そしてかなーり更新のペースが落ちてしまって申し訳ないです。
「もう1本!!」
響木監督の指示に従い、ボールを前に送り出す。
それを受け取った風丸と豪炎寺の2人は、同時にボールを上へと蹴り上げ、上と下から同時に蹴り込む。
「「炎の風見鶏!! 」」
ボールを中心に炎の羽根が生え、鳥のようにフィールドを駆けてゴールネットを揺らした。
この必殺技は地区大会優勝の打ち上げの後、響木監督が計画した雷門中OB、あのイナズマイレブンとの練習試合の中で風丸と豪炎寺がものにしたシュートだ。
最初はブランクのせいでやる気がなかったものの、再び心に火が点った伝説のチームのプレイを目の前に皆多くのものを学んだようだ。
「……参加したかったなあ」
「まだ言ってんのかよ」
横から染岡にツッコまれる。
そう、俺はその試合に参加出来ていないのである。理由はお察しの通り帝国戦での負傷。
何が何でも試合に出たかったが、春奈はじめマネージャー陣や、守に修也、果てには響木監督からもストップが掛かったので泣く泣くベンチで試合を眺めた。
ちなみに既に復活済だ。
回数を重ねる度に洗練されていく炎の風見鶏に、皆も燃えているようだ。全国大会を目前にして、とてもいい雰囲気だ。
いつまでも泣き言言ってないで、俺も頑張らなければ。
「ん? あれは?」
ふと誰かがそんな声を上げた。
辺りを見渡すと、視線がある一点に集中していることが分かる。
夏未が普段移動に使っているあの高そうな車がやってきていたようだ。中から執事のバトラーさんが出てきたと思ったら、後部座席の扉を開ける。
そこから姿を現したのは……
「理事長?」
「え、そうなの?」
「転校生といえど、自分の学校の理事長くらい覚えておこうぜ……」
夏未の実父にして雷門中の理事長だ。
グラウンドに降りてきたことから俺達に用があるのだと分かる。
呆けている守の脇腹を突き、理事長の元に全員集合させる。
「諸君、全国大会出場おめでとう!!」
「「「ありがとうございます!!」」」
全国大会に出場が決定したことの祝いと激励、そして自身が実行委員長でもあるフットボールフロンティアが盛り上がっていることへの感謝を口にする。
守みたいに熱い人だと茶化す秋と春奈に咳払いをし、夏未が練習を再開したいと理事長に訊ねるが、どうやら用事はこれだけじゃないらしい。
部室を見たいとのことだ。
拒む理由もないので、全員で部室へと案内する。
改めて見てみると随分と年季物だ。
同じような感想を理事長が零すと、響木監督が自分達の世代から使っている部室だと付け加える。道理で。
中に入って響木監督が指さしたところを見てみると、イナズマイレブンが残した当時の落書きなんかが残っていた。いつもこの部室を使っていたというのに気付かなかったな。
「ところで、これから部員が増えてくることも考えればこの部室は狭いのではないかね?」
「確かに……」
「そこで、だ。新しい部室にするのはどうかね? サッカー部復活のお祝いと、全国大会出場のお祝いと思ってくれたまえ!」
その一言に皆が盛り上がる。
確かに理事長の言うことは最もだ。これから新しい部員も入ってくるだろうし、古いものに拘っても仕方ないとは思う。
けど、なんだろう。上手く言葉に纏められないけど……
「「俺、このままでいい」」」
「ええ!?」
守と言葉が被った。同じことを思っていたのだろうか。
「この部室は、試合が出来なかった頃の俺達も、イナズマイレブンも知ってるんだ」
「そうだな。この部室は雷門サッカー部の歴史そのものといっても過言じゃない」
「その通りさ! この部室も、俺達のかけがえのない仲間なんだ!」
俺と守の声に感化され、やはりこのままでいいという声が次々と上がる。
どうせなら、この部室に優勝トロフィーを飾りたいからな。
「そうか、それならいいんだ。話は以上だ! 練習頑張ってくれたまえ!!」
「よし皆、早速再開だ!!」
守が先陣切って部室から飛び出ると、皆その後を追いかけてグラウンドへと向かう。この一体感が好きなんだよな。
後からゆっくりと出てきた修也と共に、歩いて校舎を横切る。
すると、中から応援の声が浴びせられる。
サッカー部発足直後のあの冷遇からは考えられないな。これも俺達の頑張りの証か。
「ん、風丸? どうした」
「少し陸上部に顔を出しにいきたいんだ、先やっててくれ」
「ああ、分かった」
風丸は陸上部からサッカー部に来てくれたんだったな。
全国大会が決まった今、積もる話もあるだろう。
そういえば、だ。
風丸は確か、人数が足りてない俺達に対しての"助っ人"という扱いだったような気がする。
もし陸上部から戻ってくるようにと言われたらどうなるんだ? 俺達は全国大会が始まるわけだし、風丸は守備の中心的存在だ。
何か胸騒ぎがする。
「柊弥?」
「悪い、今行く」
しばらくして風丸が帰ってきた。
早速炎の風見鶏の練習に戻ったのだが、何やら様子がおかしい。
先程までは10本撃って10本入っていたのが、急に入らなくなっている。
風丸の顔には、焦り、迷いの表情が見える。俺の読みは外れていないのかもしれない。
見兼ねた響木監督が、今日のシュート練習はそこで打ち切った。
その後の半分に分かれての模擬試合の中でも、風丸の動きにはいつものキレがなく、やはり不調が見て取れる。
練習が終わった後、風丸に声を掛けてみた。
「風丸、何かあったのか」
「何かって?」
「例えば、陸上部に戻ってくるように言われたとか」
一瞬驚いたような表情を浮かべ、風丸は薄く笑ってこう言う。
「ははっ、豪炎寺にも全く同じことを聞かれたよ。うちのエース達は皆勘が鋭いのかな」
「炎の風見鶏の時か。まあ、明らかに帰ってきてから調子悪そうだったからな」
そして風丸は経緯を説明してくれる。
理事長の話が終わり、練習再開というところで陸上部の後輩に声を掛けられ、顔を出しに行った。
そこで同級生や先輩には激励の言葉を掛けられたが、その風丸を慕っている宮坂という後輩が、風丸はあくまで助っ人、そろそろ陸上部に帰ってきて欲しいと言ってきたらしい。
嫌な予感は的中していたようだ。
「そっか、そんなことが」
「ああ……それでどうすればいいのか分からなくなって、皆に迷惑かけた」
その宮坂が言ったことはもっともなことだ。
風丸はサッカー部に来る前も、陸上の方で良い成績を残していたはず。
しかも風丸はまだ2年生、後々は陸上部を引っ張っていくはずだったんだろう。
ところが、サッカー部に助っ人で入ってしまったうえ、全国大会にも出場が決まってしまった。
双方から必要とされている立場ということだ。
「なあ加賀美、俺どうすればいいんだろうな」
風丸が縋るような声でそう訊ねてくる。
俺が、このチームの副キャプテンとして、風丸の仲間として掛けるべき言葉は──
「お前の好きにすればいい」
「えっ?」
「お前が陸上部に戻りたいならそうすべきなんだろうし、サッカーを続けたいって言うならそうすればいい」
風丸は少し唖然としている。
第一声で引き止められるものだと思っていたのだろう。
だがまだ俺の言葉は終わっていない。
「けど、俺は風丸とサッカーしたいな。お前がいなくなったら誰が俺の速さに着いてきてくれるんだよ」
少し笑って風丸にそう伝える。
伝えたいことは全て伝えた。もういいだろう。
「じゃ、俺は帰るよ。また明日な」
「……ああ! じゃあな」
風丸の声にはいつもの明るさが戻っていた。
結論は出たのだろう。
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「炎の風見鶏、すっかり仕上がってるな」
「昨日の不調は何だったんでやんスかね?」
翌日の練習、すっかり調子を取り戻して力強くシュートを撃つ風丸の姿があった。
今朝登校している最中に宮坂に会い、またも戻ってくるように言われたらしいが、間もなく始まる全国大会の1回戦で、自分のサッカーを見て欲しいと説得してその場を収めたらしい。
その後に守がやってきて、どうすべきかと相談したら俺と同じような言葉を掛けられたと言う。
最近、守に思考が寄ってきたかもしれないな。
何はともあれ、風丸の意思は固まっているようだ。シュートにそれが表れている。もう心配する必要は無いだろう。
「どうしたの? バトラー……えっ!?」
「ん?」
夏未が電話に出るや否や、驚嘆の声を漏らす。
どうやら理事長が大事故に遭ったらしい。急いで病院に向かう夏未に、響木監督が守と秋に着いていくように指示した。
残った俺達は当然練習だ。
理事長が心配じゃないと言えば嘘になる。
が、それが原因で大会で力を奮えないようなら、きっと理事長はがっかりしてしまうと思う。
なら、俺達は俺達のやるべき事をやろう。
「ほら、全員練習再開だ! 動いた動いた!」
動揺に包まれている皆を大声で動かす。その一声で意識が再び練習に向いた皆は、それぞれ動きだした。
俺も1つ、やっておきたいことがある。
簡単に言えば、新たな必殺技の完成だ。と言っても、シュート技ではなくドリブル、ディフェンス技だ。
俺達雷門の武器といえば、攻めの手数だ。それと絶対諦めない雑草魂。
FWである俺、修也、染岡の間での連携は勿論、DFの風丸や染岡、GKの守ですらも攻撃に参加出来るのが雷門サッカーだ。
なら、FWの俺ももっと幅を持たせようと思ったのだ。
そこで考えたのが、相手からボールを奪う必殺技の開発。ボールを運ぶドリブル技はそれのついでだ。
イメージは雷が駆けるようにして相手の行く手を塞ぎ、ボールを奪い、時には相手を追い抜くといった感じだ。
土台は既に固まっていたこともあり、ライトニングブラスターの時よりも難航はしていない。あれが少し曲者すぎただけかもしれないが。
とにかく、数を重ねて完成形に近づけていきたい。
「加賀美! ちょっと来てみろ」
「はい!」
響木監督に呼ばれ、何事かと思って駆け寄ると、俺の練習の様子を見ていて思ったことを指摘してもらえた。
タイミングが少し遅れていたり、軸がブレていたりなど、自分では気付けなかったことばかりだ。
ありがとうございます、と礼を述べると、バシバシと背中を叩いて激励された。痛いけど嬉しい。
響木監督が来てくれたことで、技術面でもかなり成長出来ている。本当に監督を引き受けてくれて良かった。
そんなこんなで練習は続く。
日が沈み始め、そろそろ切り上げるかといったところで夏未達が帰ってきた。
理事長の命に別状はないらしいが、意識が戻らないようだ。
バトラーさん曰く、意識を失う直前までフットボールフロンティアの成功と、俺達の勝利を祈っていたそうだ。
理事長の想い、俺達が繋ごう。
「理事長の為にも負けられない! 柊弥、シュート頼む!」
「よしきた!」
守は残り少ない時間もフル活用すべく、話が終わってすぐにゴール前に構える。
練習を抜ける前よりも引き締まった表情だ。当然、俺も全力で撃ち込む。
結局俺達は、練習が終わったあとも河川敷で練習しており、気づいた時には辺りは真っ暗だった。
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遂にこの日がやってきた。
入場口からスタジアムに足を踏み入れると、眩い日光と大歓声が俺達に降り注ぐ。
フロンティアスタジアム。フットボールフロンティア全国大会の試合会場だ。
そう言えばスタジアムにやってくるまでに1つ思い出したことがある。
ここは、雷門中に入学したその日、未来からやってきた天馬にサッカー部を作ってみせると誓った場所だ。真っ暗の中ここから家まで何時間も掛けて帰ったからよく覚えている。
あの誓いからここまで辿り着いたのだと思うと、感慨深いものがある。
『雷門中は地区予選決勝にて、あの帝国を破った恐るべきチーム!! 伝説のイナズマイレブン再びと注目が集まっております!!』
伝説のイナズマイレブン、か。
俺達がその名前を再び背負えると良いのだが。
そんなことを考えていると、見覚えのある連中が俺たちの隣に並ぶ。鬼道を先頭とする帝国イレブンだ。
俺達に対して好戦的な笑みを向けてくる。
「脚は大丈夫か? 鬼道」
「ふっ、自分達の心配をすることだな。俺達と戦う前に倒されたりしたら分かっているんだろうな?」
「当たり前だ、そっちこそ足元掬われるなよ」
鬼道と軽く挑発し合う。
全ての学校が入場し終わっただろうか? と思った時、特別推薦校? という枠で世宇子中の名前が呼ばれる。
世宇子……"ゼウス"ねえ。大層な名前だことで。一体どんなチームなのやら。
確かめるべく入場口に視線を飛ばすと、そこには先導のプラカード嬢のみがいた。公開処刑だろあんなの。
調整中の為、本日は欠席らしい。
開会式に顔を出さない世宇子中に対し、訝しむような声が次々と上がる。
まあそんなことはどうでも良い。
この全国のステージで、思う存分暴れてやろう。
次は早速全国初戦ですね。
更新のペースなのですが、作者の多忙により今後も更新が遅くなると予想されます。
出来れば3日に1回、最低でも1週間に1回は更新出来たらいいなあ・・・と思ってます。