Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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1万字超えたァ!
急に評価が伸び始めた・・・もしやコラボ効果!?
最後にちょっとコラボ導入に触れてるのでぜひぜひ

誤字報告、めちゃくちゃ助かってます。ありがとうございましす。


第30話 Fly to the sky

『本日はBブロック準決勝!! 昨年の準優勝チーム、木戸川清修と今大会台風の目、雷門中の試合です!!』

 

 

 台風の目、ね。

 確かに大会が始まった頃は全くの無名だった俺達がここまで勝ち上がりもすれば、台風の目だのダークホースだの言われるのも当然か。

 

 

 対する相手、木戸川清修は前年度の準優勝校だ。

 去年の敗北を受け、今年こそはと熱が入っているだろうが、熱量で俺達が負けるはずがない。

 言わば意地と意地のぶつかり合いだ。もっとも、それはこの試合だけに言えることでは無いのだが。

 

 

「修也、行けるな?」

「勿論だ」

 

 

 俺の問いかけに当然と言わんばかりの声色で返答する修也。

 修也にとって木戸川清修は、少なからず因縁の残る相手だ。前から大丈夫だと言ってはいたが、何か思うところがあるのではないかと思っていたが、俺の杞憂だったようだ。

 修也の目にはギラギラと炎が燃えている。勝負に赴く戦士の目だ。

 これは俺も負けていられないな。

 

 

『この試合を制した方が、フットボールフロンティア全国大会の決勝へと駒を進めます!! そして、その試合の開始を告げるホイッスルが今──鳴ったァァァ!!』

 

 

 審判が高らかとホイッスルを鳴らす。試合の火蓋は切って落とされた。

 

 

 試合開始早々に三兄弟が前線目指して駆け上がる。そう易々と行かせるかよ! 

 

 

「甘いっしょ!」

「くッ!」

 

 

 かなり鋭くスライディングを仕掛けたが、あっさりと躱されてしまった。

 続いて修也や染岡もプレスを掛けに行くが、三兄弟のずば抜けた連携の前には歯が立たない。

 以前はシュートの側面しか見れていなかったが、やはり攻めに関する技術は群を抜いている。

 分かっていたことだが、なめてかかって勝てる相手ではない。

 

 

 鬼道の指示で中央に守備が展開されるが、それすらも軽く抜き去ってしまう。

 一瞬のうちに1人がゴール近くまで上がり、それを見て高くセンタリングが上げられる。

 

 

バックトルネード!! 

 

 

 あっという間に1本目のシュートが放たれた。試合開始3分も経っていないだろう。

 蒼炎を纏ったシュートが守が待ち構えるゴールへと落ちて行く。

 

 

 ……やはり気のせいではない。あのシュート、以前よりも威力が増している。

 猛特訓を重ねたのか? それとも以前は全力ではなかっただけなのか? 

 

 

爆裂パンチ! 

 

 

 真正面から拳の雨嵐がボールを捉える。

 一撃、また一撃と確実に打ち込まれるが、炎の勢いが弱まる気配はない。

 そればかりか、段々とパンチの威力が負け始めている。

 

 

「守ッ!!」

「ぐッ……おおおおおお!!」

 

 

 守は負けじと拳を叩き込み続ける。

 しかし、無情にもある一撃がボールの真ん中を捉えることが出来ず、その拍子に守は顔面でボールを受けることになる。

 ボールごと押し込まれた守は、ゴールネットによって受け止められる。

 

 

『ゴール! 先制点を決めたのは木戸川清修だ!! 目にも止まらぬ速攻で華麗に1点を奪った!!』

 

 

 なんて速攻だ。決して侮っていた訳では無いが、試合になるとここまで鋭い攻めをしてくるとはな……

 視界の先には、悔しそうに拳を打ち付ける守の姿があった。

 点を取られたのはあいつだけの責任じゃない。前線で抑えきれなかった俺の責任でもある。

 

 

 だから、その分は俺が取り返してやる。

 

 

「修也、染岡」

 

 

 2人に声を掛け、方針を伝える。

 あっちがあっという間に点を取ったなら、こっちはもっと一瞬でもぎ取ってやるよ。

 

 

『1点の先制を許した雷門中、早いうちにこの不利状況を覆したいところだが……おーっと!? 再開のホイッスルと同時に、ボールを受け取った加賀美が凄まじい速さで切り込んでいく!』

 

 

 修也からボールを受け取ったその瞬間に、ボールと共に前線へと駆け上がる。

 ヤツらはまだ俺のトップスピードを直に体験したことがない。この1回だけなら、ヤツらの反応を上回ることは容易いはずだ。

 

 

 事実、最前線で睨み合っていた三兄弟は全く追いついてこなかった。

 とは言っても、この手が通用するのは最初だけ。

 だからこそ、是が非でもここで1点奪い返す! 

 

 

雷光翔破!! 

 

 

 行く手を相手のディフェンス陣が塞ぐ。だがここで止められる訳にはいかない。

 "高速"から"光速"へとギアを上げた今、誰も追いつけやしない。

 

 

 この場は、俺の独壇場。

 他の追随なんて許さない。

 

 

轟一閃──"改"

 

 

 視界が開け、目の前に相手ゴールとそれを守るキーパーだけが移るのを確認した瞬間、加速によって得た全ての力を脚に集中させてボールを踏み抜く。

 雷を帯びながら浮かぶボールに対し、文字通りの光速で脚を振り抜く。

 そうすれば、轟音と共に雷が獲物へと落ちていく。

 

 

「タ、タフネ──」

 

 

 キーパーが必殺技の構えに入った。だが遅い。

 ボールを受け止める体勢が整う前に、雷が真正面からキーパーの腹を貫く。

 為す術なく押し込まれたキーパーは、俺よりも大柄な身体をゴールネットに叩き付けられた。

 

 

『ゴ、ゴォォォル!? 雷門中15番、加賀美!! 正しく雷のような攻めで単身ゴールを奪ってしまった!! これが雷門中を支える副キャプテン! "雷鳴ストライカー"の実力だァ!!』

 

 

 やってやったという満足感と共に自陣へと戻る。

 今初めて知ったが、雷鳴ストライカーなんて呼ばれてたんだな、俺。

 修也の"炎の天才ストライカー"や染岡の"雷門の点取り屋"みたいな感じで良いな。気に入った。

 

 

「ナイスシュート、雷鳴ストライカー」

「どうも」

 

 

 修也の冷やかしを軽く流してやる。まだこれで終わりじゃない。それどころか時間的にはまだ始まったばかりだからな。

 とりあえずまだまだ点を取っていこう。

 

 

「なかなかやりますね!」

「けど、調子に乗るなよ!」

「まだまだ俺達は本気じゃない! みたいな!」

 

 

 なんか言われた気がするけど、スルーで。

 

 

「「「無視ィ!?」」」

「お前……アイツら嫌いなのか?」

「いや、そういう訳では無い」

 

 

 試合中にいちいち相手に反応してたらキリがないってだけのことだ。別にここでは好き嫌いは関係ない。

 サッカープレイヤーなら、試合の中で語るのが礼儀のようなのだ。

 

 

 そして、全員がポジションに着き直して再び試合が動き出す。

 

 

 またもや三兄弟のターンが始まったのか、目にも止まらぬ連携で俺達を切り崩していく。

 だが、さっきよりは対応出来ている。ここに鬼道のゲームメイクが加われば……次は間違いなく止められる筈だ。

 

 

 なんて考えはしたものの、今この状況では完全に出し抜かれている。

 最後の防衛線も突破され、11番……緑のモヒカンがまた守と1対1だ。

 さっきは止められなかった守だが、今度は大丈夫だろう。これは予感などではなく、確信だ。

 アイツなら次は止める。そう信じている。

 

 

バックトルネードッ! 

 

 

 先程点数を奪ったシュートが再び守へと襲い掛かる。

 対峙する守が選んだのは、幾度となく雷門のゴールを守ってきた神の手。

 

 

「止める! ゴッドハンド!! 

 

 

 黄金に輝く巨大な手が、蒼炎を纏ったシュートを真正面から受け止める。

 これには一切押されることなく、しっかりと威力を殺しきってみせた。そう来なくっちゃな。

 

 

 ボールは大きく前線へと送り出される。

 中陣のマックスがそれを受け取るが、次の瞬間また奪われてしまう。あそこまで下がってきていた三兄弟達だ。

 ヤツらは再び俺達のゴールへと攻め上がってくる。

 しかし、何度も上手く行くかな? 

 

 

 一見綺麗に通ったパスに思えたが、その先には鬼道が待ち構えていた。そしてその後ろをすかさずマックスが抑える。

 そう。始まったのだ、鬼道のゲームメイクが。

 ここまで簡単に攻められてきた俺達だったが、とうとうその勢いを封じる段階へと歩みを進めたのだ。

 

 

 何とか打開しようとパスを繋ごうとしたところを、土門が空中でクリア。

 マックスがそのまま上がるが、三兄弟全員に徹底マークされてボールを奪われる。

 そのまま11番がサイドから上がり、それを見て10番がセンタリング。

 

 

「今度こそ……バックトルネード!! 

 

 

 3回目のバックトルネード。しかし今回はゴールとの距離がかなり離れている。

 そうすれば当然、ゴールに辿り着く頃には威力がある程度削がれている。これなら……

 

 

爆裂パンチ! でりゃぁッ!!」

 

 

 1度は破られた爆裂パンチでシュートを弾き返して見せた。リベンジ達成で嬉しそうな顔をしているのが見える。

 

 

 そしてここで、木戸川に乱れが見え始める。

 正確に言うなら、三兄弟とその他の間で、だ。

 ゴールを奪えないことに焦りを覚え始めたのか、三兄弟の間だけでの連携を意識しすぎている。

 そうすれば当然、こちらから漬け込む隙が目に見えて増加する。

 なら、そこを遠慮なく突かせてもらえばいい。

 

 

 俺が気付けたのなら当然それに鬼道も気付いている。

 ヤツらの穴を突き、徐々にこちらへと主導権を手繰り寄せる。

 それでパスが通らなくなれば、さらに三兄弟は焦り、連携がガタガタになり始める。

 ここまで来ればあとは点数を取るだけ……なのだが、俺達FWへの警戒心が半端じゃなくて、とてもゴールまで辿り着けない。

 

 

「じゃあ、それを利用するのは?」

「そうか、トライペガサスか!」

 

 

 その手があった。

 そうと決まれば、トライペガサスに持っていくまでの流れを組み立てる。

 鬼道と一之瀬が考えた作戦を共有し、それぞれのポジションに戻る。この2人がいれば作戦面で負ける気がしないな。

 

 

 そして守のキックから試合再開。本来は大きく蹴り、前線へと送り出すのがセオリー。

 だが、今回の守は1番近くの土門へとパスをだす。

 そしてそれに吊られた三兄弟は一斉に土門に食いつく。

 

 

「今だ!」

 

 

 鬼道の指示が飛んだ瞬間、俺、修也、染岡は一気に走り出す。

 そうすれば、三兄弟の注意が俺達に向くのは勿論、マークも俺達に集中する。

 そうすれば、あとはアイツらが決めるだけだ。

 

 

『おっとこれは大胆! 一之瀬と共にキーパーの円堂、ディフェンスの土門が前線へと躍り出る!』

 

 

 当然、ボールを持って上がってきた3人を止めに木戸川は動こうとする。

 だが、俺達のマークに着いてきた守備陣は、逆に俺達に抑え込まれている。

 呆気に取られて反応が遅れた三兄弟も、全く追いつけていない。

 

 

「決めろッ!!」

 

 

 3人がトップスピードのまま1点で交差する。

 すると、それぞれが描いた軌跡に沿って蒼い炎が空へと吹き上がる。

 その中から姿を現したのは、雄々しく強大なペガサス。

 

 

「「「トライペガサス!! 」」」

 

 

 道を示されたペガサスは、悠々と空を駆ける。

 あまりの圧力に怯んだ木戸川のキーパーは反応が遅れ、必殺技では間に合わないと判断しそのまま抑えにいくが、それで止められるほどペガサスの勢いは弱くなかった。

 邪魔者を蹴散らし、ペガサスは華麗に地に足を着く。

 

 

『ゴールッ!! 何とキーパー円堂が加わった攻撃で点数を奪い取った! 序盤とは一転し、リードを作ったのは雷門中!!』

 

 

 こちらに戻ってくる3人をハイタッチで出迎える。

 これでとりあえず俺達の優勢に傾いた。このまま逃げ切れば勝ちだが、狙えるのならどんどん追加点を取りたいところ。

 

 

『ここで前半終了!! 両者1歩も譲らない攻め合いの中、雷門中が1点リードしたまま後半へ! 準決勝に相応しい熱い試合です!』

 

 

 と、ここで一旦ハーフタイム。

 ベンチで後半の流れについて擦り合わせをしておこう。

 

 

「さて、トライペガサスで1点の有利を作れたが……後半はどうだろうな」

「ヤツらとて強豪校。後半からは修正してくるに違いない」

 

 

 それは俺と鬼道だけでなく、全員同じ認識だったようだ。

 そして、トライペガサスを切った俺達と違い、あちらはまだ切り札を残している。

 

 

「トライアングルZ……後半は確実に撃ってくるはずだ」

「ああ。このまま終わるはずが無い」

「任せろ! 俺が絶対に止めてやるさ!」

 

 

 守が拳を突き合わせてそう意気込む。頼もしい限りだ。

 なら、俺達はそれを信じてやることをやるだけ。

 

 

「後半もトライペガサスで点を取りに行こう。俺達FWは引き続きサポートに回る」

「分かった。頼むよ」

 

 

 一之瀬とハイタッチを交わす。守の負担を考えると少し不安が残るが、現状1番信頼出来る流れだろう。

 ならば俺達はその流れを支える土台に専念する。

 

 

「豪炎寺!」

「お前には負けない!」

「勝って俺達が強くなったことを証明するんだ!!」

 

 

 後半再開直前、三兄弟が修也に近付いてそう宣言する。

 コイツら、単純に修也より強くなりたかっただけなのかもな。キッカケがキッカケなだけあって、少し拗れた方向に進んでしまったというだけで。

 まあ、どんな事情があろうとも今は試合中。目の前に集中するのみ。

 

 

 そして後半再開のホイッスルが鳴る。

 キックオフは俺達からだったため、一旦後ろに預けてそのまま前線へと出張る。

 だが、ボールは俺達の元へはやってこない。

 答えは単純明快。木戸川が上手くパスコースを潰しに来ているからだ。

 恐らく、あちらの監督の入れ知恵。先程までの崩れ方を危惧してのしっかりと指示を出してきたようだ。

 

 

「もらい!」

「くっ!?」

 

 

 そして、ふとしたタイミングで鬼道が三兄弟にボールを奪われる。

 ヤツらは当然のようにそのままゴールへと駆け上がる。

 

 

 黙ってそれを通すはずはなく、風丸を中心として後衛達が次々と行く手を阻むが、鮮やかなパス回し、カバーで難なく切り抜けてしまう。

 まずい、3人揃ってる。

 間に合わないかもしれないが、足は既に動き始めていた。

 

 

「見せてやる、俺達三兄弟の必殺技!!」

 

 

 エネルギーを集中させたパスを繋ぎ、その度に込められた力が爆発的に上昇する。

 高く打ち上げられたそのボールをゴールに向かって蹴り込むと、着地際に地上で独特なポージングをとる。

 そう、これこそが武方三兄弟の必殺シュート。

 

 

「「「トライアングルZ!! 」」」

 

 

 凄まじい威力だ。走って近づいたとはいえ、俺までそのシュートの力強さが伝わってくる。

 恐らくは、俺達のトライペガサス以上の威力。

 つまり、今この会場における、最強威力のシュートだ。

 守はゴッドハンドで抵抗するも、簡単に破られた。

 

 

「見たか! これが俺達の力だ!!」

 

 

 その視線は豪炎寺に向いていた。

 それを受けて豪炎寺は、静かに瞳の中の炎を揺らす。

 

 

「……お前達の好きにはさせない」

 

 

 不敵に笑う三兄弟に対し、至って冷静に返す豪炎寺。

 軽くあしらわれ、面白くなさそうな表情で三兄弟は戻って行った。

 

 

 とはいえ、不味いな。これで同点だ。

 守のゴッドハンドでもトライアングルZは止められない。守備に徹したところで勝ちきれるかは怪しいところ。

 となると、やれることは1つ。ひたすらに点を狙う。

 

 

 鬼道と一之瀬に視線を送ると、分かってる。と言いたげな視線が返ってくる。

 やるしかない。

 

 

 試合再開早々、三兄弟はボールを奪って雷門ゴールへと攻め上がる。

 しかし、鬼気迫る勢いで鬼道がスライディングを仕掛けてボールを自分のものにする。

 それを見て、すぐさま一之瀬と土門、守は攻め上がる。

 

 

「行くぞ! トライペガサスだ!」

 

 

 一之瀬を中心として加速が始まる。

 トップスピードに差し掛かり、いざ発動の1歩手前まで来たところで、相手2番の西垣がその行く手に立ちはだかる。

 

 

スピニングカット! 

 

 

 脚から衝撃波の刃を飛ばし、地面を刻む。

 するとそこから吹き出すようにして現れた衝撃波が、3人を弾き返してしまった。

 確か、アイツは一之瀬と土門との顔見知り。トライペガサスの対処法を知っていたという訳か。

 

 

「ペガサスの羽根が折れたな……行け!!」

 

 

 そしてそのボールは、武方三兄弟へ。

 

 

『不味いぞ雷門!! キーパーの円堂が前線にいる状態で武方三兄弟へとボールが渡ってしまった!!』

 

 

 鬼道がすぐさま指示を出す。

 だが、トライペガサスを阻止されたショックで反応が遅れてしまった皆はあともう少しというところで三兄弟を取り逃がす。

 このままでは──

 

 

「キーパーがいなくとも全力で撃つ!!」

 

 

 先程見たばかりの動き。それが意味するのはただ1つの事実。

 

 

「「「トライアングルZッ! 」」」

 

 

 キーパー不在のゴールに向かって、容赦なく自分達の最強シュートを撃ち込む武方三兄弟。

 キーパーが不在なのであって、無人という訳では無い。俺がここまで戻って来るのに間に合ったからだ。

 本当なら発動に割り込めれば良かったのだが、ギリギリのところで間に合わなかった。

 

 

 クソッ、バックトルネードだったらまだいけたかもしれないのに。

 

 

「らァッ!!」

 

 

 とはいえ、無抵抗でやられる訳にもいかない。俺は無我夢中でトライアングルZに対して蹴り込んだ。

 が、粘れたのはものの5秒程度。守の全力でも止められなかったようなシュートを俺が脚で止められるはずもなく、味わったことの無いような衝撃とともにゴールに叩き込まれた。

 

 

『ゴール!! 円堂が前に出た隙をつき、トライアングルZで3点目を奪った木戸川!! これは雷門にとって痛手だァ!!』

 

 

「柊弥!! クソッ、すまない!!」

「気にするなよ。やることやったんだから、仕方ない」

 

 

 責任を感じまくってる守に対し、慰めという訳では無いが声を掛ける。

 トライペガサスを狙えというのは俺含めチーム全体の意思。そのせいでゴールを守れなくても、俺達に攻める資格はない。

 

 

 手を貸してもらって立ち上がる。

 脚は……大丈夫だな。全然走れるしシュートも撃てるだろう。

 

 

 しかし2-3か。トライペガサスも封じられた中でこの劣勢は些かまずいように思える。

 

 

「俺が決める」

「修也」

 

 

 ポジションに戻ると、修也が肩に手を置いてそう宣言した。

 俺の脚を心配してか、はたまたエースとしての意地か。まあどっちでもいい。

 

 

「頼んだ」

 

 

 修也がやるって言ってるんだ。絶対に点数を奪ってくれるはず。

 なら俺はそれを全力で支えてやる。

 

 

 ホイッスルが鳴り響く。修也からボールを預かった俺は、そのまま前線へとボールを運ぶ。

 1点目のこともあって、俺への注意はかなり強い。

 なら出来るだけ引き付けて、タイミングを見計らって……

 

 

「修也ッ!」

 

 

 修也へとパスを出す。が。

 

 

「もらった!」

 

 

 綺麗に割り込まれてしまった。悪くないパスだと思ったが、ダメか。あまりに引きつけが露骨だっただろうか。

 

 

 また相手のターン。早いところボールを奪い返さなければ。そう思った次の瞬間だった。

 

 

「ふッ!」

 

 

 修也が颯爽とボールを奪い、染岡と2人で木戸川ゴールへと攻め上がる。あまりに一瞬のことに、俺達ですら何が起こったのか理解出来ていなかった。

 一瞬の虚を突いた完璧な奪取。いつもよりキレが増しているな。

 

 

 そのまま修也は染岡と鋭いパス回しでゴール前へと辿り着いた。

 

 

ドラゴン!! 

トルネード!! 

 

 

 染岡と修也の連携シュート。炎を吐きながら紅龍がゴールへと襲い掛かる。

 だが、ここまで必殺技で反応出来なかった相手キーパーが、ようやく必殺技を用いてシュートを迎え撃つ。

 

 

タフネスブロック!! 

 

 

 力を溜め、胸を大きく張り、ドラゴンの圧に負けることなくシュートを捉える。

 やがてドラゴンは姿を消し、ボールは大きく弾かれる。

 

 

 ダメだったか。そう思ったその瞬間だった。

 弾かれたボールに対して飛び付く人の姿。そう、それは豪炎寺修也だった。

 

 

ファイアトルネード!! 

 

 

 そのボールに対し、そのままの勢いでファイアトルネードをぶち込んだ。

 必殺技を発動した直後ということもあり、キーパーは指先で掠めることすら叶わずにゴールを許した。

 

 

『ゴール!! 雷門のエース豪炎寺!! 染岡との連携のもと、怒涛の攻め上がりで一点を返した!! 3-3!! 同点だ!!』

 

 

 本当にやりやがったよアイツ。毎回有言実行するからアイツはカッコイイんだよな。

 染岡もあの一瞬でよく合わせられたものだ。

 

 

 さて、残り時間もあと僅か。しかし点数は同点。

 なんとしてでも試合を動かさなければならない。

 

 

 また修也か? それとも染岡か? 俺か? はたまたトライペガサスを狙うか? 

 ……正解がどれかなんて、誰も分からないか。

 ならやれることは1つ。

 

 

「皆!! 気張っていこうぜ!!」

 

 

 雷門の全員サッカーで、最後まで戦い抜くことだ。

 俺達全員で1点取って、絶対に決勝へ行ってやる。そして世宇子中を倒して、俺達が日本一になるんだ。

 

 

 皆も同じ気持ちなのか、瞳に力が篭っている。

 そうだ。俺達はこんな所で負けてられないんだよ。

 

 

 木戸川のキックオフで試合再開。そこからは文字通り1歩も譲らない展開だった。

 どちらかが攻めれば。どちらかが全力で守る。

 どちらかが1本シュートを撃てば、どちらかが仕返しとばかりに1本撃つ。

 普段はシュートを撃たないようなやつもシュートを撃ち、普段は後ろに下がらないようなやつが後衛に参加する。

 まさに一進一退。

 

 

 試合は依然として動かない。もはや残された時間はロスタイムのみ。

 このまま延長戦になるのかとスタジアムに緊張が張りつめる中、時間は流れていく。

 どうする、どうすれば点をもぎ取れる……

 

 

「ボールを、寄越せぇぇ!!」

「ぐっ!?」

 

 

 鋭いスライディングでボールを奪い取られる。クソッ、意識が目の前から逸れていた! 

 すぐさま取り返すべく走り、手を伸ばす。

 しかし立ち上がった際のタイムロスでボールに追いつけそうもなかった。

 

 

 しかも、ボールの周りには三兄弟が揃っている。

 本気でまずい。

 

 

「延長なんて必要ない!!」

「勝つのは俺達なんだ!!」

「行くぞッ!!」

 

 

 本日三度目。そのシュートは放たれる。

 

 

「「「トライアングル、Zッッ!! 」」」

「絶対止める!! ゴッドハンドォォ!! 

 

 

 シュートを撃った三兄弟も、それを迎え撃つ守も息を切らしながら立っている。両者既に限界だ。

 そんな状況で、守はあのシュートを止め切れるか? 

 

 

「間に、合えェェェッ!!」

 

 

 帝国の時のように、守を後ろから支えるべく全力で走る。だがその途中であることに気付き、脚を止めた。

 

 はは、俺が焦る心配なかったか。

 そう。守を支えられるのは俺だけじゃない。

 

 

「キャプテン!!」

「俺達も手を貸すでヤンス!!」

 

 

 壁山と栗松が守の両後ろにつき、支える。

 3人の咆哮が重なった時、ゴッドハンドの輝きはより強いものになる。

 そしてそこに武方三兄弟の咆哮も響くと、シュートの威力がさらに増す。

 意地と意地のぶつかり合い。これではどちらが勝ってもおかしくない。だが、声を出さずにはいられなかった。

 

 

「止めろォォォォ!!」

 

 

 その時だった。

 1層強い輝きを放ったと思ったその次の瞬間、守の手の中にボールが収まっていたのだ。

 つまり、2度負けたトライアングルZに最後の最後で勝ってみせた、ということだ。

 

 

「止めた……止めたぞォォ!!」

 

 

 大手をあげて喜ぶ栗松と壁山。

 しかし、まだ終わってない。

 

 

「守! 上がれ!」

「任せたぜ、柊弥ァ!!」

 

 

 守が土門を引き連れ前線へと上がる。それをみて察した一之瀬も動き出す。

 俺の役目はシンプル。このボールを何としてもアイツらに届けること。

 

 

雷光……翔破!! 

 

 

 ここで全力出し切ってやる。

 こちら側のゴール近くから一気に加速し、相手のゴールへと迫る。

 俺を止めるべく武方三兄弟が全力でマークに着くが、ふとした瞬間に立ち止まる。

 一瞬に三兄弟が前のめりになったところでヒールパス。走り込んできていた一之瀬がそれを受け取った。

 

 

「トライペガサスはやらせないぞ!」

 

 

 西垣が再びスピニングカットを展開する。

 青白い衝撃波の壁に対し、何と一之瀬達は真正面からぶつかる。

 しかし、これでは……という予想は簡単に裏切られることとなる。何とその壁の向こうから3人揃って顔を出したのだ。

 これには西垣も驚きを隠せない。

 

 

 そして驚く西垣を横目に、3人は交差する。

 その中心から現れたのは、蒼いペガサスではなくて全身を炎に包んだ巨大なフェニックス。

 この土壇場で、トライペガサスを更に上の何かに進化させやがった。

 

 

「いけェェェェェ!!」

 

 

 不死鳥はそのままゴールへ落ちるように向かって行き、相手のゴールをこじ開けた。

 そしてその瞬間にホイッスルがなる。

 この一瞬で色んな事が起こりすぎて情報が渋滞しているが、最も大切なことだけは分かる。

 電光掲示板に視線を滑らせると、4-3の文字。

 そう、俺達の勝ち越しだ。

 

 

「──た」

 

 

 細い声が聞こえ、その後すぐに何十倍も大きな声が響く。

 

 

「やったぞォォォォォ!!」

 

 

 思わず拳を空高く突き上げる。

 やった、この準決勝で勝てたんだ。決勝に勝ち進んだんだ。

 こんな激戦を制して決勝に行けることに、喜び以外の感情が湧いてこない。

 

 

 ベンチで控えてた半田達や、春奈達マネージャーと喜びを分かちあっていると、何かを話している修也と三兄弟、相手の監督の姿が目に入った。

 どうやら、この試合を通して蟠りが解消されたようだ。修也の穏やかの表情を見れば察しが着く。

 

 

「とうとう決勝だな。守」

「ああ……ワクワクするな」

 

 

 そういう守は、どこか上の空のように感じる。らしくない。

 ふと横を見てみると、自分の拳をじっと見つめていた。おおかた、このままでは行けないとでも思っているんだろう。

 それは守だけでなく、俺達全員に言えること。決勝で勝つには、もっとレベルアップする必要がある。

 

 

「特訓、だな」

「え?」

「皆でまた特訓だ。お前は1人じゃねえよ」

 

 

 そう守に笑いかけると、やや曇っていた表情はすぐさま晴れやかなものに変わる。

 

 

「おう! そうだな!」

 

 

 日本一はすぐそこだ。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

「ふぅ、少し休憩」

 

 

 試合の翌日、今日は練習はオフなのだが、1人河川敷にて自主練に励んでいた。

 本当は休みでもいいのだが、世宇子中のことを考えるといても立ってもいられなかった。

 身体を動かしておかないと気が気でないのだ。

 

 

 アイツらから点を取るためには、もっと強く、速くならなければならない。

 この休憩時間すらも惜しい。

 とはいえ休憩は大事。しっかりと水分補給しなければ……ん? 

 

 

「誰だ?」

 

 

 ふと、大きな木の方から視線を感じた。明らかに俺に向けられたものだった。

 それに気づいて声を掛けると、ガサッという音がそちらから聞こえてくる。

 間違いない。誰かいるな。

 

 

 一体誰だ……? 守か誰かならいいんだが、全く知らないヤツだったら怖すぎる。

 ストーカー、とか? 

 

 

「……よし」

 

 

 意を決して木に歩いていく。視線の主を確かめなければ集中出来そうにないからな。

 と思った次の瞬間、あちらの方から姿を現した。

 

 

「なんだ、守か。驚かせ……ん?」

 

 

 そこには見慣れた守の顔が……と思いきや、よく見たら違う。

 守に似てはいるが、全然別人だ。だが顔も雰囲気もどこか守に通ずるものがある。

 けど、赤の他人だ。

 

 

「えっと、どちら様?」

 

 

 そう尋ねると、咳払いをしてその少年は口を開いた。

 

 

「俺、円堂カノンって言います! 加賀美柊弥さん、あなたにお願いがあるんです!」

 

 

 "円堂"という苗字に、何故か俺の名前を知っていること。引っかかる点はいくつもあった。

 けど、そんな疑問も次の一言で些細なものとなる。

 

 

「こことは違う世界……俺の世界のサッカーと未来を守るために、力を貸して欲しいんです!」




木戸川戦決着、そして迫るコラボの足音・・・
ということで、次はまるまる1本コラボ導入のお話を書きます!お楽しみに〜
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