Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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閑話2話目です。お日さま園で元エイリア学園の民の洗礼を受ける柊弥くんを見届けてやってください。


第102話 因縁の清算

「まさかこんなすぐに会えるなんて、思ってなかったよ」

 

「俺もだ。瞳子監督に感謝しないとな」

 

「気にしないでちょうだい。むしろ加賀美くんこそ本当に大丈夫だったのかしら?」

 

「勿論です。あの戦いがあったから新しい出会いもあったし、もっと皆と仲良くなれたし、何より……もっとサッカーが好きになりましたから」

 

「……そう」

 

 

 ヒロトと瞳子監督に連れられて廊下を行く。大人数を抱えていた施設だったからか、やっぱ広いな。ただの廊下なのにめちゃくちゃ長いし、部屋がやたらと多い。さっきチラッと見えたが、風呂はもはや大浴場くらいの大きさだ。

 

 

「加賀美くん」

 

「どうした?」

 

「加賀美くんが来るって聞いて、人によってテンションの差が凄いことになってるんだ。だからその……引かないであげてほしい」

 

「……俺が引くほどなのか?」

 

 

 テンションの差が凄い……なんだ、物凄い湿度が高いヤツだったりパリピしてるヤツがいたりするのか?

 

 

「じゃあ、開けるよ」

 

「……ゴクリ」

 

 

 ヒロトは神妙な顔付きで扉に手をかける。この先に、一体どんな脅威が待ち受けているというんだ──

 

 

「待っていたぞ、加賀美 柊弥ァァァァ!!」

 

「おらァ!あの時のリベンジだァッ!!」

 

「抜けがけするなお前達!!最初に加賀美 柊弥を倒すのはこの私だ!!」

 

「うわ……」

 

 

 ヒロトが扉を開けると、中から一気に3人が飛び出してくる。その誰もが殺意に近い闘志を漲らせながら俺を囲む。初手から凄まじい歓迎だ。視線の先ではヒロトがあちゃーと呟きながら目を伏せている。いや、助けてくれよ。

 

 

「こら貴方達、一応加賀美くんは客人なのよ」

 

「そうそう、まずは長旅の疲れを癒してからで良いだろう?」

 

「アンタ……お前は指図すんなよ、グラ……ヒロト!!」

 

「そうだよグラ……ヒロト」

 

「も、申し……すまん、グラン様……ヒロト」

 

「ぐちゃぐちゃじゃねえか」

 

 

 コイツら、まだエイリア学園の時の癖が抜けてないだろ。多分未だに皆宇宙人としての名前で呼ぶ時とかあるんだろうな。何も知らないヤツが聞けばギリギリあだ名に聞こえなくもないか?

 

 

 とりあえず、瞳子監督とヒロトが場を収めてくれたので部屋に入る。中には他にも何人かいる。全員にある程度見覚えがあるし、飛び出してきたヤツらに関しては見覚えしかない。1人見てくれ、主に目つきがだいぶ変わってるが、間違いなくアイツだろう。言っちゃえば声で判別できるしな。

 

 

「さて、それじゃあ改めてここにいる皆で自己紹介でもしようか」

 

「それでは私が先陣を切ろう!!」

 

 

 と言って手を挙げたのは長い黒髪を後ろで束ねた男。随分あの頃から様変わりしたけど、まあアイツだろう。

 

 

「私は砂木沼 治!沖縄での貴様との血湧き肉躍る戦い、今も鮮明に覚えているぞ!」

 

 

 そう、イプシロンとして何度も俺達の前に立ちはだかってきたあの男、デザームだ。京都、大阪、沖縄で激闘を繰り広げ、その末にようやく勝利した。統制されて隙のないチームであるイプシロンを倒すために生み出したのが雷霆一閃だ。それを実行出来る身体を作るためにってナニワ修練場でちょっと無茶をしたりもした。

 

 

「俺もよく覚えてるよ。何回煮え湯を飲まされたか」

 

「常に私の想定を超えてきて良く言う。だが、私はお前のおかげで大切なことを思い出せたのだ。感謝しているぞ」

 

「……そうか」

 

「おい、しんみりしてねえで俺にも興味を示せよ!!」

 

「私のことも忘れるな!!」

 

「あ、すまん」

 

 

 試合が終わって、砂木沼は俺にサッカーを楽しいものだと思い出せた、って言ってくれた。あれがあったからもしかしたらエイリア学園とも分かり合えるんじゃないか、って思えた。結局その後も戦うしか無かったけど、今こうして話が出来ていることが何よりの証明かもしれない。

 珍しく感傷に浸っていると、赤いのと白いのが自己主張してくる。コイツらとは……特別なエピソードがあった訳じゃないんだよな。あの試合で語るならアフロディのことだし。

 

 

「ったく……俺は南雲 晴矢!プロミネンスとカオスのキャプテン様だった男だ!!」

 

「涼野 風介。カオスのキャプテンはジャンケンで負けただけで本来は私だ」

 

「ンだとテメェ!?」

 

「試合の最初に戦意喪失していた男が良く吠える」

 

「でもお前ダイヤモンドダストとして戦った時も実質負けだったじゃねぇか!!」

 

「あれは引き分けだ!!」

 

「結局カオスの時俺達に負けたけどな」

 

「「う゛ッ……」」

 

 

 どうやら勝った負けた論争において結局負けたじゃんアタックは即死攻撃だったらしい。南雲と涼野のさっきまでの勢いが消え失せた。

 プロミネンスと試合はしていないが、涼野より先にコイツと会ったんだよな。修也を探している時に炎のストライカーを名乗って俺達の前に現れた。実際炎のストライカーではあったが、修也目的だった当時の俺は凄まじく荒れてた気がする。

 そしてカオス戦。あの試合もヒロトや風丸達との試合に引けを取らないほどに苛烈な戦いだった。点を奪って奪われて、また奪っての繰り返し。試合が終わったあとにはアフロディと揃って気絶するくらいだ。

 

 

 ……というかコイツら全然見た目変わってないな。砂木沼はだいぶ変わってるし、ヒロトも髪型を変えるくらいはしてたのにほぼ素じゃねえか。

 

 

「けど今回は勝つぜ!あの時より俺は強くなったんだからな!!」

 

「同意だね。君のスピードを上回ってみせよう」

 

「大きく出たな……あの時の俺と思ったら大間違いだぞ?」

 

「邪魔するぞ」

 

「ちょッ、離してよ玲名ぁ!!」

 

 

 南雲と涼野の挑戦状を叩きつけ返すと、奥の扉が開く。そこから入ってきたのは、青髪に白のメッシュが入った女と……それに首根っこを掴まれている緑髪。あの青髪は見覚えがあるな、ジェネシスの10番だ。ヒロトを警戒していたら超スピードの奇襲で度肝を抜かれた覚えがある。

 そしてあの緑髪……あ、アイツはもしかして?

 

 

「扉の前でずっとぶつくさ言ってたから連れてきた。あとこれ、お菓子」

 

「ありがとう。えっと……」

 

「八神だ。八神 玲名」

 

「八神ね、覚えた。それでそっちは……」

 

「ひッ」

 

 

 八神が持ってきてくれたお菓子を受け取って、問題のその男に話題を移すと身体がビクンと跳ねた。なるほど、ヒロトが言っていたテンションの差ってこういうことか。

 

 

「〜〜〜ッ、その節は、大変申し訳ございませんでしたァッ!!」

 

「……へ?」

 

 

 そしてその緑髪が見せたのはなんと、凄まじい勢いの土下座。美しい本気の土下座だ。俺があの域に達するのは20代後半か……

 

 

「えっと……とりあえず顔上げろよ?」

 

「その節はッ!!黒いボールを全力で撃ち込んで大怪我をさせるだけでは飽き足らずッ!!奈良でも気絶するまでに追い込んでしまいッ!!挙げ句の果てに大口を叩いた上で大敗するという醜態をさらしてしまいッ!!本当の本当に申し訳ございませんでしたァァァ!!」

 

「ええ……」

 

 

 いや、うん。話してる内容的にも間違いなくアイツなんだけど、こんなキャラだったのか?

 

 

「とりあえず、名前……」

 

「はいッ!緑川 リュウジと申します!!負け犬とでもなんとでも呼んでくださいッ!!」

 

「お前は俺をどんな鬼畜だと思ってんのッ!?」

 

 

 とりあえずレーゼこと緑川を普通に座らせる。その顔は面白いくらいに真っ青だ。

 

 

「まあなんだ……別にもう気にしてないから、な?最初のアレは流石に死ぬかと思ったけど」

 

「アレは本当にやりすぎたんだ……エイリア石の影響で気性がどうこうはあったにしても、本当は校舎の破壊しかしないつもりだったのに……」

 

「だからもう良いって!というかお前、キャラが違いすぎるだろ。この3人を見てみろよ、会うなりリベンジだのなんだのだぞ?」

 

『ふんッ』

 

「ここだけの話、あの時は滅茶苦茶宇宙人キャラ作ってたんだ……その挙句が殺人未遂……うぅ……」

 

「……ヒロト、八神。ヘルプ」

 

「緑川。加賀美くんが来る前にも言っただろう?お前がいることを承知で来てくれてるんだから、そんなに怒ってないはずだよって」

 

「その通りだ。もし気にしているなら私やヒロト、南雲達との気まずさも考えて来ないだろうに」

 

「……本当に?本当に怒ってない?」

 

「怒ってない怒ってない」

 

 

 あの飄々とした態度で俺達を見下していたレーゼの姿と緑川がどうやっても重ならない。別人ってレベルじゃねえだろオイ。

 

 

「……じゃあ良かった!いやーここだけの話すっごい不安でさあ、到着前に雲隠れしようと思ってたんだよね!」

 

「切り替え早」

 

「喉元過ぎれば熱さを忘れる、ってね!」

 

「まあ、そういうことにしておいてくれ。そっちの方が俺としても助かる」

 

 

 やっとこれでまともに話が出来る。全力謝罪されたままじゃ会話なんて出来ないからな。

 

 

「それにしてもさ、何であの後平然と奈良に来てたの?普通に長期入院だと思うんだけど」

 

「それがな、俺もよく分からないんだけど病院に運び込まれた翌日には全回復してた」

 

「加賀美ってもしかして宇宙人?」

 

「有り得るね。普通ならガス欠になるような場面ばかりだろうし」

 

「正直バケモンかと思ったぜ」

 

「私も。あの試合の中で何度肝を冷やしたか」

 

「……もしかして、満場一致で人外扱いか?」

 

「大丈夫、俺がいるよ」

 

「私もいるぞ」

 

「ヒロト、砂木沼……!」

 

 

 人の温かさを実感しながら話に花を咲かせる。互いの近況、今だからこそできるあの時の話などなど、最初の一悶着はあれど和やかな空気で時間が流れる。

 このまま話してても良いけど、せっかく来たんだ。敢えてその空気を破るとしよう。

 

 

「さて、そろそろ……やるか?」

 

「待ちくたびれたぜ……リベンジマッチ!!」

 

「あの時の雪辱、晴らさせてもらう!」

 

「ふはは!!あれからまた強くなった貴様を見せてもらうぞ、加賀美!!」

 

「全くコイツらは……だが、私もリベンジさせてもらうぞ」

 

「ジェミニストームが負けてから俺も特訓したからね。その成果を示してやる!」

 

「決まりだね、加賀美くん」

 

「ああ……サッカー、やろうぜ!!」

 

 

 そう、本来の目的はコイツらとサッカーすることだ。ヒロトとの別れ際、サッカーしてたらまた会えるなんて言ったからな。まあそれはそれとして、普通に俺がやりたかっただけだな。あの時は互いにバチバチの状態でやり合ってたけど、今ならただ楽しいサッカーが出来るはずだ。

 

 

 そうと決まってから行動は早かった。南雲達が建物中を走り回って人を集め、2チームを作る。明らか2チームでは足りない人数だから何回か回すんだろうな。ちなみに俺は客人だからといって常に参加させられるらしい。嬉しいけど、多分途中からはヘトヘトだろうな。

 ちなみに集まったメンバーはほぼ全員どこか見覚えがあった。エイリア学園の時は明らかに変装重視してるヤツとかいたけど、意外と分かるもんだな。全く見覚えがないのは、多分南雲のチームだったヤツらだと思う。

 

 

 さて、やるか。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

X月X日 議事録

 

 加賀美 柊弥について

 

 ・加賀美 柊弥の封印が正式に決定。このミッションにはエージェントとしてガンマを派遣する。

 

 ・過去にこちら側から過去に接触した影響によってイレギュラーが予測される。その最たる例が、加賀美 柊弥の完全覚醒である。もしそうなった場合、タイムパラドックスによるセカンドステージ・チルドレンの更なる進化が考えられる。

 

 ・現時点で加賀美 柊弥の時間軸において覚醒は起こっていない。そのため、覚醒するよりも早く可及的速やかに封印を行うことを目標とする。仮に覚醒が発生すると仮定する場合、フットボールフロンティア・インターナショナルの時期と予想される。万全を期し、フットボールフロンティア・インターナショナルの予選開始前に封印完了を目標とする。

 

 

 雷門イレブンについて

 

 ・ベータにより円堂 大介のクロノストーン化が完了。しかし、クロノストーン化した状態で動けることが監視により判明。それにより雷門イレブンが覇者の聖典の内容を理解、チーム強化のために何やら動き始めると予想。

 

 ・試合の中で松風 天馬に続き、剣城 京介が化身アームドを習得。

 

 ・今後も継続してベータに一任することとする。

 

 

 フェーダについて

 

 ・先日、ナンバー2である???がセカンドステージ・チルドレンと交戦している場面が観測された。

 

 ・原因は不明だが、???が何らかの理由でフェーダより離反したと予想。それにより???によるタイムジャンプへの干渉が無くなると思われる。

 

 ・それによりフェーダ組織力が低下。特に???が強く関与していた技術面と謀略面において大幅な弱体化が見込まれる。

 

 ・???は現在行方不明。おそらく身を隠すために潜伏していると思われる。

 

 

 

 

「……ふう」

 

「随分とお疲れのようだな、トウドウ」

 

「サカマキか」

 

 

 先程まで会議をしていた部屋に一人残り、議事録を見返しながら思案するトウドウ。そこにサカマキと呼ばれるエルドラドの科学者がやってくる。

 

 

「疲れもする。ただでさえセカンドステージ・チルドレン……フェーダ共の攻撃が激しくなっているのだ。その上雷門イレブンが面倒な動きをしている」

 

「だからこそ、加賀美 柊弥を封印することで力を削ごうということか」

 

「そういうことだ。前まではヤツのせいで加賀美 柊弥の時代への干渉は常に読み合いを強いられていたが、恐らく今ならそれがない」

 

「ようやく我々にツキが回ってきたな。ガンマを派遣するとのことだが、確実性を重視してパーフェクト・カスケイドも派遣するか?」

 

「いや、パーフェクト・カスケイドはこちらの時代に残しておきたい。せめてアルファの再教育が済むまではな」

 

「了解した。本来ならば最初に加賀美 柊弥と円堂 守を潰すことでサッカーを衰退させられれば良かったんだがな」

 

「結果は時空の共鳴現象により加賀美 柊弥の進化を促進、本来目覚めることのなく受け継がれるはずだったその原初の力が目覚めかけている始末だ」

 

「ふむ……やはり覚醒しないにしろ、加賀美 柊弥の封印は必要だな。危険すぎる」

 

「ああ」

 

 

 自身の存在そのものを脅かす魔の手が迫っている。そのことを柊弥はまだ知らなかった。

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「おらァ!!」

 

「くッ、負けるかよッ!!」

 

 

 ボールと共に独走していると、どこからとも無く現れた南雲かショルダーチャージを仕掛けてくる。相変わらず馬鹿げたパワーだ。負けてから馬鹿みたいに鍛えたな。あの時とは比較にならないレベルだ。というか、全員レベルが上がっている。エイリア学園の序列的には一番下だったはずのジェミニストームのメンバーも食い下がっている。

 幾らフルタイムじゃないとはいえ、もう何回試合したかな。だいぶ疲れてることもあって気を抜いたらすぐ負けそうだ。

 

 

「加賀美!こっちこっち!!」

 

「ナイス、緑川……!」

 

 

 南雲を引き剥がす余裕が無い中、サイドから緑川が走り込んでいる。体勢を崩しながらも出したパスはしっかりと緑川に届く。南雲がそれに気を取られた瞬間を狙って突破する。

 

 

「クララ!!」

 

「はいはい……アイスフォートレス

 

 

 緑川からボールが戻されたその瞬間、涼野と二人で氷の城壁に囲まれる。この必殺技はクララだな、カオスとの試合でどれだけ苦労させられたか。しかもこの状態で涼野とデュエルか。この壁を越えるためにも体力が持ってかれるだろうし、どうするか……

 

 

(なんてな、選択肢は最初から一つだろッ!?)

 

 

 雷霆万鈞をフル稼働させ、最大加速でぶち抜く。真正面から涼野が迫るが、シザースで左右の揺さぶりを掛けてからの一点突破で置き去りにする。そこまで来れば目の前にあるのは分厚い氷の壁。

 この前はライトニングブラスターの力技で突破したけど、今それをやったら多分ガス欠でぶっ倒れる。雷帝一閃の応用で飛び越えたりもしたが、それを想定してか壁がやたらと高い。一か八かの賭けになるが……試してみるか、三つ目の選択肢をな!

 

 

サンダーストーム"V2"!!

 

 

 身体から溢れ出る雷で十数本の剣を作り出し、氷の壁に差し向ける。剣の雨が壁を削り、その先の光が段々と漏れ始める。

 あともう少しで突破、というところで横から涼野がぶつかってくる。パワーも前より上がってる、南雲に負けじと満遍なく鍛えてやがる。倉掛が作り出したアイスフォートレスもあってカオスとの試合を思い出す。

 

 

 だからこそ、負けらんねえな。

 

 

「らァァァァァァッ!!」

 

「まだ、こんな余力が……!!」

 

 

 エネルギーを高密度で練り上げ、爆発させる。全身から迸る雷の勢いが桁違いに跳ね上がり涼野を遠ざける。狙い通り、妨害が無くなった今なら壁の突破に集中出来る!

 

 

「ぶち抜けッ!!」

 

「えっ?」

 

 

 サンダーストームで削り、最後は自分の身体で壁を叩き割る。この手の壁を突破するならやっぱり力技が一番手っ取り早い。

 氷の壁が砕け散って目の前の視界が開けると、こちらを唖然とした表情で見ている倉掛が視界に入った。何か言いたいことがありそうだが構ってる暇はない。この勢いのまま点を奪い取ってやる。

 

 

「させんぞ、加賀美!」

 

「ッ、マジで速いなッ……!」

 

 

 ゴールまで走ろうとしたその時、音もなく一瞬で八神が現れた。俺が閉じ込められてる間に後ろまで戻ってきてたのか?それにしたって速すぎるだろ。涼野と比べても全く遜色ない。

 

 

「加賀美くん!こっちだ!」

 

「最高のポジショニングだ……ヒロトォ!!」

 

 

 俺がパス先を探し始めたと同時、声を上げるヒロトが視界に入った。もう跳ぶ体勢が出来てる。それなら……上だな。

 

 

流星ブレードッ!!

 

 

 八神をハンドワークで抑えながらセンタリングを上げる。それより早く跳んでいたヒロトは、脚に力を集中させながらそれを待っている。送り出したボールはヒロトが最後の回転を終えたタイミングでちょうど足元に到達し、全エネルギーを叩き込まれる。放たれたそのシュートはまさに流星の如く。それを迎え撃つのは砂木沼。

 多分、このシュートが試合最後になる。なら、俺もちょっと無茶ぶりしてみるか。

 

 

「ッ!!貴様も来るか、加賀美ッ!!」

 

「恨むなよッ!"極"轟一閃ッ!!

 

 

 本来の踏み抜く工程を省略した上で跳び、ゴールへ向かって降っていく流星に俺の一刀を上乗せする。雷を纏った流星は更に唸りを上げながら砂木沼へと向かっていく。

 

 

「恨むはずがなかろうッ!!貴様らの全力、迎え撃ってくれる!!ドリルスマッシャー"V3"ィィィ!!

 

 

 流星ブレードと轟一閃の併せ技を強靭なドリルが迎え撃つ。凄まじい勢いで火花を散らしながら互いに削り合う。オーバーヒートしたドリルは赤熱を帯び始め、暴走したかのように勢いを増す。

 

 

「ぐォ……ぉぉおおおおッ!?」

 

 

 だが、俺とヒロトの全力が注ぎ込まれたシュートはあまりに強すぎた。ドリルは悲鳴のような音を上げた瞬間砕け散り、砂木沼の横を通り過ぎてゴールネットに突き刺さる。

 

 

「よしッ!!」

 

「ナイスシュート加賀美、ヒロト!!」

 

「おう、お前もアシストありがとな。緑川」

 

 

 俺達のシュートが決まった、その瞬間試合終了のホイッスルが鳴り響く。この試合が最後のローテーション、完全終了だな。

 

 

「あー……疲れた」

 

「15分間隔くらいで10試合くらいやったもんね」

 

「普通の試合を二回とちょっとこなしたくらい?相当やったなあ……」

 

「ああ。もう動けねえよ」

 

 

 ここまで疲れたのは久々だ。あの戦いが終わってから気を抜いてダラダラしてたら間違いなく半分くらいで潰れてただろうな。

 

 

「おい加賀美、風呂湧いてんぜ」

 

「その後は夕飯だ、行くぞ」

 

「おーう……」

 

 

 南雲と涼野に引っ張り上げられて立ち上がる。どうやらもう風呂の準備が出来ているらしい。タオルと着替えを回収して皆に着いていく。

 

 

「……おお」

 

 

 ここに着いたときに風呂場はチラッと見たけど、やっぱ凄いな。マジで大浴場だ。探したらサウナも併設されてるんじゃないか?ってなりそうなくらいには大きい。離れたところに女子風呂も同じ大きさであるって言うんだから凄まじい。

 

 

「なあ加賀美」

 

「どうした南雲」

 

「お前ってさ、好きな人とかいねえの」

 

「何だよ急に」

 

「そりゃお前、男子中学生といったら恋バナだろうが」

 

「それって修学旅行で寝る時にするやつじゃないか?」

 

「お前が寝るの空きがあるヒロトと緑川の部屋だし、今のうちに消化しとこうぜ」

 

「成程」

 

 

 そういうノリか。それならまあ、付き合ってやるか。

 

 

「好きな人というか、付き合ってる人がいる」

 

「なッ」

 

「詳しく聞かせてもらおうか」

 

 

 言葉を失う南雲とは逆に涼野が食い付いてくる。コイツこういうキャラなのか。

 

 

「付き合ってるのは雷門イレブンのマネージャーさんかい?」

 

「ああ」

 

「告白したのはどっちなの?」

 

「あっちからしてもらった。お前達との戦いがあったから返事は少し待ってもらって、この前したばっかりだ」

 

「おお……」

 

「デートは?」

 

「何回かした」

 

 

 色んなヤツからの質問責めに合う。休み終わり前の焼肉でもこんな感じだったな。春奈と一緒にいたら凄まじい勢いで囲まれてた。正確にはやっと付き合ったのかみたいな感じだったけど。

 

 

「お前らは何かないのか」

 

「俺達は……なあ?」

 

「ああ」

 

「小さい頃から一緒にいたから、異性より家族としての意識がどうしてもね」

 

「あー……」

 

 

 そういうパターンもあるのか。聞いた話だと、小学校低学年くらいからずっと一緒に同じ屋根の下で過ごしているメンバーが大半らしい。俺と守が出会った時くらいから家族として過ごしてたと考えれば確かに納得だ。

 

 

 そこからも色々な話をする。さっきヒロト達と話してる場所にはいなかったヤツらも混じえてあの時の話をしたり、サッカーについて話したり。アドバイス的なのを求めてくるやつもいる。

 気付いたら30分くらい経っており、段々とのぼせそうになってきたから上がることにする。

 

 

「うお……」

 

 

 髪を乾かし終わって広間に戻ると、壮観な光景が広がっていた。多くのテーブルの上に並べられた寿司、オードブル、その他もろもろ豪華絢爛な食事。風呂入る前といい驚きっぱなしだ。

 

 

「今日は奮発させてもらったわ。吉良財閥の力よ」

 

「……財閥すげー」

 

 

 50,60人分くらいいるから……相当だ。そんな光景に言葉を失っていると、続々と人が集まってくる。サッカーする時全員そこにいたけど、やっぱり多いな。

 

 

「さて加賀美くん、乾杯の音頭をお願いね?」

 

「え?」

 

「今日の主役だもの。皆期待してるわよ」

 

 

 皆が集まったのを確認したのか、瞳子監督に無茶振りを振られる。乾杯の音頭って、何を言えば良いんだ?俺ってこの場において部外者みたいなもんだし、だいぶ難しいぞこれ。仕方ない……この前の守を参考にするか。

 

 

「ええ……本日はお招きいただきありがとうございます。色々ありましたが……」

 

「加賀美長いぞー」

 

「固いぞー」

 

「早くー」

 

 

 南雲、涼野、緑川に連続で煽られる。コイツら……まあ、堅苦しくて長い口上なんていらないか。じゃあシンプルに……

 

 

「……乾杯!」

 

『かんぱーい!』

 

 

 グラスを掲げるとあちこちから音が鳴る。さて、さっき話せなかったヤツらとも話に行くか。




中学生らしい話をもっとさせたかったけど難しかったです。もっと精進せねば。
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