これからもどんどん感想や評価お待ちしてます。
今回は短めです、次の話からまた文字数増やします。
「完敗だ、雷門中」
「鬼道」
俺達の元に鬼道が歩み寄ってくる。その顔に負の感情は一切なく、むしろこれまでにないほど晴れ晴れとした表情だ。
改めてとこれまでの俺達に対する行いを詫びてくるが、そんなこと今となってはどうだっていいだろう。
顔を上げるように促し、手を差し出す。
そしてその手を迷いなく鬼道は強く握り締める。
そういえば、脚の負傷は大丈夫なのだろうか。そう思い訊ねると、問題は無いと返される。
「次は全国でだな」
「ああ。全国はレベルが一気に跳ね上がる。くれぐれも俺達と戦うまで負けてくれるなよ」
確か前年度優勝校には、自動的に出場枠が与えられる。だから俺達と帝国はまだ戦える可能性があるという訳だ。
そんな台詞を残し、マントをはためかせながら鬼道は帝国の面々と共に外へと去っていく。
その後、入れ違いになるようにして春奈がやってくる。
「柊弥先輩、お兄ちゃんは!?」
「鬼道なら丁度行ったところだ。今追いかければ間に合うんじゃないか?」
その言葉を聞いて春奈は俺が指さした方向に駆け出す。
試合が終わってようやく話せることもあるだろう。俺もついていこうかと思ったが、ここは兄妹水入らずで話すべきだ。
1人になった俺のところに、今度は守と修也が歩み寄ってくる。
「柊弥、俺達本当に凄かったな!あの連携キャッチ、ビリビリって来たぜ!ああそうだ、連係といえば柊弥と豪炎寺のファイアトルネードもだよな!くうう!俺もあのシュート受けてみたいぜ!!」
「忙しいヤツだな、本当に」
「それが良いところとも言えるな」
守は聞いてもいないのに次々とさっきの試合について語り出す。そんなにがっつかれなくても、俺達だって一緒に戦っていたんだからわかるというのに。
1人熱弁する守を見て、俺と修也で笑う。
「そういえば、勢いに任せて修也って呼んだけど・・・」
「良いじゃないか、相棒みたいな感じで」
「おい、柊弥の相棒は俺だぞ!」
「男にモテても嬉しくねえよ」
そんな茶化し合いをしていると、俺達に集合の指示が出される。地区大会の表彰式が始まるんだ。
俺達はすぐさまセンターラインに整列する。
サッカー協会の偉い人が長々と話をしているが、試合の興奮が冷めきらない俺達は、右から聞いて左から流した。
そしてとうとう、式が始まってからずっと俺達の視線を奪っていた金ピカに輝くそれが守に手渡される。
優勝トロフィーだ。
受け取ってから式が終わるまで、何とか平静を保っていた俺達だったが、閉催宣言が出された瞬間に爆発した。
「優勝だああああああ!!」
「俺達、本当に優勝したんでヤンスね!!」
「感無量っス!!」
守を囲み大盛り上がりだ。
肩を組んで喜び合い、大手を上げて称え合い、ここからの勝利も誓い合う。
いつまでも盛り上がっている訳ではなく、響木監督が俺達の元にやってくるとすぐさま注目し静まる。
「そう改まるな・・・お前ら、良くやったな!」
「「「監督!!」」」
そう言われてまた騒ぎ出す。いつまで騒いでいたかが分からなくなるほどに。
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「待って!!」
「春奈?」
後ろからの呼び声に歩みを止める鬼道。
名前を呼ばれた訳ではないが、それが自分に対してのものだと分からないはずがなかった。
振り返って後ろを向くと、息を切らしながら走ってきていたのは、守りたくて仕方なかったかけがえのない妹だった。
「どうしても、落ち着いて話がしたくて」
「・・・分かった」
鬼道の意図を汲み取った源田が、他のメンバーを引き連れて先へと歩いていった。
帝国学園の静かな廊下に取り残された兄妹。
先に口を開いたのは、兄の方だった。
「父さんと、お前を引き取る約束をしていたんだ」
「えっ?」
鬼道は今まで隠してきたことを、洗いざらい音無へと話した。
フットボールフロンティアを3大会連続優勝すれば、音無を鬼道家に迎え入れる約束を養父と交わしていたこと。
その為に、時には影山の指示に従い酷いこともしたこと。
それでも、愛する妹のことを片時も忘れはしなかったこと。
「そうだったの・・・でも、いいの。音無のお父さんとお母さんも私に優しくしてくれてるから。私は音無 春奈が良いの」
「そうか、いい父さんと母さんなんだな」
音無は音無で幸せであることが鬼道にはよく分かった。
それならいい。帰ったら父と改めて話をしよう。そう心の中で決めていた。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
そんなことを考えていたら、突如音無が抱きついてきた。
今となってはそれを拒むはずもなく、鬼道は優しく受け止める。
仲睦まじい兄妹の姿がそこにはあった。
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「俺達は、優勝したぞおおおお!!」
「「「優勝したぞおお!!」」」
帝国戦の翌日。大会直後ということで俺達は今日は練習は無しだ。
好きなだけ食べて良いという響木監督の労いで、雷雷軒へとやってきている。
向こう一週間は店を営業できないほど食えという響木監督の言葉で、皆文字通り死ぬほど食べている。特に壁山。
1日経っても優勝の興奮は冷めず、もう何度もこうして優勝を喜んでいる。
「しかし、帝国も全国大会に出られるなんてな」
「次は全国の決勝戦で、だな!」
「あら。それは決勝戦まで勝ち進むという宣言で良いのかしら?」
「勿論さ!」
大会規約に目を通しまくった夏未曰く、俺達と帝国が同じブロックになることはないらしい。
そのうえ全国大会は2つのブロックに分かれて戦うため、決勝まで駒を進めない限りは帝国との再戦も叶わないということだ。
「柊弥、替え玉お待ち!」
「私が取りますよ!」
「悪いな、春奈」
と言って、厨房の監督を手伝っている守から春奈が俺の頼んだ替え玉を受け取ってくれる。
自分で取らないのには、ちょっとした理由がある。
どうやら、帝国戦での過度な負荷から右脚を痛めてしまったらしい。閉会式が終わった後、違和感を感じて病院に直行した結果数週間の安静を言い渡された。
帝国との試合の後毎回怪我してるな。
「脚、どうですか?」
「骨が折れているわけじゃないから普通に生活する分には問題ないな。サッカー出来ないのは悲しいけど」
そうそう、春奈についてだ。
あの後改めて鬼道と話をして、二人の間の蟠りを完全に解くことが出来たそうだ。
今まで返ってこなかった連絡もくるようになり、ようやく色んな話が出来ると喜んでいた。
「力になれることがあれば言ってくださいね?」
「ああ、ありがとう」
そう言ってくれるのはありがたい限りなのだが、距離がやたら近い。
気を利かせてくれているのは分かる。だがそうも近いと、色々と困ってしまう。主に周りからの視線が。
かといって好意を無下にすることもできず、結局このままだ。
「監督、俺餃子追加で!」
土門がそう言うと夏未も同調するが、運悪く餃子は残り1人分しかないという。
「じゃあ、夏未ちゃんどうぞ」
「夏未"ちゃん"?」
土門にそう呼ばれ、夏未が目を細める。
地雷を踏み抜いてしまったのかと土門が慌てるが・・・
「いいわねその呼び方。でも、理事長代理としての私への敬意を忘れないで欲しいわね?」
「だったら、こんな時に理事長はどう言葉をかける?」
「こほん・・・今やサッカー部は、雷門中の名誉を背負っていると言えるわ。必ず全国制覇を成し遂げてちょうだい!」
その言葉に皆が声を上げる。勿論、全国制覇以外考えていないからな。
その後も、皆で食べながら今までのことやこれからのことを話をした。
お開きになったのは、外から夕光が射し始めた頃だった。
更新が止まってた理由なんですが、多忙とワクチン接種による体調不良が重なってしまい1週間と少し遅れてしまいました。
大したことないだろうと侮っていたらかなり辛かったので、これから接種される皆様もどうかお気をつけて・・・