Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第13話 悔しさは最大のバネ

 野生中との試合から何日か経った。俺達は次の御影専農(みかげせんのう)中との試合に向けて、更に練習に励んでいた……のだが。

 

 

「なんか最近、ギャラリー多くないッスか?」

 

「もしかして……遂に俺達にもファンが出来たのか?」

 

 

 この一連の原因は、俺達が河川敷で練習をしている際に、それを見学しているギャラリーの急激な増加だ。少し前までは通りすがったサッカー少年やら散歩中のお年寄りくらいしかいなかったのが、今となっては他校の制服に身を包んだ人達までいる。

 

 

 風丸はそれらをファンと称したが、実際のところは違うだろう。俺がそう思うのは、彼らの手元に用意されたカメラやメモ帳といった記録道具。やはり、間違いない。

 

 

「あれは半分以上他校の視察だ。俺達がここで呑気に練習してるのをいいことに、俺達の情報を手当り次第集めようとしているんだよ」

 

「そんな! てことは、俺達のファンじゃ……」

 

「ないだろうな」

 

 

 そう断言すると、ガックリという擬音が聞こえてきそうなくらいに目に見えて落ち込んでいる。正確にはひと握りくらいはいるかもしれないが……まあ変な希望は抱かせない方が良いだろう。

 

 

 まあそんなことはどうでもいい。練習風景が他校に筒抜け……これはかなり問題だ。普段から学校のグラウンドが使えればいいが、生憎うちの学校は他の部活とローテーション制。学校の外で練習する他にない。

 とはいえ、これを続けていればこちらの情報は全て把握されるわけで。必殺技のデータなんて取られたらたまったものじゃない……よし、仕方ないか。

 

 

「皆聞いてくれ。今後河川敷での練習の時は必殺技の使用を禁止にする。あくまで基礎能力の向上に努めるんだ」

 

「でもよ加賀美、必殺技を磨かねえとこれから勝てないぜ?」

 

「仕方ないさ。その磨いた必殺技が相手に知れ渡ってるんじゃ、元も子もないだろう?」

 

「加賀美君の言う通りよ」

 

 

 俺達の会話に突如として割り込む声。聞こえたきた方向に目線を向けると、我らが新マネージャー、夏未がこちらに降りてきていた。

 

 

「確かにそうかもしれないけどさあ……そうだ!! 誰にもみられない練習場で必殺技の練習をしよう!!」

 

「バカ、そんなのどこにあるんだよ」

 

「あ、確かに」

 

 

 守のその一言で全員呆れたようなため息を着く。

 

 

 ……練習場か。確かに、グラウンドの他にそんな施設があれば良いが……そんな都合のいいものに心当たりはない。

 

 

 ふと視線を傾けると、夏未が考え込むような表情をしていた。もしかして、何か思うところがあったりするのだろうか? 本当にあるなら、そのうち何かしらの報告をしてくれることだろう。今は俺達でやれることをやらなきゃな。

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

 翌日もギャラリーは所狭しと並び、こちらを眺めていた。正直な話、必殺技を抜きにした練習もあまり見られたくはない。俺達の主な連携がバレるかもしれない。そうすれば最悪の場合、こちらのやりたいことは何も出来ず、封殺されてしまう可能性があるからだ。

 

 

「今日も来てるなあ……」

 

「グラウンドが使えればいいけど、そうもいかないしな」

 

「……ん? おい、あれ見ろよ! なんか来たぞ!」

 

 

 土門が指さした方向を見ると、重トラックが2台こちらへやってくる。停車したかと思うと、荷台が展開され、中からは高そうなコンピュータやレーダー、カメラなどが顔を出す。随分と腰が入った偵察だことで。ふと、忙しそうに指示を出している男に目がいった。あれは確か……

 

 

「次の対戦相手です!」

 

「やっぱりか。御影専農……キャプテンの杉森と、エースの下鶴だな」

 

「その通りです、これ見てください」

 

 

 音無さんが小さなノートパソコンを開いて見せてくれる。そこには、各学校の選手とそのポジション、チームの特徴なんかが見やすく整理されている。凄いな……こんなにわかりやすいデータベースを構築するなんて。

 

 

「徹底的に観察するつもりか……やな感じだな」

 

「気にする事はないさ、さあシュート練習からいこう」

 

 

 ぼやく染岡を宥めるようにして練習の指示をする豪炎寺。まあ、あんなに露骨にやられたら良い気分はしないだろうな。

 

 

 

 

「ナイスシュート風丸!! 次、影野!!」

 

 

 予定通り、必殺技を一切封印して基礎に重きを置いた練習が進んでいく。最初のシュート練習が終盤に差し掛かった時、事件は起きた。なんと御影専農の2人が練習中のグラウンドに入ってきたのだ。これには守も憤慨、練習を中断して抗議しに行く。

 

 

「御影専農中のキャプテンだよな? 練習中に入ってこないでくれよ!!」

 

「何故必殺技の練習を隠す」

 

「今更隠しても無駄だ、既に我々は君達全員の能力を解析している」

 

 

 杉森と下鶴は淡々とそう告げる。ヤツら曰く、俺達の評価はDマイナス。100%御影専農には勝てないそうだ。

 

 

「勝負はやってみなくちゃわからないだろ?」

 

「勝負? これはただの害虫駆除作業だ」

 

「……今なんて言った」

 

 

 口でそう言うよりも早く身体が動いていた。

 

 

害虫駆除作業と言ったんだ」

 

「人様の練習中にズカズカと入り込んできた挙句、害虫呼ばわり? 随分な言い草だなオイ。訂正しろよ」

 

「我々は事実を述べたまでだ」

 

 

 この野郎……ここまで来ると怒り通り越して呆れる。言われっぱなしも癪だ、とことんやってやろう……と思ったが、肩に手が置かれたのに気付く。守の手だ。何故か、俺の背後からはメラメラと燃えたぎる炎のような熱が伝わってきた。比喩ではない。恐る恐る振り返ると、文字通り守の全身からは炎が立ち上っていた。これは……かなりキレてるやつだ。

 

 

「もう絶対に許さねぇ!! 今すぐ決闘だ!!」

 

「「「ええ!?」」」

 

 

 皆後ろではいきり立っていたが、守がそう言うと揃って驚きの声を上げる。必殺技を見せることに疑問を抱いたらしいが、俺は構わない。こんな舐め腐ったヤツらには分からせないと気が収まらないからな。

 守が指定したのは互いにシュートを1本ずつ撃ち合う形式だ。相手側はやる必要が無いと言い切るが、守は俺達の気持ちが納得出来ない、言葉だけじゃなく実際にどうなのか証明しろと半ば無理やり漕ぎ着けた。相手は杉森が止め、下鶴が撃つ。こっちは守が止め、俺が撃つ。見てろ……目にもの見せてやる。

 

 

「よし、こい!!」

 

「始める」

 

 

 やる気に満ちた守とは裏腹に、下鶴は機械のように感情の籠ってない声で開始を告げる。センターサークルからドリブルで上がってくる下鶴。ボールを地面に固定し、急に止まった。何をするつもりか……と思ったら、脚を上げ、そのままボールの側面を踏み付けた。

 

 

 俺達の間に動揺が走る。なぜなら、下鶴のその動きに見覚えがあったからだ。いや、俺に至っては見覚えがあったなんてレベルじゃない……

 

 

 あれは、()()()()()()

 

 

轟一閃! 

 

 

 回転と共に帯電したボールが一際激しく輝くと、1歩右脚を引いて腰を捻った状態から、一瞬でボールに対して脚を振り抜く。辺りには雷が落ちたような音が轟く。

 

 

「なっ……熱血パンチ!! 

 

 

 反応が遅れた守は、予備動作無しで繰り出せる熱血パンチで応戦するが、シュートに触れた瞬間にパンチが弾かれ、ゴールには雷が突き刺さった。俺達のことは分析した……とは言っていたが、まさか必殺技までコピーしていたなんて誰が考えていただろうか。実際、俺が1番驚いている。あれは、轟一閃は俺の必殺シュートだ。

 

 

「柊弥……」

 

「決めてくる」

 

「おう……頼んだ!!」

 

 

 申し訳なさそうにしている守からボールを受け取り、センターサークルに着く。視線の先には、ユニフォームに身を包んだ杉森。本当はあの必殺技を使おうと思っていたが、あんなものを見せられては引き下がれない。俺も轟一閃で勝負だ。轟一閃は俺のシュートだと、目に物見せてやる……! 

 

 

轟⋯一閃ッ!! 

 

 

 身体に染み付いた一連の動作は流れるように繰り出され、雷を従えたシュートが閃く。空気を切り裂きながら、何よりも早く、力強くゴールへと向かって行った。

 

 

シュートポケット!! 

 

 

 それに対して、杉森は自分を中心にエネルギーのバリアのようなものを展開する。シュートがそれに触れると、徐々にその勢いが殺されていき、杉森の手に収まる頃には雷は完全に殺されていた。

 

 

「証明は済んだ」

 

「……」

 

 

 言葉は出なかった。杉森ら俺の目の前にボールを転がし、下鶴と共に去っていく。その背中を見送った皆の間には唖然とした空気が広がる。轟一閃が相手に盗まれていたことに対してか、オリジナルの轟一閃が止められたことに対してか、あるいはその両方か。

 気づけば俺は、力の限り歯を食いしばり、拳を握りしめていた。血が出てもその力を緩めることは無かった、否、緩めなかった。今胸の内に渦巻くこの感情に、これ以外の向き合い方が思い付かなかったから。

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

「よし皆、今日は色々あったけどまた明日から練習頑張ろう!」

 

 

 守のその一声で、皆はそれぞれ帰路に着く。御影専農が帰って行ったあの後、予定通り数時間の練習に取り組んだ。悔しさをそこで紛らわそうと思ったが、ダメだった。

 今俺が感じているのは悔しさ、というよりも自分への憤り。俺のコピーはシュートを決めたのに、俺自身が決められなかったこともそうだが、何より皆が馬鹿にされたことを覆せなかった自分の無力が何より腹立たしい。

 

 

「柊弥、帰らないのか?」

 

「ああ、もう少しやっていくよ」

 

「……なあ、もしシュート練習するならさ、俺に受けさせてくれないか?」

 

 

 守がそう提案してくる。そうか、あの勝負で負けたのは俺だけじゃなくて守もだ。守も俺と同じように思うことがあるんだろう。俺はその提案を一つ返事で了承した。

 

 

「よし、来い!!」

 

「いくぞ!! 轟一閃ッ!! 

 

 

 1本目から遠慮なく全力の轟一閃を撃ち込む。それを守は止めにかかる。時にはしっかり止め、時にはゴールを許し。何本も何本もそれは繰り返された。

 

 

「悔しいなあ守!!あんなヤツらに負けちまって!!」

 

「ああ!悔しくて悔しくて仕方ない!!」

 

「じゃあ、もっと強くなるしかねえよなッ!」

 

「おう!もっともっとだッ!!」

 

 

ーーー

 

 

 1時間くらいが経っただろうか。流石に身体が限界を迎えた俺と守は、芝生に倒れ込むように身体を預けた。 練習が終わった時に感じていたモヤモヤ感は、既に霧となって消えていた。

 

 

「この1時間位で、進化したんじゃないか? お前の轟一閃」

 

「そんな気がする……人間悔しい時が1番成長出来るもんだな」

 

「へへっ、そうだな……」

 

 

 しばしの間沈黙が流れる。月明かりが俺達2人を照らし、昼間より冷やされた風が2人の間を駆け抜ける。やがて起き上がり、俺は守に宣言した。

 

 

「次の試合、俺は必ずアイツらにリベンジする。このままじゃ終われないからな」

 

「おう! 頼りにしてるぜ、副キャプテン!」

 

 

 守と拳を突き合わせる。そうと決まれば、明日からまた特訓だ。

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

 次の日の部活。俺達は夏未に呼び出され、校舎から離れた所にやって来ていた。目の前には年季の入った扉が。目金曰く、これは七不思議のひとつ"開かずの扉"とか言うらしい。昔ここで生徒が姿を消したという怪談話に皆震え上がる。平静を保っているのは俺と豪炎寺くらいだ。実際豪炎寺も内心震えていたとかだったら面白いけどな。

 

 

 やがて、その開かずの扉が重々しく開かれる。錆び付いているせいか開けられる際に扉からなる甲高い音が、より一層皆の恐怖を煽る。開かずの扉、開いてますけど? 

 その扉が開いた奥には、なんとかつて行方不明になった生徒が……!というわけでもなく、俺達を呼び出した張本人である夏未がいた。皆の顔に安堵が浮かぶ。魂が抜けた壁山を除いて。

 

 

「おい戻ってこい壁山、ショック死には早いぞ」

 

「はっ!危なかったッス⋯」

 

 

 夏未に入るよう促され、地下への階段を降りていくと、そこには広大な空間が広がっていた。うちの学校の地下にこんな場所があったのか……

 

 

「なあ夏未、ここは一体?」

 

「ここはかつて伝説のイナズマイレブンが使っていた修練場、その名もイナビカリ修練場よ」

 

 

 夏未曰く、偶然見つけたらしい。必殺技の練習のためにリフォームもしてくれたらしく、それを俺達に使わせてくれるそうだ。これは感謝してもしきれないな。早速練習開始だ。

 どうやら入口の扉はタイマーロックになっているようで、設定された時間乗り切らないとダメらしい。逃げ道なしというわけだ。設定された時間は9999秒。設定できる限界だ。複数の設備があるため、それぞれ場所を割り振って練習を始める。

 

 

 この時の俺達は知らなかった。こんなところで地獄を見ることになるとは。

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

「死ぬ……マジで死ぬ……」

 

 

 人は頑張りすぎで死ぬことは無い。なんて言った昔の人は今すぐ俺達の前に出てきて欲しい。イナビカリ修練場にぶち込んでやるから。 設定された時間を乗り切り、扉が開かれると全員ゾンビのように地を這って外に出る。それを見た秋と音無さんは悲鳴をあげてどこかへ行ってしまった。まあその後すぐドリンクならなんやらを持ってきてくれたのだが。

 

 

 修練場の中には、サッカーボールを次々発射するガトリングガン。少しでも止まったら後ろの人にぶつかる巨大ルーレット。走らなければ後ろの車に轢かれる動く床。当たったら存在を消されそうなレーザー銃。他にも人を殺す為に作ったんじゃないかとする思える設備が選り取りみどりだった。

 

 

「元気だせ皆……あの伝説のイナズマイレブンと同じ特訓を乗り越えたんだ」

 

「そうだな……この練習は必ず力になる」

 

「よし、試合まで1週間毎日続けるぞ!」

 

「「「おう……」」」

 

 

 全員声に覇気の欠片もなかった。とりあえず、今日はもう休もう、死ぬから。

 

 

 

 

 ──-

 

 

 

 

「これ、サッカー場か……?」

「アンテナがあろうがなかろうが関係ないさ、いくぞ!」

 

 

 イナビカリ修練場での特訓を開始してから1週間が経った。

 断言しよう、この1週間は人生で1番辛く厳しい1週間だった。それと同時に、1番成長できた1週間でもあった。

 

 

「俺ら、凄い特訓乗り越えたよな」

「ああ。特に加賀美なんて、1週間前とは別人みたいに強くなってたよな」

 

 

 半田と染岡がそんな会話をしていた。

 染岡が言った通り、俺はこの1週間で見違えるほどに成長した実感がある。

 修練場の中からは基本時間が経つまで出れなかったが、多少の休憩時間は確保出来た。

 俺は皆が休んでいた間も1人で黙々と特訓していたのだ。

 全メニューをぶっ通しでやり遂げた時はさすがに死ぬかと思ったけどな。

 

 

 まあなんやかんやあったが、全ては今日この日の為だ。

 前回受けた屈辱を何としてでも晴らす。その為に血反吐を吐くような特訓を乗り越えたんだ。

 覚悟しろよ御影専農……

 

 

 

 

「ちょっとトイレ行ってくるわ」

「おう、試合までに戻れよ」

 

 

 控え室でユニフォームに着替え、試合の準備をあらかた終えたので最後にトイレを済ませるために廊下に出る。

 廊下に出てすぐだった。進行方向の曲がり角から杉森が顔を見せた。

 

 

「……君か」

「よう。前の借りを返しに来たぞ」

「無駄だ。君達が今日勝つ確率は0%と決まっている」

「へえ……まあ、試合の中で確かめてみろよ」

 

 

 杉森は何も言わずこちらへ向かって歩いてくる。あっちにある御影専農の控え室に戻るつもりだったのだろう。

 すれ違い際、杉森にこう告げる。

 

 

「データだけじゃ測れない、本当のサッカーを教えてやるよ」




次回、柊弥が暴れます
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