Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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いつか10000文字を超えるときが来るのだろうか・・・

海苔巻さん、誤字報告ありがとうございます


第20話 再び轟け雷よ

「がはッ!!??」

 

 

 突如として腹部に物理的な衝撃が走る。

 胸には炎を纏ったサッカーボールが叩きつけられており、何の準備もしていなかった俺は為す術なく弾き飛ばされる。

 肺の中に溜め込まれていた空気は全て外に押し出され、酸素を求めて脳が急いで呼吸を命令する。

 

 

 5,6メートルほど転がってようやく止まった俺の身体は、仰向けになって起き上がれなかった。

 何だ、一体何が起きたか分からない。

 

 

 俺は響木監督に選手交代してもらおうと思って動こうとした。その瞬間に、腹にボールが飛んできた。

 誰がこれをやったのか……なんて考えるまでもなかった。

 あんなに熱いシュートを撃ってくるのは──

 

 

「何してんだよ、豪炎寺!!」

 

 

 何とか身体を起こして視線を上げると、目の前には鋭い目線でこちらを見下ろしている豪炎寺の姿が。

 守が豪炎寺の行動に対し大声を上げるが、豪炎寺の目は揺るがない。

 

 

 少ししゃがみ込んだと思ったら、唐突に胸ぐらを掴まれて持ち上げられる。

 そして豪炎寺は至近距離で真っ直ぐに俺を見つめ、淡々とこう告げる。

 

 

「今のお前に、サッカーをする資格はない」

 

 

 ああ、その通りだよ豪炎寺。そんなこと俺も自分で分かっているんだよ。

 だから今から言いに行くところだったんだ、邪魔をしないでくれ。

 

 

「俺をサッカーに引き戻してくれたお前は!! あんなプレーは絶対にしない!! 何かに気を取られて調子を出せないなんて醜態を晒すようなヤツじゃない!!」

「豪、炎寺」

 

 

 豪炎寺が怒って声を荒らげているところを、俺は初めて見た。

 胸ぐらを掴む力はより強くなり、俺を見るその目付きはより鋭くなっている。

 俺は豪炎寺にここまでさせるほど・・・

 

 

「それが、お前のやりたいサッカーなのか……?」

 

 

 先程とは打って変わって、弱々しい声で豪炎寺はそう訊ねる。

 俺の、やりたいサッカー……

 

 

「答えろッ!! 加賀美 柊弥ッ!!」

「───違うッッ!!」

 

 

 気付いた時には、声を荒らげ、胸ぐらを掴む豪炎寺の手を握り締めていた。

 骨を折ってしまうのではないかというほどに強く、力強く。

 だが、それに対して豪炎寺は嫌そうな顔はせず、満足そうに笑った。

 迷いは晴れた。

 

 

「もう一度轟いてみせろ、加賀美」

「……応ッ!!」

 

 

 俺は、腹から声を絞り出して豪炎寺に応えた。

 それを聞いて豪炎寺は俺から手を離し、片手に持っていたタオルを俺に差し出し、俺はそれを受け取って汗を拭う。

 そして2人で皆の円に混ざり、作戦会議に加わった。

 

 

 俺はもう大丈夫だ。

 試合の外の事情を考えるよりも、目の前の敵に全力でぶつかる。

 それが1人のサッカープレイヤーとしての礼儀というもの。手を抜くなど相手に対する侮辱に他ならない。

 だから、どうなっても恨みっこなしだ。

 

 

「後半が始まったらすぐに攻め上がろう。俺が必ず1点奪い返してみせる」

「ああ! 任せたぜ!」

 

 

 俺の宣言に皆は信頼を寄せてくれる。

 仲間にここまで頼ってもらってるんだ、その信頼に応える義務が俺にはある。

 後半からは俺の全力サッカーで道を切り開いてやる。

 

 

「柊弥先輩、もう大丈夫ですよね?」

「心配かけたな。春奈も、大丈夫なんだな?」

「はい! ……だから、柊弥先輩も頑張ってください!」

 

 

 春奈の笑顔に親指を立てて返事する。

 春奈だって苦しさを、壁を乗り越えた。見習って俺も壁の1つや2つ超えていかなければ。

 

 

 ふと胸元に手を伸ばすと、硬い感触がある。父さんから貰ったネックレスだ。

 これからの勝利をこのネックレスに誓おう。父さん、俺に力を貸してくれ。

 

 

 そして視線を前に戻すと、そこには今まで一緒に戦ってきた大切で、心強い仲間達。

 

 

「よし、皆いくぞ!!」

「おう!!」

「やってやるでヤンス!!」

「絶対勝つぞ!!」

 

 

 気合十分。勝ちに行くぞ。

 

 

 ポジションについて、前に待ち構える帝国イレブンに目線を向ける。

 相手にとって不足なしだ。さっきまでの憂鬱が嘘みたいにボールに触りたい。

 さあ、改めて勝負だ……鬼道、帝国学園!! 

 

 

『さあ両チームがポジションにつきました! 雷門は帝国に2点のリードを許し、かなり苦しい状況でしょう。ここからどう巻き返すのか、目が離せません!!』

 

 

 そして後半開始のホイッスルが鳴った。

 佐久間がボールを持って走り出すが、すぐさまその行く手を塞ぐ。

 パスコースは皆が潰してくれている。

 自力で俺を振りほどくしか無くなった佐久間が一瞬戸惑うが、その隙に付け込んでボールを奪い取る。

 

 

 豪炎寺と染岡と共に並んで帝国ゴールへと切り込んでいく。

 鬼道を中心として帝国が俺達からボールを奪わんと次々襲いかかるが、自力で躱し、時には仲間を頼り、あっという間にゴール前へと辿り着く。

 

 

 さあ、リベンジといこうか源田。

 

 

「───ォォォォォオオオオ!!!」

 

 

 ボールを踏み抜き、交差させた腕を開くと共に大きく天を仰ぎ咆哮。

 それに応じて俺の身体から溢れたエネルギーが次々にボールへと注ぎ込まれる。

 それがボールを中心に巨大な球体を形作ったところで、収まりきらないエネルギーが雷となって辺りに迸る。

 

 

 これはかなり消費が激しい。だがそんなこと関係ない。

 今ここで全力を尽くし、何としてでも1点奪い取る! 

 喰らえ、これが俺の全身全霊、全力の一撃!! 

 

 

ライトニングブラスタァァアア!! 

 

 

 喉がはち切れんばかりの大声でその名を叫び、両脚で雷の塊へと脚を突き刺す。

 すると、俺の声よりも遥かに大きな轟音が響き、極太の雷が全てを焼き尽くさんと放たれる。

 少しでも威力を弱めようと雷に立ち向かった帝国DF陣は、ボールに触れる前に吹き飛ばされる。

 

 

 それを見た源田は、一切怯むどころか獰猛な笑みを浮かべて拳に力を溜め、それを力強く叩き付ける。

 地を裂き、吹き出すようにしてそれは姿を現す。

 

 

パワーシールドォォ!! 

 

 

 今日見せたどれよりも大きなパワーシールドが展開される。

 が、万物を撃ち砕く強大な雷は、そんなものに屈することはなく、一瞬にしてそれを呑み込んだ。

 光が晴れる頃には、ゴールネットを焦がし、黒い煙を挙げながらラインの内側を転がるボールがそこにあった。

 

 

『ゴオォォォル!!! 後半開始早々、加賀美を中心とした雷門FW陣が攻め上がり、誰も破ることのなかった源田の守りを打ち破ったァァァァ!!』

 

 

 ガッツポーズを掲げる。このゴールでピッチ内もベンチも観客も、雷門に関わる全ての人間が活気付く。

 まずは1点、返したぞ。

 

 

 帝国の方を振り返ってみると、悔しそうな素振りこそすれどその闘志は一切衰えてはいなかった。

 まだまだこれからだ。もう1点奪い取ってやる。

 

 

「よし、まだまだ攻めるぞ!!」

 

 

 帝国ボールでキックオフ。

 すぐさまボールを奪いにかかるも、やはりそう簡単に譲ってはくれない。

 こちらがどれだけ策を弄しても、それ以上のゲームメイクを鬼道はこなしてみせる。流石"天才ゲームメイカー"だ。

 

 

 策で勝てないなら、とにかくぶつかりに行くしかない。

 片っ端からプレスをかけにいくが、あともう少しというところで避けられてしまう。

 そしてとうとうゴール近くまでの侵入を許してしまう。

 だが寺門は抑えている、皇帝ペンギン2号は使えないはずだ。

 

 

「「ツインブースト!! 」」

 

 

 佐久間と鬼道の連携シュートが放たれる。

 先程ゴッドハンドで守はこれを止めたが、今回はゴッドハンドの動作に移る様子がない。

 熱血パンチでは恐らく止められないはず、一体どうするつもりだ? 

 

 

「はぁッ!!」

 

 

 ボールに拳を叩きつけた。やはり熱血パンチなのか? 

 いや違う。

 守は目にも止まらぬ連続パンチをボールに打ち込み続け、次第にボールの勢いは殺されていく。

 守のやつ、この土壇場で新必殺技を編み出しやがった。

 

 

「いけェ!!」

 

 

 守が止めたこのボール、無駄にはしない。

 鬼道が前線に上がった影響で、守備の連携が少し緩くなっているその隙をついて再び俺達は攻め上がる。

 大きく弾かれたボールを受け取り、再び帝国ゴールへと攻め上がる。

 

 

アースクエイク!! 

「染岡ァ!」

 

 

 大野が高く飛び上がり、その体躯を利用して地面を揺らす。

 それでバランスを崩す前に、俺は染岡にボールを託す。

 俺は振動に脚を奪われ、その場に崩れ落ちるもボールは繋いだ。視線の先には2人でゴールへと迫る染岡と、その後ろを追う豪炎寺。

 

 

「決めるぜ! ドラゴォォォン!! 

「おう! トルネェェェィド!! 

 

 

 染岡が空高く放ったドラゴンクラッシュに、豪炎寺がファイアトルネードを叩き込む。

 猛火と共に龍がゴールへと飛び込んでいく。

 

 

「もうゴールは割らせん!! フルパワーシールドッッ!! 

 

 

 源田はまだ奥の手を隠していたらしい。

 パワーシールドの何倍も強大で、広くまで展開する衝撃波の壁がゴールを護る。

 パワーシールドを突破することも叶わなかったドラゴントルネードは、フルパワーシールドの前ではより簡単に抑え込まれてしまった。

 

 

 あれを破れるのは恐らく万全の状態のライトニングブラスターのみ。

 だがさっき1発撃ったせいでかなり体力が持っていかれている上、仮にもう1本撃ったとなればもうこの試合ではまともに動けないだろう。

 つまり、現状フルパワーシールドを破れる手段は無い。

 

 

 もう1つ秘策があるが、あれは未完成のまま終わってしまった。この土壇場で試せるかと聞かれたらリスクの方が大きいと言わざるを得ない。

 ならここで終わりか? そんなわけないだろ。

 方法が無いなら、新しく作ってしまえばいい。俺は既に突破口を見つけている。

 

 

「豪炎寺、染岡!! もう1本だ!!」

「おう!!」

「分かった!!」

 

 

 弾かれたボールは成神の元へと飛んでいくが、そこに走り込んできていた半田がヘディングでそれを前へ弾く。

 それに一斉に群がるが、誰よりも早く俺がボールを奪い取り、染岡へすぐさま渡す。

 染岡は脚を振りかぶり、豪炎寺は空高くへ炎を纏って飛び上がる。

 

 

「「うォォォォオオオオ!!」」

 

 

 再び染岡は蒼龍を使役し、豪炎寺は炎を吹き込む。

 時間を空けず再び姿を現した炎の龍は、今しがた行く手を阻まれた強大で荘厳な壁へと再びぶつかりに行く。

 

 

「何度来ても同じだ! フルパワーシールドッ!! 

 

 

 源田も再びフルパワーシールドを展開して迎え撃つ。今だ! 

 

 

 衝撃波の壁によって勢いが殺されつつあるボールに対し、雷を纏った脚を叩き付ける。

 それに対し源田だけでなく、他の面々も驚きの声を上げる。

 ただ1人、豪炎寺だけは分かっていたようだ。

 

 

 フルパワーシールドは確かに強力な必殺技だ。

 使用者のパワーがそのまま技に反映されるからな。キング・オブ・ゴールキーパーとまで呼ばれている源田が使えば、それは頑丈な壁へとなるに違いない。

 だがそんな技にも弱点がある。

 極力広い範囲をカバーするために、力をある程度分散して展開する必要があること。つまり、壁の厚さ自体はそうでも無いということだ。

 

 

 なら、至近距離で更に力を加えてやれば───

 

 

「──ぶち抜けるッ!! 雷龍一閃・焔!! 

 

 

 炎の龍は更に雷を纏い、その力を高める。

 一切傷付けることが出来なかったその壁に牙が突き立てられ、やがて噛み砕いてみせる。

 源田を巻き込んで龍はゴールへ侵入し、ネットを揺らす。

 2点目だ。これだ同点。

 

 

「柊弥、豪炎寺、染岡!! お前ら最高だぜ!!」

 

 

 守がこちらまで走ってきて肩に手を掛けてくる。

 こいつの喜びようをみているとこっちまでニヤけてくるな。

 だがまだ後半は半分も終わっちゃいない。油断大敵だ。

 

 

「まだまだここからだ、1本取って勝ちに行くぞ!!」

「よっしゃあ!!」

「おう!!」

 

 

 2点決めたがこれだまだようやく同点だ。勝つためには最低でもあともう一点とる必要がある。

 気合い入れていかなければ。

 

 

「俺達が先に1点取るぞ!!」

 

 

 帝国もやる気満々のようだ。

 速攻で2点も取られたというのに全く揺らいじゃいない。

 それでこそ帝国、それでこそ王者だ。こっちもむしろやる気が上がってくるというもの。

 

 

「行くぞ! 全員攻め上がれ!!」

 

 

 試合再開のホイッスルと同時に、何と鬼道の指示で帝国のFW、MFが全員でこちらに攻め込んでくる。

 圧倒的物量で押し切るつもりか。

 すぐさまボールを奪いにかかるが、華麗な連携で次々パスを回し、中々ボールに触れられない。

 そこまでディフェンスに特化している訳では無い俺達前衛はすぐさま抜かれてしまう。

 

 

 後ろに控えている守備の本丸が風丸の指示で抑えにかかるも、それを上回る鬼道の指示であっさりと躱されてしまう。

 何てゲームメイクだ、まるで歯が立たない。

 

 

 鬼道は佐久間と寺門を連れてゴールへと迫る。

 それを阻止しようにも、他のヤツらがDF達を抑え込んでいるため動けない状況だ。

 あれは恐らく皇帝ペンギン2号を決めるつもりなのだろう。

 守を信じていない訳では無いが、このままではかなりまずい。何としてでも阻止し、こちらから先に1点奪い取りたいところだ。

 

 

「行くぞ円堂!! 皇帝ペンギン!! 

「「2号!! 」」

 

 

 予想通り皇帝ペンギン2号が放たれる。

 先程ゴッドハンドは破られ、新しく編み出したあのパンチング技ではゴッドハンドを上回ることは出来ないだろう。

 恐らく皇帝ペンギン2号は止めきれない、寸前のところで俺が弾くしかない。

 

 

「行かせないぜ」

「くっ!」

 

 

 更に後ろから帝国DFがこちらに上がってきており、俺達も身動きが取れなくなってしまう。

 風丸達もやはり抑えられており、カバーには入れなさそうな状況だ。

 守を、信じるしかない。

 

 

「絶対に止めてみせる!! ゴッドハンドォォ!! 

 

 

 神の手が迫る脅威から守るべきものを守るべく立ちはだかる。

 だが、やはり皇帝の名を冠するシュートは神の手をも食い破ろうとどんどん押し込んでいく。

 守は更に力を込めるが、それでも後退は止まらない。

 ダメか、そう思ったその時だった。

 

 

「これで、どうだァァァァァァ!!」

 

 

 守は左手を右手に重ね、両手でゴッドハンドを繰り出した。

 ゴッドハンドの2倍程の大きさになった、言うなればダブルゴッドハンドは一際強く輝き、先程まで劣勢だった状況を覆し始めた。

 ペンギン達はたちまち霧となって消え失せ、ボールは守の手の中にしっかりと収められていた。

 

 

「よっしゃあ!!」

 

 

 守が声を大にして喜ぶ。

 アイツ、本当にやりやがった……最高だぜ。

 

 

「壁山、上がれ!!」

「はいっス!!」

 

 

 守は壁山に前進を指示する。

 恐らく狙いはイナズマ落とし。そこにさらに俺がさっきのように轟一閃を上乗せし、源田のフルパワーシールドを破ろうという目論見だろう。

 そう思い、再び壁山の方を見る。そしてそこであることに気付いた。

 

 

「は!?」

『何と円堂、ゴールを放棄して壁山と共に駆け上がっていくぞ!? 一体どういうつもりだ!?』

 

 

 アイツ、何考えてやがる!? 

 帝国を相手にゴールを放り出してフィールドプレイヤーのように相手ゴールに向かい始めやがった。

 ボールを奪われれば一巻の終わりだぞ。

 

 

 しかし、鬼道もこれは想定していなかったようで、最適なゲームメイクが出来ずにいるようだ。

 まあそれもそうか、守が上がってくるなんて仲間の俺達も誰1人考えていなかったのだから。

 これはチャンスかもしれない。

 

 

「俺が前まで運ぶ、お前達は信じて進め!!」

「おう、任せた!!」

 

 

 守は俺にボールを託し、壁山と共にゴールへと駆け上がる。

 信じて任されたこのボール、必ず俺が繋いでみせる。

 

 

「加賀美を止めろォ!!」

「遅いッ!!」

 

 

 鬼道が俺を囲むように指示するも、その包囲網が完成する前に雷の如き速さでその場を潜り抜ける。

 凄まじい加速だ、これならいけるぞ。

 すぐさまDF陣が俺に襲いかかるも、特に問題なくそれを回避する。

 

 

 目の前にはゴール前へと辿り着いた守と壁山、そして豪炎寺。

 

 

「決めろ!!」

 

 

 俺はシュートにも似た鋭いパスを繰り出す。

 それを受け取った豪炎寺は空高くへボールを蹴り上げ、それを追って3人同時に飛び上がる。

 限界まで高く飛んだところで壁山はイナズマ落としのように地面に背を向け、自ら進んで足場となる。

 そして豪炎寺と守は、壁山を踏み台にして更に高くへ、誰の手も届かないところまで飛ぶ。

 

 

「「いけェェェェェェェェ!!」」

 

 

 そして放たれたのは、ツインオーバーヘッドキック。

 イナズマ落としの蒼いイナズマと、イナズマ1号の黄色いイナズマが交差しながらゴールへと降り注ぐ。

 言うなれば、イナズマ1号落としといったところか。

 アイツら、あんな難易度の高い技をこの土壇場で決めるなんて。

 

 

 源田は当然簡単にゴールを許すつもりは無いようで、再びフルパワーシールドを展開する。

 火花を散らしながら衝突する両者。

 これ以上の失点は許すまいと源田が咆哮するが、イナズマはその壁を撃ち砕くべく突き進む。

 やがて壁にヒビが入り、一気に決壊する。

 ゴールをイナズマが貫いた。

 

 

『ゴォォォォォル!! 何と雷門中、この局面で新たな必殺技を編み出し更に1点もぎ取った!! 3-2、逆転だァァァァァァ!!』

 

 

 本当にやりやがった。

 後半15分。怒涛の反撃の甲斐あってとうとう逆転だ。

 だが、これでようやく後半の半分が終わったところ。まだまだ逆転される余地はある。

 まだ気を緩められない。

 

 

「ナイスシュート、豪炎寺、守、壁山」

「おう!」

 

 

 こちらへ戻ってくる3人とハイタッチを交わす。

 ポジションに戻り、もう何度目か分からないが帝国と向き合う。

 やはり、まだまだやる気は衰えていない。それどころか先程よりも鋭く研ぎ澄まされている。

 流石だ、そうこなくては。

 

 

「油断するなよ! このまま勝つぞ!!」

 

 

 キックオフのホイッスル。

 佐久間は後ろの鬼道へとパスを出す。

 鬼道を中心に帝国は再び攻め上がる。正確なパス回しで的確に穴を突き、あっという間に切り込んでいく。

好きにさせる訳にはいかない。

 

 

「させない!」

「俺は負ける訳にはいかないんだ、何としてでもッ!!」

 

 

 すぐさま後ろに切り返し、ボールを奪いにかかるが、鬼道が凄まじい気迫で抵抗してくる。

 別人のようなその圧力に若干怯んだその隙を突かれ、追い抜かれてしまった。

 皆が必死にボールを奪おうと行く手を塞ぐが、やはり鬼道の指示で見事に抜かれてしまう。

 いや、それだけじゃないな。

 負けたくないという鬼気迫る想いが、1人1人を突き動かしている。先程よりも強靭なパフォーマンスが俺達を圧倒しているんだ。

 

 

「佐久間、寺門、洞面!!」

 

 

 鬼道がサイドから駆け上がる3人にパスを出す。

 あの3人は……デスゾーンか! 

 だが、皇帝ペンギンすら防いでみせた守に、デスゾーンは通用しないだろう。

 守が止め、またこちらが流れを掴む。

 そしてもっと点差を広げるんだ。

 

 

 しかし、ここで予想外のことが起こる。

 再びボールが鬼道に戻されたのだ。

 デスゾーンでは突破できないと咄嗟に判断し、皇帝ペンギン2号に切り替えたのか? 

 いや違う。何か違和感を感じる。

 あの動きは、今までに見た事ある2つが被って見える。

 

 

「ふんッ!!」

 

 

 鬼道は指笛を鳴らし、ボールを高く蹴りあげる。

 あれはオーバーヘッドペンギンの構えだ。

 鬼道の足元からペンギンが顔を出すが、ボールに向かって飛び上がったのは鬼道ではなかった。

 先程の3人だ。

 鬼道が上げたボールを、紫色のオーラを纏いながら囲む。

 これはデスゾーン……? 

 分からない、一体何をしようとしている? 

 

 

「「「はァァァァァァ!!」」」

 

 

 そのまま3人はデスゾーンを放つ。

 やはりデスゾーンなのか? しかしこれでは守を破ることは出来ないはず。意図が読めない。

 

 

 その時だった。

 そのままゴールへ向かっていくかと思われた死のシュートに、先程鬼道が呼び出したペンギンがクチバシから突き刺さる。

 そしてそのままドリルのように回転を始めると、デスゾーンが内包する紫色の、死のエネルギーが更に増幅し始める。

 まさか、アイツらの狙いは! 

 

 

「これが俺達帝国の全てだ!! 皇帝ペンギン死神(リーパー)!! 

 

 

 鬼道はペンギンがエネルギーを高めたボールに対してオーバーヘッドキックを叩き込む。

 すると、ペンギンはたちまち死のオーラに包み込まれ、禍々しい姿へと変貌する。

 死神の名を冠するそのシュートには、立ち塞がるもの全ての命を刈り取ってしまうのではないかと思わせる程の力が秘められていた。

 

 

「止める!! ゴッドハンド!! 

 

 

 先程と同じように、両手でゴッドハンドを繰り出す守。

 だが、大きく力強い神の手は、次々と死神達に食い破られ見るも無惨な姿へと変えられてしまう。

 力を失った神の手は形を保てず、そのまま死神に屈することになった。

 

 

『ゴォォォォォル!! 帝国学園、負けじと新たな必殺技を繰り出し、雷門中からまた1点を奪い返した!! 3-3、再び並んだ!!』

「守、大丈夫か?」

「ああ、悪い……すげえシュートだった、まだ手がビリビリしてる」

 

 

 守の手は小刻みに震えていた。どれだけ強力なシュートだったのか容易に伺える。

 守は立ち上がり、次は絶対に止めると意気込んで見せた。

 

 

 しかし、ここで同点か。

 もう俺も、皆も、帝国も全員余力が無い、限界ギリギリといったところか。全身が軋んでいるのが分かる。

 

 

 だが、このギリギリの状況が苦しくもあり、楽しくもある。

 決勝のこの舞台で、こんな熱い試合が出来ているんだ。楽しくないはずがない。

 

 

『さあ後半も残すところ僅か!! この同点のままだと延長戦にもつれこむか!? どちらが試合を決めるのか、1秒、いや1ミリ秒も目が離せない!!』

 

 

 ポジションに戻る。

 周りを見渡すと、やはりと言うべきか皆既に余裕の感じられない顔をしている。もっとも、それは俺もだろうが。

 だが皆、心にともされたその炎は未だ燃え続けている。

 

 

「燃えるな、加賀美」

「ああ……最高だ」

 

 

 隣の豪炎寺も戦意を剥き出しにしている。コイツも今の状況が楽しくて仕方ないのだろう。

 

 

「豪炎寺、あれを狙おう。俺達でこの試合を勝利に導くんだ」

「……分かった。やろう、俺達で」

 

この試合ではお蔵入りにするつもりでいたが、もはやリスクがどうなどとは言っていられない。

持てる全てを持って俺達は帝国を打ち破ってみせる。

 豪炎寺と拳を突き合わせ、絶対に道を切り開くことを誓う。

 決着は今、ここで。

 

 

 




皇帝ペンギン死神(リーパー)
帝国戦を盛り上げるため、帝国に新たなシュートを撃たせようと思ったのですが、他所様と尽くアイデアが被ってしまいました。
何とかこの小説オリジナルになるように考えたのがこのシュートです。
恐らく鬼道にオーバーヘッドペンギンを撃たせたのもここが初・・・?


次回、21:00更新です
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