Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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皆様から寄せられた評価のおかげで、評価バーの長さが2段階目に突入していました。ありがとうございます。
評価バーG2ですね(激寒)

これからも当小説をよろしくお願いいたします。


第11話 生み出せ、新たな必殺技

「皆!! 分かってるな!?」

 

「「「おお!!!」」」

 

「とうとうフットボールフロンティアが始まるんだ!!」

 

「「「おおおおおおおお!!!」」」

 

 

 放課後のサッカー部の部室は現在大盛り上がりだ。

 昨日の尾刈斗中戦を制し、学校側からフットボールフロンティアの参加が認められたことを受けて、皆狂喜乱舞である。

 ここまで来るのも大変だったなあ……なんかよくわからんヤツら(プロトコル・オメガ)から襲撃されるし、部員は集まらなかったし、帝国にボッコボコにされるし……けどまあ、なんやかんや何とかなったな。

 

 

 何はともあれ、晴れてフットボールフロンティアに出れるわけで。とても嬉しいことには間違いない。そういえば、冬海先生がトーナメントの抽選に行ってたはずだが1回戦は何処と対戦するのだろうか。

 

 

 ちょうど同じ疑問を感じていたらしく、風丸が守に対して訊ねると……

 

 

「対戦相手は────知らないッ!!」

 

「そんな自信満々に言うなよ」

 

 

 守は自信を持って堂々と知らないと言い切った。いや、普通先生に確認しに行ったりするだろ? まあ、守らしいと言えばそれまでか。仕方ないな。

 

 

 

野生(のせ)中ですよ」

 

「野生中?」

 

「野生中は確か……昨年の地区大会決勝で帝国と戦ってますね」

 

 

 冬海先生が部室に来ると同時にその答えを教えてくれる。

 

 

 野生中か。音無さんが教えてくれた通り、帝国のところまで登り詰めるほどの強豪校だ。守は最初からそんなところと戦えるのかと喜んでいるが、本来はどうしようと焦るものだろう。こんなところで弱音を吐いては勝てるものも勝てないのもまた事実だが。

 

 

「大差で初戦敗退なんてことにはならないでくださいね……ああ、それから」

 

「チィーッス! 俺土門 飛鳥(どもん あすか)、一応ディフェンス希望ね」

 

「君もこんな弱小クラブに入りたいだなんて物好きですね」

 

 

 と吐き捨てて冬海先生が去っていく。あの人絶対この部活のこと好きじゃないよな。まあ、部活の顧問では給料出ないらしいし、あっちからすればタダ働きみたいな感じだろうから、一定数そういう人がいるのは仕方ないことか。

 まあそんなことはどうでもいい。先生に連れられて部室に顔を出したのは今日の朝見た顔……校長室の場所を訊ねてきた男だ。サッカー部入部希望だったとは。

 

 

「土門君? 土門君じゃない!」

 

「あれ、秋じゃん! 雷門中だったの」

 

「知り合いか? ……とにかく、歓迎するよ!」

 

 

 守が土門の腕を掴んで振り回す。守に纏わりつかれながらも、土門は口を開いた。

 

 

「でも相手は野生中だろ? ヤツら、瞬発力も機動力も大会屈指さ。とくに高さ勝負には滅法強いんだ」

 

 

 まさに"野生"と言ったところか。土門の野生中に対する評価を聞き、壁山はビビってトイレに行こうと立ち上がるが染岡に喝を入れられ再び座る。

 

 

「大丈夫さ! なんたって俺達には轟一閃、ファイアトルネード、ドラゴンクラッシュ、それにドラゴントルネードがあるじゃないか!」

 

 

 ドラゴントルネード。尾刈斗中との試合にて豪炎寺と染岡が編み出した連携シュートだ。2人のパワーが加算的に乗ったシュートであるため、威力は間違いなく雷門で1番だろう。

 

 

 余談だが、シュートのパワーは豪炎寺>染岡>=俺で、スピードは俺>>豪炎寺、染岡と言った感じだろうか。俺の轟一閃では2人のパワーには及ばないが、スピードに関しては群を抜いている。元々俺がスピード重視のプレイヤーというのもあるだろう。

 

 

 話を戻そう。守は俺達のシュートがあるから大丈夫だ、と言ったが実際は……

 

 

「俺も野生中と戦ったことがあるが、ヤツらは空中戦なら帝国にも匹敵する……あのジャンプ力で上を取られれば、ファイアトルネード、ドラゴントルネードは潰されるだろう」

 

「そんな脚力があるなら、恐らく轟一閃とドラゴンクラッシュもダメだろうな。この2つは撃ち込む前に溜めの動作がある。そこに付け込まれてボールを奪われてしまう可能性が高い」

 

 

 という訳だ。 要約すると、現状俺達の手札では野生中からゴールを奪うことは難しいということ。豪炎寺と俺の意見を聞いて、他のメンバーの表情は暗くなる。

 

 

 だが、突破口ならある。手札がないなら……

 

 

「新、必殺技だ!!」

 

 

 ……言われた。そう、手札がないなら増やせばいいだけだ。ヤツらが抑えきれないような新しいシュートを産み出せばいい。時間は有限だが、やるしかないだろう。

 

 

 

 

「よーしいくぞ!!」

 

 

 何処から借りてきたのか、守は消防隊が使うようなはしご車を持ってきた。いやほんとに何処から借りてきた? そして守ははしご車の最大高度からボールを落とし、下で待機している俺達がジャンプしてそれを空中で蹴る。そんな感じの練習だ。ジャンプ力強化が目的か。

 

 

 しかし、高さを利用したシュートか……豪炎寺のファイアトルネードは10数メートル跳んでいるが、野生中はそれすらも楽々抑えてくるという。とすると、試合までの時間であれを超えるジャンプ力を身につけるというのは無謀な気がしてきたな。他に手はないものか。

 

 

 そうだな……例えば、そもそも相手に溜めの段階で取られないようなシュートとか。イメージとしては、轟一閃のボールが纏う雷の出力をもっと上げて、相手に近寄らせないとかそんな感じだ。

 

 

 ……これ、我ながら結構いい考えな気がしてきたな。よし、試してみるか。

 

 

「守! 俺ちょっと抜けるわ」

 

「おう! どうした?」

 

「別の方法でゴールを奪えないか試してみたい、構わないか?」

 

「いいぞ! 柊弥の新シュート、期待してるぜ!」

 

 

 キャプテン様から了承を得られたので、少し離れたところで1人ボールと向き合う。大前提として、轟一閃の雷は俺がボールに注いだエネルギーが形となって現れたものだ。単純に考えれば、そのエネルギーの量を増やせば雷の出力も上がる……はず。

 

 

「はッ……お、おおおおおおお!?」

 

 

 とにかく限界まで出力を上げてみたら、あまりの強さに自分が吹っ飛ばされた。痛え……帝国のシュートをもろに喰らった時を思い出すな。けど逆に言えばだ。それほどまでに強力なら、ボールを奪おうとしても相手は今の俺みたいに近寄れないはず。

 

 

 よし決めた、これでいこう。何回も練習して自分ではビクともしなくなるまで鍛える。そうすれば一方的に強力なシュートを撃ち込めるようになる。

 

 

「うぼァッ!?」

 

 

 とりあえずもう1回試してみよう。そう思ってボールを放電させたらまたぶっ飛んだ。何回も地面を転がり、止まる頃には離れた場所にいたはずの守達の所にいた。

 

 

「と、柊弥? 生きてるか?」

 

「あ、ああ……何とかな……」

 

 

 皆が心配し、俺を囲んで覗き込んでくる。いや本当に申し訳ない、こっちの練習の腰を折ってしまった。染岡に腕を伸ばしてもらい、よろよろと立ち上がると、こちら側に歩いてくる人物が見えた。

 

 

「よお、精が出るなあ……ん? どうしたんだ、大丈夫か?」

 

「古株さん、どうも……これはお気になさらず」

 

「そ、そうかい……この前の尾刈斗中との試合、良かったなあ……まるで伝説のイナズマイレブンの再来だなあ!」

 

「イナズマイレブン?」

 

 

 古株さんが知らないのか、と意外そうな表情を浮かべる。初耳だな……少し興味が湧いてきた。それは皆も同じだったようで、練習を中断して古株さんの話を聞くことにする。

 

 

 イナズマイレブン。40年前に雷門中に存在した、伝説のサッカー部の呼称のようだ。当時無敗を誇り、フットボールフロンティア優勝目前まで漕ぎ着けたという。そして、そのチームの監督が守のお祖父さん、大介さんらしい。守、お前なんで知らなかった? 

 

 

「よーし、俺も絶対爺ちゃんみたいに、イナズマイレブンになってやる!!」

 

「おいおい、1人でなる気か?」

 

 

 冷やかすようにそう守に言葉を投げかけ、視線を向ける。守はハッとしたような表情で俺達全員を見渡したと思ったら、溢れんばかりの笑みを浮かべる。

 

 

「勿論、みんなでさ!! 俺達はイナズマイレブンみたいになってみせる!!」

 

「「「おう!!!」」」

 

 

 イナズマイレブンかあ……良いな。イナズマイレブンの雷鳴ストライカー、加賀美 柊弥……なんてちょっと言われてみたい。よし、頑張るか。

 

 

 

 

 

---

 

 

 

 

 

「フットボールフロンティアが始まるってのに、新必殺技の"し"の字もないなんてな……諦めるわけじゃないけど、最悪の場合を考えちゃうな」

 

「もし新必殺技が見つかったとしても、練習する時間があるかどうか……厳しいところだな」

 

「まあなんとかなるさ! 雷雷軒で作戦会議しようぜ!」

 

 

 あれから何日か経った。だが、新必殺技完成の予兆は一切見えない。皆が取り組んでいる高さ特化のシュートも、俺の高出力シュートも。もう野生中との試合は目前……困ったものだ。

 

 

 俺、守、豪炎寺、風丸は部活終了後、今後の展望を話しながら帰路に着いていた。その途中で守がラーメン屋、雷雷軒に行こうと言い出したので急遽進路変更し、向かっている最中だ。母さんに外で済ませてくると伝えておかないとな……

 

 

「こんばんはー」

 

「おうボウズ達、帰りか?」

 

 

 店主の響木さんが出迎えてくれる。店の中にはもう1人、新聞に目を落としているお客さんがいた。俺達はその人の邪魔にならないように、少し離れたカウンター席に腰を下ろす。

 

 

「なあ加賀美、お前の必殺シュートはどうだ?」

 

「あれな……力技でボールに触れられるようにはなってきたんだが、どうにも上手く撃ち出せないんだ。やっぱり出力が強すぎるのか……制御出来ない感じ」

 

「加賀美も雲行き怪しいか……困ったな、本当に不味いかもしれない」

 

 

 なんて憂いを語っていると、注文したラーメンと餃子が並ぶ。俺が注文したのは豚骨醤油だ。空腹を掻き立てる良い匂いに耐えかねて、即刻麺を啜る。部活後に食べる飯が1番美味い、異論は認めない。

 

 

 守がイナズマイレブンはどんな必殺技を持っていたのかとボヤく。すると、厨房の響木さんが口を開いた。

 

 

「イナズマイレブンの秘伝書がある」

 

「へえ、秘伝書なんてあるんだ」

 

「なーに書いてあるんだろ」

 

 

 秘伝書ねえ、読んでみたいものだな。そうすれば良いヒントが得られそうなんだけど……って、待て待て。

 

 

「「ええ!? 秘伝書だって!?」」

 

「そんなものが……」

 

「凄技特訓ノートなら俺ん家にあるよ?」

 

「ノートは秘伝書の一部だ……ん? お前、円堂 大介の孫か?」

 

 

 響木さんは守の顔をじっと見つめると、そう訊ねる。守がそうだと返答し、急に上機嫌になったと思ったら、守に調理器具を突きつける。それに驚き、守は後ろに倒れ込む。

 

 

「秘伝書はお前に災いをもたらすかもしれんぞ? それでも見たいか?」

 

「ああ!!」

 

 

 即答だった。脅しに似たその問いかけに、守はは一切怯むことなく答えた。

 

 

「そうか……その秘伝書は、雷門中の理事長室の倉庫に保管されている。探してみろ」

 

「理事長室の倉庫……よし、探してみよう! ありがとうおじさん!!」

 

 

 秘伝書のインパクトのせいで触れなかったが、何故響木さんがそんなこと知っているんだろうか。大介さんの知り合いだったようだし……なにか関係が? 

 

 

 まあいいや。伸びる前にラーメン食べよう。

 

 

 

 

 

---

 

 

 

 

 

「ん……ぐ……だァッ!?」

 

 

 翌日、皆は守を筆頭に理事長室に潜入しに行った。俺は見つかった時が面倒臭そうなので留守番して必殺技の特訓だ。相変わらず雷の威力がバカ高く、自分の身体にもダメージが入るがそこはまあ耐えれば何とかなる。

 問題はそれを撃ち出すことだ。蹴り込むまでは良いのだが、昨日風丸に話した通りあまりの威力に自分でも制御しきれず、明後日の方向に飛んでいくのだ。

 

 

 それに加え、もう1つの問題点が明らかになった。この技、滅茶苦茶に燃費が悪いのである。出力を上げるため、膨大な力を注ぎ込む訳だが、その所為で体力がえげつない程持ってかれるのだ。間違いなく連発できる技ではないし、体力を消費しまくった試合の後半なんかは威力が出せないだろう。

 

 

「八方塞がりかあ……」

 

「柊弥ー! 秘伝書あったぞー!」

 

 

 守達が戻ってきたようだ。その手にはボロボロのノートが握られている。本当にあったんだな、秘伝書。しかも理事長室に。

 

 

 早速部室に入ってその中身を改めてみる。一言で言おう、何が書いてあるのかさっぱり分からない。恐ろしく汚い文字で書き殴られてあるのだ。だが何故だろう、どこか見覚えがある気がする。

 

 

 あ、そうだ。これは確か……

 

 

「読めるぞ? これじいちゃんの字だもん」

 

 

 そう、大介さんのノートに書かれていた文字だ。小さい頃に守が見せてくれたそれと全く同じだった。あの時も俺は読めなかったが……なぜ守は読めたのだろうか。我々はその謎を探るためジャングルの奥地へ赴かない。

 

 

「相手の高さに勝つには……これだ! "イナズマ落とし"!」

 

「へえ、どんな技なんだ?」

 

「1人がビョーンと飛ぶ、もう1人がその上でバーンとなってグルっとなってズバーン!! これがイナズマ落としの極意!」

 

「……はい?」

 

 

 アイキャントアンダースタンド、とでも反応すれば良いのだろうか。擬音のオンパレードで記されたその極意は、到底理解できないものだった。大介さん、ぶっ飛んだ人だったんだな……

 

 

「でもじいちゃんは絶対嘘はつかない!! ここにはちゃんとイナズマ落としの極意が書かれているんだ!!」

 

「とは言っても……なあ?」

 

「まあ……とにかく練習いくか?」

 

 

 一行は解読を諦め、練習に向かった。

 

 

 

 

「今日のメインイベントはこれだ! 相手の凄技を受ける特訓だ!!」

 

 

 他の皆は守考案のタイヤ特訓をしている中、俺と守は豪炎寺に呼ばれて少し外れたところで土を囲んでいた。何でも、豪炎寺がさっきのイナズマ落としについて見当がついたと言うのだ。

 

 

「まず1人が飛んで、それを踏み台にもう1人が高さを稼ぐ。十分な高さに達したところで──」

 

「オーバーヘッドキック、か?」

 

 

 豪炎寺は無言で頷く。

 

 

「豪炎寺……そうだよ、きっとその通りだ!」

 

「なるほどな……そんな不安定な足場でオーバーヘッドができるのは豪炎寺しかいないな。そしてその足場となれるのは……壁山とか?」

 

「そうだな! よーし、やってみよう!!」

 

 

 守は壁山を呼びに行った。壁山はまずジャンプ力を鍛えるところからか? 豪炎寺は……とにかく高所でのオーバーヘッドを安定させる必要があるな。これには土台をやってくれる人が2人程必要だろう。

 

 

 さて、皆頑張ってるんだ……俺も頑張らないとな。

 

 

 

 

---

 

 

 

 

「はあ、はあ……あー、疲れた」

 

「加賀美先輩、大丈夫ですか!?」

 

 

 音無さんがタオルとドリンクを持って駆け寄ってくる。もう日はほぼ沈みかけ、辺りは電灯によって照らされている。何時間練習しただろうか、少なくとも3時間はやったはずだな。

 

 

「ありがとう……中々上手くいかないや。壁山と豪炎寺はどう?」

 

「2人とももうボロボロでした……それに付き合ってるキャプテンに染岡先輩、風丸先輩も」

 

「そっか、じゃあ俺もまだ頑張らないとな」

 

 

 受け取ったものを端に寄せ、ボールを足蹴にする。もう全身クタクタだ……自分でもよくここまでやってると思う。けど、皆がまだ諦めてないなら、俺もやらないとな。

 

 

「もうやめませんか? これ以上は身体に響いちゃいますよ?」

 

「まあね……だけど、俺にも、アイツらにも次の試合の勝利がかかってるからさ、ここで諦めるわけにはいかないんだ」

 

「……分かりました。じゃあ、私もここで見てていいですか?」

 

 

 特に断る理由もないのでそれに頷く。さて、早速再開しよう。少し休憩したおかげで多少は体力にゆとりが出来た。

 

 

 ボールを踏みつけ、エネルギーを注ぐ。少しすると、膨大なエネルギーが雷へと変わり、激しく放電する。そのボールに対してハイキックを叩き込む……が、ボールは俺の意思に反し、真っ直ぐ飛ばずに全然違う方向へと向かっていった。やはり、シュートコースの調整がダメだな……威力は出ても、ゴールに叩き込めないんじゃ意味が無い。

 

 

「あの、1つ良いですか?」

 

「ん? 言ってみて」

 

「両脚で蹴ってみるのはどうですか? 両脚なら片脚よりも踏ん張りが効きますし、コントロールしやすくなるんじゃないかな……って、ごめんなさい! 素人がこんな……」

 

「いや、確かにそうだ」

 

 

 両脚を使う……盲点だった。となると、ドロップキックの要領で撃ち込むのがベストだな。ボールとの距離を空ける必要がある。少しボールを前に蹴り出してみよう。それを釣りに出来れば、寄ってきた相手を一網打尽に出来るかもしれない。

 

 

「よし」

 

「え、本当に……!?」

 

 

 物は試しだ。やってみよう。

 

 

 ボールを踏み付け、エネルギーを注ぎ込む。そして放電が始まる前に軽く前にボールを飛ばす。一定の地点でボールは止まり、その場で激しく放電を始める。……7,8メートルくらいだろうか。これなら助走にも十分だ。

 

 

 脚に力を込め、地面を踏み砕くが如く駆け出す。ボールとの距離が2メートルを切ったくらいで跳び、両脚をボールに叩き付ける。その際、放電に身体が蝕まれ焼けるような痛みが襲うが、今更そんなものに構ってられない。痛みを押し殺し、ボールに対して真っ直ぐに力を込める。ボールから働く抗力によって、身体が後ろに押し返される。

 

 

 着地際、俺が見たのは……極太のレーザーのようなシュートが斜面に突き刺さり、周囲を焦がしている様子だった。

 

 

「───出来た、のか?」

 

「凄い凄い!! ドラゴントルネードにも負けない威力でしたよ!?」

 

 

 音無さんがこちらにはしゃぎながら駆け寄ってくる。ボールは狙った方向に飛んでいった……成功だ、これで必殺シュートとして運用出来るぞ! 

 

 

「ありがとう……音無さんのおかげだ」

 

「私はそんな大層なことしてません。加賀美先輩が凄いんですよ!」

 

 

 謙虚だな。とは言え、音無さんのおかげで最大の問題が解決したことには変わりないので繰り返しお礼を言う。顔を真っ赤にしてもう良いからと言われるまで言い続けた。流石にしつこかったか? 

 

 

「さて、俺はもう少しこのシュートを調整するからさ、もう大丈夫だよ」

 

「最後までとことん付き合いますよ、先輩!」

 

 

 それは心強い。よし、あともうひと踏ん張りしてみるか! 

 

 

 

 

 

「おーい、そっちはどうだ?」

 

「守か。完成したぜ……新必殺技!」

 

「おお! 流石柊弥だ! こっちも何とかなったし、豪炎寺も良い感じみたいだ!」

 

 

 壁山はジャンプ力を身につけ、豪炎寺はオーバーヘッドの形を見事仕上げてみせたらしい。加えて俺の新必殺技。これなら、野生中にも勝てるんじゃないか? 

 

 

「よーし! 野生中との試合まであと少し! 仕上げていこうぜ!!」

 

「そうだな!」

 

 

 少し前までは心配しか無かったが、守の言っていた通り何とかなった。野生中との試合まではあともう少し。絶対に勝つ。

 そう意気込んだところで今日は解散。時刻はもう7時を回ろうかというところだ。もう全身が鉛のように重くて仕方ない……帰って夕飯と風呂を済ませたら速攻で寝よう、そうしよう。

 

 

 汗を拭き、着替えを済ませて帰りの準備は万端。さあ帰ろう。

 

 

「加賀美先輩、良かったら一緒に帰りませんか……?」

 

「ん? もちろんいいよ」

 

 

 鉄塔広場の階段を降りたところで、音無さんに声を掛けられる。こんな暗い中、歳下の女子を1人で帰らせるわけにもいかないし……良いか。男女が2人で帰っているというシチュエーションに危機感を感じなくもないが。

 

 

「おーい柊弥、帰ろうぜ!」

 

「円堂君、今日は私と帰ろうか!」

 

「へ? お、おい!」

 

 

 守がそう声を掛けてきた。じゃあ3人で帰ろうか……と返事をしようとした矢先、秋が守の腕を引っ張って行ってしまった。よく分からないが……まあいいか。

 

 

「じゃあ……帰ろうか?」

 

「は、はい!」

 

 

 そうして音無さんと2人で帰路に着いた。サッカーの話、学校の話、趣味の話……色々な話をした。異性とこうして談笑しながら帰宅するなんて初めてだからか、少し恥ずかしくも楽しかった。

 ……おかしい、練習中に音無さんと話をしていた時はこんなに言葉が詰まっただろうか。

 

 

「あ、私の家ここです……わざわざありがとうございました!」

 

「気にすることないよ。じゃあ、また明日」

 

「はい! おやすみなさい!」

 

 

 そう言って音無さんは手を振り、家の中へ入っていった。それを見届け、俺も自分の家を目指して歩き出す。

 

 

「ただいま」

「お帰り、ご飯出来てるわよ」

 

 

 家に着いて、自分の部屋に荷物を降ろしてもずっと頭に残っていたのは、別れ際の音無さんの笑顔だった。




恋愛描写難しい!!解散!!
次回は野生中戦です。多分また1話に収まるかな・・・?
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