余談ですが、この前更新した際になんと日間ランキング入りの最高順位を更新することが出来ました。これからもよろしくお願いします。
第111話 幕開け
今日は学校も部活も休み。誰か誘って遊びに行ったり、河川敷でサッカーしたり……そんな有り触れた日曜日になるはずだった。けど今俺は雷門中に来ている。その理由は一つ、先日届いた響木監督からのメールだ。10時頃に雷門中に集合というシンプルな呼び出しのメール。その様式から複数人に送信しているのは間違いないはずだけど、もう誰か来てるかな?
グラウンドではラグビー部が練習に励んでいる。ラグビー場が別途あることもあり、大体俺らがグラウンドを使っているんだが今日は休み。ラグビー部に必要だったら使って良いと昨日言っておいたが、役に立てたみたいだな。
「おう加賀美!グラウンドありがとよ!」
「気にするな、練習頑張れよ」
汗を流す顔見知りに手を振り、俺は目的地に向かう。集合場所に指定された体育館だ。やたらと重い扉を開けて中に入ると、そこには……
「……おいおい、どうなってんだこれ?」
「お、噂をすれば来たぜ!」
「加賀美くん、久しぶり!」
目の前の光景を疑った。だって、ここにいるはずがないヤツらがいたんだから。
「加賀美さん!元気だった?」
「ご無沙汰してます、加賀美さん!」
「よお!久しぶりじゃねえか加賀美!」
「吹雪に木暮、立向居、綱海!久しぶりだな!!」
そう、エイリア学園と戦った、あの地上最強イレブンの仲間達だ。塔子とリカは……いないのか。
「何でここに?」
「響木監督からメールがきてね。僕達も用件は聞かされてないんだ」
「ただ間違いなくまたお前らに会えると思ってよ!」
正直、まだ何が起こってるのか理解出来てない。複数人呼ばれてるとは思ってたが、まさかの北海道、京都、福岡、沖縄にいるはずのコイツらまで呼ばれてるなんて。いよいよどういう集まりなのか分からなくなってきたな。
「来たか、柊弥」
「遅かったな」
「よう加賀美、久しぶりだな」
「修也、鬼道。それに佐久間まで?」
急な再会に驚いていると、さらに横から声が掛かる。修也に鬼道、さらに佐久間だ。最後に会った時はまだ松葉杖がないと歩けてなかったが、もう完全に回復したみたいだ。
しかもコイツらだけじゃない。シャドウ、マックスに栗松、壁山、染岡と風丸もいる。後何人かいるが……知らないヤツらだな。
「や、加賀美くん」
「久しぶり、かな?」
「ヒロト!!緑川!!お前らもか!!」
更にそこに現れたのはヒロトと緑川、いよいよ混沌としてきたな。ただここにいる知ってるヤツらの共通点は……サッカーだよな。
「土方も来てるんだ」
「よう!あの時ぶりだな!」
「土方!お前、弟達は?」
「隣のおばちゃんに預けてきた!安心しな」
「着いたー!」
「こ、ここが雷門中……」
土方は下の弟達がいるからとイナズマキャラバンの参加も断っていた。お隣さんに預けられたとはいえ、そんなヤツまでここに来てるなんてな……響木監督はどういう意図でこのメンバーを集めたんだ?
一体何が起こるのか考えてると、入り口からよく聞いた声が響いてくる。やってきたのは守、 後ろには見たことないヤツもいる。
「今回は俺の方が早かったな、円堂?」
「あはは……そうだ、紹介するよ。宇都宮 虎丸!道中であったんだ」
「宇都宮 虎丸です!!」
「加賀美 柊弥だ、よろしく」
「うわあ……本物の加賀美さんだ。握手してください!!」
「いいぞ」
虎丸、と名乗った少年は目を輝かせながら握手を求めてくる。俺だけじゃなくて色んなヤツにも。背丈こそ俺達とそう差はないけどどこか幼い……歳下だな、壁山達とタメか。
「なあお前ら、一人どうにもノリの悪いヤツがいるんだけどよ……知らねえか?」
そう言って綱海が指さした方向にいたのは、どこか近寄り難い雰囲気を纏った男。どことなく治安が悪い、って言うのか?顔の怖さで言うなら染岡には勝てないけどな。
「俺、円堂 守。キミも響木監督に呼ばれたのか?」
「だったら?」
「マトモに挨拶も出来ねえのか!」
「よせよ染岡」
「……飛鷹 征矢」
「俺は加賀美 柊弥だ、よろしくな」
「……ッス」
飛鷹と名乗ったソイツの態度は素っ気ない。極力会話をしたくないタイプのヤツか?諸々込みでこの場では異質だ。
「ふふふ……中々のメンツが揃っているようですね」
「目金?」
一通り来てるやつに挨拶を終えるといつの間にか目金がそこにいた。けどなんだ、この違和感?上手く言語化できないけど、何かおかしいな。
「やあやあ皆さん、お集まりで」
「目金が二人!?」
「お前もしかして双子だったのか?」
「ええそうです!目金 一斗、コイツの実力は本物ですよ!」
「僕を兄と同じと思わないことですね」
「それを目の前で言われて良いのか目金よ」
今明かされる衝撃の事実。もしかして、今まで学校で見てた目金は一斗の方も混ざってたのか?マジで見た目だけなら瓜二つだから気付かないだろこんな……
「揃ってるようだな」
「響木監──」
目金兄弟に驚愕していたら響木監督がやってきた。その後ろには秋と春奈、夏未もいる。俺達を集めた理由についても話されるはず、とにかく皆集合する……その時、突如ボールを蹴る音が耳に入った。そのボールが向かう先は鬼道だ。鬼道も気付いたみたいだが反応が遅れてる、多分問題ないだろうが一応その間に割って入る。
「あら、鬼道クンへのプレゼントだったのに」
「お前……不動」
「久しぶりだねェ、加賀美クン?」
何とそこにいたのは、真・帝国の不動。色々と……いや、因縁しかないな。源田と佐久間を唆して鬼道を煽り、染岡を負傷させ、俺がぶん殴った。
「何しに来た、お前」
「決まってんじゃん、俺も呼ばれたから来たんだって」
「どういうことですか、響木さん!」
「ふっ、全員揃ったようだな」
どうやら本当に響木監督が呼んだらしい。コイツが何をしたかは知ってるはず、その上でここに呼んだんだ……それ相応の理由があるんだろう。
「よく聞け……今からお前達を、日本代表候補の強化選手に任命する!!」
「……日本、代表」
意識を響木監督に切り替えて間もなく、その口から発せられたのは……とんでもないビックサプライズだった。日本代表ってことは、正式に世界と戦う機会が来たってことだ。クラリオやヒデ、フィディオ達は勿論、まだ見ぬ世界の凄いヤツらと戦える。
(何だよそれ……最高じゃねえか!!)
「フットボールフロンティアの世界大会、フットボールフロンティアインターナショナル、通称"FFI"が開催される。少年サッカー世界一を決める大会、その代表候補に選ばれたのがお前達だ!!」
そういうことならこのメンバーも納得だ。全国から集められた強者達だ、世界に挑むには申し分ない。
けど、それならアイツらがいないのが引っ掛かるな。あまり候補が多すぎてもって話ではあるけど、特にアイツ……アフロディがいないのが残念だ。いや、もしかしたら……そういうことか?それならそれで楽しみだ。
「ここに集まった22人はあくまで候補。ここから17人に絞り込む」
「11人ずつ2つのチームに分けて、2日後にそのチームで日本代表の選考試合を行います!!」
成程、だから"日本代表"ではなく"候補の強化選手"って言い回しだったのか。ということは少なくとも5人は落とされる。全員粒揃いの選手とはいえ、こればかりは仕方ない。何が何でも俺は選ばれて見せるけどな。
そしてチーム分けだが……まず俺がいるAチームが守、ヒロト、染岡、吹雪、綱海、土方、壁山、マックス、佐久間、飛鷹。対するBチームは修也、鬼道、風丸、シャドウ、緑川、栗松、木暮、立向居、目金、不動、虎丸だ。
「キャプテンは円堂、鬼道。お前達に任せるぞ」
「はい!!」
「分かりました」
確かに、このチーム分けならキャプテンはコイツらだろうな。守は言わずもがな、鬼道は元帝国のキャプテンであり司令塔。納得の人選だ。
「よろしく、鬼道クン?」
「……」
……鬼道と不動が同じチームなのは懸念だな。
「個人の実力を測るために試合では連携技は禁止、己の持てる力を全て出し切れ!!」
『はい!!』
そう締めくくられその場は解散となった。とりあえずそれぞれのチームに別れて改めて顔合わせを行う。
「さて、キーパーは守としてポジションを少し考えないとな」
「そうだな……FWだけでも俺、加賀美、吹雪、ヒロト、佐久間。だいぶ飽和してるな」
そんなこんなで決まったポジションはこうだ。まずGKに守。FWに染岡、吹雪、ヒロト。MFに俺、佐久間、マックス。そしてDFに壁山、土方、綱海、飛鷹だ。
FWからコンバートしたのは俺と佐久間。佐久間は帝国の方針で様々なポジションをこなせるようにしてあったらしいので採用。俺はシュート、ドリブル、ディフェンスそれぞれで必殺技を持っていて、攻めも守りも出来るから立候補した。
「あっちは……いや、探るのは野暮だな」
「そうだね、当日のお楽しみにしよう」
とりあえずこの後は1回各自解散してまた集合、そして練習だな。鬼道達のチームは帝国で練習するらしい。鬼道と不動、大丈夫だろうか。修也や風丸がストッパーにはなるだろうけど心配だ。
「じゃあ一旦解散!また後でな!」
ーーー
昼飯など諸々込みの準備を済ませること数時間、ラグビー部と入れ替わるように雷門中のグラウンドに入る。他の皆ももう揃っており、やる気も十分だ。
「まさかこんな形でキミとサッカー出来ると思ってなかったよ、加賀美くん」
「俺もだ。楽しもうぜ」
身体を温めていると隣のヒロトから話し掛けられる。この前お日さま園に行った時またサッカーしようと約束したけど、日本代表を選ぶ場で一緒に戦うことになるとはな。しかし同じチームとはいえ、日本代表の枠を争うライバルであることにも変わりない。それはそうとして楽しみたいけどな。
「よーし!練習始めるぞ!!」
『おう!!』
守の掛け声で練習が始まる。しかし、修也や鬼道達がいない練習ってのも新鮮だ。どれだけいつもの環境が日常になっていたのかを思い知らされる。
「あ、そういえばこっちのチームには司令塔がいないのか……」
「前衛は俺がやるぞ。後衛はお前に任せる」
「そっか、じゃあそれで!」
今まではいて当たり前だった鬼道がいないということは、頼れる司令塔が不在ということ。他に普段から司令塔をしてるようなヤツもいないし、俺と守で分担してやることにした。流石に鬼道みたく守備の指示までは出せないからな。
まずは、とにかく全員がこのチームでどんな動きをするか分析する。いつも雷門で一緒にサッカーしてても、違う環境じゃまた動きも変わる。
「いくぜッ!!」
染岡はやはりパワーがある。並大抵の相手なら正面から突破できるだろう。少ない工程で最大威力を発揮できるシュートも魅力的だ。この頃は連携に対する意識も洗練され始めているおかげで、攻めの選択肢も広がっている。
「ふふッ、懐かしいね染岡くん!!」
吹雪、またスピードを上げたな。元々秀でていたスピードがかなりのレベルまで磨かれている。俺、風丸と比べても遜色ないくらいだ。しかも吹雪にはあのウルフレジェンドがある上、DFとしての経験もある。攻守どちらでも活躍出来るな。
「悪いね吹雪くん、ここは通さないよ」
ヒロト。エイリア学園最強チームのキャプテンは流石伊達じゃないな。全部のステータスが高い上、視野も広い。前衛の司令塔は俺とヒロトで分担しても良いかもしれないな。何よりヒロトには流星ブレードという最強クラスのシュートがある。今やってるみたいに仲間のカバーをしつつ、自分でも得点を狙える力は魅力的だ。
「行かせないッスよ、染岡さん!」
壁山はここ最近随分と成長した。俺が教えたメニューを堅実にこなしているんだろう、特にスタミナ面の成長が凄いな。あの凄まじいディフェンスを常にトップパフォーマンスで繰り出されれば、相手からしたらたまったものじゃない。序盤から終盤まで守備の要だ。
「染岡!!こっちこっち!!」
マックスはまた一段とテクニックを磨いた。パワーとスピードが尖っている訳じゃないけど、その器用さをフルに活かせばどんな相手でも捌き切れるだろうな。
「もらった!!」
佐久間。味方としてプレーを見るのは初だが、とんでもなくバランスが良い。帝国にいたということもあってか、連携の精度が他より一段上だ。長らく鬼道を近くで見ていた経験のおかげで、司令塔がどんな指示を出したいか予想してポジショニングもしてくれている。
「更にそれをもらうぜ!!綱海!!」
土方は壁山に近いタイプかと思いきや、予想を裏切る形で俊敏に動く。あの巨体があのスピードで迫ってきたら凄まじい圧力になるな。しかもこれまた味方の動きに合わせるのが上手い。何というか、プレーまで兄貴肌だ。
「おうよ!!」
綱海は相変わらずフィジカルモンスターだ。必殺技こそロングシュートのツナミブーストしかないものの、その高い身体能力がオフェンスもディフェンスもハイレベルなものへと引き上げる。
「……」
飛鷹は……分からないな。動かなすぎる。試合まで爪を隠しておきたいのか?いや、味方にまで隠す理由はないだろ。いくら個人の能力が重視される先行試合とはいえな。
「いいぞー!攻めろ綱海!!」
守は相変わらずだ。チームの士気を常に高め、シュートはしっかりと止める。理想的なキャプテンであり、キーパーだ。
「ここは通行止めだ、綱海」
「加賀美!面白ぇ!!」
そして、俺。パワーとテクニックはそこそこ、スピード特化型だ。突破力には長けてるけど綱海みたいな相手だと当たり負けることも少なくない。けどその壁を越える鍵になるのが、視野と読み。自分の苦手じゃなくて得意で戦う、この武器で世界と戦うんだ。
「もらった──」
「うおッ!?お前そんな動き出来るのかよ!?」
綱海からボールを奪い取って走る、読みとスピードで全てぶっちぎって守が待ち構えるゴールまで。
「いくぞ、守ッ!!」
「こい、柊弥ッ!!」
ーーー
そして遂に、この日がやってくる。
「うわあ……とんでもない数の観客ッス」
「フットボールフロンティアの決勝より少ないだろ」
招集から2日後、日本代表の先行試合だ。
「調子はどうだ?修也」
「最高潮さ。お前には負けないぞ、柊弥」
「上等」
修也だけじゃない、俺も、他の皆も絶好調だ。世界の舞台という最高の舞台のために全力で仕上げてきた、手抜きはない。
「加賀美」
「ん──!?お前なんでここにいんだよヒデ!?」
木陰から僅かに聞こえてきた呼び声に釣られて視線を向けると、そこにいたのは俺の度肝を抜く珍客だった。隣にいるのは……フィディオじゃないな。誰だ?
「少し日本でやることがあってね」
「お前、イタリア代表じゃないのか?」
「代表さ。俺達のチーム、オルフェウスはユースチームでありイタリア代表でもあるからね」
「じゃあ何で?」
「さっきも言ったがやることがあるんだ。それと……チームの成長のため、かな」
ヒデはそう言うと静かに笑った。やること、ねえ……深くは詮索しないでおくか。多分聞いても答えてくれないしな。チームの成長のためってのはよく分からないな……ヒデほどの選手が近くにいる方が学べることも多いだろうに。
「キミが"雷神"?僕はルカ、よろしくね」
「加賀美だ。……雷神って?」
「あれ、この前の特集見てないの?あのレビン・マードックがキミのことをそう呼んだんだよ」
「マードックが?マジか……」
レビン・マードック。今は現役を退いて解説やコメンテーターをやっているが、昔世界中を燃え上がらせた元プロ選手だ。というか例の特集、いつの間に放送されてたんだ?しかもあのマードックがそんな評価を……
「安心してくれ加賀美、いつか日本とイタリアが戦うその日までには必ず戻るさ」
「俺達とフィディオ達が勝ち上がることを信じてる、ってことで受け取っとく」
「負けるつもり、あまつさえ代表に選ばれないつもりなんてさらさらないだろう?」
「当然」
最初から気持ちで負けてたら何も勝てやしないからな。ここで代表に選ばれて、世界で戦う。目指すのは勿論優勝だ。
「じゃあ行ってくる。あれからまた成長した俺を見せてやるよ」
「ああ、楽しみだ」
「頑張ってね」
ヒデとルカとの会話を切り上げて皆が待つベンチに戻る。
「そろそろ時間だ、ポジションに着くぞ!」
「おう!絶対勝とうぜ!」
間もなくして、試合開始の時間が訪れる。普通なら緊張の一つでもするのかもしれないが、不思議とない。むしろ楽しみで仕方ない。この凄えメンバーと戦えて、世界に羽ばたけるチャンスが目の前にあるんだからな……さしずめ、新章幕開けと言ったところか。
「……さあ、いくぞ!!」
待ってろ、世界。
次回、早速試合開始。