…というのは置いといて、滅茶苦茶に期間空いて申し訳ないです。リアルが忙しすぎて全然執筆出来ませんでした。まだしばらく期間空きつつの更新になりそうです、いつも見てくださってる方には申し訳ないですがよろしくお願い致します。
『フットボールフロンティアインターナショナル、アジア予選開幕戦!!日本代表イナズマジャパンとオーストラリア代表のビッグウェイブスの試合が今始まろうとしています!!』
歓声でピリつく空気、期待で震える全身。今俺が立っているこの場所、ここが出発地点だ。俺の……俺達の世界一への。
「何だ、緊張してるのか柊弥」
「お前が一番よく知ってるだろ?」
物思いに耽っていると、隣から修也が話しかけてくる。その意図は気遣いか揶揄いか分からない。どっちでも良いと言ってしまえばそれまでだ。
「全国大会、エイリア学園との戦い、そしてとうとう世界だ」
「ここまで長いようで、案外そうでもないのだから面白いな」
「だな。まあ、ここまでの時間なんて関係ない……思いっきりサッカーする、それだけだろ」
「……そうだな」
夢にまで見た舞台に立ってるんだ。全力出し切って、行くとこまで行く以外の選択肢なんてあるハズもない。
『さあ!キックオフのホイッスルが、今──』
「なあ、修也」
「なんだ?」
直後、開戦の狼煙が上がる。
『──鳴り響いたァッ!!』
「思う存分、楽しもうぜッ!」
ホイッスルが鳴ると同時、俺はボールを従えてスタートを切る。目の前には相手のFW達が立ちはだかる。2枚……固め方が甘いな。これなら俺一人で問題なく抜ける。いやむしろ──
「いかせるかッ!」
「お手並み拝見だ、イナズマジャパン!」
先に飛び出してきたのは左の体格が良い方のFW。位置取りは悪くない、けどスピードに乗るまでが遅い。コイツより数段早く俺の方がトップスピードに到達する。そしてこの至近距離でギアが上がりきった俺を抑えることは簡単じゃねえぞ。
「なんだコイツ、速ッ」
「ジョー!挟むぞ!」
右に抜けようとした瞬間、もう1人の髪が長い方が正面を捉えてくる。右にコイツがいる状態で右に抜けようとしたんだ、そりゃそうなるよな。けど全部俺の狙い通りだ。
「ハンドワーク……!上手いぞコイツ!!」
「ボール捌きも並じゃない!」
これは時間稼ぎだ。本来トップスピードに差し掛かった時点で左に抜ければこの押し合いはスキップ出来てた。けどそうしなかったのには当然理由がある。
(ここまで時間稼いだらもう上がってきてるだろ?)
「加賀美!」
「待ってたぜ、我らがゲームメイカー!」
そう、鬼道が前線に上がってくるまでの時間を稼ぐためだ。ポジションの性質上、キックオフから鬼道が俺と同じラインまで上がってくるのには少しだけ時間がいる。俺と修也でも中盤突破は可能だけど、コイツがいることでその成功率は格段に跳ね上がる!
僅かな隙間から鬼道の姿を確認し、サイドステップで一気に横に弾けそのまま鬼道にボールを委ねる。今回このイナズマジャパンが結成されてから連携を磨く時間はなかったからな、やり慣れた雷門としての連携でまずは流れを引き寄せる。鬼道の後ろに続くのは修也、吹雪。3人がパスを回しながら順調に切り込んでいく。フィールド上の注目がアイツらに向いてるうちに俺はアウトサイドから攻める。
(なんだアイツ……鬼道の動きに集中しつつも動く気配がない)
アイツは確か……キャプテンのニース。春奈達が名前だけ入手してきてくれた男だ。プレースタイルは完全に未知数、だがポジションはDMF……攻守の切り替え、ボランチとしての役割か?
いや待て、確かアイツらには防御に長けた未知の戦術がある。それの起点がアイツだとしたら?
「鬼道!9番に注意だ!」
「遅い!行くぞお前ら!」
『おう!』
鬼道に声を飛ばしたその瞬間だった。ニース含めた4人が一瞬で鬼道を包囲する。次々に鬼道にヤツらが襲いかかるが、その卓越したテクニックで鬼道はボールを保持し続ける。
「鬼道!」
一緒に攻めていた修也がパスコースを作り出し声を上げる。しかしその瞬間には分かりきっていたようにニースがブロック。ならばと鬼道はバックパスを狙うがそのコースも潰される。
『出たァ!これがオーストラリアの必殺タクティクス、ボックスロックディフェンス!!』
ボックスロックディフェンス……これがアイツらの戦術、タクティクスってことか。
「ボールは渡さねえ!」
「うおおお!」
「ッ!綱海!土方!」
「おわッ!?」
「ぐッ!!」
間もなくして鬼道のボールは弾かれる。そのキープに綱海と土方が同時に走り出す。しかし、ボールを相手に渡さないというその意思が裏目に出る。お互いが見えていなかった2人は何と正面衝突。ボールを取るどころか守備に入るまでの大幅なタイムロスになってしまう。今のは……ポジショニングの連携が不十分ゆえの事故。裏目に出たな。
「撃て、ジョー!」
「おう!!」
それを見た壁山、風丸がすぐさま走るがボールは既に相手の脚元。さっき俺を抑えに来てたFWがボールを確保した後に間髪入れずゴール前へ走る。
「メガロドンッ!!」
ジョーと呼ばれた11番が脚を振り上げた瞬間、周囲を大波が襲う。ジョーがボールに蹴り込むと、その中から大型のサメが姿を現す。そのサメはボールと一体化し、ゴールを喰い破らんと暴れ狂う。
「
シュートの圧力は本物だ。それに対して守は大きく脚を振り上げ、力を集中させた右拳を勢いよく突き出す。目を血走らせたサメと、黄金の拳。2つが衝突した瞬間大地が揺れるのを感じた。
(……マズイな)
守のことを信頼してない訳じゃない。けどどうしても振り払えない、1つの疑念がある。それは実戦形式での圧倒的な練習不足。練習を禁止されたこの2日間、出来る限りのことをやった。けどそれはあの狭い室内で出来る、限られた範囲だ。試合を想定しての連携、必殺技の研鑽なんてのは当然出来ちゃいない。だからさっきみたいな事故が起こった。
そしてその影響が顕著に出てしまいそうなのはまさにこの場面だ。得失点を賭けたゴールでのやり取り。相手のストライカーは試合を想定して、点を奪うためにそのシュートを鍛えてきた。けど守……いや俺達全員はそれが出来てない。想定こそすれど、鍛えることは出来なかった。
「ぐッ……クソぉっ……!!」
その差が、世界レベルでは命取りになりうる。
『ゴォォル!!先制点はビッグウェイブス!!試合開始早々、イナズマジャパンのゴールをこじ開けたァ!!』
「ッ……!」
「円堂!大丈夫か!?」
派手に弾き飛ばされた守に駆け寄る風丸。怪我は……ないな。
「さて……」
状況は非常にマズい。ボックスロックディフェンスの突破手段はまだ確立出来ていない、そして1点ビハインド。幸いなのはまだ試合開始から時間が経っていないことか。まずアレの突破手段を見出さないと攻めようにも攻められないな。
ボックスロックディフェンス。その名の通り、4人からなる箱のような陣形で1人を抑え込む戦術。次々とボール保持者に襲い掛かり、パスコース潰しも完璧。ボールキープ自体は出来るが時間の問題だ。限られた空間で4人を躱し続けるのは難しいことがさっきの鬼道で分かる。テクニックで凌ぐことは不可能だな。凌いだところで押しつぶされる。
パワーで押し通るか?いや、リスキーだな。下手したらファウルを取られる。悪手どころの話じゃない。それならスピードで……いや、スペースが無さすぎる。
……もう少し観察しないことには分からない、か。
「鬼道、ポジションを少し下げたい」
「何?どういうことだ」
「あのディフェンスの突破方法を考えたくてな。1回見ただけじゃどうにもならなさそうだ」
「成程……俺も後ろから俯瞰してアレを見るつもりだった。それなら前は豪炎寺、吹雪、ヒロトに任せるか」
「ああ」
鬼道の許可は取れた。前線の枚数を減らすことで突破力は減るが、今は耐えるターンだ。俺と鬼道、2人なら何かが見えるかもしれない。やる価値は十分にあるからな。
修也達にその旨を伝え、キックオフに備える。俺のポジションに入ったのは吹雪だ。スピード面を補う判断だろう。
『さあ再びキックオフ!イナズマジャパン、追い上げなるか!?』
修也達が攻め上がる。バックアップのために緑川も後ろに着いている。
「ふッ、どれだけ攻めてこようと無駄だ……ボックスロックディフェンス!!」
「くッ!!」
すぐさまボールを持つ修也が標的にされる。まず前提条件、アイツらは攻められる側の時4人が固まって構えてるな。修也は鬼道とは違い、テクニックではなくパワーで突破を狙えるタイプ。ただ、俺が懸念した通り力任せの突破はやっぱり厳しいな。というか突破したところですぐ他の誰かがカバーに来る。パワーで突破した瞬間スピードに切り替える?いや、そもそも動き出しを潰しに来る。
「もらった!」
「いいや、まだだ!」
間もなくして修也はボールを奪われる。けどすぐさま吹雪がそれを奪い返した。
「こっちもまだだ!ボックスロックディフェンス!!」
しかし、その上からさらに吹雪を抑えに来た。なるほどな、距離が近ければすぐに標的も切り替えられるってことか。吹雪がトップスピードに入る前にしっかりと囲んでやがる。
箱の中に囚われた吹雪はスピードで揺さぶろうとするも、やはりスペースが狭いせいで上手くいかない。つまりスピード型は捕らわれた時点でほぼ詰みか。逆にパワー型なら一点突破を狙ってもすぐにカバーされ、テクニック型もスピード型同様にジリ貧に陥る。
そしてもう1つ。アイツら、同じ入り方しかしてない。一度囲んでからは臨機応変に形を変えてるけど、最初の陣形は固定。更に言えば、合図を出すのはニース、アイツだ。
……よし、段々分かってきた。
「鬼道、行ってくる」
「まさか、もう突破口を見出したのか?」
「突破口……とは少し違うかもな」
俺は鬼道に一言入れて前線に走る。最初のを含めて3回。それぞれ違う強みを持ったヤツらを囲んでくれたおかげで十分情報を得られた。正直今からやろうとしてることはだいぶ難しい。同じことをみんなにやれって言っても多分無理だ。
けど構わない。俺一人がとりあえず破る手段を確立することで流れは少しでもマシになる。千里の道も一歩からってな。
「ぐッ、ダメか!」
「リーフ、運ぶぞ!」
視線の先では吹雪がボールを奪われたところ。ヒロト、緑川が捉えるよりも早くリーフともう1人がこちらに向かって走り出す。
攻めに意識が切り替わって生まれる綻び、そこを狙う。
「返してもらうぞ」
「馬鹿な、いつの間に!?」
脱力、そこから全身にエネルギーを流しつつ地面を砕く勢いの踏み込み、そして生まれる超加速、初見じゃ対応は難しいだろ。慣れてなきゃ一瞬何かが通り過ぎたようにしか見えないだろうさ。その一瞬でボールを奪い去る。
さあここからだ。突如前線に参加してきた俺をアイツらが警戒しないはずがない、そうなれば当然矛先を俺に向けてくる。
「何度来ても無駄だ!ボックス──」
(ここだ)
ニースが俺を正面に捉え、ボックスロックディフェンスの指示を出そうとしたその瞬間、先程と同じように前方向への超加速で4人纏めてぶち抜く。加速の段階を経て辿り着くトップスピードとは違う、まさに異次元のスピード。負荷のせいで連発出来る代物じゃないが、それ相応の対価はある。
これが俺の答えだ。囲まれたらボールロストの確率が跳ね上がるなら、最初から囲まれなければいい。あの包囲の中に飛び込めばまだ見えるものがあるかもしれないが、そんなリスクをぶっつけ本番で背負う訳にはいかない。
『な、なんと加賀美!!ボックスロックディフェンスに囲まれるより早く、そのスピードで突破したァ!!』
「ば、馬鹿な……ッ!?」
「あんなモンどうやって止めろってんだ!?」
突破に全振りしたせいでこのままシュートに持ち込むのは難しい。ここは大人しく……
「修也!!」
「任せろ!!」
相棒に任せる。完璧なポジショニングしてくれてたからな。俺が突破してくるのを信じて動いてやがったな?
「
闘気を滾らせた修也は炎の魔神を従え、遥か高くへと飛び上がる。そこから放たれるのは太陽が落ちてきていると錯覚するほどの熱量を秘めたシュートだ。日本のエースストライカーの全力だ、相手はどう出る?
「ふッ、グレートバリアリーフッ!!」
直後、ゴール周辺に展開されたのはまさしく大海。その中に突っ込んでいった爆炎のシュートはまるで抗うかのようにその中を突き進む。しかし、母なる海の前には修也の炎ですら掻き消される。良いシュートだったが……世界の壁は伊達じゃないか。
「ぐッ……!」
修也の爆熱ストームを止めたキーパーはボールを放り投げる。さて、ここからどうする?あの突破からそのままシュートに持ち込むのは多分無理だ。もう少しスピードを落とせばいけるだろうが、それだと囲まれる前に突破できるか分からない。さっき一度見せたせいで警戒されるだろうしな。突破後に減速を挟む方法もあるけど、その一瞬の隙が命取りになり得る。
修也が単体で決めきれないなら、他の誰が撃っても厳しいまである。あの選考試合で進化した爆熱ストームは雷霆一閃と同格以上。それを越えるシュートは……分からない。ウルフレジェンドと流星ブレードならいけるか?
「とりあえず……このボールは返してもらうぜ」
「ふッ、お前には付き合わんッ!」
ボールを持ってるヤツの前に飛び出すが完全に警戒されてる。対面が成立するより早くパスで逃げられた。あの一瞬で俺への警戒度が跳ね上がってやがるな……正攻法じゃもう付き合ってもらえないか。
俺を避けるようなパスワークでボールを繋いでいくビッグウェイブス。鬼道を中心にそれを遮り、攻めに転じようとするもボックスロックディフェンスに阻まれる。それより早くパスを受けるために走るが、動き出しを完璧に封じられてる。ボックスロックディフェンスを発動するまでのスピードも上がっている。
『ビッグウェイブス猛攻!イナズマジャパン為す術なしか!?』
「くッ……」
怒涛のオフェンスに鉄壁のディフェンス、流石優勝候補だ。初戦からここまで苦しめられるなんてな……勿論、侮ってたわけじゃない。手も抜いてない。
もう数十回目になるこちらの攻め。ヤツらの防壁は再び鬼道を捉えた。ジリジリと詰め寄るニース達。一度囲まれたら外からカバーは難しい。アイツらの包囲は完璧だ。
「まだ気付かないのか!」
「久遠監督……?」
「箱の鍵は……お前達の中にある!」
流れを取られ、体力がどんどん削られていく俺達にベンチから声が飛ぶ。久遠監督だ。久遠監督は胸に指を指し、俺達に毅然とした視線を向けている。
「……そうか!」
その時、鬼道が何かに気付いた。それを気取ったのかニース達はすぐさま鬼道に襲いかかりボールを奪う……ことはなかった。アイツ、あの狭い空間の中でビッグウェイブス猛攻をやり過ごしてる。スペースを最大限利用したテクニックが見違えるレベルで向上してる。アイツいつの間に……
(箱の鍵は……お前達の中にある!)
そうか……そういうことか。練習禁止の2日間、自分の部屋の中で磨いたのか。どういう練習してたのかは分からないが、あの時出来ることを考え抜いて、それで得られたのがあの技術か。
「ここだ!」
「ナイスパス……鬼道!」
鬼道の動きに翻弄されたヤツらは仲間同士で衝突。そこに生まれた一瞬の隙間を鬼道は逃がさない。回転をかけたパスを送り出すと、その先に修也が走り込んでいた。
「一度破ったくらいでいい気になるなァ!ボックスロックディフェンス!!」
パスを受け取って再びゴールを目指す修也を囲むのは先程とは違う4人。だが一目見れば分かる。明らかにさっきより穴だらけだ。やはり中核となっていたのはニース。それが欠ければ戦術としての完成度は大なり小なり下がるらしいな。
同じことに気付いたんだろう。修也は即座に綻びに気付き、鋭いパスを送る。
「ウルフレジェンド……らァァァッ!!」
「グレートバリアリーフ!!」
修也からのパスを受けてシュートを撃ち込んだのは吹雪。全身全霊のウルフレジェンドが炸裂するも、先程の爆熱ストーム同様に止められてしまう。強いな、あのキーパー……守からゴールを奪えるレベルのストライカーのシュートを受けてたんだから当然と言えば当然か。
『おーっとここでビッグウェイブス、2人の選手交代です!!』
点は奪えずとも、流れはこちらに傾いた。しかしそれを遮るようにビッグウェイブス側のヤツかボールを外に出す。ミスキックのように見えるが、明らかに狙って出したな。
交代で入ってきたのはMFとDF。修也が突破したボックスロックディフェンスに入ってたヤツらだ。
「一人……いける!」
「ふんッ、グレイブストーン!!」
交代直後、ボールを確保した緑川は敵陣へと切り込んでいく。そんな緑川の前に立ち塞がったのは交代で入ってきた大柄な方。ソイツが拳を地面に叩きつけた瞬間、地面が隆起し巨岩が緑川を貫く。
「カンガルーキック!!」
「うわッ!!」
もう1人の方はまるでカンガルーのようにしなやかにボールを撃ち出し、綱海を弾き飛ばす。磨かれたフィジカル……優秀だ。しかもそれだけじゃない、ボックスロックディフェンスが通用しなくなったことを即座に理解して戦術を切り替える柔軟さもある。
「ここだ」
「うッ!」
綱海にぶつけられ、相手の方に戻っていくはずだったボールを横から掻っ攫う。前半は残り僅か……何とか1点取り返しておきたいな。ただあのキーパーから点を奪う手段を確立出来てない。ファイアトルネードDD、クロスファイアならいけるか?守備に優れたこのチーム相手に2人揃ってゴール前まで上がれるかと言われたら何ともだけどな。
「加賀美!」
「任せる……ん?」
何だ?鬼道のヤツ、焦ってるのか?前半のうちに取り返しておきたいのはアイツも共通認識だろうが、鬼道が冷静さを欠いたら指揮系統が一気に崩れる。少しカバーが必要そうだな……
「行かせん!!」
「はッ!」
鬼道をスライディングが襲う……が、目の前からやってくるそれを鬼道は跳んで回避する。
しかし。
「鬼道!横に跳べッ!!」
「なッ──」
着地した瞬間に鬼道の脚に第二のスライディングが突き刺さる。あの刺さり方、マズい……そのまま派手に転倒する鬼道。
「おい鬼道、大丈夫か?」
「ああ……問題な──ッ!!」
……これは、滅茶苦茶マズい。
『ここで前半終了ォ!!ビッグウェイブス、優勢のまま後半も勝ち越せるか!?』
「……肩貸すぜ」
「あ、あぁ……スマン」
ーーー
「これじゃこの試合は無理です……!」
「これくらい、大丈夫だッ!」
「鬼道、気持ちは分かる……けど無理はするな」
ハーフタイム。ベンチで応急処置を受ける鬼道。しかしその負傷は思っていた以上に深刻なようで、後半も戦うことは無理だと言い渡される。
「鬼道、交代だ」
「ッ……はい」
(はッ、出番かね)
「いけるな……虎丸」
「なッ……!?」
「は、はい!」
久遠から鬼道に交代の指示が下る。それを聞いて不動が立ち上がろうとするが、次に呼ばれたのは不動ではなく虎丸だった。予想外の選択、不動は心の中で舌打ちをしてそのまま座り込む。
「後半の指示を伝える。吹雪は中盤に下がって相手の攻撃の芽を摘め。虎丸はそのまま鬼道のポジションに入って前にボールを繋げ」
「はい!」
「そんな重要な役割……頑張ります!」
「それから綱海……お前は俺の指示を聞かず、外に出て特訓をしていたようだな。その責任をとってお前が逆転のキッカケになれ。新必殺技でな」
「で、でもあれはまだ未完成だぜ?」
「完成していないのは頭にビジョンがないからだ。ヒントは……あのフィールドにある。海はお前のものだと証明しろ!」
「……はい!」
練習禁止の2日間、綱海は久遠の目を掻い潜り、塔子達協力の元海で特訓していた。当然、それは久遠の掌の上だったのだが。そんな久遠の後押しもあり、綱海はやる気を露わにする。そんな綱海に続くように他の選手達もフィールドに入っていく。
「加賀美、綱海の動きをよく見ておけ」
「綱海の動きを……分かりました」
久遠は最後に柊弥にも声を掛ける。綱海の動きに注目しろ。意図を伝えないあまりにも簡潔な指示。しかし柊弥はそれに反論も質問もせずに頷く。久遠は確信していた。この状況を変えるのは綱海、柊弥であることを。
そして、その期待通り……この2人が世界に衝撃を刻む。
柊弥を強くしすぎて扱いに困ってるのが現状。正直韓国戦までこの子苦戦しないんじゃないですかね…