Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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2日連続投稿でございます。今日でダークエンペラーズ戦は終了です。
誤字報告ありがとうございました。多分今回もあります←ゴミ


第99話 サッカーやろうぜ

「ォォォォオオオオオオッ!!」

 

 

 震える身体に鞭打って前進。出迎えるように風丸がスタートを切る。馬鹿げたスピードで風丸は俺の前に現れ、足元のボールを狙う。俺自身を削りに来るか、素直にボールを奪いに来るかの二択。そう想定しておけば対処にはある程度の余裕が出来る。今回は後者、それなら──

 

 

(右か……いやフェイントだ、左!)

 

(と思わせてこっちだッ!!)

 

 

 右脚の外側でボールを弾いて重心も右に寄せる。あからさまに右に抜けようとしていることを匂わせるが、これは分かりやすい撒き餌。そこまで風丸なら読んでくるはず。だからこそ素直に右に抜けることを選択する!

 

 

「と、そこまで考えさせてそうするよな。お前なら!」

 

(バレてるか……!)

 

 

 読まれ切っていたのは俺の方だった。後ろ気味にサイドに素早く跳んで風丸は再び俺の真正面を抑えてくる。次はどうする、単純なスプリントじゃまず勝ち目はない。出し抜いた上で動く、それしかない。

 とはいえ出し抜くのも楽じゃない。さっきのフェイントを読み切ってくる以上、何重にもフェイントを掛けて読み合いを仕掛けるしかない。

 

 

「シザースか」

 

 

 左右に揺さぶりを掛けながらひたすらに焦らす。まだだ。こっちからは絶対に仕掛けない。風丸が仕掛けてくるまで一生待ってやる。

 

 

「いつまでそうしているつもりだ?」

 

(掛かった!!)

 

 

 痺れを切らして風丸が突っ込んでくる。そのタイミングにドンピシャで合わせて右脚でダブルタッチ。右斜め前方にボールを送り出す。当然そのボールを受け取れるヤツはいないし、仮に俺がそのボールを確保してもまた風丸とマッチアップするのがオチだ。

 

 

「ふッ、さっき追い付かれたことを忘れたか!」

 

 

 風丸がそのボールの方に走り出す。これが俺の狙いだ。風丸と入れ違うように左から俺は抜けていく。風丸が何かに気付いた素振りを見せたがもう遅い。

 そのボールは地面に触れた瞬間、有り得ない角度に跳ねる。そう、送り出すときにボールに回転を掛けておいたんだ。そしてその跳ねた先は、俺が抜け出した先。

 

 

「シザースからのダブルタッチ、そして回転を利用したワンツー。やるじゃないか。けど追い付けるぞ!」

 

「クソッ……!」

 

 

 この野郎、これでも追い付いてきやがる!ふざけやがって、やっとの思いで出し抜いても結局スピードで封殺されちまう。

 

 

「そろそろ付き合ってやるのはやめだ」

 

「ぐッ!!」

 

 

 また俺の前をとった風丸。今度はボールを狙うんじゃなくて容赦なくタックルを仕掛けてくる。スピードが乗ってるのもあって馬鹿げた威力だ。来ると分かっていても体勢が崩れる。

 

 

「このまま点も貰うぞ!!」

 

「……ッ、いかせるかァッ!!」

 

 

 ボールを奪ってゴールに向かう風丸。させるかよ。今俺が負けちまったらただでさえギリギリな守がもっと追い込まれちまう。踏ん張って体勢を直して、去りゆく背中を追い掛ける。

 

 

「なッ、何故追い付ける!?」

 

「倒れねえ……!」

 

「柊弥……うぐッ」

 

 

 風丸の正面を捉える。俺が追いついてきたことに風丸は狼狽えてやがるがどうでもいい。

 

 

「加賀美!!風丸だけじゃないことを忘れてるんじゃねえか!?」

 

「うッ……がァァァァァァッ!!」

 

「ははッ、やるじゃねぇか……!」

 

 

 風丸からボールを奪おうとすると、横から染岡が仕掛けてくる。パワーだけで言えば風丸より染岡の方が上だ。意識が遠のくレベルのえげつないタックル、ここでもし倒れようものなら、二度と立ち上がれない。獣みたいな声を上げてでも、耐える。

 

 

「しッ!」

 

「うおッ!?」

 

 

 染岡は全体重を掛けてきている。それなら俺が姿勢を低くしてやれば逆に染岡が体勢を崩せばいい。フルパワーでの突進が逆に命取りになる。

 

 

「染岡に気ぃ取られすぎだろ、風丸……!」

 

「……ははッ、どこがだ!?」

 

 

 染岡を崩せばまた風丸との対面。凄まじい勢いで転倒した染岡に視線がいっていたその隙を狙ってボールを奪う。だがすぐそれに反応して俺に並走してくる。もう何度目か分からない風丸との衝突。さっきと何が変わっているのか、不思議と力負けせずにやりあえている。

 

 

(ッ!!なんだ、右後方から何か来る!!)

 

「もらうよ、加賀美」

 

 

 突如俺の背筋に冷たいものが走る。本能で危険を感じとった俺は走りながらボールと共に跳躍。そんな俺の下をスライディングで通過したのは影野だった。

 あぶねえ、コイツ気配を完全に消してやがった。直感に従ってなけりゃ間違いなくボールロストだった。

 

 

「俺達もいるぞ、加賀美!」

 

「さっきから器用な真似してるけど、俺に勝てるかな!!」

 

 

 着地と同時に襲い掛かるのは半田とマックス。2人同時に向かってくるがマックスはサイドに飛んで俺の後ろに回り込んでくる。正面からボールを狙ってくる半田、それをルーレットで躱そうとした時、背中に圧迫感を感じてそれは叶わなかった。

 そう、マックスが俺の背面ギリギリに張り付いてやがった。半田に背を向けてそのまま突破しようとしたのに、これじゃ突破どころか隙を晒しただけになる。

 

 

「もらったァ!!」

 

「まだ……だァッ!」

 

「おっと!宍戸!!」

 

「おう!!」

 

 

 半田にボールを奪われた。その瞬間多少無理をしてでも奪い返そうと半田にショルダーチャージを仕掛けた。けど半田はヒラリと回避して、そのまま宍戸にパスを出す。

 

 

「シャドウさん!!」

 

「もう一度闇に染め上げてやる!」

 

「だから、やらせねえって言ってんだろッ!!」

 

 

 宍戸からのそのパスに反射してシャドウとのラインを一瞬で詰める。追加点を狙ってゴールに向かって走り出したところをすぐさま潰す。シャドウは左右に揺さぶりを掛けて突破を狙ってくるが、一切譲らねえ。

 けど動いているのが俺一人な今、アイツらにとってパスコースは無限。どれだけ抑え込んでも直ぐにパスを通される。

 

 

 けどまだだ、まだ諦めねえ。

 

 

「だァァァァァァァッッ!!」

 

「何だ!?」

 

 

 シャドウがマックスに、マックスが半田にパスを送る。けどそれは許さねえ。一息で繋がれるパスワークに割り込んで潰す。

 

 

「……全員で囲め!!」

 

『おう!!』

 

 

 ボールを奪ってすぐ、風丸が指示を出してあっという間にほぼ全員に包囲される。その直後、圧倒的な物量で押し潰される。数の暴力も良いところだ。辛うじてボールキープはしてるとはいえ、いつ奪われてもおかしくねえ。タックル、スライディング、ハンドワーク何でもありだ。俺一人が潰れれば終わりだもんな。

 けどな、だからこそ倒れられねえ。俺が負けたら全部終わる。皆がもっと傷付くかもしれない。そして何より、風丸達の目を覚まさせてやれない。

 

 

 もっとだ。もっと強く、もっと速く。

 

 

「勝負は⋯ここからだッ」

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「柊弥⋯!」

 

 

 ゴール前で膝を着く円堂。その視線の先では柊弥がダークエンペラーズの総攻撃を受けていた。自分達がここまで打ちのめされている相手全員を一人で相手している、それがどれだけ過酷なことか嫌でも伝わってくる。

 視界が眩む中、目の前の光景と重なったのは福岡でのジェネシスとの試合。肉体、精神共に追い詰められた際の柊弥の暴走。肉体は当然ボロボロ。精神はもしかしたら風丸達との戦いで同じように追い詰められているかもしれない。そう思うと、またあんなことになるんじゃないかと嫌な考えが過ぎる。

 

 

(俺も⋯俺も行かなきゃ!!もう柊弥を一人にさせないって、あの時決めたじゃないか!!)

 

 

 円堂は震える脚に力を込める。親友と共に戦うために。

 

 

「勝負は⋯ここからだッ」

 

「何だ、あの光⋯?」

 

 

 しかし、立ち上がろうとしたその時だった。円堂の視線の先で黄金に何かが煌めく。その光の主が誰なのかは明らかだった。そう、柊弥だ。

 

 

「⋯加賀美ィ!!」

 

 

 そんな柊弥に対し、風丸は狂気的な笑みを浮かべて襲い掛かる。ボール越しに二人が同時に蹴り込むと凄まじい衝撃波が巻き起こる。その周囲を囲っていたダークエンペラーズの面々は耐え切れずに後ろに下がる。

 そうして初めて明らかになった二人の衝突。柊弥は黄金の雷を、風丸は赤黒の雷を纏って互いに撃ち合っている。

 

 

「待っていたぞ!全力のお前を、全力で叩き潰すッ!そうして俺は本当の意味で強くなれるッ!!」

 

「やってみろ!お前達に勝って、間違いを正すッ!俺は絶対にお前達を連れ戻してみせるッ!!」

 

 

 柊弥と風丸は何度もぶつかり合う。その度に風丸の胸元で真・エイリア石はより強い光を放つ。それに影響されるように他のメンバーの真・エイリア石が放つ光もより強くなる。

 その光景を見ていれば、段々と風丸が優勢になってきていることは明らかだった。だが柊弥は一向に諦めない。どれだけ強大な力で風丸がぶつかってこようと決して折れない。

 

 

「勝つのは、俺だァァァ!!」

 

「なッ、馬鹿な──」

 

 

 もう何度目になるかも分からない衝突。突如柊弥の纏う雷の勢いが跳ね上がった。直前とは比較にならない膂力で風丸は弾き飛ばされる。

 

 

「おいお前ら!いくぞ!!」

 

 

 風丸と入れ替わるように染岡が先陣を切る。それに触発されて他のメンバーも柊弥へと襲い掛かる。

 

 

「来いよ、俺は絶対に負けねえェェェ!!」

 

 

 波状攻撃を仕掛けられても柊弥は完璧にやり過ごしてみせる。圧倒的パワーの染岡を最小限のパワーで受け流す。

 続いたのは半田とマックス。試合開始からコンビネーションで立ち回る二人は今回も柊弥に連携を仕掛ける。それに対して柊弥が選んだのは各個撃破。先に狙ったのはマックス。半田が接近しマックスが動きを縛るという流れを潰すために最初にマックスに寄る。すると二人の連携パターンは瓦解。狼狽えるその瞬間を狙って柊弥は前に出た。

 その抜けた瞬間を狙って影野が気配を消してのスライディングを仕掛けるが、完全に読み切っていた柊弥はサイドステップで回避。その後続くシャドウ、宍戸、少林、栗松の同時アタックも全て躱し切る。

 

 

「ここで止めるぞ、スピニングカット!!

 

「止まらねぇよ!!」

 

 

 風丸を含め9人を突破した柊弥を迎え撃つのは西垣。スピニングカットの衝撃波を柊弥の手前に放とうとするが、それより早く柊弥は雷を込めたボールをぶつけ、その衝撃波を霧散させる。

 

 

「何故だ、何故強くなり続けるダークエンペラーズと互角以上に戦えるッ!?真・エイリア石は福岡での貴様をも越える私の最高傑作なんだぞッ!!」

 

「うるせえよ⋯福岡での俺がどうとか関係ねえ!ガムシャラに特訓して強くなり続ける、それが俺達雷門イレブンだ!!そんな与えられた力に負けるほどヤワなモンじゃねえ!!」

 

 

 研崎は意味不明と言わんばかりに喚き散らす。が、その裏には真・エイリア石を生み出した研崎ですら想定していなかった現象が起こっていた。その正体は、真・エイリア石の共鳴。何故それが柊弥にも起こったのか、理由は単純なものだった。

 真・エイリア石は、元のエイリア石が福岡での柊弥の力に反応して出来たイレギュラー。言ってしまえば、柊弥の力の断片と言っても過言ではなかった。

 だからこそ、その力の断片はその主を刺激してしまった。底知れぬ努力によって磨かれつつも、未だ本人ですら引き出せないその圧倒的な潜在能力を。

 

 

「ならッ、俺を倒してみろ加賀美ィィ!!」

 

 

 研崎の言葉を一蹴した柊弥の前に再び現れた風丸。その風丸の纏うエネルギーは更に膨れ上がり蠢いている。

 

 

「おォォォォォオオオオッ!!」

 

「らァァァァァアアアアッ!!」

 

 

 二人は互いにショルダーチャージを仕掛ける。禍々しい雷と神々しい雷が炸裂し、咆哮に呼応するように更に激しくなる。

 

 

「俺はお前や円堂のようになりたかった!!お前達のように強くなりたかったッ!!」

 

「じゃあ何でエイリア石に手を出した!?フットボールフロンティアを思い出せ!神のアクアでドーピングしていた世宇子中に俺達は何で立ち向かった!?諦めない心だろうがッ!!そんなモンが、本当の強さだと思ってんのかッ!!!」

 

「結果こそが全てだッ!!折れてしまう程度の強さなんて要らないッ!!強さの過程に意味があるんじゃない、強さそのものにこそ意味があるんだよッ!!」

 

「何で分からねえ!?それは偽物の強さだろ!与えられるんじゃなくて、諦めずに努力し続けて身に付ける!お前だって本当は分かってんじゃねえのか!?」

 

「黙れェェェッ!」

 

 

 柊弥と風丸は感情を剥き出しにしながら衝突する。ボールを介しての戦いにも関わらず、その姿はまるで互いの信念をかけて殴り合っているようだった。風丸が怒りを爆発させると、それに呼応して雷が大爆発を起こす。それを回避するために柊弥が後ろに跳ぶと二人の距離は開き、ちょうどその真ん中でボールがバウンドしていた。

 それを見た途端、二人は同時に走り出していた。互いの右脚に、互いの力を纏わせて。

 

 

"真"轟一閃ッ!!

 

"絶"轟一閃ッッッ!!

 

 

 そしてその一点で二人の全力がぶつかり合う。赤黒と黄金が激しく迸り、フィールドを越えてベンチ、ベンチを越えて雷門中全体まで衝撃波が絶え間なく広がる。

 

 

「どうした加賀美ッ!!俺は偽物の強さだったんじゃないのかッ!?」

 

「ぐッ、ぉおおおおおおッ⋯!!」

 

「今この瞬間にお前を叩き潰しッ!!俺は新たな一歩を踏み出すッ!!」

 

「加賀美!!」

 

 

 どちらが強力か、それは火を見るより明らかだった。先程雷門イレブンが全員でようやく守った時よりも更に強くなっている風丸の"絶"轟一閃。柊弥の"真"轟一閃は柊弥の意地で威力が引き上げられているものの遠く及ばない。

 

 

「お前と円堂という憧れを越えたその時、俺はやっと自分が強くなったことを認められるんだッ!!」

 

「がァァァアアアアッ!!」

 

 

 風丸の力は更に膨れ上がる。もはや柊弥が打ち倒されるのは時間の問題、そう感じさせてしまうほどの凄まじい力だ。

 

 

「憧れがどうとか、強くなったことを認められるだとか⋯!やっぱり自分でも薄々分かってんじゃねえのか、風丸⋯!」

 

「何がだ!?お前達を倒せば俺の強さを証明出来る、そんなことは十分理解しているさッ!!」

 

「違ぇよ馬鹿野郎ッ!!俺や守の強さに憧れて、自分の強さを未だ認められてない!!偽物の強さだってことを自分が一番理解しているじゃねえか!!」

 

「⋯ッ!?」

 

 

 柊弥が段々と風丸を押し返し始める。黄金の雷は息を吹き返し、火事場の馬鹿力と言わんばかりに暴れ始めた。

 

 

「加賀美!!」

 

「加賀美くん!!」

 

「柊弥ッ!!」

 

「柊弥ァ!!」

 

「柊弥先輩ッ!!」

 

「俺は負けねえ⋯俺に声を送ってくれるアイツらと!!そしてお前らとこれからもずっと一緒にいたいから!!絶対、絶対に負けねえェェェェッ!!」

 

 

 直後、柊弥の纏う雷が天まで届く。その数秒後、何倍もの力を秘めた雷が柊弥へと降り注ぐ、

 

 

"極"⋯轟一閃ッ!!

 

「なッ⋯この瞬間に、進化しただと!?」

 

 

 明らかにさっきまでの柊弥とは違う。現在進行形で力をぶつけ合っている風丸自身がその事実を一番理解していた。

 

 

「目を覚ませお前らッ!!そんな力捨てて、戻って来ォい!!」

 

「馬鹿な⋯こんなはずが────」

 

 

 柊弥に更に力が籠った、その時。ボールに込められた柊弥と風丸のエネルギーが行き場を無くして大爆発を起こす。その爆発と共に、黄金の光がその場にいた全員を包み込んだ。

 

 

「ぐッ⋯今の俺が押し負けるなんて⋯!?」

 

 

 爆発を真正面から受けて数度地面を転がった風丸は、光が止んで立ち上がった時に何かに気付いた。

 

 

(何だ⋯さっきよりも身体が重い!?)

 

 

 明らかに弱体化しているのだ。先程まで身体に満ちていた、何だって出来ると思えるほどの圧倒的な力。正確には完全に無くなったわけではないが、明らかにそれが小さくなっている。それは風丸だけではなくダークエンペラーズのメンバーもそうだった。

 

 

「なッ、真・エイリア石が!?」

 

 

 少しして風丸は異変に気付いた。首元の真・エイリア石の色が変わっていたのだ。自分が魅入られた漆黒の光ではなく、紫色の光に。

 

 

「馬鹿な!?⋯まさか!!」

 

 

 その異変を目の当たりにした研崎は自身の持つアタッシュケースの中身を改めた。そこに広がっていたのは、研崎にとって最悪の光景。そう、風丸達が身に付けているものと同様に、真・エイリア石はその輝きを失い元の姿に戻ってしまっていたのだ。吉良 星二郎を狂わせ、悲しき計画を実行させてしまったあのエイリア石に。

 

 

「風丸ゥゥゥゥ!!そのガキを二度と立ち上がれないように潰せェ!!私の崇高なる計画を台無しにしやがってェェ!!」

 

「⋯」

 

 

 自身の計画が瓦解したことを察してしまった研崎はその原因に怒りをぶつける。半狂乱になりながら怒鳴り散らかす研崎には目もくれず、風丸はボールを回収して柊弥の前までやってくる。

 

 

「まだ⋯まだ⋯これからだッ⋯!!」

 

「⋯もう限界だろう」

 

 

 が、風丸は柊弥を一瞥するだけでそれ以上何もしなかった。

 

 

「お前は今膝を着いていて、俺は立っている。この勝負はもう終わりでいい」

 

「何、言ってやがる⋯まだ立て──」

 

 

 立ち上がろうとする柊弥。しかしもう足が震えて立つことすらままならない。そんな柊弥の横を通り過ぎる風丸の目には一人、柊弥と入れ替わるように立ち上がった男がいた。

 

 

「俺が勝ちたいのはお前だけじゃない。アイツ⋯円堂もだ」

 

「⋯!守」

 

「うッ⋯風丸⋯!」

 

 

 柊弥の視線の先では円堂が立っていた。風丸はゆっくりと歩いていき、ゴール前まで辿り着く。

 

 

「来い風丸!柊弥の意思は無駄にしない!!」

 

「ふっ⋯勝負してみたかったんだ。キーパーのお前と!」

 

 

 円堂が構えたのを見届けると、風丸はその脚を振り上げる。真・エイリア石の力が弱まった影響か、轟一閃ではなく普通のシュートだった。しかしそれでも威力は本物。円堂は両手でキャッチしようとしたが、その凄まじい回転に耐え切れず弾かれる。

 

 

「まだだァッ!!」

 

 

 しかし円堂は諦めない。弾かれながらも腕を伸ばし、自分の頭上を通過するボールをがっしりとキャッチする。受け身は取れずとも、ボールに絶対ゴールラインは割らせなかった。

 

 

「風丸⋯何でエイリア石なんかに手を出したんだ!!」

 

「何度も言わせるな!!俺は強くなりたかった⋯ジェネシスと戦った後、どれだけ頑張っても越えられない壁があることを知った!!悔しくて悔しくて仕方なかった!!だから俺は強くなったんだ!!もう二度と、あんな悔しさを味わないように!!」

 

「⋯」

 

 

 風丸のその叫びは、先程柊弥に吐き出した時のように怒りに満ちたものではなかった。どこか悲痛な感情に満ちた、慟哭のような叫び。

 今ここで知ることが出来た風丸の本音。それをもっと早く聞き出せなかったことを心から悔やむ。他のメンバーにしてもそうだ。エイリア石に何故魂を売ってしまったのか、その心の内を理解していればこんな戦いは起こらなかったのかもしれない。

 

 

 だからこそ、円堂は選択する。キャプテンとして、友人として。自分がやるべきことを。

 

 

「⋯何のつもりだ」

 

「来い!!お前達の気持ち⋯全部俺が受け止めてやる!!」

 

「⋯ッ、受け止められるものなら受け止めてみろッ!!」

 

 

 円堂は風丸に向かってボールを放った。相手にボールを渡すという、本来の試合なら意味不明な行動。しかし、この戦いはもうただの試合ではない。意地と意地とのぶつかり合いだ。

 風丸は先程よりも力を込めてシュートを放つ。それに対して円堂か選んだのは⋯風丸達とフットボールフロンティアを戦う中で何度もゴールを守ってきた、あの必殺技だった。

 

 

ゴッドハンド!!

 

 

 仲間を取り戻す、そんな円堂の信念が神の手を更に輝かせる。風丸のシュートをど真ん中で捉え、確実に威力を抑え込む。そして完全に勢いを殺したボールを円堂は再び風丸に投げ渡す。

 

 

「風丸ッ、思い出してくれ!!」

 

「⋯ッ、黙れェ!!」

 

 

 風丸は受け取ったボールを後ろに送る。それを受け取った栗松、宍戸は走り出す。スピードが乗ってきたところで栗松はシュートを放ち、その前の宍戸が更にシュート。一番前でそれを受け取った風丸が最後に撃ち込む。

 

 

トリプルブーストッ!!

 

ゴッドハンドォ!!

 

 

 さっきの風丸のシュートとは違い、れっきとした必殺技。しかも連携シュートだ。しかしそれでも円堂は引かない。その威力に歯を食いしばりながらも、真っ直ぐに風丸達を見据える。

 

 

「思い出してくれッ、皆!!俺達の⋯サッカーを!!思い出せぇぇええええええ!!」

 

 

 段々と円堂は押し込まれていく。しかしゴールラインを割る直前、円堂は両手を重ねる。結果としてシュートを止めることは出来た⋯が、その代償は重いものだった。

 

 

「⋯守ッッッ!!」

 

「円堂くん!!」

 

「⋯勝負は、着いたな」

 

 

 そのシュートを受け止めたが最後、円堂はその場に倒れてしまった。もう雷門イレブンで立っている者はいない。それに対してダークエンペラーズは全員健在。風丸がそう呟くのも当然の現状だった。

 

 

「皆立ちなさい!!立ち上がって!!」

 

 

 ベンチから夏未が叫ぶ。しかしその声は届かない。正確には届いているが、もう立つ力が残っていない。それほどまでに激しい戦いだった。誰から見てももう雷門は限界。審判が試合終了を告げようとした⋯その時だった。

 

 

「雷門!雷門!」

 

「木野先輩⋯!」

 

 

 木野が声を上げた。それだけに留まらず、音無やリカ、夏未もそれに加わる。更にその声は雷門中までその試合を見に来ていた雷門OB、中継で見ていた全国の人間も声を上げる。

 

 

雷門!!雷門!!雷門!!

 

「何だこれは⋯黙れ、黙れェ!!」

 

 

 その時、誰かが立ち上がる。

 

 

「ぐッ⋯まだ、試合は終わってねえ⋯!」

 

「柊弥先輩っ!」

 

 

 柊弥が立ち上がったのを契機に、他のメンバーも立つ。吹雪、壁山、土門、綱海⋯円堂を除いた全員が立ち上がった。

 

 

「守ッ、立てェ!!」

 

「円堂ォ!!」

 

「キャプテン!!」

 

「円堂さん!!」

 

「うッ⋯まだ、まだ⋯終わってねえぞッ!!」

 

「ッ、うわァァァァァァァァァッ!!」

 

 

 仲間全員からの発破を受けて、円堂も再び立ち上がった。見るからに満身創痍、何かの拍子にまた倒れてもおかしくないような状態だった。しかし、何度も立ち上がってくる雷門イレブンに気が狂いそうになった風丸は叫ぶ。それに共鳴するように染岡、マックスが風丸の元に寄る。

 三人が同時にボールを蹴り上げると、紫色の不死鳥が現れる。三人は飛び上がると、全力をもってその不死鳥を送り出す。

 

 

ダークフェニックスッ!!

 

 

 不死鳥は咆哮と共に円堂が待ち構えるゴールへと羽ばたく。それに対して円堂は再びゴッドハンドの構え。しかし、その光は先程までとは比較にならない。黄金の中に虹色の光が混じり、その神々しさを誇示している。

 

 

"真"ゴッドハンドォォォッ!!

 

 

 その輝きの前に闇など無力。神の手に闇の不死鳥が触れると、その紫色の炎は一瞬にして消え失せる。

 

 

「思い出せッ、皆ァァァァ!!」

 

 

 受け止めたボールを円堂は高く掲げる。すると、そのボールから緑色の光が溢れ出す。先程の柊弥の黄金の光のようにそれはフィールド中に広がり、全員を包み込む。その光に包まれた風丸達の中には、円堂のある言葉が去来する。

 

 

『サッカーやろうぜ!!』

 

 

 直後、脳裏に溢れ出したのは確かに存在した、あの時の記憶。フットボールフロンティア優勝を目指し泥臭く努力していた、蓋をしたはずのかけがえのない日々の記憶。先程まで負の感情に満ちていた風丸は、何故か自分の身体が軽くなっていることに気付いた。先程まで柊弥や円堂、雷門イレブンに向けていた怒りはもう何処にもなかった。

 

 

「⋯円堂」

 

 

 その時、胸元のエイリア石は音を立てて砕け散る。風丸達が身に付けていたものはもちろん、研崎が持っていた石もただの石に変わっていた。

 

 

「なッ、馬鹿な!!エイリア石が!!これではサブプランすらも──」

 

「お前の企みもここまでだ、観念するんだな」

 

「うっ⋯クソぉぉおおおお!!!」

 

 

 嘆く研崎の元に鬼瓦がやってきて手錠をかける。こうして、エイリア石を利用した計画は完全にこの世から消滅した。

 

 

「⋯」

 

「守!!」

 

 

 掲げていたボールが落ちると、円堂はそのまま糸が切れたように倒れた。柊弥は誰よりも早く走り出し、円堂の身体を起こす。

 

 

「⋯ははっ、満足そうな顔しやがって」

 

 

 円堂の意識はない。しかし柊弥は何の問題も無いことを察した。何故なら、円堂が満足そうな、安堵したような笑みを浮かべていたから。そしてこちらを見ている仲間達の目を見て、とうとう戦いが終わったことも理解した。

 

 

「⋯一件落着、かな」

 

 

 この戦いが始まって、初めて柊弥は満足そうに笑った。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「おい守、いつまで寝てんだよ」

 

「ん⋯柊弥?」

 

「起きたか?」

 

 

 いつまでも目覚めない守を揺すると、案外簡単に起きた。そのまま起き上がらせてやると何かに気付いたらしく、さっきまで気を失ってたやつとは思えない勢いで立った。

 

 

「⋯円堂!」

 

「風丸!それに染岡、宍戸!栗松、少林!マックス、半田、影野!!」

 

「効いたよ、お前のゴッドハンド」

 

「ん?俺の轟一閃は効かなかったってのか?」

 

「うっ⋯お前の想いも届いたよ。円堂が目を覚まさせてくれたあとだけど」

 

「コイツめ」

 

「皆、思い出してくれたんだな!?⋯⋯やったぁぁぁぁぁあああ!!」

 

「うわああああああ!良かったッスううううう!!」

 

 

 風丸を軽く揶揄ってやると、守が喜び全開で飛び上がった。壁山に至っては号泣している。全く、そんな喜んだり泣いたりするのは良いけどな⋯

 

 

「お前ら!まだ試合時間は残ってるぞ⋯どうする?」

 

「続けるに決まってるだろ!なあ皆!?」

 

「ああ!もちろんだ!!」

 

 

 そうして俺達はボールを蹴る。さっきみたいに暗い空気じゃなくて、純粋にボールを追い掛けるあの時みたいな、ただひたすらに楽しい最高のサッカー。やっとこんなサッカーが出来た。本当にここまで長かった。苦しいことも辛いことも沢山あったけど、乗り越えたんだ。

 

 

 さあ、皆──

 

 

「──サッカーやろうぜ!!」




というわけで、ダークエンペラーズ戦終了。脅威の侵略者編完結⋯では無いんですね。実は次の話でようやく完結です。柊弥君には実はまだ最後の戦いが残ってますので⋯

という訳で記念すべき第100話で脅威の侵略者編は完結します。近日公開予定です。
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