いてくれるか?」
「……?はい」
そう返すと、響木監督は両手を俺の肩に置く。
「加賀美。お前をこの試合に出すことは出来ん」
「……えっ」
「ジェネシスとの試合でお前はもうボロボロだ。時間が経っているならまだしも……今日の午前中にあったばかりのことだ。事実、研究施設を脱出する時も一人では動けないほどだった。そんなお前を……試合には出せない」
「ま、待ってください響木監督!移動中ずっと寝ててもう体力も回復しました!怪我だってしてません!!ですから、俺を使ってください!!」
「……ダメだ。無理をしてお前が壊れてしまったら、俺は瞳子監督に合わせる顔が無い」
「で、でも……真・エイリア石は俺のせいで生まれたようなものです!!その責任は俺が取らなきゃ」
「加賀美!!」
響木監督の手に、力が篭もる。
「理解してくれ……もしお前に何かあれば、悲しむヤツが多いことは分かるだろう」
「……ッ!!」
「柊弥、俺達に任せておけ」
「修也……」
「そうだ加賀美。お前は休んでろ」
「僕達が染岡君達の目を覚ましてくるよ」
「鬼道、吹雪」
「柊弥!!」
「……守」
「任せとけ!!」
……俺は、まだまだ弱いな。もっと強かったら、皆と一緒に戦えたかもしれない。アイツらの間違いを正せたかもしれない。だから、これは戒めだ。大人しく響木監督の指示に従う。
「……分かりました、響木監督。すみませんでした」
「いいんだ、お前の気持ちは十二分に分かる」
「よし皆……柊弥の分も頑張るぞ!!」
『おう!!』
俺がベンチに座ったタイミングで皆はフィールドに足を踏み入れる。俺の代わりに入るのはリカで、ベンチは俺と一之瀬、目金だ。一之瀬もジェネシスとの試合で怪我をしたばかりで当然まだ癒えていないからな。
「柊弥先輩……大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、ありがとな」
春奈が俺の隣に座って声を掛けてくれるが、問題ない。最初は取り乱したが……響木監督の言う通りだからな。
「皆大丈夫でしょうか……柊弥先輩ほどの危なさはないとはいえ、ジェネシスと戦ったばかりですし」
「正直、万全では無いと思う。状況は違うとはいえ世宇子中と戦った後にジェミニストームと戦った時みたいなものだからな」
「ですよね……何より、あの黒いエイリア石」
「普通のエイリア石と比べて200%……ハッタリじゃないなら相当な脅威だ」
ジェネシスはエイリア石を使っていなかったらしい。それをそのまま受け取れば他のチームは使っていたということになる。仮にカオスのヤツらを基準に考えると……もはや脅威なんてレベルじゃ推し量れない。それに相手が風丸達となるともう一つ懸念点がある。そのことに皆は気付いているかどうか。
「風丸君が……FW!?」
「風丸だけじゃない……他の皆も少しポジションが動いてるね」
秋に釣られてダークエンペラーズ側を見ると、FWの位置に風丸、染岡がいた。従来なら風丸はDFの中枢……まさか、ストライカーとして出てくるとはな。確かにアイツの瞬足ならキーパー以外ならどこのポジションにも適性がある。
「始まった!」
ダークエンペラーズ側を分析していると、開始のホイッスルが鳴る。それと同時に鬼道が中心となって攻め上がっていく。その後ろに着いていた守に鬼道はバックパスを送り、そのまま修也、吹雪と共に展開する。
「来い円堂!!俺の力を見せてやる!!」
「風丸……!」
その正面から走り込んできたのは風丸で、その周りには誰もいない。完全な一対一だ。2人は一切減速せず正面衝突……と思われたが、直前に風丸が凄まじい勢いで加速する。辛うじて視認できるほどの凄まじい加速。ボールの主導権は一瞬にして切り替わる。守が持っていたボールは風丸が一瞬にして奪い取り、その凄まじいスピードのまま一陣の風となって吹き抜ける。
「ははっ、その程度か?キーパーじゃなければ大したことないな!」
「なッ……!?」
何だ今の加速は?速いとか、そういう次元じゃない。万全の状態の俺が雷霆万鈞、ゾーンを併用して何とか追いつけるか追いつけないかってレベルだ。まだ意識的にゾーンに入れない以上、今の風丸のスピードは俺より圧倒的に上と言っても過言じゃない。
「行かせるかよ!」
「止める!」
土門、鬼道が同時に減速した風丸の進路を塞ぐ。
「無駄だ!!"真"疾風ダッシュ!!」
「はッ!?」
「何だ……今のスピードは!?」
ヤバい、もう視認すら出来ないレベルだ。実態を伴っているのかすら怪しいレベルのスピード……胸元が黒く光ったことから真・エイリア石が齎した別次元の進化なんだろう。200%の出力……これほどまでか。
「か、風丸さん!」
「ふッ……」
次に風丸と対峙したのは壁山。その佇まいからはまだ動揺が伺える。無理もない、壁山は優しいヤツだ。かつての仲間達が敵になって目の前にいるなんて簡単に飲み込めることじゃない。
だが風丸は一切の容赦をしない。不敵に微笑んだ後思い切りボールに蹴り込んだ……んだろう。インパクトの瞬間が見えないほどの馬鹿げた振りの速さだった。そんな凄まじいキックから生み出されるシュートも当然凄まじい。ボールの輪郭がブレるほどのスピードとまるで破裂したかのような爆音。元のポジションがDFだった風丸でこの威力だ。
「……!ザ・ウォ───」
そのスピードがどれだけ凄まじいか。あの壁山がザ・ウォールの展開すら間に合わないレベルだ。多分……いや間違いなく。俺の轟一閃よりも遥かに速い。威力も……多分並ぶくらいだ。
「
そんなスピードでも、ペナルティエリアより遥かに遠くからのシュートなら立向居は余裕で反応出来る。幾度の進化を遂げたムゲン・ザ・ハンドで迎え撃つが……その表情は芳しくない。だが心配は杞憂だったようで、立向居はしっかり止めきって見せた。
「何て威力だ……!!」
しかし、立向居のグローブからは黒煙が上がっている。ジェネシスのスペースペンギンを止めるほどに成長した立向居でもあそこまで……
「……まだほんの小手調べさ」
風丸はシュートを止めた立向居に安堵の視線を向ける壁山にそう告げると、振り向いて自陣へと戻っていく。そしてその途中で俺達が試合を見守るベンチの近くを通り、一瞬だけ立ち止まる。その視線が着いているのは…俺だった。
「…風丸」
「加賀美。啖呵を切ったくせにこんなところで引きこもりとは…落ちぶれたな」
「──ッ!!」
「…柊弥先輩」
落ち着け。俺が怒ったところで別に何も変わらないし、風丸が言ってることは事実だ。こんなところで燻ってる俺が悪い。そんなことよりも試合だ。
立向居が送り出したボールは綱海が受け取り、そのまま流すように鬼道へと渡る。風丸達は……雷門側から撤退し自陣側に引きこもっている。守りを固める姿勢か?いや、さっき見せた風丸のあの攻撃力。あれほどじゃないにしろ皆も近いものを持っているなら守備に徹する利点なんてあるか?俺達から見てアイツらはまだまだ未知数。そんな状況ならひたすらに攻めて勢いで押し潰す方が得策のはず。
「豪炎寺!」
「もらった!!」
ある程度進み、センターラインを割って鬼道はダークエンペラーズ側の陣地へ踏み入る。そこで見つけたのは修也へのパスコース。完全フリーな修也へと鬼道はボールを送り出す。
ある程度距離があるため選んだのは高い位置を経由するループパス。しかし、その選択はミスだった……いや、鬼道の想定を相手が越えてきた。何と先程まで修也から遠い位置にいた半田が一瞬で距離を詰め、そのスピードを維持したまま高く跳び上がる。
「動きが鈍くなったな、豪炎寺!!」
「くッ……」
いや違う、修也が遅くなったんじゃない。半田が速くなりすぎているだけだ。修也もジェネシス戦での消耗がある、全く遅くなっていない訳じゃないが……それにしたってアイツらが速すぎる。
そこから同じような展開が続く。鬼道の先読みを活かした指示とポジショニングで何とかパスコースに割り込みボールを奪うも、その度にすぐ奪い返される。まるで力を見せつけるかのように。攻撃も守備も圧倒的……それに加えてやっぱり俺の懸念が現実になっている。というのが……俺達の癖への理解だ。同じチームでずっとサッカーしてきたからこそ、アイツらは俺達がどう動くかを理解している。そしてそれを圧倒的な能力で叩き潰す。逆に俺達は真・エイリア石で変化した皆のプレースタイルを理解しきれていない。身体能力でも読み合いでも不利を強いられているんだ。鬼道クラスの眼がなければ読み切ることは出来ない。
「うっ……」
「こっちだ!!」
「鬼道!!頼んだ!!」
しかし、段々とスピードには慣れてくる。ボールキープする塔子に超スピードで宍戸が迫るも、それより早く鬼道が塔子が通しやすいパスコースへ先回りする。それに反応して塔子も宍戸に奪われるより速く鬼道へパスを送る。余裕のないパスだったが鬼道は身体を浮かせながらそれをトラップ。そしてそのままダイレクトでシュートを……いや、シュートのような弾丸パスを送り出す。
「あっ!」
「いけ……豪炎寺!!」
その鋭いパスを受け取ったのは修也。その場の全員を出し抜いて塔子からのボールを繋いだ鬼道、そしてそれを信じてゴール前で待っていた修也が作り出した千載一遇のチャンス。
「爆熱……ストームッ!!」
修也が放った爆熱ストームはさっきの試合から一切衰えていない。それどころかその炎は明らかに勢いを増している。この威力ならジェネシスのネロからも点を奪えるだろうな。
迎え撃つのは杉森。全てを焼き尽くす炎に包まれたシュートが迫る中、杉森はなんと前に出る。そしてその横に併走するのは影野。二人は視線を交わすと瞬時に左右に展開する。
『デュアルスマッシュ!!』
そして二人は凄まじい加速と共にゴールを突き破らんとする爆熱ストームに同時に蹴り込む。その瞬間爆炎は消え去り、シュートの威力も完全に殺される。
影野が協力しての必殺技とはいえ……あの爆熱ストームを止めるか。やっぱり、真・エイリア石の力があるとはいえ皆の地力が強くなってるんだろう。リハビリを通して強くなったヤツ、もしもに備えて強くなったヤツ。そんな皆に共通してるのは……執念。俺が漫遊寺の監督から学んだ心の強さだ。
「ククク……ハハハッ!!ダークエンペラーズの強さは圧倒的!!勝敗は火を見るより明らかだァ!!」
隣のベンチで研崎が吠える。悔しいが……確かに圧倒的な強さだ。正直、単純なスペックじゃ勝ち目が見えない。
「杉森!寄越せ!!」
「染岡!」
視線をフィールドに戻す。そこでは染岡がゴールの杉森にボールを要求して走っていた。杉森の規格外のスローは寸分の狂いなく杉森の足元に吸い込まれる。受け取った染岡は当たり前のように凄まじいスピードで走り出す。風丸程のスピードではないが、染岡の本領はそのパワー。正面衝突で勝てるヤツはそういない。フィジカル特化の綱海ですら押し負けるほどだ。
「円堂、壁山ァ!」
「ここは通さないッス!!」
「ハハハッ……今の俺はどんなディフェンスでも突破できる!!」
「そんなの本当の力じゃないだろ、染岡!!」
「だったら俺を止めてみろ!!エイリア石の力を否定するのなら……それ以上の力を俺に見せてみろ!!」
染岡の言葉に熱が篭もると、胸元のエイリア石が黒く煌めく。それに触発されるかのように染岡はスタートを切る。至近距離からの加速、そしてまるで重戦車のような突破力。守と壁山が束になってかかっても止められない。
「染岡くん!!」
「あ?」
「アイスグランド!!」
しかし2人が稼いだ時間で更なる刺客が間に合った。全速力で全然から戻ってきていた吹雪が染岡の正面を捉えた。染岡が回避しようとするが、それよりも早くアイスグランドの氷結が染岡を掴んで離さない。だが染岡の動きを止めることに集中しすぎたせいか、ボールはフィールドの外に出てしまった。
「チッ……」
「染岡くん!!僕は忘れてないよ……君がどんな悔しい思いでチームを離れたか、どんな思いで僕に後を託したか!!」
「フン、そんな事覚えてねえな」
「……何を言っても無駄なようだな」
舌打ちと共に振り返る染岡に言葉を投げかける吹雪。対する染岡は素っ気ない言葉を返して戻っていく。その背中を呆然と見届けることしか出来ない。そんな吹雪を現実に引き戻すように鬼道が声を掛ける。
「どうすれば、分かってもらえるんだ……」
「勝つしかない!!俺達のサッカーで!!」
「キャプテン」
「そうだな。アイツらに勝つんだ!!」
「全力でいくッス!!」
守の言う通りだ。アイツらの目を覚ますには、勝つしかない。それが何よりの説得だし、勘違いしたままのアイツらの為にもなる。守の言葉に頷く吹雪に続き、壁山や他の皆も表情が引き締まる。前半はまだ半分経過したかというところ。どちらのチームもまだ得点はない。先に試合を動かすのはまだ底が見えないアイツらか、気持ちを切り替えた皆か。
……俺も、あのフィールドに立ちたい。皆と一緒に戦いたい。気持ちに踏ん切りはつけたつもりて戒めだのなんだのって言った。それでもやっぱり悔しいものは悔しい。風丸に煽られて少しでも取り乱したのが何よりの証拠だ。けど今の俺に出来るのは皆の勝利を願うことだけ。
だから頼んだぞ、皆。
一番最初に試合を受けると言い切ったのに試合に出れない柊弥。勿論、彼がここで終わるはずもなく…
第97話 立ち上がる者達…日曜日に更新予定です。