ただ改善して欲しいとこも色々見えてきましたね…特にオンライン対戦周り。
さて、そろそろ2.5章完結です。次はとうとう世界への挑戦か始まります。
「ようこそバルセロナ・オーブへ、監督のルーカスだ!」
「よろしくお願いします」
「お前がカガミだな?昨日の映像は見せてもらったぞ!ウチのベルガモとルーサーを相手取って、クラリオまで出し抜くなんざ大したヤツだ!」
合宿初日。昨日の歓迎会には予定が合わず来てなかったクラリオ達の監督と顔合わせから始まる。クラリオのイメージに引っ張られて厳格な人なのかと思ってたがそんなことはなかった。何と言うかこう、豪快?
「監督、その辺りで」
「おっとスマン」
成程、この監督あってこそのこのクラリオってことか。
「さあて、今日から一週間4人にはバルセロナ・オーブに加わって練習してもらうワケだが……ウチの練習に加えてお前達が国でやってる練習も是非見せて欲しい」
「分かりました」
「じゃあ早速だがカガミ、カゼマル。お前達がやってる体力トレーニングをやってくれ!」
そんなこんなで最初に白羽の矢が立ったのは俺達だった。体力トレーニングか……いろいろやってる事はあるがどれにしようか。イナビカリ修練場みたいな設備がそのままあれば良かったんだけど、一般的なトレーニングマシンくらいしか無さそうだったからな。
……あ、そうだ。アレなら行けるんじゃないか?
「ルーカス監督、ここに装着可能な重りはありますか?出来ればベスト型で」
「あるぞ。最大15kgくらいだが良いか?」
「よし」
「……加賀美?お前まさかアレをやる気か?」
「おう。お前ならもう最後までいけるだろ?」
「……」
「お、おいカゼマル?カガミは何をさせようとしてるんだ?」
「俺が知る限り最大の地獄……鬼のシャトルランだ」
説明しよう。鬼のシャトルランとは重りを着けた状態で行うシャトルランだ。ただそれだけじゃない。シャトルランは最初超ゆっくりなペースから始まるが、俺が考案したこの鬼のシャトルランは最初からそれなりのハイペースだ。回数で言えば……だいたい60回目くらいのペースか。ただ走るだけじゃなくて切り返すための減速、そこからの加速が何回もあるから結構鍛えられる。その代わり100回目くらいのスピードが上限だし、0から始めて100までいけば終わりだ。
これをこっちに来る前に風丸とやってたんだが良いトレーニングになる。ただ風丸は最初思いっきり死んでた。俺はカオスとの試合の前にもう取り入れてたから大丈夫だったけどな。
「……正気か?」
「なあカガミ。人には限界ってものがあると思うんだ」
「俺もそう思うよカガミ。考え直さないか?」
「ルーカス監督、どうします?」
「……もう少しマイルドにしてやってくれないか」
「ふむ……じゃあ10kgで。その後動けなくなってもダメなので極限が来たらリタイアしてもらって良いですよ。限界じゃなくて、極限まで来たら、ね」
詳細を話すと、全員から命乞いをされた。クラリオにすら正気を疑われてしまった。まあ実際相当キツいからな……俺も最初は思いっきり吐いた。2回目からはもう慣れ始めて、3回目で完走出来た。
「重りはトレーニングルームに置いてある。全員で回収しに行ってそのまま始めようか」
「はい、そうしましょう」
「なあカゼマル。カガミっていつもこんな感じなのかい?」
「ああ。サッカーに関してはバカなんだコイツ」
なんか後ろで言われてるが気にしないでおこう。風丸はとことん追い込んでやる。
ーーー
「ここが、80年前……」
「オートタクシーねーの?歩きたくねえー……」
柊弥達が特訓を始めた頃、その近くに降り立った2つの影があった。80年後の未来からやってきたカノン、そしてヒカリだ。
「あるわけないだろ!」
「じゃあ作るかあー」
「やめろよ!?この時代でそんな悪目立ちしたら色々マズイからな!?」
カノンはヒカリを引きずりながら目的地へと進む。その目的地というのは……バルセロナ・オーブの宿舎。
「ヒカリ、頼んだ」
「しゃあねーなあ……ほい」
その前まで辿り着くと、カノンは何かを要求する。気だるそうにヒカリが指を鳴らすと、その直後2人の姿はこの世界に視認されなくなる。比喩でも何でもなく、そのままの意味で。
「本当に使いようによっては便利だなその能力」
「いる?」
「渡せないだろ!……まったく、ほら行くぞ」
2人はそのまま宿舎に入っていく。警備員がそこに控えていたが、彼は2人の侵入にまったく気付けない。姿は勿論、声や音すらも消えてたのだから。
「……多分、こっちかな?」
「カノンー、これ意味あるかあ?早く休みてえんだけど……」
「実物を確認しておくようにってキラード博士も言ってただろ!大人しく着いてきなさい!」
「へーい」
依然として気だるげなヒカリを引っ張ってカノンは進んでいく。階段を昇って進んで辿り着いたのは、バルセロナ・オーブのサポーターのために設置されたグラウンドを取り囲む観客席。
「まだまだァ!!半分も走ってないぞお前ら!!」
「も、もう無理……」
「マジ死ぬ……!」
「な、なんだアレ……重りをつけてシャトルランしてる?」
「うわあ……ぜってーやりたくねえ」
カノン達の眼下に映るのは、着るタイプの重りを身につけ絶賛シャトルラン中の柊弥達だった。本人は活き活きとしているが、周囲は既にグロッキー。どれだけ過酷なのかは一目で分かった。
「こういうことを積み重ねて、あの人は伝説になったんだな……」
「あんなのが先祖とか信じらんねー」
「お前もあの人の勤勉さを少しは受け継いでおけよ……」
「しゃあねえだろこうなっちまったんだからよー」
「……まあいいや」
それから暫く2人は柊弥達の特訓を眺めていた。片方は途中で眠りこけていたが。
「……加賀美さん、貴方は絶対俺達が守ってみせます!」
「すやあ……」
柊弥と彼らが邂逅するのは……そう遠くない未来の話。
ーーー
「風丸ッ!!最後だ気合い入れろォ!!」
「ッ、ォオオオオオ!!」
俺と風丸は同時に最後の力を振り絞って加速、100回目を走り切って20m地点を知らせるラインを割る。
「コイツら……マジかよ……」
「日本が誇るヨウカイってヤツじゃねえのコイツら……おえッ」
「……カガミ、カゼマル。これが日本の普通なのか?」
「いやクラリオ、日本から移った俺でも分かる。これは絶対普通じゃない。だいぶ異常だ」
結局走り切れたのは俺と風丸だけ。皆大体60回くらいからダウンし始めた。フィディオが74、ヒデが85、クラリオが90でリタイアだったな。ベルガモやルーサー、他のヤツはフィディオより早かった。
「お前の底力の理由が分かった気がするよ、カガミ……」
「スタミナは少なくとも世界トップクラスだ……」
「そりゃどうも」
「……カガミ。明日からはシャトルランじゃなくてランニングに切り替えられないか?」
「別に構いませんよ。今日これを通ったからランニングも余裕持てると思います」
「だろうな。現役じゃなくて良かったって初めて思ったよ」
俺のお気に入りだったんだけどな……まあ仕方ない。文化の違いってヤツだ。
「この後はどうするんですか?」
「ポジションごとに分けて練習だ。まずDFとMFでそれぞれオフェンス、ディフェンス。その間FWとGKでシュート、キャッチングをする。シュートを撃てるMFは任意だ」
「分かりました」
その前にまず休憩を挟むらしいけどな。ほぼ全員グロッキーだし仕方ないか。
「さて……」
俺はその休憩時間で瞑想でもしておこう。脈打つ心臓、流れる血液、そして身体に満ちるエネルギーを知覚することでその扱い方を更に磨く算段だ。雷霆一閃やライトニングブラスター、サンダーストーム、雷霆万鈞なんかは緻密なエネルギー操作があって成り立つ必殺技だ。こういう地道な努力がその精度向上に繋がるワケだ。もしかしたらこれがゾーンの任意発動、化身の覚醒なんかにも繋がるかもしれないからな。
ただひたすらに無心、意識を向けるのは自分の内側にだけ。そんな集中状態に没頭する。次に目を開けるのは、声が掛けられた時だけ。
「よし、休憩終了!全員準備しろ!」
「……ふう」
10分後、ルーカス監督の声で意識を引き戻す。身体の調子は……最高だな。走り込んだ後の興奮状態から瞑想でリラックス、そこからまた身体のギアを上げるその切り替えがちゃんと上手く機能している。
最後にドリンクを流し込んでシュート練習をするゴール付近へと向かう。そこに居たのはベルガモにルーサー、クラリオ。フィディオにヒデだ。風丸はあっちに行ったみたいだな。
「順番にシュートを撃っていく訳だが……ちょっと俺の我儘を言っても良いか?」
「何でしょう?」
「カガミ、ヒデ、フィディオ。お前達のシュートを見せてくれ。カガミは昨日撃ってたあれ、全力じゃないだろ」
あれ……ライトニングブラスターか。確かに俺の全力はアレじゃない。とはいえ、本当の意味の全力だったら10割全部ぶち込むライトニングブラスターだけど、そんなことしたら間違いなく動けない。それならやっぱりあのシュートだな。
「最初は誰が行く?」
「無難にじゃんけんで決めないか?」
俺がそう訊ねると、ヒデからシンプルイズベストな提案が飛んできた。話し合いで時間を食うのも面倒だからそれでサッと決めた。順番はヒデ、フィディオ、俺だ。ちなみにキーパーは入らないで見てるらしい。
「じゃあ、早速やろうか」
そう言うとヒデはボールを踏み抜く。俺の轟一閃と似た挙動で浮き上がっていくボールは、蒼いエネルギーを纏い始める。直後ヒデはオーバーヘッドキックをボールに叩き込む。あまりの出力にエネルギーが溢れ出し、撃ち出される瞬間にボールと同じ模様が空間に浮かび上がる。
「ブレイブ……ショットォォッ!!」
原理は轟一閃とかなり近い。けど高さをつけたところから撃ち出すことで位置エネルギーが上乗せされてるし、何より込められてるエネルギー量が半端じゃない。
「キャプテンの本職はMFなんだ」
「……あのシュートでか」
「うん。全方面で高いあの能力はFWでもDFでも遺憾無く発揮される。だからこそその両方を活かせるMFになったんだ」
オールラウンダーだからこそ、ってことか。多分だけど、俺も近いことが出来ると思う。今までストライカーとしてやってきたから前線は勿論、ディフェンスラインまで下がることだって少なくない。それこそ風丸みたいに動けるはずだ。
けど……やっぱり俺にはFWが向いてるかな。俺達雷門が目指すのは全員サッカー、当然守備だってする。だけどこの脚で道を切り開くのが好きだ。
「次はお前のシュートを見せてくれよ、フィディオ」
「勿論!これでもチームのエースなんだ、見ててくれ!」
ヒデと入れ替わって今度はフィディオがフィールドに立つ。アイツのプレーを見るのはこれが初めて、楽しみだ。
「お疲れヒデ」
「ありがとう。さて……フィディオは凄いぞ」
「お前から見てもか」
「ああ。シュート、スピードおいては間違いなく俺より上。そこから着いた異名が……イタリアの白い流星さ」
「白い流星……」
馬鹿げた視野とテクニックを持つ上、あんなシュートを撃つヒデがここまで言うんだ。フィディオも相当なやり手なんだろう。
「……よし、いくぞ!」
呼吸を整えてフィディオは走り出す。
「……速い」
初速から相当なスピードだ、そこからの加速も凄まじい。多分スピードは完全に俺の同格以上。そしてある一転でヒラリと回転、それと同時に脚元には魔法陣が展開される。その中心に据えられたボールには凄まじい勢いでエネルギーが集中していき、黄金に光り輝く。
……成程、ヒデがあそこまで絶賛する理由が分かった。ヒデのブレイブショットですら相当デタラメな力が込められてたけど、フィディオはそれをゆうに超えてる。ボール、フィディオ自身から発せられる圧が全身を叩いてきやがる。
「オーディンソードッ!!」
振り上げられた脚がボールに叩き込まれる。直後、ボールは黄金の剣となって空間を斬り裂く。一瞬でゴールまで辿り着いたそのシュートはゴールネットを激しく揺らす。
「どうだった?」
「凄い、の一言しか出てこない。一撃の破壊力が規格外すぎるな」
修也や染岡もオーディンソードのように一撃に全てを込めるシュートだが、フィディオのあれは文字通りの異次元。同じことやれと言われて出来る同世代がいるとは到底思えない。
「さあ、次はキミだ」
「重いバトンだ」
フィディオと入れ替わって最後に立つ。ヒデのブレイブショット、フィディオのオーディンソード。間違いなくどっちも最高峰のシュートだ。これが世界、凄えよな。本当に来てよかった。
だからこそ、俺のありったけをぶつける。加賀美 柊弥という存在をこの場に刻み込んでやる。
「ふーッ……」
集中しろ。身体の中を廻るエネルギーを掌握して、俺の最高を引き出せ。
「はッ!」
ボールを蹴り上げ跳躍、高度を上げていくボールよりも速く空を裂く。追い越す瞬間に一撃を叩き込み、その動きを支配する。無限に感じる時間の中、全力で斬って、斬って、斬りまくる。高まり続ける力が空を黄金に染める。
そんな力の権化をそれ以上の力を持ってして叩き落とす。解き放たれた雷霆が轟音と共に堕ちる中、一瞬で地面に降り立つ。
最大の力を最速で、最適なタイミングで撃ち出す。あらゆる最高が交差して俺の最強になる。
「
振り抜き一閃、直後空間が歪むほどの力を放出しながら雷霆は進む。標的を焼き尽くすために。邪魔をする者がいない以上、そのシュートは容赦なくゴールに突き刺さり、そのネットを黒く焦がす。
「……素晴らしいな」
「一撃の火力なら俺やキャプテンの方が上だけど、その一撃を一瞬で何度も重ねるなんてね……神業、としか言いようがないよ」
「そんなに言われると流石に照れるぞ」
2人の猛烈な賞賛が出迎えてくれる。ここまで高評価をもらえると嬉しいが、俺としてはまだまだ先があるって感じてる。まだ突かれたことはないが、雷霆一閃にはとある大きな弱点が存在してる。それをどうにかして克服出来れば……多分、いや間違いなくストライカーとして高みに到達できる。
「bravo!俺の見立て通り、最高にイカしてるなお前ら!」
「ええ。どのシュートも素晴らしいものでした」
これから俺が辿るべき進化に思いを馳せていると、拍手をしながらルーカス監督がこちらにやってきた。相当お気に召したようで、ショーを見た直後の観客のように興奮している。その隣のクラリオも同意を示している。
「やっぱりこの話を進めて正解だった!スペインも、日本も、イタリアも!ひいては世界のサッカーがもっと熱くなるぜ!こうしちゃいられねえ、どんどん練習してこうぜ!!」
この人、本当にサッカーが大好きなんだな。自分の国だけじゃなくて世界全体のことまで見据えてる。ここまでの熱意は……どっかの誰かさんを思い出すな。
さて、そんな誰かさんに良い報告が出来るように俺も全力で打ち込むか。
ーーー
「荒れてるね、ジーク」
「……SARUか」
200年後の未来。火の海となっているとある施設を見下ろすジークに話しかける男がいた。SARUと呼ばれたその男の本名はサリュー・エヴァン。ジーク達が所属するフェーダのリーダーだ。
「ステラの件かい?」
「あたりめえだ。あともう少しで全てが俺達の思い通りになるってところで馬鹿なことしやがって……おかげで計画が台無しだろ」
「まあね。僕もまさか彼女がフェーダを裏切るなんて思ってなかったよ」
「アイツが欠けたせいで総攻撃でケリがつけらんなくなった。こんなことになるくらいなら力を奪っとくべきだった」
「どうだろうね。確かにキミの方が力は大きいけど、彼女が本気で抵抗したらキミも無事じゃすまないだろう?」
「だから信頼した。それがこのザマだ、笑えねえ」
おもむろにジークは立ち上がる。そして手元に紫色のエネルギーを集中させ握り潰す。その光の粒子を眼下にバラ撒くと……火に包まれた施設は大爆発、凄まじい熱が周囲を支配する。
「プランを練り直さなきゃね。それと並行してステラの捜索だ」
「アイツが本気出して隠れたら俺以外見つけらんねえ。そしてその俺まで前線から離れたら余計計画が崩れる……アイツは暫く放置で良いだろ」
「そうかい?」
「仲良しこよしだったメイアの説得すら通じなかったんだ、他のヤツが何を言っても無駄。力で抑え込むなんてもってのほかだろ」
「……それもそうか。じゃあ暫くは大人達の主要な施設の破壊に注力しようか」
「おう」
ジークはその場を後にする。そんな彼の背中をSARUも追い掛け、その場は程なくして炎に侵食された。
---
「カガミ!!右の動きを警戒しろ!!」
「ああ!」
目の前にはボールを持ったフィディオからのパスコースを作るべく動くベルガモ。今俺はディフェンスの練習に参加している。クラリオによる指示に従うことでバルセロナ・オーブのパーツとなり、このチームの真髄である芸術的な連携を体感するためだ。
(フィディオは多分この守備を突破してくる……が、本当にベルガモにパスを出すか?)
ひたすらに思考をぶん回す。今やろうとしてるのは、フィディオ個人に対する読み。次の状況に派生させるために、コイツは今何をしたい?そこからどんな状況を作り出したい?
(視線が一瞬右に行った……狙いはベルガモを囮にした左!!)
そう来れば右を守る意味は無い。すぐに左を抑えに──
「甘いな加賀美、ここは通行止めだ」
「ッ、ヒデ……!」
動こうとしたその瞬間、どこからともなく現れたヒデがそれを阻止してくる。クソ、やっぱりコイツの盤面を読む能力はずば抜けてる。この全体の動きの中で俺がどう動くかを完璧に抑えて止めに来やがった。
「ベルガモ!」
「おう!」
「なッ……」
しかも狙われてたのは左ですらなかった。俺が右から左に意識を変えたから……じゃないな。俺の他にクラリオも見てたからな。つまり俺は盤面の読みだけじゃなくて、個人の読みすらも間違ってた。それに気を取られて得意なはずの状況の読みも雑だ。
「いけ、カゼマルッ!!」
「任せろ!!」
そんな俺とは裏腹に風丸の動きは最高潮だ。バルセロナ・オーブの哲学を叩き込まれた風丸は、それと自分の個性を共存させて新しい武器を手に入れた。連携の裏に隠れ、その瞬足をフルに活かした影としてのプレイ。ただでさえ連携に意識が向いてる上、風丸のスピードで立ち回られたら動きを捉え切るのは相当難しい。
(進化する風丸、本領発揮のバルセロナ・オーブ、あらゆる要素が掻き乱すこの戦場をヒデ、クラリオ、フィディオは読み切って動いてきやがる)
そんな戦場で読み負けてる上に新しい進化も出来てない。一番遅れてるのは間違いなく俺だ。ヒデ達から認められたシュートも、そこまで持ち込めなきゃ意味が無い。少人数の勝負とはまるで違う、これが世界のフィールド……
「……負けてらんねえ!!」
ヒデとクラリオとのあの勝負を思い出せ。あの時みたいに、盤面をひっくり返すような予想外を創るんだ。今フィールドで起こってるあらゆる事象を脳内にインプットして、思考回路をぶん回せ。その先に得られる答えが、俺の存在を証明する鍵になる!
(……あれ、なんだこれ?)
その時、急に頭の中に凄まじい量の情報が溢れ出す。これは……今この瞬間に起こってることじゃない。これから起こりうる出来事の、無限の分岐?何でこんなのが急に……いや違う、急でもなんでもない。俺が望んだものだ。とはいえこんな情報量、どう処理する……?
「取捨選択をしてみろ」
「……え?」
「戦場の動きをリアルタイムで観測して、今一番取るべき行動を選ぶんだ」
取捨選択……リアルタイムで取るべき行動を選ぶ……
(それなら、ここだろッ!!)
走る。一瞬脳内にチラりと見えた、可能性が高くてなおかつ俺が一番阻止したい盤面を阻止するために。
「フィディオ!!」
「ナイスパス、カゼマ──」
「──おらァァァァッ!!」
『!?』
ただ一つだけを目指して走り続け、見えたその一点に向かって頭から滑り込む。直後、繰り出された鋭いパスが俺の顔面を捉える。鼻の奥から滴ってくるその液体の代償に得たのは、ラインを割ったボールの姿。
「加賀美、お前今……見えてたのか?」
「カゼマルがトップスピードでゴールを目指して、俺がカガミ、クラリオと真逆のアウトラインギリギリからパスコースを作るこの作戦……初見でバレるなんてね」
2人からそう声を掛けられた瞬間、膝がガクりと崩れて頭が軋む。さっきのは何だったんだ?まるでダムが決壊したようにフィールド全体の情報が頭に流れ込んでくるような、あの感覚は……そうだ、カオス戦の最終局面に似てる。何でも見えて、何でも聞こえる。あの全能感だ。
「見えたみたいだな」
「ヒデ、さっき俺に声を掛けたのはお前か?」
「ああ。その様子だと、集中しすぎて区別が着いていなかったみたいだな」
ヒデの言う通り、思考に没頭しすぎて誰から声を掛けられたのか咄嗟に判別が付かなかった。こんなのは流石に初めてだ。集中しすぎ……ってことは、ゾーンに入ってたってことか?確かに集中が切れた後に押し寄せる急な疲労には覚えがある。
「その感覚を忘れなければ……更なる高みに辿り着けるだろうさ」
「更なる、高み……」
もしかして、あれがヒデの見ている景色なのか?あの瞬間俺は目の前の状況だけじゃなくて、フィールドのあらゆる動きを予測出来ていた。それは多分、俺がヒデに感じてたあの超人的な視野だ。つまりあれを使いこなせれば、ヒデ、クラリオ、フィディオと真っ向から互角にやり合うことも出来る……?
(面白え……!何が何でもモノにしてやる!!)
掴んだぞ、トップレベルへの足がかり。
明日も更新します。ベータテストでサボってたので…