番外編を含めればもう少し長いのですが、これも日頃からご愛読いただいている皆様のおかげです。これからも当作品を何卒よろしくお願い致します。
あと今回割と時系列が適当です。本編では北海道で雪が降ってたり沖縄でサーフィンしてる男がいたりで季節もクソもないので許してください⋯
あの最後の戦いから1週間が経った。本来ならもう夏休みは終わっているけれど、世界を救う戦いを終えたということで俺達サッカー部のメンバーは本来より長く休みをもらっている。当然課題は出ているから休みっぱなしって訳にもいかないんだけどな。ちなみに俺達の夏休みはエイリア学園との戦いで終わってしまった。最初のジェミニストームの事件が夏休みに入る1週間前とかだったからな。今までで一番過酷な夏休みだったと言っても過言じゃないと思う。
この一週間で色々あった。まず、吉良や研崎について。どちらも国家転覆を試みた上に様々な余罪があるから重い刑罰は免れないだろうという話だった。適用されるのは内乱罪?だったかな。ただ吉良に関しては情状酌量の余地があるらしく、一生外に出て来れないとかでは無いらしい。研崎は⋯知らん。
そしてヒロト達。ジェネシスはリミッター解除、それ以外のチームのヤツらはエイリア石の影響で何か身体に異常が起こっていないかの検査をしたらしいが、特に何ともなかったらしい。まだ警察の保護観察下にあるが、そのうち瞳子監督が全員を引き取り、吉良財閥の莫大な資産で小さい時のように皆で暮らすらしい。吉良財閥の総裁に関しては代理として瞳子監督が就くとかなんとか。その辺の詳しい話はこの前メールで連絡が来ただけだからよく分からない。
そうそう、そのメールの最後にはヒロトからのメッセージも添えられていた。エイリア学園としてやってしまったことへの謝罪がメインだったけど、最後にとある誘いがあった。瞳子監督とも話しながら今度細かいことを決めたいな。
次に風丸達。真・エイリア石というエイリア石よりも遥かに強力な力に晒されていたことを懸念してヒロト達と同じように色んな検査を受けたらしいがこっちも特に何ともなかった。今ではそれぞれの家に戻って、俺達と同じように少し長めの夏休みを満喫しているらしい。学校が始まる前にまた皆で集まってサッカーをやる予定だ。
そんな嬉しい報せとは逆に、寂しい別れもあった。そう、イナズマキャラバンで出会った皆との別れだ。塔子や吹雪、木暮、リカ。立向居に綱海。皆それぞれの場所に帰ってしまった。塔子はいつでもこっちに来れるくらいの距離だが、他の皆はそう簡単には会えない。そう思うと寂しいなんてレベルの話じゃない。
『じゃあね加賀美!円堂に会いに来るついでにまた会おう!』
『色々ありがとうね、加賀美くん。次会う時はキミや豪炎寺くん、染岡くんに負けないくらい強くなるよ』
『加賀美さん、またね!加賀美さんを止めれるくらいもっともっと強くなるから、楽しみにしててよね!』
『ほなな加賀美!また暴走してダーリンに迷惑掛けたらアカンで?』
『加賀美さん!ありがとうございました!俺、円堂さんや加賀美さんに負けないくらい凄い選手になってみせます!!』
『あばよ加賀美!お前みたいなデッカイ男に会えて楽しかったぜ!今度一緒に波に乗ろうぜ!』
皆本当に良いヤツらだった。別れる前に最後に一人一人と話したけど、やっぱり胸に来るものがあった。けど何でだろうな、そう遠くないうちにまた皆と会える気がする。何の根拠もないけどな。
後は⋯そうだ、アフロディだ。アイツは風丸達と同じ病院に入院していながら何も気付けなかったことを気に病んでいた。別にアフロディが何が悪いって訳じゃないんだけどな、律儀というか何と言うか。
脚に関しては順調に回復しているらしい。あと何週間もすれば退院してまたサッカーが出来ると言っていた。
それに興味深いことも言っていた。アフロディは実は韓国人と日本人のハーフらしい。その縁で今度韓国にサッカー留学しに行くとか何とか。他国の中学サッカーについてはよく分からないけど、アフロディが言うには凄いヤツがいるらしい。鬼道並の戦略眼を備えた司令塔がどうとか。俺もそのうちサッカー留学とかしてみたいな。
皆、それぞれの道を歩き始めている。雷門の皆もそうだ。守はまたキーパーに戻って、前みたいにがむしゃらな特訓を続けている。修也もエースストライカーの名に恥じないようにとか言って、守も顔負けするくらいに打ち込んでいる。鬼道は最近世界の試合を見て研究しているとか何とか。壁山も木暮や塔子、綱海に負けない守りの要になりたいと言って俺に特訓を頼むようになった。
そうそう、一之瀬と土門が最近何やらコソコソしている。2人で話しているところにこっそり近付いたらあからさまに動揺していた。何を隠しているんだろうな?この前は西垣とも周りを気にしながら話していたし。
⋯さて、そろそろ俺自身の話をしよう。最近俺は色んなヤツと色んな話をすることを重視している。風丸達との確執を気にして⋯って訳じゃないけど、日頃から皆と色んな話をしておいて損はしないからな。ヒロトやアフロディと連絡を取るようになったのもそれの影響だ。
もちろん、特訓も欠かしてない。最後の戦いで前半戦出れなかった悔しさを忘れないように、ひたすらスタミナを磨くようになった。その過程でカオスとの試合前にやっていた重りをつけたトレーニングをしているから、結果としてシュートやドリブル、ディフェンスなど色んな面で強くなってきてる気がする。
そんな俺だが、今はある悩みを抱えている。それは、俺にとって本当の最後の戦いと言っても過言では無い話だ。しかも、今まで経験したことがない、全国大会の決勝戦とかとはまた違う戦いだ。
色んなヤツらにこの相談をした。守に鬼道、秋や夏未。塔子やリカ、吹雪にもメールで話を聞いてみた。
守には相談したことを後悔した。あの鈍感からこの手の話題で良い話を聞けるはずがなかったな。鬼道には何とも言えない気まずい空気を漂わせながら肩に手を置かれただけだった。この二人に相談したのは完全に間違えだったかもしれない。
女性陣からはまるで打ち合わせたように「ビビるな、戦え」との言葉を頂いた。⋯女の子って、皆ああいう感じなのか?
一番親身になって聞いてくれたのは吹雪だった。アイツはこの手の経験が多かったのかな。正確には一方的なものばかりらしいが、それ故に色んなことを考えさせられたらしい。今度吹雪にあったら飯を奢ろうと思う。
「お待たせ致しました、フレンチトーストでございます」
「ありがとうございます」
今俺は喫茶店に来ている。というのも、その話について最後に最も信頼のおけるヤツに相談したかったからだ。ちょうどこのタイミングで来たらしい。
「悪いな修也、呼び出して」
「気にするな。俺とお前の仲だろう」
修也だ。やっぱり最後に頼るのは相棒だろう。コイツにならどんな事でも気兼ねなく相談出来る。
修也は水とおしぼりを出してくれた店員さんに注文を伝えると、呼び出した俺よりも早く話を切り出す。
「それで相談というのは⋯音無の件だろう?」
「⋯やっぱバレてたか」
そう、皆に相談していたのは春奈のことだ。春奈が俺に特別な感情を向けてくれていることはもう明らかだ。大阪でそれを打ち明けてくれた時、俺はエイリア学園との戦いが終わったら改めて気持ちを伝える、と約束した。そのエイリア学園との戦いは既に終わっている。ケジメをつける時が来たってことだ。
「一応聞く。お前は⋯音無のことをどう思ってる?」
「どうって⋯滅茶苦茶良い子だよ。サッカー部が本格的に動き始める前から色々協力してくれてたし、その後も個人的にずっと俺のことを気にかけてくれてた」
「そうじゃない。俺が聞きたいのは音無のことを異性として好きなのか、好きじゃないのかということだ」
修也はストレートに問いを投げかけてくる。
「こう考えてみろ。もし俺が音無と親しい関係だったらどう思う?お前の目の前で恋人として仲良くしていたら。どうだ?」
「絶対嫌だ。多分お前の横腹に轟一閃を撃ち込む」
「⋯それは勘弁して欲しいが、それが答えだろう。お前は音無のことが好きなんだ。一人の女性としてな」
⋯だよな、そうだよな。俺だって本当は自分で分かってるさ。もうずっと前から春奈が好きなんだって。けど初めての経験で恥ずかしくなって、その事実を自分で飲み込めずにいたんだ。
「⋯はあ、我ながら情けなくなるな」
「エイリア学園から世界を救った男がその有様じゃ世話ないな」
「ご最も」
気を紛らわせるためにフレンチトーストを口に運ぶ。そういえば初めて春奈と二人で出掛けた時もここの喫茶店に来たっけ。しかも春奈が食べてたのがこのフレンチトーストだったな。あの時、また行きたいななんて考えてた。
⋯そうか、そういうことだよな。周りから見ればデートとしか思われないことをまたやりたいって思える時点で、つまりそういうことなんだ。
「⋯よし、決めた。全部伝える」
「⋯それはいいが、何をしているんだ?」
「春奈にメール。これから空いてるかって」
「⋯お前、即実行が過ぎないか?そういう経験は無いが、もっとプランとかを練ってから勝負すると思うんだが」
「それが俺達雷門イレブンだ」
「恋愛の話まで雷門魂を発揮するなバカ」
春奈に数時間後に鉄塔広場に来てくれと連絡したら、数分で返ってきた。そこに書かれていたのは⋯了承の旨。
「⋯まあなんだ、頑張れよ。相棒」
「おう」
さて⋯もう後に引けなくなったな。腹を括ろう、男として。
ーーー
「お呼びでしょうか?マスター」
「よく来てくれたな⋯ガンマ」
ここは、柊弥達の時代から数百年後の世界。ガンマと呼ばれた男が立っている周囲には、年老いた男達が厳しい表情で席に着いていた。
「現在、ベータ率いるプロトコル・オメガ2.0が動いている」
「承知してますとも。ベータ如きに務まるのかは疑問ですがね」
「まあその話は良い。お前には別にミッションを与える」
「⋯と、言いますと?」
ガンマがマスターと呼んだ男、この意思決定機関エルドラドの議長であるトウドウは、パネルを操作する。するとそこに映し出されたのは⋯柊弥の姿。
「お前にはこの男、加賀美 柊弥を消してもらう」
「⋯
「そうだ。この男の存在こそがこの世界を驚異に陥れる元凶。雷門イレブンは恐らくベータへの対応で手一杯だろう。よってアルファが干渉した時のような邪魔は有り得ん。そしてまだ"覚醒"も起こっていない。今ならまだ未覚醒のヤツに接触出来る⋯分かるな?」
「この男さえ消えれば、ヤツらの力は大幅に削られる。そういうことですね?」
「その通りだ」
少し考え込むような動作を見せると、ガンマはフッと笑った。
「そのミッション、謹んでお受けしましょう。この僕がスマートにクリアしてみせますよ」
「うむ。頼んだぞ」
ーーー
「⋯もう追ってきてない、かな?」
トウドウがガンマを呼び出したと同時刻、薄暗い路地裏で一人の少女が息を切らしていた。どうやら追跡されていたようで、その追手を撒いたことを確認するとそこに放置されていたコンテナに腰掛ける。
「⋯急にあんなこと言ったら、そりゃSARUもアイツも怒るよね」
その少女が思い浮かべたのは、
「けど、止めなきゃ。今までは決めきれなくてのらりくらりだったけど、絶対に私が止めるんだ⋯その為には」
少女が唯一持っていた本を開くと、そこにはある男の写真があった。黄金に煌めくトロフィーを持って多くの者達に囲まれているその男の顔は、奇しくも先程トウドウ達の話に上がった顔と同じだった。
「⋯加賀美 柊弥さん。貴方の力をどうか私に貸して」
少女はその本に縋るように抱き締める。柊弥の知らぬところで様々な思惑が交差していることを、当の本人はまだ知らない。
ーーー
「⋯ここの景色は変わらねえな」
段々と日が沈み始めている。ついさっきまで青色だったはずの空はオレンジ色に染まり、カラスが群れをなして羽ばたいている。
「まったく、柄にもなくセンチメンタルになってんな」
緊張するなって言う方が無理な話だろ。生まれてから今まで色んな経験をしてきたけど、異性に想いを伝える⋯こればっかりは初めてだ。ぶっ通しで一時間特訓した時よりも心臓が暴れてる。
修也と別れてから話すことはずっと考えてた。後はそれを言葉にするだけ⋯だからといって、緊張しなくて済む訳じゃ断じてないけどな。
「柊弥先輩」
「⋯春奈。悪いな、急に呼び出して」
「いえ、大丈夫ですよ」
「まあ座ってくれ」
頭の中で同じ言葉の羅列を反復していると、横から声が掛かる。春奈だ。変な声が出そうになるのを堪えて、何とか平静を装う。とりあえず、隣に座るように促す。
「⋯」
「⋯」
⋯マズイ。さっきまでずっと頭の中にあったはずの言葉が飛んだ。何を話そうとしていたんだ俺は。本人が隣に来たらそんな準備意味が無くなるんじゃないかって修也が言ってたけど、本当だった。
呼び出したのが俺なのにこのザマじゃダメだろ。何とか、どうにかして話を切り出さなきゃ──
「この数ヶ月、色んなことがありましたよね」
「あ、ああ。本当に色んなことがあったな」
⋯先に話を切り出されてしまった。
「まさかフットボールフロンティアで優勝した直後に学校が破壊されてるなんて、思いもしなかったですよね」
「本当にな。宇宙人と戦いながら全国を旅することになるなんて、誰も思ってなかった」
「でも、そんな色々なことがあって皆の絆が深まりましたよね。吹雪さん達は帰っちゃいましたけど、きっとまた会えるって信じてます!」
「⋯そうだな、俺もそう思ってる」
⋯気を遣わせてしまったな、俺が情けないばかりに。一旦落ち着こう。大丈夫。俺の思いの丈をそのままぶつければ、それで良い。
「今日は来てもらったのはな⋯あの時の約束に応えるためだ」
「⋯はい」
「だから聞いて欲しい。全部、伝えるから」
「⋯はい!」
ここからは、ただ言葉を紡ぐ。
「春奈と初めて会ったのは商店街でだったよな。その後帝国との試合を見に来てくれて、そこからサッカー部のマネージャーになってくれた。その時はただの明るい後輩くらいにしか思ってなかった。けど、地区大会の決勝でまた帝国と戦うとき辺りかな。鬼道と一悶着あった時の春奈を見てほっとけないって思った」
最初は不良に絡まれてる春奈を助けたのが始まりだった。マネージャーになってからはライトニングブラスターの開発を手伝ってくれたり、一緒に帰ることがあったり、段々と距離が縮まっていったな。そしたあの決勝戦の前、いつも明るい春奈が暗くなってるのを見て声を掛けずにはいられなかった。
「そこから全国大会に向けて練習する中でもずっと支えてくれて、本当に嬉しかった。世宇子との試合ではボロボロになった俺を止めてくれたよな。そこまで俺のことを考えてくれる人がいるんだって思うと、もっと頑張れた」
試合前も試合中も、ずっと俺のことを気にかけてくれた。試合後は、誰よりも先に俺のところに来て喜んでくれた。流石に全国放送されてる中抱きつかれたのは恥ずかしかったけどな。
「そしてエイリア学園との戦いが始まったら⋯ずっと心配させっぱなしだったよな。最初の戦いで大怪我するし、福岡では我を失って大暴れするし。⋯そんな中で、春奈が想いを伝えてくれたんだよな」
そう、あれは大阪でのことだ。エイリア学園のアジトを探すって名目で二人でナニワランドを回ったな。そしてイプシロンとの二戦目前夜⋯春奈が想いを全部俺にぶつけてくれた。
俺はそれに応えることが出来なかった。あの時の俺は向けられた好意に向き合う余裕がなかった。どうしたら強くなれるのか、どうしたらエイリア学園に勝てるのか、どうしたら皆を守れるのか。それだけを考えて逃げたんだ。
「⋯けど、もう逃げない」
俺はずっと逃げていた。その言葉を口にする度胸がなかったから。余裕がなかったっていうのは、自分の弱さを認めないためのただの言い訳だ。
「春奈」
立ち上がる。声が震えてきた、多分身体も震えてる。けどそれでも、伝えなきゃいけない。
「俺は、春奈のことが好きだ」
その時、春奈が立ち上がって抱きついて来た。度々春奈が抱きついてきてくれた時、俺はそれに対して何も返すことが出来なかった。
けど、今は違う。両手を春奈の背中に回し、そっと抱き締める。絶対に離さない。その意志を言葉ではなく、行動で伝えるために。
「私も、柊弥先輩が大好きですっ!ずっと、ずっと好きでしたっ!!」
「⋯うん」
「怖かったんですからね!?勇気を振り絞って告白したのに返事を濁されるし、どんどん先輩は皆の元から離れて行っちゃうし!!」
「⋯ごめん」
「だから、もう絶対に離さないでくださいっ!!ずっと、ずっと一緒にいてくださいッ!!!」
春奈を抱き締めるその腕に、力を込める。
「絶対に離さない、約束だ」
やっと、伝えることが出来た。
節目であり脅威の侵略者編ラストである第100話、いかがでしたか?
このタイミングで柊弥と音無が結ばれることは全く想定していませんでしたが、脅威の侵略者編を書き進めるにつれて「これ、行けるんじゃね?」と思ってこうなりました。ラストに結ばれるシーンは絶対に入れると決めてたんですがね。
さて、今後の話をさせていただきます。
第2章 脅威の侵略者編が完結し、次は第3章 世界への挑戦編となるのですが、その間に"第2.5章 世界の呼び声編"を挟ませていただきます。幾つか理由はありますが、単純に書きたい話があっただけなんです、申し訳ない。
その中で第3章以降の話に関する内容を出していく予定です。これまであまり書くことが出来なかった日常回。そして彼らとの再会、加賀美 柊弥暗殺計画、ヨーロッパへ渡る柊弥。これらの話を3月いっぱいまで不定期で更新していく予定です。第3章のプロットはあらかた出来上がっているんですが、この期間でもう一度見直せればと思います。
長くなりましたが、第2章 脅威の侵略者編の完結までお付き合いいただきありがとうございました!今後ともこの作品をよろしくお願い致します!