Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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なんかめちゃくちゃ長くなった・・・

じわじわと総合評価が高くなってきてニヤニヤ止まらないです。
感想やら評価やら、無限にお待ちしてます。全部ムゲン・ザ・ハンドで受け止めますので。


第10話 呪いのサッカー

「皆、準備はいいか?」

 

 

 尾刈斗中との練習試合開始直前。こうして部室で最後のミーティングをしていると、帝国戦を思い出すな。あの時は散々な結果だったが……今の俺達は前よりも明らかに強い。

 この試合には廃部かフットボールフロンティア出場かがかかっていることもあってか、皆の表情は別人のように引き締まっている。

 

 

 ふと視線を横に巡らせると、10番の背番号が目に入る。豪炎寺だ。ついにコイツと並び立てる日が来たのだと思うと心が躍って仕方ない。前はベンチで見ていることしか出来なかったからな、間近でコイツの凄さを全身で感じてみたい。

 

 

「さあ皆、やるぞ!」

 

「「「おお!!」」」

 

 

 守がそう発破をかけると、威勢よく声を上げて部室を飛び出す。小走りでグラウンドに入るとあることに気付く。帝国戦の時よりギャラリーが明らかに増えている。帝国戦で興味を煽られたとか、そんな感じだろう。なんにせよ、応援の声が多くて気が悪いことはないな……応援してくれるのかは知らないが。

 

 

「お、多いっすね……」

 

「馬鹿、ビビるなよ?」

 

 

 壁山が小刻みに震えている。そんな頼もしい身体してるんだから、もう少し強気な姿勢でいてくれるといいんだがなあ……そこが壁山の個性でもあるが。背中を軽く引っぱたいて気合を入れてやろう。

 

 

 さて、尾刈斗中について軽く復習でもしておこうかな。ヤツらのプレーは、対戦したチームからは"呪いのサッカー"と称されている。試合中に脚が動かなかったとか、試合後に全員体調不良を起こしたとか。噂話の域を出ない話だが、まあ少しは頭に入れておくか。チームの強さ自体はそこそこ。地区規模で見て、攻守共に決して低い水準ではない。今の俺達にとってそれが吉と出るか凶と出るかだな。

 

 

「来たぞ!! 尾刈斗中だ!!」

 

「不気味な連中だ……」

 

「いや、お前が言うか?」

 

 

 誰かがそう言い、つられて校門の方を見ると尾刈斗中御一行様が姿を見せた。紫を基調としたユニフォームだ。

 

 

 それにしても、メンバーの個性が強すぎる。キャプテンは目隠ししてるし、キーパーはジェイソンみたいな仮面をつけてるし、バンダナにロウソク突き刺してるやつもいる。……それでサッカーできるのか? それを見て影野が不気味と評するが、お前も十分不気味だからな? 夜に後ろから肩叩かれたら普通に驚く。

 

 

 試合開始前に、センターラインで整列していると、相手の監督が俺と豪炎寺の元に歩み寄ってくる。

 

 

「君達が加賀美君と豪炎寺君ですね? いやはや、帝国戦のシュート見せていただきましたよ……とても素晴らしい。お手柔らかにお願いしますね」

 

「はあ」

 

「おい待てよ」

 

 

 やたらと絡んでくる人だな……ぞんざいにする訳にもいかないし軽く流していると、横から染岡が口を出してきた。

 

 

「あんたらの敵はコイツら2人だけじゃねえ、俺達全員だ!」

 

「はあ、滑稽ですねえ。私達はこの2人と戦いたいから練習試合を申し込んだのですよ。精々2人の脚を引っ張らないようにしてくださいね」

 

 

 そう言って相手の監督は引っ込んでいく。不愉快な人だな。染岡が突っかかりたくなるのも分かる。現に染岡は今にも爆発しそうだ。

 

 

「染岡、その怒り……お前のシュートに込めてぶつけてやれ」

 

「……おう! 勿論だ!」

 

 

 相手チームと握手を交わし、それぞれがポジションに着く。俺と豪炎寺と染岡のスリートップ。得点力も突破力も間違いなく最高峰の俺達だ。最初から全開で飛ばしていくか。

 ふと後ろを見る。守が少し笑みを浮かべながらと手を叩き合わせていた。帝国戦で完成させた必殺技、ゴッドハンド。あれがあればそうそうゴールを割られることはないだろうな。

 

 

『さあ、雷門中と尾刈斗中の試合が今始まろうとしています!!』

 

 

 どこからか実況の声が聞こえてきた。アイツは……将棋部の角馬か? 何でアイツがあんなことをしているのか分からないが……まあいいか、実況がいる方が盛り上がるだろうし。

 

 

 つま先で軽く地面を叩き、身体のコンディションを確かめる。うん、悪くないな。ベストなプレイが出来そうだ。

 

 

『さあ、キックオフです!!』

 

 

 ホイッスルが鳴る、ボールが蹴られる。試合開始だ。開始早々、少林が相手のボールをスライディングで弾く。が、その先に相手10番。後ろから豪炎寺が追い掛けるが相手キャプテン幽谷(ゆうこく)に抑えられる。壁山のブロックをものともせず、10番は駆け上がると、早速守と1対1に。

 

 

「こい!!」

 

「喰らえ!! ファントムシュート!! 

 

 

 蹴ると同時にボールは紫色に輝き、いくつかに分裂してゴールへ襲いかかる。事前に調べた通りなら、本物のシュートはあのうちの1つだけ。だが、あれくらいのシュートなら──

 

 

ゴッドハンド!! 

 

 

 輝きと共に顕現した神の手。幾つもに分裂した中から正確に本物だけを見極め、真っ向から受け止めた。

 幻影のシュートと称されたあの必殺技は、ボールが分裂しているように見えるせいで本物がパッと見ただけでは区別がつかない。が、優れた感覚を持ち合わせていれば、空気を裂く音と迫る圧で見極めることは容易い。

 

 

「さあ反撃だ!」

 

「よし皆、上がれ!」

 

 

 風丸がボールを持って駆け上がる。最前線まで上がっている豪炎寺と染岡に対して、俺が丁度いい中継点になれそうなんだが……2人にマークされている。

 

 

「風丸!」

 

「ああ!」

 

 

 風丸にハンドサインを向けながら声をかける。それを確認した風丸はかなり高めのパスを出す。これでいい。俺がハンドサインで要求した通りだ。身をかがめてから大きく跳び、空中でボールを受け取る。これならマークも意味をなさない。豪炎寺には俺と同じように徹底的なマークが着いている。なら選択肢は1つだ。

 

 

「染岡!!」

 

 

 風丸からボールを受け取り、そのまま空中で染岡にパスを通す。俺と豪炎寺ばかりにマークに着いているせいで染岡に対しては手薄。警戒心の薄さが見え隠れしている。

 そのせいでヤツらは今から後悔することになる。雷門のストライカーは俺と豪炎寺だけじゃない、染岡もだ。

 

 

「決めるぜ……! ドラゴォォンクラァァァッシュ!! 

 

 

 蒼龍が吠える。"ドラゴンクラッシュ"と名付けられた染岡の必殺シュートのエネルギーは、蒼い龍の形を作りゴールへと襲い掛かった。キーパーはそれに反応出来ず、簡単にゴールを許した。

 大声を上げて喜ぶ染岡から視線を滑らせ、相手の監督の表情を伺うと顔を真っ青にして驚いていた。いい気味だ。

 

 

 こちらに戻ってくる染岡に対して拳を突き出すと、染岡も同じように拳を合わせてくる。

 

 

「ナイスシュート、どんどん取ってくぞ」

 

「おう!」

 

 

 再びキックオフ。点を返そうとこちらに攻め込んでくる11番を染岡と少林が挟み込む。行く手を阻まれた11番は何とか幽谷へとパスを繋ごうとするが、マックスが上手くそれをカット。よし、攻め上がるか。

 と言っても、相変わらず俺には徹底的なマーク。さっきのような絡めてはもう使えなさそうだ。豪炎寺も同様。だが、染岡は依然としてフリーだ。

 

 

「染岡!!」

 

「よし!」

 

 

 さっきのシュートを見ても警戒しないのかね。まあこちらにとっては好都合だから構わないな。そのまま染岡は上がっていき、再びキーパーと睨み合う。

 

 

ドラゴンクラッシュ!! 

 

 

 再びゴールネットが揺らされる。先制2点、かなり良い調子だ。もしここから染岡にマークがついたとしても手薄になった俺と豪炎寺が決めにいけるし、相手に攻められても守なら止めきれる。この試合勝てるぞ。

 だが気がかりな点がある。例の呪いとやらだ。信じるわけじゃないが、今のところそんな素振りは見せていない。もしかするとここからなにか仕掛けてくるかもしれないな……警戒だけしておこう。

 

 

「まさか彼ら以外にこんなストライカーがいたなんて予想外でしたよ……何時までもザコが、調子乗ってんじゃねェぞォ!!」

 

 

 試合再開と同時に、相手の監督が文字通り豹変する。先程まではどことなく紳士的な雰囲気を漂わせていたが、今は180度逆だ。言葉を荒らげ、こちらを罵るような発言をしている。

 

 

「始まったか」

 

「テメェらァ!! そいつらに地獄を見せてやれェ!!」

 

「「「おう!!」」」

 

「マーレマーレ、マレトマレ……」

 

 

 今度は謎に呪文のようなものを唱え始めた。そして選手達はというと、陣形を組み、不規則な動きをしながらこちらへと攻め込み始めた。何だ? アイツらの姿がブレて見える……

 

 

「何やっているんだ! お前ら!」

 

「えっ!?」

 

 

 風丸の指示でそれぞれ動き出した中後陣だったが、何を考えてか味方同士でマークしあっていた。おかしい……こんなミス、到底ありえない。もしかしてこれが呪いとだとでも言うのか? 

 

 

「無駄だ……ゴーストロック!! 

 

「マーレトマレ!!」

 

「なっ、脚が」

 

「動かないッス!!」

 

 

 相手の監督が一際大きな声で呪文? を唱え、幽谷が腕を大きく回して突き出すと、そこから紫色の呪縛が俺達全員の脚を捕らえた。一体なんなんだ、全く脚が動かせない。しかも俺だけじゃなくて他の皆も。まずい、このままじゃ──

 

 

ファントムシュート!! 

 

 

 幽谷が10番と同じ必殺シュートを放つ。対する守は、その場に縛り付けられたかのように脚を動かせず、必死に手を伸ばすが指先で掠めることすら叶わなかった。無情にも得点板は2-1に。

 

 

 得点のホイッスルが鳴ると同時に、脚の自由が戻る。大きく動かしてみるが、特に変わった様子はない。益々わからん……厄介だな。これがヤツらの呪いとやらなんだろうが、本当に呪いなはずがない。何か仕掛けがあるはずだ……今はそれを何としてでも見つけてみせる。

 

 

「取られたなら……取り返せばいい!」

 

「待て染岡! ヤツらは何かおかしい! 様子を見るんだ!!」

 

 

 キックオフ早々、豪炎寺からボールを奪うように受け取った染岡は単身駆け上がっていく。豪炎寺も違和感に気づいていたようで、一旦待つように呼びかけるが染岡はお構い無しに単身攻め上がる。

 

 

 妙なことに、尾刈斗は誰1人として染岡の行く手を塞がない。さっき染岡が2点決めたのを忘れたのか? ……いや、流石にそんなはずがない。とすると、ヤツらは点を取られない絶対的な自信がある。その理由は……まさか! 

 

 

「染岡! 一旦──」

 

ドラゴンクラァァァッシュ!! 

 

 

 遅かった……!既に染岡はドラゴンクラッシュを放っていた。相手のキーパーは先程の幽谷と似通った腕の動きをしたと思ったら、そのままキャッチ体勢に入る。躊躇なく放たれたドラゴンクラッシュは、勢いよくゴールへと迫っていく……と思われた。

 

 

ゆがむ空間

 

 

 ボールは吸い込まれるようにしてキーパーの手中に。今のドラゴンクラッシュは一体何だったんだ……染岡が手を抜いた? いや有り得ない。染岡はこの場面で加減をするような男じゃない。

 

 

 分析は後だ、今は何としてもボールを奪わなければまたゴールを割られる。

 

 

「だから無駄だと言っている……ゴーストロック!! 

 

「マーレトマレ!!」

 

「またかよ……!」

 

 

 またしても脚の自由が奪われる。ビクともしない。そのまま幽谷はゴールへとシュートを叩き込む。これで2-2……同点に並んだ。

 クソッ! 種を暴くのに時間が足りなさ過ぎる。このままじゃ好き勝手されて終わるぞ……! 

 

 

「何が呪いだ……そんなまやかし!!」

 

「本当にそうかな? ゴーストロック!! 

 

「マーレトマレ!!」

 

 

 3度目だ。金縛りのようにあったかのように脚はビクともしない。そしてそのまま……

 

 

『とうとう尾刈斗中逆転!! 2-3で前半終了だ!!』

 

 

 もう1点決められ、前半終了のホイッスルが響く。

 

 

 

 

「どうなってやがる!」

 

「やっぱり本当に呪いが……」

 

 

 ハーフタイム。部室で前半の反省中だ。皆が尾刈斗中の呪いだと騒いでいるが、俺は少し考えたいことがある。

 

 

 まずはヤツらのおかしな点を洗い出してみよう。1つ目、あの不規則な陣形。5人で横に列を組み、前後へと揺れ動くように入れ替わりながらこちらへ駆け上がってきたアレだ。特に突破力がある構成ではないはず。だがあれを目前にした皆は何故か味方同士で衝突した。

 

 

 2つ目、あの監督の呪文のようなもの。マーレトマレ……ひたすら同じことを繰り返し口に出している。幽谷がゴーストロックを発動する度に大声でそれを叫んでいた。その声が響き渡るタイミングで俺達の脚は動かなくなった。

 

 

 3つ目、キーパーの必殺技。よく分からない動きをするあの必殺技は守のように強いキャッチ技というわけではなさそうだ。じゃあ何故染岡のシュートが止められたか……それは、染岡のシュートの威力が弱まっていたから。

 

 

 1つ目と3つ目の大きな特徴は一致している。相手が謎の動きをしている点だ。つまり動きと呪文、これがヤツらの特徴。……だんだん見えてきたぞ、ヤツらの秘密。

 

 

「守、いいか?」

 

「ん? ああ、どうした?」

 

 

 守を呼び、耳打ちする。まだ確証がある訳では無いから下手に皆に広めるわけにはいかない。とりあえず守にだけ伝えておくことにする。

 

 

 

 

 再びグラウンド。間もなく後半が始まる。さて、俺の仮説は正しいのか……それを見極める。

 

 

「染岡!」

 

「任せた!」

 

 

 染岡のバックパスを受け取り、1人で攻め上がる。まずは1つ、俺自身が検証してやる。やはりヤツらは点を取られない自信があるのか、一切ボールを奪いに来ない。好都合だ、このまま試させてもらう。

 

 

 道が開け、キーパーが俺を視界に捉えると、例の動きをして待ち構える。そして俺はその動きを凝視する。するとあることに気付く。脚元が覚束ないのだ。まるで、平衡感覚をぐしゃぐしゃにされたような感覚だ。

 

 

 このままシュートを撃てばそれは威力なんて出ないだろう。染岡がああなるのも当然だ。じゃあこれを回避するにはどうすれば良いのか。簡単だ。

 

 

「……何?」

 

 

 キーパーがそう呟いたのが微かに聞こえた。そう言いたくなるのも当たり前だ、俺はゴールを目前にし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。一呼吸置く。そうすると、失われた平衡感覚がじわじわと戻ってくるのを知覚する。よし、これなら──

 

 

「──轟一閃

 

 

 目を瞑りながら轟一閃を放つ。何百回もこのシュートを撃っているんだ、視界を自分でも封じても何ら問題なく撃てる。手応え……脚応えか、は十分に伝わってきた。これなら問題ないだろう。

 

 

「なッ……!?」

 

『ゴ、ゴール!! なんと加賀美、染岡のシュートを軽々止めた尾刈斗中キーパーから1点を呆気なく奪い取った!! 3-3、同点だ!』

 

 

 相手としても予想外だったのだろう。一切反応させずに轟一閃はゴールへと突き刺さった。キーパーは何が起こったか分からないと言ったように立ち尽くしている。……被り物のせいで表情は見えないが。

 

 

「加賀美! ヤツらの呪いが効かなかったのか!?」

 

「あれは呪いなんかじゃない……催眠術だ。最初のあの陣形で頭を掻き乱された俺達の頭に、あのキーパーが妙な動きで暗示をかけることで俺達から平衡感覚を奪っていたんだ。お前の時もそうだ。相手の必殺技が強かったんじゃなくて、お前のシュートが弱くさせられたんだよ」

 

「やはりか……」

 

 

 豪炎寺は薄々勘づいていたようだな。流石の洞察力だ。

 

 

「そういうことか……でもよ、脚が動かなくなるのは何なんだ? あれが解決しないと結局ダメじゃねえか」

 

「あれも同じさ……大丈夫、守に突破策を授けてあるからさ」

 

「そ、そうか……よし、お前を信じるぜ、加賀美!」

 

 

 その一言で染岡を納得させ、ポジションに戻る。

 

 

「どんな手を使ったがしらねェが、ゴーストロックがある限りテメェらに未来はねェんだよ!!」

 

 

 相手のキックオフから再開、幽谷達はすぐさまあの陣形を組んで攻め上がる。

 

 

ゴーストロック!! 

 

「マーレトマレ!!」

 

 

 また脚が動かなくなった。それをいいことに幽谷はどんどんゴールへと攻め上がっていく。また点が取られてしまうと動揺が広がるが、俺達は一切動じない。守が何とかすると信じているから。

 

 

「ゴロゴロゴロゴロ、ドッカァァァァァン!!!」

 

 

 守が雷が落ちたような大声を上げる。その声が鼓膜を打った瞬間、脚の自由が戻ったのが分かった。やはり、そういう事か。

 

 

「あの陣形は言わば準備。俺達に催眠術をかけるトリガーは、キーパーのあの手の動きと相手の監督のあの呪文だ!」

 

「へっ、そういうことかよ!」

 

 

 幽谷はゴーストロックが破られたことに気づかないまま必殺シュートを撃った。だがそのシュートがゴールラインを超えることはないだろう、何故なら──

 

 

熱血パンチ!! 

 

 

 守の拳に赤く燃える炎のようなエネルギーが集中し、その拳でボールを殴りつける。勢いを完全に上書きされたボールは上に大きく飛び、やがて守の腕の中に。

 

 

「何ィ!?」

 

「やった……やったぞ!!」

 

 

 こっちに親指を立てる守に、俺もサムズアップを返す。さあ、お前達の呪いのサッカーは打ち破ったぞ。

 

 

「皆行くぞ!! 俺達が守り、お前達が繋ぎ、アイツらが点を決める……雷門の全員サッカーだ!!」

 

 

 守の蹴ったボールを少林が受け取る。そのまましばらくボールを前線に運ぶと、染岡に鋭いパス。それを受け取った染岡は、豪炎寺と2人で相手ゴールへと駆け上がる。

 

 

「豪炎寺! 合わせろ!」

 

「……ああ!!」

 

 

 と、意思疎通をすると豪炎寺は染岡より数歩前へと加速する。染岡はその場で脚を止め、足を大きく引き上げる……ドラゴンクラッシュの構えだ。

 

 

ドラゴォォンクラァァァッシュ!! 

 

 

 今日1番のドラゴンクラッシュが放たれた。が、そのシュートの進路はゴールから大きく逸れる。ミスキックのように思われたが、それは違う。あれは()()()

 

 

 蒼龍が昇った先に待ち構えていたのは、炎の竜巻を携えたエースストライカー。

 

 

ファイアトルネード!! 

 

 

 蒼龍は炎に包まれその姿を変える。ゴールへと迫るのは蒼龍ではなく紅龍。獰猛な牙を相手のゴールへと向ける。

 

 

「う、うわあああああああ!?」

 

 

 龍は容赦なく獲物を噛み砕く。ゴールネットが揺らされホイッスルが響いた。同点から1点リード、逆転だ。

 

 

「後半はまだまだ長い! どんどん攻めるぞ!!」

 

 

 そこからは一方的だった。相手の攻めは中陣で止められ、ボールを受け取った俺らが確実にゴールをこじ開ける。試合終了のホイッスルがなる頃には、俺達の得点は2桁に差し掛かっていた。

 

 

 

 

「やってくれたなお前ら! 柊弥が相手の秘密を見抜いて、ドラゴントルネードで一気に流れを掴む! 最高のストライカー達だぜ!」

 

「へっ、エースストライカーを譲ったわけじゃあねえからな」

 

 

 試合終了後、俺達はグラウンドで試合を振り返っていた。凄まじい数が集まっていたギャラリーは、口々に賞賛の声を俺達に残していってくれた。冷遇されていた数週間前からは想像できない現状だ。

 

 

「よーし、フットボールフロンティアに乗り込むぞ!」

 

「「「おう!!!」」」

 

 

 

 

---

 

 

 

 

 翌日。練習試合に勝ったことで前よりもっと注目を集めるようになったのか、色んな人に絡まれるようになった。心做しか女性層に声をかけられる率が高くなった。俺も男だから満更でもないが周りの男子達からの目線が凄く痛いから出来ればやめて欲しい。

 

 

「はあ……災難だ」

 

「よう、人気者だねえアンタ」

 

 

 ため息をついてベンチに腰掛けると、知らないうちに隣にいた男に話しかけられる。あまりに急だったもので少し身構えてしまった。……見ない顔だな? 

 

 

「あのさ、校長室ってどこ?」

 

「校長室……やっぱお前転校生か?」

 

「そうそう、ピッカピカの転校生」

 

 

 教えてやらない理由もないので、極力丁寧に校長室への道を教えた。これで伝わってなかったらコイツの理解力がなかったってことで……短い礼を返して彼は去っていった。さて、俺も教室向かうか。




いつもと違って次の場面に繋がる描写を最後に入れて終わらせてみました。どっちがいいのかは分からないです。


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