「加賀美さんと風丸さん、ちゃんと飛行機に乗れたでやんスかね?」
「ちゃんと連絡は来てるから大丈夫だって」
柊弥達がスペインへ旅立ってから一週間。ついに帰国の日がやってきた。先程まで雷門中で練習に励んでいた一同は、全員揃って空港へやってきていた。時刻的にはちょうど柊弥達が乗る便が到着する頃だ。
「あ、あれじゃないか?」
全員が柊弥と風丸の姿を追う中、土門が声を上げて指を指す。その方向から歩いてきたのは……彼らにとって待ち侘びた姿だった。
「よう皆、ちょっと久しぶりだな」
「ちゃんと練習してたか?」
「加賀美!風丸!」
手を振りながら歩いてくる柊弥と風丸。その姿は、どこか旅立つ前よりも逞しくなっているように見える。
「柊弥先輩!!」
「ただいま、春奈」
真っ先に飛び出したのは音無だった。人目も憚らず飛び付いてくる音無を柊弥は真正面から受け止める。
「おかえりなさい!」
「寂しくなかったか?」
「ちょっぴりです!ただ皆いてくれましたし、連絡もくれてましたから」
「なら良かった」
「さて柊弥、風丸!親睦会はどうだったか道すがら教えてくれよ」
「勿論」
一同は歩き出す。久々の再会に心を躍らせながら。
ーーー
「鬼道、その指示甘いぞ」
「ふッ、言うじゃないか!」
鬼道の指示で形成された包囲網を最小限の動きで突破する。鬼道が考える最高を予測して、それで動く皆の位置取りからこの状況における最適解を導き出せる……まだ脳にこの考え方が染み付いていないから疲れるが、やっぱり強い。鬼道の作戦も読み切って動ける。
けど流石鬼道だ。対応したらすぐにまた新しい策を展開してくる。読めるとはいえその都度対応するのは楽じゃない。ここはひとつ……
「風丸!」
俺の動きそのものを封じるために展開された新たな包囲網の唯一の穴を突く。俺自身がではなく、パスがだけどな。
「風丸さん、速すぎるッス!!」
「この短期間でまた速くなったな、風丸!!」
スピードも勿論磨かれてはいるが、バルセロナ・オーブの連携を体感したことであらゆる連携の穴を突くための動きが格段に磨かれている。そこに風丸のスピードがかけ合わさればもはや反則だ。
「いくぞ円堂!!」
「来い、風丸!!」
風丸は俺がよく知る構えをとる。周囲に凄まじい勢いで迸るのは、蒼と黒が入り交じる雷。
「"超"轟一閃ッ!!」
「なッ……」
風丸が放った轟一閃は守の反応速度を大きく凌駕し、ゴールネットを揺らす。あの勝負の最後にまさかの轟一閃を撃ち始めて流石に驚いたな。そのうち練習させてみるのも良いとは思ってたが、まさか教えるまでもなく自分のモノにするとはな。しかも、俺の轟一閃とはまた違う形で進化してみせた。
しかし守のヤツ、油断してたな?風丸が轟一閃を撃ってくると思ってなかったんだろうが、しっかり警戒してれば反応出来たはずだ。轟一閃は元々威力重視のシュートじゃない、多分守の正義の鉄拳なら止められるだろうな。
「凄いな風丸!!轟一閃を完璧に使いこなすなんて!!」
「加賀美、お前の視野の成長も凄まじいな。力押しではなく思考で一対多を戦えている」
「凄えヤツがいてな」
多分ヒデならもっと完璧に出し抜いてみせたんだろうな。俺もまだまだだ、これから更に磨いていけば良いだけだがな。
「皆!休憩よー!」
「先輩!タオルとドリンクです!」
「レモンの蜂蜜漬けもあるわよ!」
「おお……」
休憩に入った途端、春奈からタオルとドリンクを手渡され、夏未が持ってきてくれたレモンの蜂蜜漬けが出迎えてくれる。なんかこう、日本……いや、雷門に帰ってきたんだなって実感出来る。
「なあ柊弥、あっちのストライカーはどうだったんだ?」
「全員凄かった、その言葉に尽きるな」
まずはクラリオ。アイツのプレーで特筆すべきはやっぱりフィジカルだったな。恵まれた体格を惜しみなく鍛え上げ、その上で技術、視野まで超一級。ぶつかり合ったらまず勝てなかっただろうな。スピード、そしてテクニックを最大限発揮して尚且つ読み勝って、ようやく出し抜ける。そういえば、アイツのシュートを見る機会なかったな……もし今度会えたら見せてもらおう。
次にフィディオ。アイツはとにかく速かった。スピードなら俺と風丸と同じレベル、素のパワーは俺達よりも上かな。雷霆万鈞を使ってなお押し勝てない程だったからな。そしてシュートは、類を見ないほどに強力だった。俺が何度も蹴り込んでようやくあの威力を引き出せる雷霆一閃に近い威力を一撃で叩き出してくるからな。
そしてヒデ。最後の最後まで俺一人でアイツに勝てたとは思ってない。ラストプレーで出し抜けたのも風丸のおかげだ。どの能力を取っても超高水準、特筆すべきはやっぱりあの馬鹿げた視野と読み。アイツにその分野で勝つのは相当難しい。最後に出し抜けたのはアイツに読み勝てたからじゃなくて、全ての常識を壊すあの連携が刺さったからだ。次会った時は絶対にあの読み合いを制してみせる。
「なるほどな、そしてそんなストライカーに囲まれてお前も進化した、と」
「ああ……いや、まだまだ発展途上だな。俺はまだまだ強くなれる」
「そうこなくちゃな。俺も負けていられない」
「一緒に強くなろうぜ、相棒」
「さて、そろそろ練習再開するぞ!!」
やっぱりサッカーって……楽しいな。
ーーー
「轟さん!WSOから連絡です!!」
「ふむ」
柊弥達が日本に帰ってきてから数週間後、日本サッカー協会の轟の元にある一本の電話が入った。
「WSOは、何と?」
「……ついに、ついにこの時が来たぞ!」
轟は歓喜に震える。彼が長年待ち侘びたその瞬間が、ついに訪れたのだ。
「い、一体何が……」
「始まるのだ。若者達による、熱き戦いがな!」
轟が視線を目の前のモニターに落とす。そこに映っていたのは、先日の三国親睦会の際に制作された特集番組。
『スペイン、イタリア、日本によって行われたこの三国親睦会。各国の少年達が1週間の間、己の成長の為にしのぎを削り合いました!』
『名門クラブ、バルセロナ・オーブにイタリアのユースチームであるオルフェウス。そして日本の雷門中から招待された4人の少年達による合宿……マードックさん、誰か気になる選手はいましたか?』
『そうですね……全員素晴らしい選手であることには変わりありませんが、その中でも特に私が注目しているのは彼です』
轟が眺めるその番組に映っている、マードックと呼ばれたその男が何やら端末を操作する。するとスタジオのモニターに映し出されたのは……
『日本の"雷神"……加賀美 柊弥くんです』
「フットボールフロンティアインターナショナル……期待しているぞ、加賀美くん」
時を同じくして、轟が受けた報せと同じものが世界を駆け巡る。フットボールフロンティアインターナショナル……かつて雷門イレブンが頂点に立ったあの大会が、世界を舞台に開催される。
「案外、彼らと早く再会出来そうだな」
「そうですね!また会えるのが楽しみです!」
「……ところでフィディオ。1つ言わなきゃいけないことがある」
イタリア。ヒデとフィディオは自分達の監督から次のステージについて伝えられ心を躍らせる。しかし、あの合宿を通して自分のうちに芽生えた想いをヒデは告げる。それはフィディオ、彼とチームに対する試練。それらを乗り越えた先に何があるのか、それは神のみぞ知る。
「ふふっ。今度会う時はまたライバルかな……」
また別の場所、とある美しい少年が微笑む。その笑みに含まれるのは……期待か、はたまた別の感情か。その脳裏に浮かぶのは彼にとっての恩人であり、憧れであり、ライバル。そんな2人が再び交わった末に待ち受けるのは……果たしてどんな結末か。
「あの空の向こうに……私の敵がいるのだな」
「へっ、雷神ね……大層な二つ名だが、俺が全部止めてやんよ」
「アイツらが帰ってくるらしいぞ」
「いよいよ世界に羽ばたくんだな、最強のアメリカが!」
世界各国で少年達が新たな戦いの場へと想いを馳せる。そしてそれは……この国でも例外ではない。
「点はやらない、僕がここにいる限り……なんてね!」
ここはアフリカにある小さな国、コトアール。
「ねえ師匠!!いつになったら彼と戦えるの?」
「焦るな、もうじき世界への扉は開く。そのフィールドにきっとアイツは現れる……」
とある少年ははしゃぎながら老人の元へと走る。その老人はサングラスを掛け、オレンジ色の帽子を深々と被っている。
「……守」
彼が脳裏に思い浮かべたのは、はるか遠くでボールを追いかけているであろう少年。しかし彼はその少年に会ったことは無い。かといって、その情景は彼の妄想という訳でもない。思い浮かべた少年は確かにサッカーに没頭している。今こうしている間も、かけがえのない仲間と共に。
何故そのことを彼が知っているのか。答えは単純明快……その事を教えた者がいる。
「ふッ、日本の雷神か。デカくなったなあ……柊弥」
少し離れたところにいる男がその正体。その名を……加賀美 柊真。世界の注目を浴び始めているあの男の父だ。
「おるァッ!!」
「おーいボルター!そろそろ切り上げるぞ」
「んあ……もうそんな時間か?やっぱ集中すっとあっという間だな」
ボルターと呼ばれた少年は楽しそうに笑いながら柊真の元へと歩いてくる。その顔は……どこか柊弥に似ている。
「そろそろアイツに会えるかもな」
「マジ!?いつ会えんだよ!!」
「さあな?俺の直感でしかねえ。けど断言するぜ、もうすぐだ」
先程大々的に取り上げられていた息子の顔を思い浮かべる。彼が最後にその顔を見たのはもう数年も前のこと。
「そっか……俺、凄え楽しみだ」
ボルトはまだ見ぬその顔に想いを馳せる。一体どんな顔をしているのか、どんな声をしているのか、どんなプレーをするのか。
「早くお前に会ってみてえよ……兄弟!」
ーーー
「ん?響木監督からメール?」
今日も今日とて一日が終わろうとしている。皆でサッカーして、春奈と帰って、母さんのご飯を食べて風呂に入って、布団に寝転がる。何の変哲もない、それでいて大切な日常だ。
後は寝るだけ……そんな時、メールが届いていることに気がついた。差出人は響木監督。件名は……無しか。
「明後日、雷門中に集合?練習日では……ないよな」
一応明後日は休日となっているんだけど……何だ?日程やら場所がやたら形式的に掛かれているところを見るに、多分何人かに一斉送信してるな。何かの手伝いのお願いとかか?
まあなんでも良いか。もしかしたら終わったあとに響木監督にラーメン食べさせてもらえるかもしれないしな。
何はともあれ、明日からも楽しみだ。
三国親睦会を終え、日本に戻ってきた柊弥の元に届いた一通のメール。そのメールこそ、柊弥達にとっての新たな戦場への招待状。次なるステージは…世界。
「加賀美くん、久しぶり!」
「加賀美さん!元気だった?」
「ご無沙汰してます、加賀美さん!」
「よぉ!久しぶりじゃねえか加賀美!」
かつて共に戦った仲間達との再開。
「こんな凄い人達とサッカー出来るなんて…よろしくお願いします!!」
「久しぶりだねぇ、加賀美クン?」
「…ッス」
「よう!あの時ぶりだな!」
「終わりよければすべてよし…ってね!」
「キミと一緒にサッカー出来るなんて、最高だよ」
まだ見ぬ新たな仲間達との出会い。
「ワクワクするな、柊弥!」
「ふッ、萎縮してるのか?」
「次は世界だな…相棒」
かけがえのない仲間達との再出発。
「楽しみですね、柊弥先輩!」
しかしその裏で、様々な悪意が跋扈する。
「久しぶりだな…鬼道よ」
「サッカーなど道具に過ぎん。世界は私のモノになるのだ」
そして…未来から柊弥に迫る魔の手。
「加賀美 柊弥…貴様の存在だけは許容してはならんのだッ!!」
夢、野望、殺意。あらゆるモノが交差するその先に待つ結末とは。
「まだまだぶっトべるよなァァァ!!柊ォ弥ァァ!!」
「ははッ!!当たり前だ、勝負はこっからだろうがァッ!!」
第3章 世界への挑戦編 4/14更新開始。
「世界一になるのは…俺だッ!!」
これにて2.5章完結。柊弥達の戦いの場はとうとう世界へ…
ここまでマジで長かった!!エイリア編に入ったのが2022年の5月なのでほぼ2年掛かったんですかね?FF編が2021年7月からなので相当掛かりましたね…
リメイク前は大阪前くらいで終わったエイリア編をしっかりと書ききれて自分的にはかなーり満足してます。自分が思い描く加賀美 柊弥という主人公をしっかりと皆様にお届けできたことがやはり何より嬉しいですね。
継続は力なりと言うことなのか、1回の更新で見てくださる方やお気に入りが徐々に増え始め、時には日間に乗ることもありました。確か最高で日間総合25位とかだったかな?マジで感謝。
さて、そんな当小説ですが…ようやく新たな章が始まります。本来の原作(無印)であれば、最終章となるこの世界への挑戦編。原作の良さを最大限に活かしつつ、柊弥というイレギュラーを輝かせる。そんな小説を目指してこれからも頑張らせていただきます。
では後書きもこれほどに。次の更新でお会いしましょう…今後ともよろしくお願い致します!