期間空きすぎて書き方忘れてきた…助けて…
「ふー、いい風呂だった」
「おい守、遅えぞ」
「悪い悪い、まだ始まってないよな?」
「これからだ」
練習後、夕飯も風呂も済ませてあとは寝るだけ⋯という時間帯に全員食堂に集合していた。その目的というのが、今テレビに映し出されているアジア予選のトーナメント抽選会だ。本戦に出場するためにどこの国と戦わなきゃいけないのかが決まるわけだからな、皆練習の疲れなんてそっちのけで見に来てる。
抽選が始まる前に改めて予選の形式について説明が入る。このアジア予選は8カ国によるトーナメント戦。最大で3試合行われ、負ければ即敗退。敗者復活戦などもない、完全に一発勝負だな。
『それでは、抽選を開始致します!』
「どこの国と当たるんだろうな」
「どこだろうが勝つ、それだけだろ」
「間違いない」
『まずは韓国代表ファイアードラゴン、アジア最強と呼び声も高いファイアードラゴンですが⋯果たして抽選の結果は?』
『韓国、3-A』
「アジア最強、か」
正直な話、俺はどこの国が強いのかとか全く分からない。調べようにもまだ情報が少なくて俺程度の情報網には引っかからないからな。その辺は春奈が頑張ってくれてるみたいだし、何より誰が来ても勝てば良いだけだからそこまで気にしてない。
とはいえ韓国、アジア最強候補と呼ばれてることといいアイツのことといい気になるな。
『次はオーストラリア!こちらも優勝候補のビッグウェイブスが代表です』
『オーストラリア、1-B』
「優勝候補達は逆の山か」
つまり、予選通過するために優勝候補の2チーム、或いはそこに勝つようなチームと絶対やるってことだ。成程な……燃えてくるじゃねえか。
俺の胸の高鳴りとは他所に、抽選会は滞ることなく進んでいく。カタールにサウジアラビアの抽選が終わると、ついに俺達日本代表の番が回ってくる。壇上に登った久遠監督が抽選機の中に腕を突っ込み、引き抜く。そこに書かれていたブロックは──
『日本代表イナズマジャパンは……オーストラリア代表、ビッグウェイブス!!試合は2日後、これは熱い戦いになりそうです!!』
「いきなり優勝候補ッスか!?」
「良いじゃねえか壁山、どうせ全員ぶっ倒さねえと本戦には出れねえんだからよ」
俺達の初戦の相手はオーストラリア代表。まさかの初戦から優勝候補か……可能性としては全然有り得たけど、実現しやがったか。最初からそんなチームとやれるなんて楽しみで仕方ない。誰が相手だろうが負けるつもりなんて微塵もないからな。明日から早速オーストラリアとの試合に向けて特訓だな。
ーーー
「この2日間、練習を禁止とする。合宿所から出るのも禁止する」
「……え?」
意気揚々とグラウンドに出た俺達を出迎えたのは、あまりに予想外すぎる指示。待て待て、シンプルにどういう意図なんだ?初戦が2日後に決まった矢先に練習禁止?こればっかりは流石に理解できかねる。
「監督、どういうことですか?」
「そのままの意味だ」
「待ってください!俺達は日本代表のチームとして集まったばかり、この2日間は連携を深めるために使うべきです!」
「方針は変えない。従えないのならチームを抜けろ」
「そんなッ……!」
「それぞれに部屋を行き来することは構わんが、合宿所から出ることは絶対に許さん」
そう言い残して久遠監督はグラウンドから去る。真正面から抗議した鬼道は面食らった顔のままその背中を見届けるだけ。最も、鬼道に限った話じゃないけどな……とりあえず指示に従うしかない、部屋に戻るか。
「とはいえ……どうしたもんか」
合宿所から出ることは禁止……ってことは、ジムでのトレーニングも出来ない。部屋の中でも出来ることはあるけど、効率が違うからな。とはいえ練習禁止だからといって何もしない訳にはいかない。そもそも練習禁止な意味が一切理解できない。
「──止なんて、──ない!」
隣、守の部屋が騒がしい。大方外に出れないか画策してるんだろう。どうせ監督が見張ってるんだし失敗に終わるな。結局最善は部屋の中で出来ることを探す、これしかない。
その1、このスペースで出来る限りの筋力、体幹トレーニング。さっき却下したばっかだけど1番手っ取り早く能力を上げられる。さっきも言った通りマシンを使った鍛え方よりは効率は落ちるけどやらないよりは全然良い。
その2、瞑想トレーニング。自分の身体の中のエネルギーの流れを知覚することでその扱い方を磨く。無駄な力を使わないことで体力の節約、適切な流し方をすることで必殺技の火力向上にも繋がる。
その3、テクニックの特訓。流石にスペース的な意味でシュート、ドリブルの練習なんかは難しいけど、ボールコントロールを磨くくらいなら出来る。フェイントの精度向上とかに役立てられるな。
思いつくのはこんなもん……さて、何をする?
「……全部やれば良いか」
何せ練習禁止、時間を持て余してるからな。やれることは全部やっとこう。
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「それで守、脱走出来たのか?」
「無理だった……」
「だろうな」
昼食タイム、一番乗りの俺の後に皆もやってくる。その表情はやっぱり煮え切らない、十中八九練習禁止という意図が飲み込めてないが故だろうな。知ってはいたけどやっぱり脱走は失敗したらしい。大方玄関付近に監督が張ってたとか、そんな感じだろう。俺は早々に諦めてやれることを探し始めたけど、皆はやっぱり外でいつも通り練習したいって気持ちが先走ってるな。
「そういうお前は何してたんだよ、柊弥」
「そりゃあ、部屋の中で──「皆さん!!大ニュースですよ!!」
守の問い掛けに答えようとしたその時、凄まじい勢いで食堂の扉が開かれる。ダッシュで突っ込んできたのは目金、小脇には何かを抱えている。
「何と……オーストラリア代表の情報を入手しました!」
「本当か目金!!」
どうやらその抱えてたものの正体は、俺達の初戦の相手に決まったオーストラリア代表、ビッグウェイブスについてのデータらしい。凄いな目金、こういうのって多分情報統制とかで中々手に入らないだろ。そこは流石戦術アドバイザー?と言うべきか。
「やるじゃねえか!」
「僕の情報収集能力、お見せしましょう!!」
そう言って目金は食堂に置いてあるDVDプレーヤーを操作する。さて、オーストラリア代表のお手並み拝見と行きま──
『きゃー!!』
「──何だコレ」
大層なカウントダウンから映し出されたのは……サーフィンやらビーチバレーをするオーストラリア代表と思わしき男達。海が映ってるからか綱海が目を輝かせてるけど、俺含め他の面々は呆気に取られている。いやだって……なあ?練習風景の情報かと思ったら、こんな日常風景だ。ストレートに言えば……期待外れ?
「見る意味ねえじゃん」
「それって役立たず……」
「んがッ」
不動、冬花の容赦のない言葉のナイフが目金を切り裂く。石化した目金は音を立てて崩れ落ちる。戦術アドバイザー?としてのプライドが破壊された瞬間である。
まあそんなことはどうでも良い。やっぱり相手チームの生の映像なんて貴重な情報は手に入らないよな。国を跨いだデータだしな。御影専農の時みたいにわざわざ相手の国までデータ収集に来るヤツらもいないだろうしな。
「映像では無いけど……私と音無さんで調べた情報があるの」
「ビッグウェイブスは"海の男"らしいんです」
「海の男?綱海みたいな感じか」
「海で心と身体を鍛え抜いたチーム、特に守備が強力らしいの」
「相手の攻撃を完璧に封じてしまう、未知の戦術があるらしいんです」
攻撃を完璧に封じる……どういう戦術だ?マンマークの徹底なのか、常に多対一の状況を創り出すのか、或いはまた別の形なのか。単純にそれだけならそこまでの脅威とは思えない。多分それに付随して何かしらの強みがあるはず。それが一体何なのか……情報が足りないな。まあ情報があったところで練習禁止だから対策らしい対策は難しい。あくまでチームとしては、な。
「こうしちゃいられない!早速練習しようぜ!」
そう言って立ち上がった守は颯爽と食堂を飛び出して行ったが、5秒で引き返してきた。十中八九監督に見つかったんだろうな。何でいけると思ったんだアイツ。
「柊弥先輩、戻るんですか?」
「ああ、情報ありがとな」
皆がどうしようかと頭を悩ませている中、俺は部屋に戻るため食堂を出る。それと同タイミングで不動も出てきた。
「お前も戻りか、不動」
「……お前、俺と話すの気まずくねえの?」
せっかくだと思って話しかけたら、若干引かれつつもこんな問いを投げかけられる。気まずい……っていうのは間違いなくあの事件についてだろうな。
「随分と今更な話するんだな。この前の練習で良い連携したばっかだろ」
「あれはお前に借りを作りたくねえからだっつーの。おめでたい頭だねえ」
「お前あれか……ツンデレってヤツか?」
「……本当におめでたいんだなお前」
少しからかってみたら冷たい視線を向けられ、そのまま部屋に逃げられた。過去の遺恨はあれど、今はアイツも仲間。上手くコミュニケーションを取りたいんだけどな……本人が遠ざかっていくから難しい。鬼道、佐久間を中心にアイツのやったことを知ってるメンバーは基本的に悪印象だろうから、それを本人も感じ取ってるのかな。
不動とどうにか仲良くなれないか考えつつ部屋に戻る。さて、何からやろうか。秋と春奈が持ってきた情報によれば、オーストラリアの武器はチーム単位での強固なディフェンス。それは大雑把に2つの系統に分けられる。マンマーク徹底型か、数的有利重視型だ。それを破るのは俺としてはそこまで難しく感じない、特に前者ならな。1on1の駆け引きには自信がある。
問題は後者。常に囲まれる形だと仮定すると、流石に面倒なものがある。昨日の修也、土方、風丸による波状攻撃……いや波状防御?をより精密に繰り出されるとキツい。あくまでこちらが主導権を握れれば話は別だけど。1on1の連続ならギリいけるかもしれない、だから複数同時にタイミング合わせてこられた場合を想定しよう。イメージはそうだな……4方向全てから壁が迫り来る感じ。流石に上は抑えてこないだろ。
(……このタイミングか?)
中々難しいな……囲まれる前に動ければ良いけど、世界レベルの戦術を完璧に読むのはハードルが高い。それなら……断片的に読めれば良いんじゃないか?複数で仕掛けてくるなら、そのうち1人から戦術の起こりを感じ取れれば備えられる。どうやって突破するかは幾つかの択を持っておくべきだな。一手だけだと対応されたら詰み、一度先読みを見せれば修正されてまた読み合いになる可能性だってある。
……あれこれ考えてたら少し頭が痛くなってきた。換気も兼ねて窓を開けて外の空気でも吸っておこう。
「……ん?虎丸?」
窓を開けたちょうどそのタイミング、荷物を抱えて合宿場から出ていく虎丸の姿が目に入った。外にいるってことは……監督から許可を貰ったのか?確かに練習禁止になる前から何故か毎日家に帰ってたけど、今回も虎丸は特例なのか?
「よっしゃ、脱走成功だぜ……!」
「何やってんだアイツ」
何で虎丸だけ許可が降りてるのかを考えてると、今度は綱海がサーフボード片手に外に飛び出した。何て言いながら出てきたのか聞き取れなかったが……何でサーフボード?練習関係ないなら出ても良いのか、いやそんなはずないよな。監督の目を盗んでってことか?だとしたら後から滅茶苦茶怒られるんじゃないか?
「飛鷹さん、いるんでしょ!?」
「今度は何だよ」
俺が窓開けたタイミングでこうも色々起きるもんかね。次は誰かが外に出たじゃなくて、誰かが外から来た。呼び出されたのは飛鷹、そしてその声の主達はどこかガラが悪い。面識があるような口ぶり……まさか、飛鷹の過去って不良?とすると、あれは過去の報復?いやマズいだろ、監督も外に出さないだろうな。
「うるさいぞ、スズメ」
「嘘だろ監督」
まさかまた監督の監視を逃れて出てきたわけじゃないよな、あんな大声で飛鷹呼んでたんだから、監督も聞こえてただろ。というか許可を出したとしても何でだ、明らか一悶着ありそうだぞ。
「……着いてこい」
飛鷹はソイツらを引き連れて何処かへ行ってしまった。心配だな……虎丸も何かありそうだし。綱海?アイツは知らん。河川敷でサーフィンでもやってるんだろ、出来るとは思えないけどな。
「──ぉっ!」
「始まったか」
外出禁止なのに次々と外に出ていく仲間達の背中を見送っていると、壁に何かぶつかる音と声が聞こえてくる。守の部屋からだ。アイツがいつまでも大人しくしてるはずがないよな。
「やってるな」
「柊弥!」
扉を開けると守が壁打ちをしていた。跳ね返ってきたボールをトラップして、その場でリフティング。
「返すぞ」
「おう!」
守に向かってそのままパス、あっちもリフティングしながら会話を続ける。
「いやあ、やっぱり練習禁止は厳しいや。じっとなんてしてらんないよ」
「分かるぞ。俺も筋トレしたりイメトレしたり、何もせずにってのは無理がある」
「監督はどういう意図なんだろうな?」
「分からない。けどどれだけゴネてもオーストラリアとの試合は目の前なんだ。やれることをやるしか……ないだろ!」
守に対して距離を詰め、弾ませているボールを奪い取る。案外この部屋の中でも対人でやれるものだな、1on1に限定されるけど。
「ふッ、やってるな!」
「修也!」
とか考えてたら俺達の間の狭い空間を縫うように突如修也が飛び出してきた。ヒラリと身を翻して送り出したパス、そこにいたのは──
「撃て、鬼道!」
「ふんッ!」
「……くぅーッ!!良い球撃つなあ鬼道は!」
鬼道だ。修也からのパスをダイレクトで撃ち込み、それを守がしっかりキャッチする。
「なあ、世界一って考えたことあるか?FFI……世界中から最高の選手達が集まる大会なんだよな」
「ああそうだ。そしてそんなヤツらに勝つことが出来たら……世界一だ」
「だよな!俺さ、皆と一緒に見てみたいんだ。すげえヤツらと全力でぶつかり合って、勝ち残った者だけが辿り着ける、世界一のサッカーってやつを」
守が内に秘める想いを解き放つ。これまでコイツはこうやってチームを引っ張ってきた。夢を高らかに語り、その熱で皆を惹き付ける……まるで太陽みたいな存在。コイツがキャプテンだったからこそ、フットボールフロンティアも、エイリア学園との戦いも皆が着いてきた。
けどそれは決して守だけの夢じゃない。俺も、修也も、鬼道も。皆同じように世界一を目指している。
「だから挑戦しようぜ、世界一に!FFIで優勝するんだ!」
「ああ……世界一に!」
「世界一に!」
「世界一に!」
『世界一にッ!』
守に引っ張られるように俺達も手を掲げ、声を上げる。それと全く同じタイミングで扉が勢いよく開いて、外から皆が入ってくる。同じように世界一を宣言する皆、外から覗いてたな?
そこからは皆各々の部屋に戻ってやれることをやり始めた。風で揺れる上から吊るされたテープを相手に見立てたり、どんな姿勢でもボールをロストしないように維持、視界を封じてボールの着弾地点を予測、狭い空間で絶え間なくドリブルをし続ける……オーストラリアとの初戦を見据えて必死だ。
当然俺もやれることをやる……瞑想だ。やっぱりもっとエネルギーの使い方を磨きたい。今俺に1番必要なのはそれだと思う。何するにしてもエネルギーは使う。その扱い方が上手くなればなるほど、実力も底上げされる。
「待ってろ世界……!」
ーーー
そして遂に……この日が訪れる。
『第一回FFI、アジア地区予選!!フットボールフロンティアスタジアムは超満員!今回の予選は全てこのスタジアムで行われます!』
アジア予選に出場する8つのチームが初めて一堂に会する……そう、今日はFFIの開会式。そして俺達のイナズマジャパンとオーストラリア代表、ビッグウェイブスによる1回戦だ。
『勝ち残るのはただ1チーム!果たして、アジア代表の栄誉を勝ち取るのはどのチームなのか!?それではここで、財前総理からの開会宣言です!』
「少年たちの祭典……世界最強のサッカーチームはどこなのか?それを決める夢の大会、それがFFI!それぞれの国の威信をかけた熱く燃える試合、素晴らしいプレーを期待します!」
財前総理がこの大会の始まりを宣言したその瞬間、スタジアムは凄まじい熱気に包まれる。この盛り上がり……フットボールフロンティアを思い出す。全国大会の開会式もここだったからな。最早懐かしいまである。
「これよりスターティングメンバーを発表する」
開会式が終わればもう試合だ。俺達は間を空けることなくその準備に入る。一度控え室に戻って準備を整え、また会場に出るとまるで豪雨のような歓声が俺達に降り注いだ。ベンチ全員集合すると、久遠監督がスタメンの発表を始める。
「FW、豪炎寺、加賀美、吹雪、基山。MF、鬼道、風丸、緑川。DF、壁山、土方、綱海。そしてGK兼ゲームキャプテンは円堂」
FW4人体制……攻撃的な布陣だ。それ以外で何か特筆すべきことといえば……風丸のMF採用だな。これまでDFとして動くことが多かった風丸をMFに引き上げる。DMFとしてのポジショニングだが、風丸の脚なら状況に応じて前線にも上がれる。そして中核を担うのはやはり鬼道。万全な布陣だな。
「よし……皆、勝つぞ!!」
『おう!!』
ここからだ。ここから俺達の世界への挑戦が始まる。まずはこの試合に勝って、次に駒を進める。そして最後には……世界一だ!
FFI開幕!しばらく忙しいのでまた期間空きそうです…