Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第24話 駆け抜ける風

 靴紐を縛り直し、軽くその場でジャンプして具合を確かめる。うん、問題なさそうだ。

 他の皆もそれぞれ準備に取り掛かっているようだ。そしてその表情には、僅かに強張りが伺える。

 当然と言えば当然か、何しろ全国大会初陣の直前なのだから。

 

 

 さて、対戦相手に関して軽くおさらいをしておこう。

 

 

 1回戦の相手は"戦国伊賀島中"だ。

 理事長が忍者の末裔らしく、その教え子である選手達も忍術を使ってるくるとかなんとか。

 忍者上がりのスピードとテクニックが強みのチームだと思われる。

 現代において忍者がどうなどと、にわかには信じられる話ではないだろうが。

 

 

「皆、練習時間よ! ……ん? 夏未さんからだわ」

 

 

 試合前の数十分のウォーミングアップの順番が回ってきたようで、秋が控室の俺達を呼びに来てくれた。

 じゃあ行こうか、というところで秋の携帯が鳴り、確かめてみるとそれはどうやら夏未からのメールのようだった。

 

 

 理事長の傍にいる為、全国大会の初戦にマネージャーとしての役目を果たせないことへの謝罪と、必ず勝ちなさいという命令のような激励だった。

 その内容に不快感を覚える者などいるはずがなく、寧ろここにいない夏未の、理事長の為に勝ってやろうとより気合いが入ったようだ。

 

 

「よーし、絶対勝つぞ!!」

「「おう!!」」

「「勝つぞー!!」」

 

 

 そう言って守を先頭に皆次々と控え室を飛び出していく。

 最後に残ったのは、俺と風丸の2人だった。

 

 

「いけるな? 風丸」

「ああ、勿論さ」

 

 

 拳を突き合わせ、俺達も皆の後を追う。

 今の風丸には、悩みも迷いもない。自分の出した答えの為に全力で今日を戦い抜いてくれるだろう。

 

 

 入場口からフィールドに足を踏み入れると、開会式と変わらない歓声が直に浴びせられる。ここが全国の舞台だ。

 俺達を呼ぶ声に気が付き、その方向を見ると、既に準備万端の皆が手を振っていた。

 俺と風丸は軽く笑いあって、同時に走り出した。

 

 

 そして早速練習が始まる。

 攻め、守備に分かれてそれぞれが動き、連携を確認する。

 皆、緊張に引き摺られて動きが悪くなっている様子もない。余計な心配だったようだ。

 

 

 俺も負けていられないな。

 ボールを受け取り、守備陣が固めるゴールへと駆けていく。

 次々に追い抜き、最後に壁山が俺の前に立ち塞がる。

 

 

「行かせないっス!!」

「……おお」

 

 

 思わず感嘆の声を漏らした。

 目の前の壁山が、巨大な壁に見えたのだ。大きいのは元々であるというツッコミはさておきだ。

 途轍もない気迫だった。思わず脚を止めてしまうくらいに。

 

 

「いい守備だ。試合でもその調子で頼むぞ、壁山!」

「はいっス!!」

 

 

 壁山は元気よく返事をする。

 さて、残り時間も少ないし仕切り直してすぐ再開だ。

 半田からのパスを受け取ろうとしたその瞬間、俺の前に影が降ってきた。比喩ではなく、文字通り降ってきたのだ。

 

 

 半田からのボールはその影に奪われ、目まぐるしいスピードで駆けた後にそれは止まる。

 紫色のユニフォームに身を包み、その腕にはキャプテンマーク。

 

 

「戦国伊賀島のキャプテン、霧隠 才次(きりがくれ さいじ)だな」

「如何にも。俺と勝負しろ、加賀美 柊弥!!」

 

 

 突然乱入してきて何を言っているのか、コイツは。

 

 

「こっちは練習中だ。お引き取り願おうか」

「何? そうか、俺に負けるのが怖いのか、腰抜けめ」

 

 

 そう言って挑発してくる霧隠。

 後ろで守がまんまと乗せられて怒り、その勝負受けてやると言っているが俺は一切受ける気がない。

 

 

「貴重な時間を割く必要性を感じないな。そんなに勝負がしたければ、試合の中で掛かってこい」

「ぐ……」

 

 

 正論のナイフで霧隠を滅多刺しにする。返す言葉が見つからないようで、歯軋りしながらこちらを睨みつけている。

 しかしそれでも引くつもりはないらしく、無言の抵抗でその場に居座り続ける。

 迷惑でしかない、審判を呼んでくるか? 

 

 

「勝手な行動をするな、霧隠」

「チッ……」

 

 

 そう思ったところで、戦国伊賀島の選手2人が霧隠を連れ戻しにやってきた。

 常識外れなのは霧隠だけだったようだ。その2人は此方に対する失礼を詫び、霧隠を連れて控室へと戻って行った。

 

 

 練習時間は残り数分だ。

 想定外のアクシデントはあったが、1分1秒たりとも無駄にはしたくない。

 気が抜けてかけている皆に発破を掛け、再びボールを動かし始めた。

 

 

 それにしても、霧隠のスピードは凄まじいものだった。

 目の当たりにしたのは乱入してくる一瞬だけだったが、それでもハイレベルである事が伺えた。

 恐らくは、俺や風丸に匹敵、あるいは上回る程だ。

 チーム全体があのレベルだとすると……少し厄介だ。

 まあ、だからどうしたという話だ。厄介なくらいで勝負を諦めるか? まさか。寧ろ燃えてくるというもの。

 戦国伊賀島、楽しい試合になりそうだ。

 

 

「雷門中の選手達は練習を止めなさい」

 

 

 主審がそう声を掛けてくる。時間が来たのだろう。

 俺達の前が戦国伊賀島の番だったので、このまま整列してすぐ試合開始だ。

 皆の顔がより一層引き締まる。

 

 

『今まで数々の名勝負を生み出してきたフットボールフロンティア全国大会! その初戦を飾るのは、雷門中と戦国伊賀島中!! この勝負は名勝負に名を並べることになるのか!?』

 

 

 監督からの激励を受け、ポジションに着いて相手と向き合う。

 流石全国レベルの強者。誰もが帝国に引けを取らない雰囲気を漂わせている。

 そしてそのステージに俺達は昇ってきたんだ。精一杯やろう。

 

 

『ホイッスルが鳴り響く!! 試合開始です!!』

 

 

 フィールドの空気が変わる。たった今からこの場は戦場へと姿を変える。

 キックオフはこちらからだ。すぐさま修也、染岡と共に前線へと詰め上がっていこうと試みるが、相手の前陣がすぐさま俺達の道を塞ぐ。

 フリーの染岡に対してパスを出すが、すぐさま染岡に注意が向いて身動きが取れない。

 サイドから上がってきた半田にボールを蹴るが──

 

 

「もらい!」

「何!?」

 

 

 霧隠が間に割り込む。やはり早い、既に追いつけない位置まで攻め込まれてしまった。

 中陣をあっさりと突破した霧隠に立ち向かうのは風丸だ。

 

 

「伊賀島流忍法、残像!! 

 

 

 一瞬のうちに霧隠が姿を消したと思ったらまた現し、風丸へ真っ直ぐと駆けていく。

 風丸と霧隠の正面衝突かと思ったら、なんと霧隠の姿がぶれて消え、風丸の後ろで実像を結んだ。

 まさに残像という訳か。

 

 

 そのままゴールに撃ち込むが、ノーマルシュートだったこともあり守はしっかりと受け止めた。

 

 

「守!」

「行け、柊弥!!」

 

 

 霧隠を追う形で後ろまで下がってきていた為、そのまま守からボールを受け取る。

 今度はこちらの番だ。

 

 

 戦国伊賀島の陣地に侵入しようとしたところで、ヤツらはフォーメーションを組む。

 

 

「伊賀島流蹴球戦術、鶴翼の陣!!」

 

 

 俺と修也に対し、両左右斜めに広がる形で圧を掛けてくる。これでは中央に誘い込まれるばかりだ。

 そしてその陣形が何故か解かれる。何故かはすぐに分かった。

 俺達の目の前には大柄な2人のDFが。そう、ヤツらは俺達を誘導し終えたから離れただけ。

 クソ、このまま突破出来るか? 

 

 

「「伊賀島流忍法、四股踏み!! 」」

 

 

 その2人が大地を踏み鳴らすと、振動と衝撃波が俺達を襲う。

 俺達は大きく弾き飛ばされ、ボールは相手キーパーの手元へと収まる。

 やはり手強い……が、同じでは2度はくらわない。次はゴールを奪い取らせてもらうぞ。

 

 

 すぐさま体勢を立て直してボールへ向かって走る。

 先制点を奪おうと俺達のゴールへ攻め上がるところに追い付き、背後からボールを奪い取る。

 このままシュートまで持って行けるか……というところで、上から突如姿を現した霧隠が襲いかかってくる。

 間一髪のところでそれを見た俺はすぐさま後ろへ跳んで回避する。

 

 

「勝負!!」

「来いよ!!」

 

 

 真っ直ぐにタックルを仕掛けてくる。ステップで背後へ回る形で回避を試みる。

 しかしタックルはブラフだったようで、すれ違いざまにボールへ脚だけ伸ばしてきた。

 ボールを奪われそうになったが、すぐさまボールを踏み付ける形で抵抗し、霧隠が次に動き出すより早く駆け出す。

 だがそれにも追い付いてきた。

 厄介な……と思ったところで、染岡が背後から上がっている。

 

 

「サッカーは個人技だけじゃないぜ」

「なっ!」

 

 

 バックパスで染岡にボールを預け、霧隠を振り払って前へと上がる。

 染岡に再度ボールを要求し、ディフェンスラインの突破を目指す。

 

 

 さて、ここらでお披露目といこうか。

 

 

雷光翔破(らいこうしょうは)! 

 

 

 全身に雷を纏い、雷光の軌跡を残しながら翔け抜ける。

 一瞬のうちに爆発的な加速を得るこの技は、生半可な守りなら正面からぶつかっても力技で突破できる。

 最も、今回は反応すら許さず間をすり抜けさせてもらったが。

 

 

 さて、試合はまだ前半。

 ここで半分以上消耗する訳にもいかないし、コイツで1本取らせてもらう。

 

 

轟一閃"改"ッ!! 

 

 

 再び雷光が煌めき、轟音を鳴らす。

 最低限のパワー()で、最大限のパワー(威力)を発揮する俺の十八番だ。

 真っ直ぐにゴールへと突き進む。

 

 

「伊賀島流忍法つむじの術!! 

 

 

 忍者のような覆面で顔を隠したキーパーは、両腕を大きく開く。

 それと同時に、2つのつむじ風が発生し、合わさって竜巻と呼んでも差し支えない大きさのつむじ風を生み出す。

 轟一閃を呑み込み、無力化して大きく空へと舞い上げる。

 あっさりと止められてしまったか。あのキーパーを単体で突破する術は今の俺にはない。

 連携を狙うか、任せるかしかなさそうだ。

 

 

 キーパーが大きくボールを投げ、再び試合は動き出す。

 一進一退の攻防だ。

 こちらがボールを奪えば、あちらが奪い返す。

 あちらが攻めれば、こちらがそれを阻止する。

 どちらかが撃てば、もう片方が撃つ。

 先制点をものにしたいところだが、簡単にはいかないようだ。

 

 

 壁山が前線に上がり、イナズマ落としを狙うも相手の俊敏な守りに阻まれ、ならばと風丸が炎の風見鶏を撃つため駆け上がっても阻止される。

 ヤツらのスピードとテクニックを兼ね備えた忍者サッカー、やはり厄介だ。

 

 

「今度は俺の勝ちだな!」

「くそッ」

 

 

 どう突破口を切り開くか、一瞬の迷いが命取り。

 その僅か数ミリ秒の隙を突かれ、霧隠にボールを奪われた。

 スピーディーなパスワークと必殺技で俺達を翻弄し、あっという間にゴール付近への接近を許してしまった。

 

 

「伊賀島流忍法、つちだるま!! 

 

 

 霧隠の放ったシュートは、周りの土を巻き込みながら大きな土の塊を形成する。

 もう少しでキーパーと接触するというところでそれは弾け、中から先程の数倍の速さでボールが飛び出してくる。

 

 

「なっ──熱血パンチ!! 

 

 

 一瞬で迫ってきたボールに対し、最速で繰り出せる熱血パンチを選択した守。

 だがそれではパワーが足りていないようだ。そのままゴールをこじ開けられてしまう。

 

 

 そしてその際、腕を下にするようにその場に倒れてしまう。

 あの倒れ方、少し不安だ。痛めてなければ良いんだが。

 

 

『先制点を決めたのは戦国伊賀島!! 素早い切込みで雷門のゴールを奪ってみせた!!』

 

 

 先制点を奪われてしまったか。

 取られたものは取り返せばいいだけ、いちいち後悔している暇なんてないな。

 

 

「修也、染岡。取り返すぞ!!」

「おう!!」

「ああ」

 

 

 しかし、こちらの思惑通りに事態は進んでくれない。

 キックオフ早々にボールを奪われ、再び相手に攻めの主導権を握られてしまう。

 先程ゴールを決めた霧隠を警戒してマークにつくも、他のFWがフリーになってしまっているため簡単にシュートを許してしまう。

 

 

分身シュート!! 

 

 

 3人に分身して放つシュート。

 守は少し押し込まれるも、必殺技を使うことなくボールを押さえ込んだ。

 その際、いつも以上に苦しげな表情が垣間見える。やはり……

 

 

『ここで前半終了!! 戦国伊賀島が1点リードして後半へ持ち越しだ!! 雷門はここから取り返せるか!?』

 

 

 ベンチに戻ってすぐ、守のグローブを剥がすようにして取り、手の具合を確かめる。

 かなり酷い腫れ方をしている。やはり失点した時の倒れ方が不味かったか。

 秋と春奈に応急処置を頼む。

 本来なら交代した方が良いのかもしれないが、雷門にサブキーパーは存在しない。

 俺達でカバーしつつ出続けてもらうしかないな。

 

 

「後半は俺も下がり気味で対応する。守がいつもゴールを守ってくれている分、今は俺達が守るんだ!!」

「頼りにしてるぜ、皆!!」

 

 

 ポジションチェンジ、という訳では無いが、後半は俺も守備中心に立ち回ることにする。

 俺の脚なら、守ってそのままの勢いで前線に参加することも不可能では無い。いざとなれば修也と染岡に任せてもいいだろうしな。

 これ以上の失点は、俺達全員が許さない。何か何でも守り通してやろう。

 

 

『さあ後半が始まります、雷門はどうやってこの不利な状況を覆すのか!?』

 

 

 後半が始まると同時に、俺は後方へと下がる。

 そしてすぐさま戦国伊賀島の猛攻撃が始まる。畳み掛けて点差を付けるつもりだ。

 俺と風丸を中心とした守備陣で徹底的に守る。

 だが、ヤツらの多彩な攻撃手段全てに対応しきることはかなり難しい。

 

 

 とうとう守備の穴を突かれ、シュートを撃たれてしまう。

 が、風丸が躍り出て身体を張ってそれを防ぐ。

 

 

「この俺が、ゴールを許しはしないッ!!」

 

 

 そう叫ぶ風丸からは、いつも以上の覇気が伝わってくる。

 この試合に掛ける風丸の想いがよく分かる。

 

 

 ボールは前線へと送り出される。が、またすぐに奪われる。

 やはりヤツらのスピードに対応するには、俺か風丸レベルの突破力が必要。

 守備にも参加しつつ積極的に攻める意識が無ければ逆転は難しい。

 

 

「伊賀島流蹴球戦術、偃月の陣!!」

 

 

 1人を中心に左右斜めに展開し、砂塵を巻き上げながら突進してくる。

 集団でのオフェンスはやはり強力、ボールを奪おうと近付いた瞬間に吹き飛ばされてしまう。

 

 

 ゴール前に飛び出した霧隠に対するは、俺と風丸、そして壁山。

 1人でアイツを抑え込むのは難しい。

 

 

「風丸!!」

「ああ!!」

 

 

 風丸と2人で霧隠からボールを奪いにかかる。

 まず風丸がスライディングを仕掛けるが、それは残像だったようですり抜けてしまう。

 そしてその先に俺が待ち構えていたが、まさかの二重の残像で出し抜かれてしまった。

 残すは壁山1人。

 

 

「もらった!!」

「ぜ、絶対に通さないっス!!」

 

 

 壁山はその体躯を大きく広げ、ボールの行く手を阻む。

 刹那、壁山の背後には巨大な壁がせり上がってくる。霧隠のシュートを難なく受け止めて見せた。

 

 

「ナイスだ壁山!!」

「馬鹿な……!? まだだ!!」

 

 

 しかしまだボールは生きていた。

 運悪く霧隠の前に転がっていたボールは、再び手中に収められる。

 

 

「伊賀島流忍法つちだるま!! 

 

 

 先程ゴールを奪ったシュートが再び放たれる。あれを食らったら守が持たない。

 

 

「止めるぞ!!」

 

 

 俺と風丸がその土塊の前に立つ。が、それが弾けて中から姿を現したボールは、俺達2人の間をすり抜けるようにしてゴールへと飛ぶ。

 

 

ゴッドハンド!! 

 

 

 守が利き手じゃない方でゴッドハンドを放つ。

 しかし、パワー不足だったようでどんどん劣勢に傾いていく。

 やがて無情にも神の手は砕かれ、再びゴールネットが揺らされる……そう思ったその時だった。

 

 

「させるかァァァ!!!!」

 

 

 なんとありえない速さで体勢を立て直した風丸が、間一髪のところでボールに追いついたのだ。

 ゴッドハンドで威力が削られていたため、簡単に受け止められたようだ。

 

 

「よし、風丸上がるぞ!!」

「おう!!」

 

 

 チャンスだ。このまま風丸と2人で前線に上がって、修也と風丸で炎の風見鶏を決めてもらう。

 雷門の中で突出したスピードを誇る俺達のコンビネーションを止められる者は誰1人としていない。

 

 

「「ぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!」」

 

 

 やがて、俺は雷を、風丸は風を纏って駆け抜けていた。今のは……俺達2人の連携技の予兆か? 

 そんなことを考えた時には、既にゴール付近へと接近していた。

 

 

「いけ、風丸! 修也!」

 

 

 ボールを風丸に預け、前で待機していた修也と2人でゴールへと向かわせる。

 2人の邪魔をする者はいなかった。

 同時にボールを蹴り上げ、上と下から蹴りを叩き込むと炎鳥が姿を現す。

 

 

炎の風見鶏ィィィ!! 

 

 

 相手のキーパーは反応が間に合わず、そのままゴールへと押し込まれる。

 1点取り返した、これで同点だ。

 だがまだ勝つには後1点必要。このままじゃ終われない。

 

 

「加賀美!!」

 

 

 ホイッスルが鳴り響いてすぐ、風丸が俺の近くまで上がってきた。

 風丸の意図はすぐに読み取れた、先程のオフェンスをもう一度試してみようということだろう。

 好都合だ。ゴールまで一気に攻め上がるなら2人の方が確実だ!! 

 

 

「「迅雷風烈(じんらいふうれつ)!!」」

 

 

 雷と風が交差しながら凄まじい速さでフィールドを駆ける。

 時に相手を雷で撃ち、時に風で吹き飛ばす。軽々と敵を捌く様はまるで風神と雷神のようだった。

 

 

 誰にも阻まれることなくゴール近くまで辿り着いた俺達。

 風丸からボールを受け取り、先程は止められたキーパーと真正面から向き合う。

 

 

「いくぞ……轟一閃"改"ッ!! 

 

 

 再び雷が轟く。

 それに対して同じように旋風を巻き起こし、無力化してみせる相手キーパー。

 ボールは風に煽られ高くへ舞い上がり、キーパーの手元に収まるべく落ちてくる。

 ここが狙いだ!! 

 

 

「風丸ッ!!」

 

 

 キーパーがボールを取るよりも早く、上空でボールを奪い、そのまま高く蹴り上げる風丸。

 1回目であの必殺技の特徴を見抜いた俺は、風丸にそのまま後ろに戻らず協力して欲しいと前線に詰めている時に耳打ちしておいたのだ。

 

 

 空高くまで蹴り上げられたボールに対しては、轟一閃も、ライトニングブラスターも使えない。

 だが、俺にはもう1つの手札がある。

 単体で使うためではなく、あくまで連携シュートのために習得したに過ぎないが、使えるものは何でも使ってやろう。

 

 

ファイアトルネード!! 

 

 

 そう、ファイアトルネードだ。

 修也とのファイアトルネードDD(連携技)を編み出す時、どうしても単体でのファイアトルネードが必要だった。

 修也の本家には及ばないが、相手の不意を着いてゴールを決めるには十分だ。

 

 

「なっ、ぐあああ!?」

 

 

 備えていなかったキーパーごとゴールへ押し込んだ。

 ホイッスルが響き、電子掲示板には2-1の文字。逆転勝利だ。

 

 

『ここで試合終了!! 何と雷門中、怒涛の追い上げで逆転!! 2回戦へと駒を進めたァァァ!!』

 

 

「ナイス」

「そっちこそ」

 

 

 風丸と2人でハイタッチを交わす。

 あの咄嗟の場面で連携技が成立するとは思ってもいなかった。

 俺と風丸の熱意が共鳴した、といったところか? 

 

 

 まずは1回戦突破か。

 ふと、観客席に目を向けると、ある男を見つけた。

 鬼道だ。決勝で戦うのが楽しみだとか考えているんだろうな。俺達も楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 が、その期待は突然として裏切られることになる。

 

 

「帝国が……負けた?」

 

 

 確かにそう聞いた時、俺は練習中にも関わらず走り出していた。




元々リメイク前では"疾風迅雷・巡"という名前だった新技"雷光翔破"
技のイメージ自体は変わっていないのですが、やはり同じような名前が化身技とはいえ原作に存在している変えました。

そして風丸との連携技"迅雷風烈"
ちょうどいい四字熟語が合ったのでそのまま名前を拝借しました。こちらはリメイク前にはなかった技ですね。


多忙すぎてどうなるか分かりませんが、あまり期間を空けないように頑張りたいです。

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