Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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大変お待たせしました…忙しすぎてマジで更新間隔空きました、申し訳ない。
しかも空きすぎてどうやって小説書いてたのか完全に忘れてます。ご勘弁くださいませ…


第117話 波を乗りこなせ

『加賀美、綱海の動きをよく見ておけ』

 

(綱海の動きを……か)

 

 

 監督から戻り際に出された指示を頭の中で反復する。この直前に監督は綱海に新必殺技で逆転のキッカケになれって指示していた。それをよく見ろ……ってことは、サポートしろってことか?けど綱海はDF、俺のポジションからそれをやるのは少し現実的じゃない気がする。とはいえあの監督の指示だ、意味が無いワケじゃないはず。

 

 

 とはいえ……だ。鬼道が抜けて指揮系統が失われた。代わりに入った虎丸は司令塔としてじゃなくて、あくまで前にボールを繋ぐ役割だ。頭脳が欠けたこの状態で後半戦を戦い抜けるか?

 

 

「……いや、違うな」

 

 

 戦い抜けるかどうかじゃない、勝つんだ。この世界の舞台で最速敗退なんて認められるかよ。

 

 

「風丸。後陣の指示を頼む」

 

「任せろ。前は頼んだぜ」

 

「おう」

 

 

 さて、どうやって戦おうか。とりあえず久遠監督が虎丸に指示していたのはボールを繋ぐ中継役。ならそれに徹してもらうのがベストだ。修也、ヒロトに点を奪えるように動いてもらって、俺と緑川でその補助。これで行こう。少し引き気味に立ち回れば綱海の動きも見れ──

 

 

「──綱海?」

 

「うーん……」

 

「綱海さん!後半始まるッスよ!!」

 

 

 ふと後ろにいる綱海の様子を見たら……何故か地面に突っ伏している。その横にはあたふたしてる壁山。

 

 

「……まあ、いいか?」

 

 

 意図を考えても理解出来る気がしない。大人しく後半開始に意識を向けよう。

 

 

『後半開始!0-1、追い付けるかイナズマジャパン!!』

 

 

 綱海から視線を逸らした瞬間ホイッスルが鳴る。修也とヒロトが一気に前線に飛び出し、相手がボールと共にこちらへ走り込んでくる。サイドに位置する俺と緑川より早くその2人に接触するのは虎丸だ。

 

 

「リーフ!」

 

「ああ!」

 

「ここだ!!」

 

 

 10番、11番がワンツーで虎丸を突破しようする。しかし何と虎丸は自分の背後を通るパスを踵で浮かし自分のモノにした。よく奪ったな……ブレない体幹とタイミングを読み切る勘が備わってないと出来ない芸当だ。同じことをやれと言われたら俺は絶対に無理だな。

 

 

「虎丸!」

 

「はい!」

 

 

 当然虎丸からボールを奪い返そうとビッグウェイブスが襲い掛かる。流石にディフェンスが武器であるこのチームの防衛網を単独で突破し切るのは難しい、パスを受けれる位置に走り込んで逆に俺達がワンツーで突破する。ニースを含めたディフェンスラインを突破した直後、虎丸が跳躍。上空からの鋭いパスは誰にも妨げられることなく修也へと届く。

 

 

「決めろ修也!!」

 

「おォッ!!爆熱ストーム(G2)!!

 

 

 パスを受け取った修也は全身から炎を燃え上がらせる。その威力は先程よりも強大で、サイドの角度が無い完璧なポジショニングから放たれる爆熱ストームだった……が、また止められてしまう。あのキーパー優秀だな……修也のシュートを二回も止めるなんてな。ただ修也のパターンに慣れてきたなら俺か、ヒロトが狙うか?

 

 

「貰った!!」

 

 

 そんなことを考えているとヒロトが放られたボールを奪い取る。そのまま流星ブレードの構えに入る……いや、待て!

 

 

「ヒロト!上だ!」

 

「遅い!」

 

「うッ!?」

 

 

 跳躍で溜めを作ろうとしたヒロトの上から襲い掛かるDF。咄嗟に警告が間に合ったおかげかヒロトは横っ飛びに回避する。

 

 

「甘いな!」

 

「なッ、ボックスロックディフェンスか!」

 

「それはどうかな!?」

 

 

 ヒロトが繊細なボールコントロールで突破しようとしたその時、凄まじい勢いでDF達が襲い掛かる。何だ……?さっきまでのボックスロックディフェンスとは明らかに違う、常に動き回っているのか?従来はパスコースを潰しながら機を伺ってボールを奪いに行くタクティクスだった。今のは常に動き回りながら奪いに行く……言うなれば、機を伺うんじゃなくて機を作りに行くタクティクス。

 

 

「さしずめ、ボックスロックディフェンスV2と言ったところかな……貰った!」

 

「しまったッ!」

 

 

 そう不敵に笑ってニースはボールを奪い取る。ボックスロックディフェンスを破って次に切り替えてきたと思ったら、改良版のボックスロックディフェンスっていう手札を切ってきた。自分達が衝突するリスクを負っても超プレッシャーを掛けてくる、突破は難しいな……しかもニースが機転じゃないからタイミングを読むのも厳しい。あの突破法は使えないな。

 

 

「行かせねえよ」

 

「ふッ、かかってこい加賀美!」

 

 

 とりあえず流れを引き戻す。ヒロトからボールを奪ったニースの前に立ちはだかると、ヤツは意気揚々と突っ込んでくる。フィジカルは同レベル、身体捌きはあっちの方が上か。綱海といい、海で鍛えた男は揃いも揃って強靭だな。

 

 

(だが……!)

 

 

 観察力はこっちの方が上だ。ニースの癖を見抜いてボールを一瞬の加速で奪い取る。

 

 

「やるな……だがッ!」

 

「行くぞ!ボックスロックディフェンスV2!」

 

 

 ニースとの駆け引き、その時間があれば人も集まるよな。ニースを含めた4人がボックスロックディフェンスV2を発動、まるで荒波に囲まれてるみたいだ。何とかボールキープは出来ているけどこれはキツいな。パワー、スピードでの突破はリスクがあるな。相手と派手に接触するかもしれない。テクニックでの突破は……鬼道レベルで行けるかどうかってレベルだろうな、俺じゃ厳しい。

 

 

「ここだァ!」

 

「くッ……!」

 

 

 ギリギリだ、何か仕掛けないとジリ貧で詰む。さっきの虎丸を参考に空中からパスを出そうにも、多分ヒロトに仕掛けたみたいに封じてくる。

 

 

「仕方ない……押し通る」

 

 

 本当に最終手段だ。ボールを思いっ切り踏み抜いて、エネルギーを注ぎ込む。回転を得たボールは空気を巻き込みながら凄まじい勢いで放電を始め、周囲に迸る。

 

 

「なッ!?」

 

 

 鍛えられてるヤツらに手出されないほどの出力……最低でも50%だ。何があるか分からない以上消耗は抑えたかったけど何の突破口も作れないよりマシだ。距離もある、両脚で打ち出せない。だから期待は出来ない、けどやらないよりマシの精神だ。

 

 

 

「吹き飛べ、ライトニングブラスター"V3"ィ!!

 

 

 片脚でライトニングブラスターを撃ち出す。肌を焦がすような凄まじい圧力に誰も手を出せない。そしてそれが牙を剥くのは俺に対しても平等だ。ライトニングブラスターは凄まじい威力と引き替えにその制御は困難を極める。春奈の助言で編み出したのが両脚で撃ち出すっていう方法、つまりそれを片脚でやろうものならその代償は──

 

 

「──キツイな」

 

 

 その片脚にのしかかる。最初は片脚なら弾かれて終わりだったけど、撃ち出せるくらいには俺も成長してるってことだな。とはいえ負荷は凄まじい。前半でのボックスロックディフェンスの突破の時に使ったアレもあって結構脚にキてる。

 

 

グレートバリアリーフ!!

 

 

 当然、そのシュートの威力も本来のものより数段落ちてる。難なくGKに止められた。

 

 

「ニース!」

 

「さっきの……かなり無理しただろう!」

 

 

 ニースはGKからパスを受け取るために俺を一瞥して走り出す。確かに無理をしたな。脚が痺れてるし、一気に体力も持ってかれた。

 

 

 

 けど、それがどうした?

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「よし、反撃──」

 

「さっきぶりだな」

 

「なッ、何故追い付けた!?」

 

 

 柊弥を置き去りにして再び攻勢に移ろうとしたニース……だったが、その顔が驚愕に染まる。ボールを受け取って反転した時、何とそこに全身から雷を迸らせた柊弥がいた。ニースの眼は間違っていなかった。凄まじいエネルギーの塊を片脚で扱い、その代償は確かに柊弥に襲いかかった。

 しかし、加賀美 柊弥という人間への理解が足りていなかった。その程度で歩幅を狭めるような男ではなかったのだ。それどころか窮地に追い込まれれば追い込まれるほど力を発揮する、それが加賀美 柊弥だ。

 

 

(雷霆万鈞でダメ押しを重ねた超加速、何としてでもこの前線を維持するための必要経費ってヤツだな)

 

「さっきので学ばなかったか!?囲むぞお前ら!!」

 

 

 先程の繰り返しのように柊弥は囲まれる。しかし当の本人に焦っているような様子はない。

 

 

(イメージしろ、さっきのライトニングブラスターの放電だ)

 

 

 柊弥は今と同じ状況をライトニングブラスターの圧倒的な出力でやり過ごした。しかし、余力の半分を消費するという凄まじい代償があった上で出来る芸当である。後半戦はまだ続く、そのもう半分をここで使い切ることなど言語道断だった。

 幸いにして、柊弥は先程のやり取りで何かを掴んでいた。ボールにエネルギーを注ぎ込み、溢れ出した分のエネルギーが雷として周囲に迸るのがライトニングブラスターの副産物。それを利用したのが先程の突破だ。

 

 

 だからこそ柊弥は考えた。シュートではなく、突破手段としてだけそれを使えないか、と。オーストラリア戦の前の練習禁止期間、そこで瞑想トレーニングを主に行っていた柊弥は、自身の中に満ちるエネルギーを効率良く、そして自在に扱う術が磨かれていた。元来より身体中にエネルギーを巡らせて身体能力を活性化させる雷霆万鈞、身体の外でエネルギーを具現化させた剣によるサンダーストームなどの必殺技を扱う柊弥にはある程度の技術が備わっている。それが磨かれたとあれば……それを実現するのはそう難しいことでは無い。

 

 

「喰らえ、ボルトプロージョン

 

「何だこれは──」

 

 

 柊弥の内側から雷が溢れ出し、やがて勢いを増して周囲へ炸裂する。閃光と共にビッグウェイブスのDF達を包み込み、その身体を後退させる。光が晴れた時、柊弥の視界は開けていた。

 

 

「加賀美ーッ!!」

 

「綱海……?」

 

 

 そんな柊弥の目に映ったのは一心不乱に走り込んできている綱海の姿。直後、思い出される久遠の指示。

 

 

「お前も何か掴んだか……よし、行け!!」

 

「よっしゃあ!!」

 

 

 柊弥は迷わず綱海へとパスを送る。それを受け取った綱海が大きく飛ぶと、周囲に荒波が満ちる。ボールをサーフボードに見立てて波を乗りこなす綱海は、やがてその波の流れを完全に掌握する。

 

 

「うおおおおおお!!喰らえェ!!

 

 

 放たれたそのシュートは、綱海が初めて編み出した必殺技であるツナミブーストよりも凄まじい威力を備えていることが見て分かる。

 

 

グレートバリアリーフ!!我々の波をその程度で乗りこなせると思うな……!」

 

「ダメか……!」

 

 

 まさに鉄壁、GKは再び完璧にシュートを止めて見せた。パスを受けてから柊弥に二度も阻まれていることもあり、ニースはすぐさまパスワークを展開する。誰にも止められることなく繋がれるパスは、まるで流れるようにイナズマジャパンのゴール前まで辿り着く。最後にパスを受けたのは1点目を円堂からもぎ取ったストライカー、ジョーだ。

 

 

「2点目だ……メガロドンッ!!

 

 

 巨大なサメが再び円堂へと襲い掛かる。同じ展開で前半に点を奪われている円堂。しかし、彼が物怖じすることなどない。それどころか、拳に篭もる力は更に強まっている。

 

 

正義の鉄拳(G3)ッ!!

 

 

 大きな溜めの動作から円堂が拳を捻り出すと、黄金の拳が顕現する。その拳が放つ光は仲間達が知るよりも煌々としており、絶対的な安心感を感じさせる。拳が触れた瞬間、サメは砕け散りシュートも弾かれる。イナズマジャパン主将、円堂 守は今この瞬間に進化してみせた。

 

 

 そして、その弾かれたボールは弧を描きながら綱海の元へ。

 

 

「俺に乗れねえ波はねえ!!行けえッ!!

 

「何度やっても同じだ!グレートバリアリーフ!!

 

 

 先程と同じように綱海が新たな必殺技を放つ。しかし、そのシュートは先程とは明らかに違かった。GKのジーンが展開するグレートバリアリーフに触れた瞬間回転の勢いを強め、徐々に食い込み始める。

 

 

「なッ!?馬鹿な、こんなことが──」

 

「これは……ザ・タイフーン!!」

 

 

 ベンチの目金が綱海の新必殺技をそう名付けた瞬間、グレートバリアリーフを飲み込んでシュートがゴールへと突き刺さる。

 

 

「よっしゃァ!!」

 

『ゴォォォル!!加賀美と円堂が繋ぎ、綱海が放った必殺シュートがオーストラリアの波を巻き込んだァ!!イナズマジャパン同点に並びました!!』

 

「綱海!最高だお前!」

 

「ああ、救世主だな」

 

「へへっ、お前らのおかげだっての!」

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 綱海がやってくれた、これで同点だ。俺も新しい必殺技を身に付けられたし、確実に流れはこっちにある。このまま勝ち切りたいが……あっちも一気に警戒してくるだろうな。後半も終盤に差し掛かる、何とかして追加点を奪い取らないとな。

 

 

「さて、ここからだな……」

 

 

 試合再開早々、俺の予想通りに試合は動く。ビッグウェイブスのヤツらは俺達一人一人にベッタリと張り付く……所謂マンツーマンマークだ。常に1vs1での勝負となり、個々の力が試される。俺のマークに着いたのはニースだ。

 

 

「まさかマンツーマンとはな、これじゃ試合が動かないだろ」

 

「けど、こうすれば身体が強い我々の勝率が上がる。合理的だろう?」

 

「勝ちにこだわるその姿勢は悪くないな……だが、それでも俺達に勝てるかな?」

 

「何だと?」

 

「おらァッ!!」

 

 

 視線の先では綱海がマークを振り切って動く。ボールをキープしていた虎丸からパスを受け取りシュートを狙うが、すぐさまそれを阻止される。せめてもの抵抗で綱海はパスを送る。それを受け取ったのは……壁山だ。

 

 

「うッ……何処にパスを出せば良いンスか!?」

 

「一人で持ち込めッ!!」

 

「ええっ!?」

 

 

 慌てふためく壁山。しかしそこにベンチからの声が突き刺さる。久遠監督だ。そういえばいつだったか……壁山に守るだけのディフェンスはチームに要らないと言っていたな。監督に禁止されていたからその意図……俺が推察したものに過ぎないけど、それを伝えることは出来なかった。走り込みでも随分と追い抜かれたよな、壁山……さあ、気付けるかどうか、お前もここで一皮剥けて見せろ!

 

 

「うッ……負けないッスよ!!」

 

「な、馬鹿な!?」

 

「ナイス壁山!!」

 

 

 壁山に襲い掛かるのはジョー。しかし、自分に負けないほどの屈強な身体を持つストライカー相手に何と壁山は打ち勝って見せた。野生中の時からそうだ、お前はやる時はやるんだよな。信じてたぜ。

 

 

「虎丸くん!!」

 

「させるかァ!!」

 

「ここだッ!!」

 

「な、何ィ!?」

 

 

 壁山からのパスを受け取った虎丸。シュートの体勢を取った瞬間、修也に張り付いていたDFが虎丸にスライディングを仕掛ける。しかしそれは虎丸のフェイント、シュートモーションから跳躍し、修也にパスを送る。

 

 

うおおおおおおおッ!!

 

 

 パスを受け取った修也の炎から凄まじい勢いで炎が燃え上がる。何だあの構え、爆熱ストームじゃない……まさか、この土壇場で新必殺技を完成させたって言うのか!?

 

 

(エースストライカーめ……!)

 

 

 爆熱ストームよりも強烈な炎を従えるそのシュートはグレートバリアリーフに飲み込まれるが、飲み込まれた上でその海域を全て蒸発させた。驚愕に顔を歪ませたままキーパーはゴールに押し込まれ、追加点を告げるホイッスルが鳴り響く。

 

 

『ゴォォル!!豪炎寺の新必殺技が炸裂!!イナズマジャパン逆転ッ!!!そして試合終了、逆転大勝利だァァァ!!』

 

 

「……流石としか言えねえよ、修也」

 

「ふッ、今のところゴール数は俺の勝ちだな」

 

「絶対越すから待っとけ」




1回戦勝利、さりげなく新必殺技を習得する柊弥くんでした。
さて次はカタール戦、どうすっかなあ(当初からオーストラリア戦とカタール戦がかなりの難産になる予定だった。柊弥がバランスブレイカーになりかねないのが悪い)
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