ただいまリアルの方でどデカい案件を抱えているため、次の更新はまたいつになるか分かりません。
休み・・・くれ・・・(渇望)
あとがきに重大なお知らせあります。最後まで見てくださいませ。
「まだまだ行くぞ守ッ!!」
「来いッ!!」
どっしりと構えた守に向かって思いっきりシュートを撃ち込む。対して守は鋭いパンチングでボールを弾き飛ばす。
この河川敷のグラウンドには俺と守の途切れ途切れの息だけが木霊する。俺らしかいないからな。
今日は俺達の他にもラグビー部が大会が近く、グラウンドでの練習をしたいということでいつもより短めの練習だったのだ。
そこでピッタリ切りあげても良かったのだが、
額を拭うと、噴き出した汗が手のひらの中では収まりきらないようで、地面に逃げるように飛び散った。
気にも留めてなかったが、喉がカラッカラだ。
1時間前に始めてからノンストップでPKし続けたから……100本は間違いなく撃ったか。我ながらアホすぎる。
まあ、俺達がここまで熱くなったのにも理由がある。先日の木戸川清修の三馬鹿……もとい、武方三兄弟の襲来だ。
ヤツらの態度は気に入らなかったが、実力は本物だった。ファイアトルネードに似たあの必殺技……バックトルネードだったか。修也の本家にも引けを取らない威力だった。
しかもそんなシュートを撃つヤツが3人。そのうえ"トライアングルZ"という隠し球まであるときた。
鬼道曰く、木戸川清修は攻撃力の面だけなら帝国にも引けを取らないそうだ。
それを聞いた守は見事にヒートアップ。それに哀れにも巻き込まれたのが俺というわけだ。
とは言ったものの、俺も思うところがあったので丁度良かった。
守が防御力を磨きたがっていたのと同じように、俺も攻撃力を磨きたかったのだ。あくまで
ここ暫くの雷門は、多くの連携技を編み出し、それで点数を奪ってきた。
ファイアトルネードDDや炎の風見鶏、イナズマブレイクに加え、一之瀬、土門、守のトライペガサス。
チームとしての攻撃力は確かに以前とは比較にならないほどに向上した。
しかし、連携技に頼り切る傾向はあまり良いとは言えない。理由は単純明快、1人でも封じられてしまったら技に持ち込めないからだ。
他の連携シュートに切り替えればそれまでだが、そんな状況でも単体で点をもぎ取れるようにしておいて損は無いだろう。
「だぁーッ! 疲れた!」
「ここらで切り上げるのが吉だろうな……明日も部活がある」
部活の外で消耗しすぎて支障をきたした日には、響木監督や鬼道にどつかれること間違いなしだ。引き際は弁えなければな。
「いやあ、この1時間でかなりレベルアップしたな!」
「それは間違いないな。俺のシュートの鋭さも、守のセーブ率も格段に上がっている」
得るものはあった。いや、ここまでやっておいて何も得られなかったらただの無駄だろうか。
身体の熱が引くまで適当に待ち、いい感じのところで制服に着替える。
「よし、帰るか」
「おう!」
こうして、俺と守は帰路に着いた。
---
「ええ!? 今日は休み!?」
「そうだ」
放課後になり、守と共に部室へ突撃するように向かうと響木監督から衝撃の言葉を告げられる。
木戸川との試合は明後日だ。オフにしていいタイミングとは思えないが……
「……昨日、俺が言ったことを覚えているか?」
「えっと……"張り詰めすぎは良くない。ちょうど他の部活に場所を譲るのだから今日はしっかり休むように"でしたっけ?」
「その通り。じゃあ、昨日大人しく家に帰らなかったヤツ、手を挙げてみろ」
あ、やべ……と思いつつも、手を挙げる。
俺と守の責任か……皆申し訳ないと周囲を見渡してみると、一瞬にしてそんな思考は消し飛んだ。
なんと、俺と守以外にも手を挙げている者がいたのだ。
……待てよ、これ全員じゃないか?
「という訳だ。分かったな?」
「でも監督!! 試合は明後日なんですよ!?」
「だからこそだ。一流の選手というものは、休養にも余念が無い」
そう答える響木監督の言葉は、妙に説得力に満ちていた。
当然か。監督自身が一流の選手だったんだから。
「……分かりました。皆! 今日は休みだ!」
「自主練、するなよ」
最後に監督に釘を刺されてしまった。
昨日の自主練が原因でこうなったのだから、流石に今日もやるヤツはいないだろう。
さて困ったな。完全に部活するつもりでいたから、いざフリーとなると何もやることが無い。
大人しく家に帰っても良いのだが……どうしたものか。
「柊弥先輩!」
「春奈、どうした?」
考え込んでいたら、後ろから春奈に声をかけられた。
後ろに振り向くと、こちらに向かって春奈が走ってくるのが確認できる。
「良かった間に合って……」
「何か用事でもあったか?」
「えっと、その……」
急に春奈は口を噤む。何かを言おうとしているが、迷っている。そんなもどかしい雰囲気だ。
……何だろう、何故かこちらまでむず痒い気持ちになってくる。
「あの、これから少しお出かけしませんか!?」
「お出、かけ……?」
その言葉に一瞬固まった。
俺と春奈、2人で放課後にお出かけ。つまりそれは……俗に言うデートというものなのではないだろうか?
男女2人が出かけることがデートの定義なら、間違いなくそういうことになるだろう。
しかし待て、授業が終わり放課後ということは、学校の外には同じくらいの歳のヤツらが屯しているのではないだろうか。
もし俺達が2人でいるところを見られるようなことがあれば、間違いなく──
「ダメ、ですか?」
「いや、行こう」
難しい思考は放棄。なるようになれだ、レッツゴー。
---
「見てください柊弥先輩! このぬいぐるみ可愛いですよ!!」
「ああ、転ぶなよ」
お互い特に行きたいところもなかったので、とりあえず商店街にやってきた。
そこで見つけた女子ウケの良さそうな雑貨屋に春奈の視線が釘付けになっていたので、そこに入ることにした。
はしゃぐ春奈はまるで子どものよう。いや、中学生はまだ世間一般的には子どもか。俺にも当てはまることだが。
しかし、予想はしていたが店の中は同じ歳くらいの女子で溢れかえっているな。それと、カップル。
そんなところにいる俺達2人もやはりそういう風に見えるのだろうか。
春奈と俺がカップル。全く悪い気はしないが、春奈の方はそういうことを考えたりしているのだろうか。
放課後誘われるくらいだから、間違いなく悪くは思われていないはず。そう思うことにしよう。いや、そう思いたい。
「あ! これって……」
「こ、これは……」
春奈が指さした先にあったのはゴーグル。なんで雑貨屋にゴーグル? と思ったが、ツッコムべきところはそこではない。
そう、このゴーグル……
「鬼道、何故ここに……?」
「ですよね! お兄ちゃんですよね!」
「ブッ!!!」
どこからか吹き出すような声が聞こえた。その声の方向に振り返ったが、誰もいなかった。空耳だろうか……?
「なあ、今なにか聞こえなかったか?」
「えっ!? き、気のせいですよきっと!! いきましょ!」
腕を引っ張られ、その店を後にした。
おかしいな……何か聞こえたような気がしたんだが……
「な、なんで……!」
「ん? どうかしたか?」
「い、いえ! 何でもないんです!」
嘘だ、明らかに何かある言い方だった。
とはいえ、何も無いという女子を問い詰めるのはナンセンスだとどこかで聞いた。深くは言及しないでおこう。
---
「うーん、ここのフレンチトーストは絶品ですね」
「こっちのパンケーキもかなり良いぞ」
雑貨屋から飛び出すように出てきた俺達は、商店街に新しくオープンしたカフェにやってきた。
色々なメニューがあったが、特に気が惹かれたパンケーキを注文してみたのだが、これが大当たり。
ナイフを使わずとも、フォークのみで簡単に切れるふわっと柔らかさ。口に含めば、しゅわっと溶けるような食感が舌を支配する。
付け合せのクリームも滑らかな舌触りかつ、そこまで甘さがくどくない。フルーツもみずみずしくて良い。
この店、後でお気に入りに追加しておこう。
「美味しそうですね……?」
「ああ、今まで食べてきた中で1、2を争うレベルだ」
春奈の視線がこちらに突き刺さる。
何だ、この何かを訴えるような視線は。
そうだ、見覚えがある。
これは絶好調の染岡がパスを求めている時のそれに近い。
つまり春奈は何かを求めているんだ。しかもそれを俺に感じ取らせようとしている。
分かった、分かったぞ──
「──食べる?」
「はい!」
正解だったようだ。
テーブルの上を滑らせるようにして春奈に皿を向けると、実に幸せそうな顔でパンケーキを頬張る。
やはり、女子は甘いものが好きというのは全世界共通の事実ということだろうか。
しかし、本当に幸せそうに食べる。
「柊弥先輩、私のフレンチトーストも食べていいですよ」
「良いのか? ありがとう」
交換条件ということだろうか? あちらのフレンチトーストも気になっていたからちょうどいい。
……うん、美味い。
なんというかこう、調和が取れている。ありとあらゆる甘さが自分の分をわきまえているとでも言えばいいのだろうか。それぞれがそれぞれの邪魔をしていない、完璧な甘さがそこにある。
「春奈の言う通り、絶品だな」
「あ、あの……柊弥先輩……」
春奈が急に顔を赤らめて名前を呼ぶ。
「どうした?」
「そのフォーク……私のです」
そこで自分のやらかしに気付いた。
そう、フレンチトーストの皿の上に置いてあったフォークをそのまま使ってしまったのだ。春奈がついさっきまで使っていたフォークをだ。
あっちは自分のフォークで俺のパンケーキを食べたというのに、俺はそれに気付くことなくフォークを口に運んでしまったのだ。
「……その、ごめん」
「だ、大丈夫です……」
完全にやらかした。今世紀最大にやらかした。
これからデリカシー皆無男として見られてしまうだろう。終わった。
「柊弥先輩」
「……何でしょうか」
「間接キス、ですね」
心臓を貫かれたような衝撃に襲われる。
頭では分かっていた。自分が犯した罪を嫌という程理解してしまっていた。
だがそれを口には出さなかったし、考えないようにした。悶え死んでしまいそうな羞恥心に殺されると思ったからだ。
しかし春奈は、それを口に出してしまった。
結果、抑え殺したはずの羞恥心が、雷のように俺を貫いた。
「ほんっっっっとに申し訳ない」
「大丈夫ですって! ちょっと意地悪しただけですから! そんな本気の謝罪しないでくださいよ!?」
「ンンッ!!」
全身全霊で春奈に謝罪をしたら、後ろの席から咳払いが飛んできた。
騒がしかっただろうか、これは申し訳ない……
いや待て、どこか聞き覚えのある声だったような。
「……今の声、聞き覚えないか?」
「さ、さあ? 気のせいじゃないですかね……?」
……まあ、そういうことにしておこう。
「……そろそろ出ましょうか」
「……ああ、そうだな」
店の中を騒がしくしてしまったし、この辺りで店を出ることにした。
後ろの席の人の顔を覗こうかと思ったが、レジと逆方向だったので諦めた。
「あ、お会計個別で──」
「5000円でお願いします」
春奈が個別に会計をレジに頼むより早く、札を叩き付ける。
店員はにこやかな表情でその札をレジに吸わせ、釣り銭を手渡してくる。
「えっ!? 悪いですよ!」
「気にするな。お詫びも兼ねてってことにしといてくれ」
こうでもしないと、罪悪感が拭いきれないのだ。
春奈はお金を手渡してこようとするが、全力で拒否する。俺のプライドが意地でもそれを許さない。
数十分程戦い続け、ようやく俺が勝利した。
「もうこんな時間ですか……」
「そろそろ帰らないとだな。送っていくよ」
気がつけば部活が終わったくらいの時間になっていた。
ここからどこかに行くとなると、明らかにいつもより遅い帰りになってしまうだろうから、この辺りで帰宅することにする。
春奈を家まで送る中、色々なことを話した。
まだ部活と呼べるかすらギリギリだったあの時のことから、全国大会の準決勝まで辿り着いた今までのことまで。
思い返せば、ここまであっという間だった。まだ半年も経っていないのだから驚きだ。
「本当、凄いことですよね」
「ああ。良いチームに恵まれたよ」
このチームじゃなければ、ここまで来れなかっただろうからな。出会いに感謝とは良く言ったものだ。
「っと、確かこの辺りだよな」
「はい! 送ってくれてありがとうございました!」
確か、野生中との試合の前だったか? あの時も春奈を家まで送ったな。
「柊弥先輩! あの……また誘っても良いですか?」
「ああ、もちろん。今日は楽しかったよ」
そう返すと、春奈は眩しいほどの笑顔を浮かべる。
「本当ですか! 絶対ですよ!」
「俺は嘘はつかないよ。じゃあ、また明日」
「はい! おやすみなさい!」
そう言って春奈は家の扉を開け、姿を隠してしまった。
今日は楽しかったな。
もし春奈と付き合うようなことがあれば、きっと毎日が楽しいのだろう。
「……帰るか」
……滅多なこと考えるものじゃないな。
俺が誰かと交際するなんて……考えたことも無い。楽しかったからって少し浮かれているのかもしれないな。
試合も近い事だし、気を引き締めなければ。
---
「明日は木戸川との準決勝! 気合い入れて練習するぞ!!」
そう言って守が部室を飛び出していく。それを追いかけて他のヤツらもグラウンドへと走っていった。
俺も行こう……と思ったら後ろから俺を呼ぶ声があった。
「どうした? 鬼道」
「その……なんだ。妹をよろしく頼む」
それだけ言って鬼道は去っていった。
……今の一言で、点と点が繋がった。
「鬼道! お前昨日尾けてただろ!?」
昨日の聞いたことある声、あれは鬼道のものだったんだ。
そして後から問い詰めたら、他にも秋や土門、修也がいたことが発覚した。
俺が練習中に春奈と話していると、前者2人は妙にニヤニヤしながらこっちを見てきた。全く、コイツらは……!
というわけで、今回は柊弥と音無のデート回でした。
次回は木戸川清修との試合ですね。
さて、ここで予告した通りお知らせです。
なんとこの度、「憑依円堂列伝〜TS娘と時々未来人〜」を執筆されている花蕾先生からコラボのお誘いをいただきました!!
しかも、拙作だけじゃないんです。
低次元領域先生の「かき集めた部員が超次元な奴ばかりだった件について」
ウボァー先生の「超次元な世界では勘違いも超次元なのか?」
こちらの2作品様もコラボに参加されるそうです!
・・・私があの3人の先生方と名前を連ねて、本当に良いんでしょうか?ヤベェっすよ(本音)
コラボ話の投稿は12月中にされるそうです。ぜひお楽しみに!