Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

124 / 127
定期更新は月曜日に投下していきます


第119話 砂漠の旅人

『皆さんこんにちは!!FFIアジア予選第2試合!!日本代表イナズマジャパンvsカタール代表デザートライオンの1戦がいよいよ始まります!!』

 

 

 俺らがキャラバンから降りると、既にスタジアムの中には熱狂的な歓声が響いていた。オーストラリアとの試合の時より盛り上がってるな。

 

 

「うう、もう第2試合なんて早すぎるッス……」

 

「なーにビビってんだよ壁山!ドンと構えろ!」

 

 

 壁山の言いたいことは分かる。第1試合が終わってからあっという間だった気がするからな。とはいえ、時間の流れが早いか遅いかなんて関係ない。勝たなきゃここで終わるだけだからな。

 

 

「よし、行くぞ!」

 

「虎丸くーん!」

 

「え?乃々美姉ちゃん!?」

 

 

 守の声に押されるように全員スタジアムの中に入っていこうとしたその時、不意に聞き覚えのある声が響いてくる。声の主は乃々美さん、虎丸の店を手伝ってたあの人だ。

 

 

「何でここにいるんだよ!」

 

「今日大事な試合なんでしょ?はい、皆のお弁当作ってきたのよ!」

 

「マジッスか!!」

 

 

 乃々美さんがそう言うと皆大はしゃぎで群がっていく。主に壁山が。

 

 

「これ食べて絶対に勝ってね!」

 

『はい!!』

 

 

 弁当をもらって改めてスタジアムの中へと向かう。ユニフォームに着替えてフィールドへ出る……それにしても今日は暑いな。走り込みでスタミナの補強をしたが中々キツそうだ。

 

 

「あれがカタール代表、デザートライオン……」

 

 

 誰かがそう呟いたのにつられて入場口を見ると、相手チームのヤツらがやってくる。スタミナとフィジカルが売りのチーム……その評価通り、身体が仕上がってる選手が多い。聞いた話だと個人技にも定評があるらしい。

 

 

「鬼道、作戦は?」

 

「相手は優れた肉体と個人技で攻めてくるはずだ。各々で突破出来れば大きなアドバンテージとなる。臨機応変にパスを回しつつ各個人も勝ちにいくぞ」

 

 

 鬼道が各ポジションに作戦を共有し終わったタイミングでそれぞれがピッチに足を踏み入れる。

 

 

「柊弥先輩!」

 

「どうした?」

 

「ファイトです!!」

 

「……おう!」

 

 

 春奈からの激励を背に受け俺も皆に続く。最前線は俺と修也。その後ろに吹雪とヒロトが続き、中盤は鬼道を中心に緑川、風丸。そして後ろに構えるのが壁山、綱海、土方、守。

 

 

「さて、勝つぞ」

 

 

 試合開始のホイッスルが鳴り響く。修也のキックオフパスを受け取り、一気に加速する。早速一人が俺の正面からタックルを仕掛けに来る。さて、まずは力比べしてみるか。

 

 

「お手並み拝見だ、イナズマジャパン!!」

 

「らァッ!!」

 

 

 衝突の瞬間、鈍い音が俺達の身体から鳴り響く。筋肉と筋肉がギチギチと削り合い、相応の負荷が襲い掛かる。流石だ……聞いてた話に違わないフィジカル、気を抜いたらその瞬間に持ってかれるな。けどな──

 

 

「──こっちも伊達に鍛えてねえ!!」

 

「うおッ!?コイツ急に……!!」

 

 

 ぶつかりあってる状態から一瞬姿勢を下げて力を溜める。そのまま思い切り地面を踏み抜くイメージで加速。加速はそのままパワーに変換され、相手を押し退ける。

 

 

『加賀美抜いたァ!!開幕の流れを手にしたのはイナズマジャパンだ!!』

 

「ヒロト!」

 

「ああ!」

 

 

 ヒロトにパスを出して俺はすぐシュートを狙える位置にポジショニング。スライディングを仕掛けられたヒロトだったが、そのまま体勢を崩されることなく1歩踏み出して突破する。鬼道や他の皆もデュエルに勝利し、次々ボールを繋ぐ。

 

 

「豪炎寺!!」

 

 

 鬼道から修也へとパスが渡る。それはつまりボールが最前線に到着したと同義。もしボールを奪われた時にすぐ位置を下げられるように待機していたが、そのタイミングで俺も前に出る。修也からのパスコースを常に確保することでシュートチャンスを増やしにいく。

 

 

「させねえ!」

 

(寄せが早い、それなら──)

 

 

 しかし直ぐに俺と修也のパスコースを潰すためにマークに着いてくる。勿論、そんなパターンは織り込み済みだ。無理やり突破してコースを作り直すのも良いが、ここは囮でいい。抜け出しを匂わせながら相手を揺さぶり、マークに来た1人を俺に張り付けつつ他のヤツらの注意も僅かながらに向けさせる。

 

 

 そうすれば当然、俺以外のヤツらが自由に動ける。

 

 

「吹雪!」

 

「しまった……!」

 

ウルフレジェンドォォ!!

 

 

 直後、吹雪が左サイドから抜け出してきてパスを受け取る。相手DFがそれに気付いた時にはもう遅い。咆哮と共に放たれたウルフレジェンドが相手のゴールへと襲い掛かる。

 

 

「させるかァ!!」

 

「はァァッ!!」

 

 

 間一髪で反応した相手のキャプテン、カイルが身体でシュートを止めにいく。吹雪のシュートは本物。身体をぶつけた程度じゃ威力は殺しきれない。だが威力を削ることには成功した。やや逸れたシュートをキーパーがパンチングで弾き、俺達のファーストアタックは凌がれる。

 

 

「点にはならなかったが……流れは悪くない」

 

「ああ。コーナーキックは誰が蹴る?」

 

「俺にやらせてくれ」

 

 

 誰が蹴るかを相談していると、後ろから風丸が名乗りを上げて来る。俺かヒロトがやろうと思ってたが、そういうことなら任せてみよう。俺達がコーナーキックを受ける側に回った方が得点の可能性も増えるしな。

 

 

「そうか。じゃあ任せたぜ、風丸」

 

「おう」

 

 

 味方も相手もゴール付近で入り乱れ、ボールが蹴られるのを待つ。心を落ち着けるかのように数回跳ねた風丸は意を決して駆け出す。さて、どこに蹴る……?

 

 

「これが俺の……新必殺技だ!!」

 

 

 何と、風丸は凄まじい高さでボールを蹴り出す。跳んで確保するか?いや間に合わない──

 

 

(──ん?)

 

 

 その時だった。ボールが凄まじい勢いで曲がり始める。何だあの曲がり方、どんな回転掛けたらあんな曲がり方するんだ?いや待てよ、相手のキーパー反応出来てないぞ?

 

 

「おい、マジかよ?」

 

「こ、このォォッ!?」

 

 

 何と、そのままゴールネットが揺らされる。風丸のヤツ、コーナーキックから直接決めやがった。

 

 

『なんと風丸!!コーナーから直接ゴールに叩き込んだ!!イナズマジャパン先制だァ!!!』

 

「お前、いつの間にあんな隠し球を」

 

「自主練の成果ってヤツ──」

 

 

 それだけ言うと風丸は次の瞬間には皆に揉みくちゃにされる。まさかこんな形で先制点になるとは思ってなかったからな……そりゃあ皆盛り上がる。

 

 

「さて……ここからだな」

 

 

 皆強くなってる。屈強なカタール代表に決して当たり負けしてないからな。想定よりもラフなプレーが多いのが懸念点だけど、これなら勝てる。加えて風丸の得点で士気も上がった。

 とはいえ得点までの一連のプレーは完全に俺達が攻めて終わった。相手が攻め、こっちが守りに回った時にどう立ち回ることになるのか……これだけはまだ未知の領域。逆に言えば、そこを制することさえ出来れば勝てる。

 

 

「さあ皆!この調子でいくぞ!」

 

『おう!!』

 

 

 いい加減落ち着いた皆がそれぞれポジションに戻る。相手のキックオフから再開、さてどうなるか……

 

 

「初手から飛ばす……!」

 

「速ッ……なら!」

 

 

 すぐさまボールを奪いに加速すると、相手は強気にタックルを仕掛けてくる。押し負けはしない、だが上手く逸らされボールから距離を離される。そのままパスを出され、受け取った10番がこちら側の中盤へと差し掛かる。

 

 

「邪魔するやつは吹き飛ばす!」

 

「"思う念力岩をも通す"……ってね!」

 

 

 その10番の進行方向に立ち塞がる緑川。相変わらず身体をぶつけに来るが、緑川も負けじとぶつかりにいく。しっかりと勝った緑川はそのままボールを奪って前線へ。

 

 

「行かせるな!!」

 

「おう!!」

 

「緑川くん!!」

 

「ソイツを自由にさせるな!」

 

 

 そんな緑川を抑えるべく2人が向かっていくが吹雪がそのフォローに入る。しかしさっきの吹雪のワンプレーで脅威を感じ取っていたカイルが吹雪への警戒を指示する。

 

 

「ふッ……」

 

「なッ!?」

 

 

 吹雪はその警戒を逆手にとる。スルーされたパスは吹雪の足元を抜け──

 

 

「頼むよ、ヒロトくん」

 

「ああ!」

 

 

 ──ヒロトの元へ。

 

 

流星ブレード!!

 

「くッ──!?」

 

 

 相手のキーパーは反応すら出来なかった。ヒロトが放った流星がゴールへと突き刺さり、湧き上がる歓声はゴールネットだけでなく大気を揺らす。

 

 

「……ふッ」

 

「?」

 

 

 さっきの風丸のようにヒロトは皆に囲まれる。そんな中、それを横目に怪しく笑うビヨンが視界に入った。流れるように2点目を持ってかれて、随分と余裕を感じる。

 

 

「へへっ……」

 

 

 いや、カイルだけじゃない。他のヤツらからも謎の余裕を感じる。一体なんだこの違和感は?強がりじゃない、絶対に何かある。対応出来るように備えておくべきか?

 

 

 

 ーーー

 

 

 

『さあ前半も佳境に差し掛かって参りました!!なおも攻め続けるイナズマジャパン!!デザートライオンは防戦一方か!?』

 

 

 ヒロトの得点から警戒を続けていたが、特に何事もなく試合時間だけが過ぎていく。予想外に備えてポジションを下げ、温存してきたが依然としてこちら側が攻めの姿勢を保っている。もはや前のめりすぎるくらいだ。デザートライオンはギリギリのところでシュートを阻止しているが、中々攻めてこない。接触の多いのは相変わらずだが、皆負けじとぶつかりにいって勝ち越している。

 

 

「緑川!」

 

「くッ……すまない!」

 

「任せろ、カバーする──」

 

『ここで前半終了!!イナズマジャパンリードのままハーフタイムへ突入だ!!』

 

 

 ヒロトからのパスに緑川が追い付けず取りこぼす。緑川の反応が遅れたのもあるが……ヒロトのパスもいつもより荒かったか?とりあえずそのボールを抑えに走り始めたが、その瞬間前半が終わった。

 2-0のリードで前半終了……良い状況のはずなのに、何故か腑に落ちない。何なんだ?この違和感は。

 

 

「はぁッ、前半終了か……!」

 

「よし、2点リードだ……!」

 

「ベンチへ戻るぞ。後半に向けて作戦会議だ」

 

「ああ」

 

 

 それぞれのチームがベンチへと戻っていく。ずっと攻め続けていたからか、皆疲労が目立つ。逆にデザートライオンは余裕が見える。ここでハーフタイムを挟めるのは運が良い。

 

 

「皆良い感じよ!」

 

「よし、後半もこの調子でいこうぜ!!」

 

「あ、ああ!」

 

 

 特に辛くなさそうなのはシュートを撃たれることがなかった守。途中から警戒して消耗を抑えていた俺くらいか。風丸も他の皆より余裕はありそうだが、スプリント回数が多かったからか少し疲れが見える。

 

 

 ……やっぱり何か引っかかる。

 

 

『さあ間もなく後半開始!!どうやらデザートライオンはFWを3人に増やし攻撃的な布陣に切り替える様子!!』

 

 

 ここでの布陣変更。前半は様子見、後半で畳み掛けるタイプのチーム……ってことか?

 

 

『ホイッスルが鳴った!!後半開始です!!』

 

「何を企んでるかは知らないが……好きにはさせねえよ」

 

「ふッ、お前達に用はない!!」

 

 

 開始と同時、相手のFW3人は同時にスタートを切る。さっきより明らかに速い。その上パス回しが鋭くなっている……一瞬の不意を突かれて抜かれた。マズイな、この精度で攻めてくるなら崩されかねない。

 

 

「緑川!チェックだ!!」

 

「はァ、はァ……!任せておけ!」

 

「へッ……!」

 

「ぐああッ!!」

 

 

 鬼道と緑川が相手の10番、ザックを抑えにいく。ザックは先程よりも勢いよく加速。そのまま力強く緑川に当たり、無理やり突破する。アイツ、明らかにギアが上がってる。前半は様子見、というより温存してたのか?

 

 

「詰めろ、土方!綱海!」

 

「遅い!!」

 

「行かせないッス……!」

 

「ここだ!!」

 

 

 ザックはそのままDF3人も掻い潜りシュートを放つ。守は難なくそれを弾くがその顔は驚きに染まっている。

 

 

「何でこんな簡単にペナルティエリア内に入られるんだ……!?」

 

「緑川!おい、緑川!!」

 

 

 その時、誰かが倒れ込む音が響く。緑川だった。倒れた緑川はそのまま立ち上がれない。これは……無理だな。

 

 

「どうしたんだ緑川、こんなに早く息が上がるなんて……」

 

 

 緑川も前半でかなり飛ばしていた。幾ら真面目に走り込みをしていたとはいえ、スタミナは短期間で爆発的に伸びるものでもない。加えてあのラフプレー、あれが効いている。スタミナが切れてくればラフプレーへの耐性も必然的に下がってくる。

 

 

「ずっと特訓を続けてきたツケが回ってきたみたいだ……すまない、皆の足を引っ張って」

 

 

 緑川はそのままベンチに下がり、その枠には栗松が入る。栗松は少し後ろ気味に構え、後衛を補強する役割を担う。

 

 

「早速追加点でやんス!!……え?」

 

 

 栗松が早速ボールを奪い、そのまま駆け上がっていく。攻撃に移るチャンス……だったが、吹雪もヒロトも切り替えが遅れている。一瞬動揺した栗松はその隙を突かれてボールを奪われる。

 

 

「……そういうことか」

 

 

 分かったぞ。コイツらのカラクリが。とにかく流れを切らないと話にならない、まずは止める!

 

 

雷霆万鈞

 

「お前は余裕がありそうだな!」

 

「確かめてみろよ」

 

 

 雷霆万鈞で底上げした状態でザックとぶつかる。いざぶつかってみて分かる、やっぱ前半とは違うな。けど素のフィジカルでは多分同格、雷霆万鈞でのバフがある以上負けはない。ただ──

 

 

「多勢に無勢、ってな!!」

 

「チィッ……!」

 

 

 コイツの言う通りだ。 拮抗状態に陥れば他のヤツらがカバーに来る。出力を上げれば勝てる、と考えれば簡単な話だけどそれは消耗に直結する。全体をカバーする必要が出てきた以上、それはリスキーすぎる。かといって押しきれなきゃこのザマだ……!

 

 

「ザック!!そのまま決めろ!!」

 

「行かせない!!」

 

「フンッ!!」

 

 

 2人がかりで俺を突破したザックはそのままヒロトにマークされるが、リスクを考えないタックルでヒロトを弾き飛ばす。

 

 

「マジディ!!」

 

「させるかァ!!」

 

「おおおおおッ!!」

 

「綱海!!」

 

「ぶっ飛べええええ!!」

 

 

 空中でマジディと綱海が互いにヘディングでボールに触れる。跳ぶのがギリギリだった綱海に対し、マジディは上を取っている。押し込まれ始めた綱海を見て飛び出した守だったが、マジディはそのまま綱海と守ごとボールを押し込む。

 

 

『決めたァァァァァ!!カタール代表デザートライオン、果敢な攻めで1点を取り返した!!』

 

「おい綱海!!大丈夫か!?」

 

「ぐぅ……ッ!」

 

「ここからが俺達のサッカーの始まりだ」

 

 

 倒れ込む綱海に守が駆け寄る。俺も綱海の様子を見に行こうとしたその時、カイルが話しかけてくる。

 

 

「俺達は灼熱の太陽と砂漠のフィールドで育った」

 

「鍛え上げられた身体と無限の体力」

 

「それが俺達の最大の武器!」

 

「昨日今日と特訓しただけの連中に負けるはずがない」

 

 

 語り始めるデザートライオン。

 

 

「お前らのその武器を活かすためにラフプレーでこっちを削ってきた、って訳だ」

 

「ああ、その通り。お前達は砂漠に迷い込んだ旅人も同然、後は息の根が止まるのを待つだけだ」

 

「……へえ。俺が旅人、ねえ」

 

 

 さっきから言わせておけば、随分と得意げに言ってくれる。作戦としては大したもんだ。自分達の強みを存分に活かしての戦略だ、実際それでアイツらはこの1点に繋げてきた。

 

 

 けど、こっちは緑川に綱海。2人傷付けられてんだ。

 

 

「無力な旅人かどうか……その目で確かめてみろ」

 

 

 このまま大人しく引き下がれるかよ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。