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では、どうぞ〜
「まあとにかく座れよ、話を聞くから」
「はい! えっと、まず何から……」
そう言って2人でベンチに腰を降ろす。
しかし、見れば見るほど守に似た顔をしている。良く見れば違うし、雰囲気も似て非なるものだが。
バンダナをしているところなんかはもはやそのままだな。
「あの……?」
「ああ悪い。知り合いに似てると思ってな」
ついつい見つめすぎたようだ。まじまじと自分の顔を見られて気を悪くしないヤツはいないだろう。反省。
「円堂守のことですよね?」
「ああ、知っているんだな」
「そりゃあもちろん! 俺は円堂守の曾孫ですから!」
……またまた、と言いたくなるが、それなら何となく納得出来てしまう。
さっき"こことは違う世界のサッカーと未来を守って欲しい"って言ってたということは、つまりそういうことなのだろう。
普通の人間ならば、違う世界? 未来? 何言ってんだコイツってなるだろうが、俺の場合は少し特殊な事情があるからな。
そう、天馬とフェイだ。
実際に未来から来たっていうヤツらと会ったことがあるからな……さすがに違う世界から来たヤツは初めてだが。
時間を飛び越えられる技術が存在するなら、世界を越えられる技術があってもおかしくないだろう。多分。
むしろ、そう考えでもしないと納得出来ないな。
「そうか……そうだな、とりあえずお前の世界では何が起こっていて、どういう経緯で俺に助けを求めてきたのかを話してくれ」
そう訊ねると、カノンは順を追って説明してくれた。
カノンの世界では、超大国に成長を遂げた日本では今もなおサッカーが流行っているらしい。
しかし、それを良しと思わない組織がある。その名も王牙学園。
その学園を設立した男は、サッカーにより本当の戦いを知らない子供たちが大人になるのを危惧し、ならば過去に遡りサッカーを消そうと目論んだらしい。
過去に遡って、どうやってサッカーを消す? その答えがサッカー流行の原因となった人物……円堂守にサッカーを捨てさせること。
抹殺した方が早いのでは? という疑問があったが、なんでも守の影響力が強すぎて、抹殺すると各方面に多大な歪みが及ぶからだそう。
そうして王牙学園から派遣されたのが、チーム・オーガ。
ヤツらは今この瞬間も、カノンの世界の守、雷門中と戦っているらしい。
その戦況は良いとは言えず、守達は現在進行形で苦戦を強いられている。だから、助っ人に助けを求めた。
そのうちの一人が俺、ということだ。
「加賀美さん、改めてお願いし──」
「分かった」
カノンの言葉を遮るようにして返事をする。当のカノンは呆気に取られたような表情をしている。
「お前は、守はサッカーを守るために戦ってるんだろう? 理由はそれだけで十分だ」
「あ、ありがとうございます!」
カノンは俺の手をブンブンと振り回して礼を言ってくる。肩外れそうなくらい力強いからちょっと勘弁して欲しい。
しばらく俺の腕がヌンチャクにされた後、カノンは俺に1冊のノートを見せてくる。
カノンの世界の守が書いたノートらしい。パラパラと捲ってみると、確かに守が書きそうな内容が連ねられている。
サッカーに対する熱意だったり、強い身体を作る鍛え方、必殺技の特訓法など様々だ。
守から聞いたことの無い必殺技の名前があるあたり、やはり未来のものなのだろう。
「……これは」
あるページで手が止まった。俺の興味を惹きつけたのは、"化身"という文字。
そう、天馬達と出会った時に俺の身体から現れ、凄い力を発揮したと思ったらその後は全く姿を見せないあれだ。
天馬達曰く、時空の共鳴現象がなんたらだそうだが……確か、違う時空の者が干渉することで違う時間軸に存在する自分と共鳴し、本来以上のパワーを発揮できるとかいう現象だ。
待てよ? もし俺があっちに助っ人に行ったとしたら、またこれの恩恵を受けられるのではないだろうか。
あの時は時間を超えてきたが、今回は時間も世界も超えてきている。ありえない話ではないな。
その後、カノンから補足説明がされる。
あっちにはこっちと性別が違うヤツがいたり、あっちの守は俺の知る守とはまた違った守ということだったり。
それと……助けを求めている助っ人は俺だけではないということ。癖の強い人物達だから上手くやって欲しいとのことだ。
いやまあ、まさか自分の身体に悪魔だったり神だったりを宿してたりする訳ではないだろうし……きっと何とかなるだろう。
「カノン、まだ時間はあるのか?」
「ええ。加賀美さんの理解が早かったおかげで」
その言葉を聞き、俺は少し歩いてあるものを拾い上げる。サッカーボールだ。
キョトンとしているカノン。が、俺はそんなカノンに向かって思い切りボールを撃ち込む。
「うわっ!?」
「ちゃんと受け止めるか」
不意打ちのようなシュートだったが、案外あっさりと止められてしまった。打ち上がったボールがカノンの手の中に収まる。
何故? といった目線を向けてくるカノンに対し、手招きをする……ピッチの上で。
するとカノンは俺の意図を汲み取ったらしく、ニヤリと笑ってボールを地に転がす。
「そういう事ですか……付き合いますよ」
「ありがたい。準備運動は大切だろ?」
そう言い終えると同時にカノンが打ち込んでくる。先程の意趣返しと言わんばかりのシュートだ。
空気を裂きながら迫ってくるそれを胸で止めると、視界を影が覆う。カノンがこちらに飛びかかってきていたのだ。
ボールを奪われまいとすぐさま身体を盾にする。一瞬でカノンとの距離を空けて目線を向けるが、カノンの足元にボールがあることに気付いた。
「いつの間に」
「へへっ、このくらいは出来ないと助けなんて求められないですよ……ねッ!」
そう言ってカノンはこちらに背を向けて走り出した。カノンが向かう先はゴール……そういうことか。
「そう簡単にやらせるかよ!」
「うわ、早ッ!?」
少し油断していたのか、カノンは俺の接近に対してオーバー気味な驚きを示す。
その動揺の隙に、カノンの行く手を塞ぐように立つ。俺を抜き去ろうと右へ左へ揺さぶりをかけてくるが、数手先を読んで突破を許さない。
暫くそうしていると、カノンが思いもよらぬ行動に出た。
「だりゃァッ!!」
何と無理やりシュート体勢に踏み切ったのだ。
予想外のことにほんの少し反応が遅れてしまったが……問題ない。
「しッ!!」
こっちも真っ向勝負だ。カノンとボールを挟み込むようにしてこちらも蹴りを叩き込む。
ボールを中心に微弱なイナズマが迸り始める。あっちの力が弱まることは無い。
「はァァァァァ!!」
凄まじいパワー。本物だ。
少し実力を見る意も込めてけしかけたか、ここまでやるとは予想外。一瞬でも気を抜いたら押し負けそうだ。
だがこちらにもストライカーとしての維持がある。1歩も引く気は無い!
「負けるかよッ!!」
負けじと足に込める力をさらに強くする。
微弱だったはずのイナズマはその勢いを強め、周囲や俺達の身体を打つ。それでもカノンは全然譲ってこない。
いいね、ボルテージが上がってきた。
「らァァァァァッッ!!」
咆哮と共に己を奮い立たせると、どこかで温存されていた力が身体をに満ちるのを感じる。
多すぎるくらいのパワーは行き場を無くし、身体から吹き出しているのではないかという錯覚すら覚える。
すると一瞬、カノンの力が弱まるのを感じた。
押し込める。
「貰ったッ!!」
押し負けたカノンは軽く吹き飛ばされ、余りあるパワーを注がれたボールは真っ直ぐに反対側のゴールまで突き刺さり、数十秒経ってようやく勢いをなくした。
「いてて……流石、すごいパワーですね」
「そっちこそ」
カノンに手を差し伸べ立ち上がらせる。
「さて、ちょうどいい時間になったので俺は一旦失礼します……これを」
そう言ってカノンが俺に手渡してきたのは、何やらハイテクそうな見た目をした腕時計? のようなものだ。明らかに未来のものだろう。
そのビジュアルに心を奪われていると、カノンが口を開く。
「それは時空を超えるためのものです。赤く光ったら何も無いところに向けてください!」
「それだけで時空を越えられるのか……技術の進歩って凄いな」
いや本当に。今から数十年後には腕時計で時間旅行ができますよーなんて言われてもちょっと信じられないな。時間どころか世界を超えてきてるやつが目の前にいるから疑いようがないんだけど。
「それでは、また後ほど!」
「ああ、任せておけ」
そう言ってカノンは赤い光に包まれて一瞬で姿を消した。あんな感じで飛べるのか……
さて、お呼ばれするまで何をしていようか。
「特訓、するか」
とりあえず、ボールを蹴った。
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30分程経った。
とにかく動きに動きまくって、飽きが回ってきたタイミングで一旦ベンチに戻る。
心做しか、いつもより疲労が少ない気がする。戦いに赴く前のアドレナリンってやつだろうか?
そんなことを考えつつドリンクを喉に流し込んでいると、視界の隅が赤く光るのを見た。
急いで右手首を顔の前に持ってくると、先程カノンからもらった腕時計が光を放ち、ディスプレイに"already"という文字を浮かべながら振動している。
どうやら、お呼びのようだ。
とりあえず軽く荷物はまとめて……一応草陰に隠しておくか? 取られて困るものはあまり入っていないが、良い気はしないからな。
「さて、と」
深く息を吸って、吐く。
正直、緊張していないと言えば嘘になる。急に話のスケールが大きすぎることに関わることになったからな。
もし失敗すれば違う世界とはいえ、サッカーの存続に関わるような事案だ。そうなった場合、俺の身の安全も保証されるとは限らない。
やることはサッカーだが、いつもみたいな気持ちで向き合うことは出来ないだろう。
「サッカーは楽しいものだろ?」
「!?」
突如後ろから話しかけられた。
聞き覚えのある声に咄嗟に振り向くと、そこには誰もいなかった。おかしいな、確かにアイツの声がしたと思ったんだが。
前を向き直すと、身体の強張りが緩くなっているのを感じた。
……守め、見かねて背中を押しにでも来たのか?
いや、これだと守は既に亡くなってみたいな言い方だな。どうせ今頃家で木戸川との試合でも見直しているだろう、アイツは。
何はともあれ緊張は和らいだ。今度あったら礼を言おう。本人はなんの事だかさっぱりだろうがな。
サッカーは楽しいもの。基本中の基本だな。
「よし、行くか!」
虚空に向かって拳を向ける。すると、腕時計は一際強く輝き、振動して機械音が響く。
『Standby.Are you ready!?』
"準備はいいか? "
ああ、もちろん──
「──当たり前だ」
『OK!! let's go!!』
視界が真っ赤に染まり、身体が浮き上がる。
浮遊感に包まれたと思ったら、赤い光が晴れて視界が開かれる。そこは──空中だった。
「お、おおおおおお!?」
落下を始め、何とかしようと手足をじたばたさせたところで身体が光に包まれる。
何かに導かれるようにして飛んでいくと、見覚えがありつつも奇妙さを覚える光景が眼前に広がる。
あれは……フットボールフロンティアか。
しかし、黒い雲がスタジアムを覆うように広がっている。明らかに人為的なものだな。
光に包まれた身体がそこに向かっている中、周囲を見渡す。
すると、俺と同じようにスタジアムに向かう2つの光が見えた。彼らが他の助っ人だろう。
やがて光は、俺たちは流星のようにその雲の中に落ちていく。
さあ、サッカーやろうぜ。
イナイレ杯、どれも面白い作品で素晴らしいですなあ。