Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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世宇子戦突入!


第34話 聖戦

 まだ世間的には早朝とされるこの時間に、俺達は決戦会場であるフロンティアスタジアムへとやってきた。周りには何時もより険しい表情の皆。緊張するのも無理はないな、実際俺も今ガチガチに緊張している。

 

 

「ようやくこの日が来たな」

 

「そうだな」

 

 

 隣にいた修也が話しかけてくるが、コイツもいつもより目付きが鋭い。

 

 

 ここまで本当に色々なことがあった。俺と守と秋でサッカー部を作り、染岡と半田が入ってきて、その後に壁山達が入部して。帝国との練習試合に向けて風丸達も加わった。ピンチの時に修也が来て、試合放棄という形とは言え帝国に勝った。そこから土門が、鬼道が、一之瀬が来て今の雷門になった。

 

 

「皆……勝とうぜ!」

 

 大きく息を吸い、気合いを入れ直すためにそう声を上げると、皆少し和らいだ表情で返事をしてくれる。多少は解れたみたいだな。さあ行こうと足を踏み出そうとした瞬間、誰かの携帯が鳴った。音の発生源は夏未の携帯だった。皆に少し待ってと言って電話を取る。

 

 

「はい、そうです……ええ!? なんですって!?」

 

「どうしたんだ?」

 

 

 取り乱した様子で電話を切った夏未に守が声を掛けると、理解出来ないと言った表情で口を開く。

 

 

「決勝の会場が変更になったそうよ……」

 

「随分急だな。それでどこに?」

 

「それが……」

 

 

 その言葉の後に続けることなく、夏未はその視線を空に向ける。何をもったいぶっているんだ? と訊ねようとしたその時だった。夏未が向いていた方……空から轟音が響くのを聞いた。何事かとそちらを注視すると、雲の中から何かが近づいてきているのを確認できた。

 

 

「おいおい、嘘だろ?」

 

 

 その光景に思わず息を呑んだ。ちょうどフロンティアスタジアムの真上からだ。雲を裂いて古代ギリシア文明を連想させる石像が顔を出した。石像が背負っているのは、その真下にあるものと同じスタジアム。そう、空からスタジアムが飛んできたのだ。 一瞬、俺は我が目を疑った。まだ夢でも見ていたのか、と。だが、周りの皆の驚愕がそれを現実であると突き付けてくる。あれは紛うことなきスタジアム。それも、変更後の決勝戦の会場なのだろう。

 

 

 動きが止まったと思ったら、空に浮かぶそれから階段が落ちて……いや、伸びてくる。如何にも登ってこいと言わんばかりに。

 

 

「……行くぞ」

 

 

 響木監督のその声で皆我に返った。未だに現実を受け止めかねているが、伸びてきた階段を登ってスタジアムの中へと足を踏み入れる。小綺麗に装飾された廊下の先からは光が射し込んでいる。恐らく、あっちがフィールドのはず。

 

 

「一体どうなってるんだ?」

 

「きっと、影山の圧力ね……」

 

 

 全員落ち着かない様子で辺りを歩き回ったり、見渡している。もしかすると何か罠が仕込まれているかもしれない。警戒するに越したことはないだろう。俺も周囲警戒していると、鬼道が上を見上げ、歯軋りする。

 

 

「……影山!!」

 

 

 その視線の先では、長身で冷たく、不気味な雰囲気の男……影山 零治がこちらを見下ろしていた。その姿を確認して皆が身構える。その中でも目立って負の感情を向けていたのが、鬼道と修也だ。鬼道は言わずもがな。修也は、この前鬼瓦さんから告げられた夕香ちゃんのことがあるのだろう。声こそ押し殺しているが、あまりに強く握り締められた拳は震えている。

 

 

 影山は不敵な笑みを浮かべ、こちらを一瞥したかと思うと奥へと消えていった。警戒の対象が視界から消えたせいで、皆がどこか胸を撫で下ろしているように感じる。

 

 

「円堂、少しいいか」

 

 

 その時だった。何か腹を決めたような表情で監督が守を呼んだ。鬼道の傍についていた守が小走りで監督の前に行くと、監督は重々しくその口を開く。

 

 

「お前のお祖父さん……大介さんの死には、影山が関わっているかもしれない」

 

 

 その口から告げられたのは、重いなんてものじゃない。これから大事な戦いを控えているヤツに突きつけるべきではない言葉だった。確かに、かつての事件の真ん中にいたのは影山。アイツが大介さんを手にかけたと言われても違和感はない。

 

 

 けど、それは今言うべきことなのか。

 

 

「監督! なぜ今そんな事を!」

 

「……」

 

 

 守と監督の間に割って入るようにしてそう抗議する。今監督がやったことは、チームの中枢であるキャプテンを潰しかねないことだ。その意図を直接聞き出さなければ、俺は納得出来ない。例えそれが現実だったとしてもだ。しかし監督は顔を顰めたまま口を開かない。本当に良かったのだろうか、と葛藤しているような表情で守を見詰めていた。当の本人である守は……目を閉じ、歯を食いしばりながら肩を震わせている。

 

 

 そして、1番最初に守に対して行動したのは修也だった。守の肩に手を置き、何かを語りかけるように首を横に振る。俺には修也が何と言おうとしているのかが何となく分かった。そして、皆が口々に守に寄り添う。

 

 

「……俺には、こんなに良い仲間がいる。皆と出会えたのはサッカーのおかげなんだ。確かに影山は憎い。けど、サッカーは楽しくて、心が熱くなるものなんだ!! だから俺はいつものサッカーで戦う! 雷門のサッカーで!」

 

 

 守は、いつもの顔で声高らかにそう宣言する。こいつが憎しみに囚われて我を見失うかもしれない、なんて俺の杞憂に過ぎなかったか。全く、俺は何年もこいつの隣で何を見てきたのか……馬鹿だな。

 

 

「守、皆……やってやろうぜ。俺達のサッカーで世宇子を、影山を倒すんだ!!」

 

「おう! 行くぞ!! 雷門!!」

 

 

 俺がそう声を上げ、守が続くと皆が次々と叫ぶ。腹は決まった。俺達は俺達のサッカーでこの決勝戦を制する。例えそこにどんな思惑が、闇があったとしても。それが雷門サッカー部の意思だ。

 

 

「さあ! 試合の準備だ!」

 

 

 監督がそう指示すると、一斉に控え室へと走り出す。俺は1番に部屋の中に乗り込み、準備を始める。ユニフォームに着替え、靴紐を縛り直す。軽く身体を温めるために伸びたり、その場で跳ねていると首元に意識がいった。そこにあるのは、俺が父さんからもらったネックレスだ。父さんに良い報告をするためにも、絶対に勝つ。

 

 

 皆もそれぞれ決意を固め、準備に勤しんでいる。修也は夕香ちゃんからもらったペンダントを見つめ、守は大介さんの形見のグローブを握り締めている。やがてそれをバッグの中にしまい、立ち上がる。

 

 

「皆、行くぞ!!」

 

 

 守が先陣を切って部屋を出ると、皆がそれに続く。ゲートを抜け、スタジアムに足を踏み入れると、大歓声が俺達の肌を叩く。準備している間に観客が全員こっちに移ってきていたようだ。視線を滑らせると、守のお母さんと一緒にいる母さんを見つけた。守のお母さんが大事そうに手に持っているのは、遺影。おそらく大介さんのものだ。

 

 

 試合が始まるまでまだ少し時間がある。俺達はベンチでの最後の作戦会議だ。

 

 

「いよいよ始まるんだな、決勝が」

 

「ああ! 俺、皆とこの舞台に立てて最高に嬉しい! このチーム1人1人が俺の力だ!」

 

 

 1人1人の顔を見渡す。やはりどこか緊張は感じられるが、皆良い顔だ。この決勝の舞台に相応しい熱い闘志を感じる。さあ、まずはアップだ。

 

 

「うわっ!?」

 

「なんだ!?」

 

 

 フィールドに向かって駆け出した瞬間、凄まじい突風が吹き荒れる。風に流されるように意識が向いた方向には、白を基調としたどこか神々しさすら感じるユニフォームに身を包んだ連中がいた。そう、世宇子だ。その中には当然、アフロディもいる。アイツが雷門に乗り込んできた時のことを思い出したのか、皆少し顔が強ばる。そんなにビビる必要は無い。あの時からまた俺達は強くなった。今日は絶対に勝つさ。

 

 

 そして数十分のアップが始まる。身体が解れるよう、試合でいつも通りのパフォーマンスをするために入念に動く。うん、大丈夫だ。調子は悪くない。それどころか適度な緊張感でいつも以上の動きが期待できるかもしれない。

 

 

『さあ、いよいよフットボールフロンティア決勝、雷門中と世宇子中の試合が始まろうとしています! ここまで圧倒的な実力で勝ち上がってきた世宇子中! 対する雷門は今大会最大の台風の目! 一体どのような試合を見せてくれるのか!?』

 

 

 あっという間にアップの時間が終わった。ちなみに世宇子がアップをすることはなかった。強者の余裕というやつなのだろう。好きにすればいい。

 

 

「いいか! 全力でぶつかれば何とかなる! ……勝とうぜ!!」

 

『おお!!』

 

 

 俺達が円陣を組んでいると、世宇子のサポーターのような男が飲み物が入ったグラスを持ってきた。アフロディの音頭でそれを一気に飲み干した世宇子。ヤツらなりの願掛けと言ったところか? 

 

 

 俺達のフォーメーションは概ねいつも通りだ。俺、修也、染岡のスリートップ。その中盤に鬼道、一之瀬、マックス。その後ろに壁山、土門、栗松、風丸、そして守。ここまで戦ったチームを尽く病院送りにしてきた世宇子との試合だ。いつ控えのみんなに出てもらうことになるか分からない。

 

 

「忠告はしたよ。戦わない方がいいと」

 

「俺達は、大好きなサッカーから逃げる訳にはいかない!」

 

 

 挑発気味にそう告げるアフロディに対し、堂々と言い返した守。それを聞くと笑みを浮かべてアフロディは背中を向ける。それに続くように世宇子の面々がポジションにつく。俺らもそれぞれの持ち場に入ると、歓声が一際大きくなる。

 

 

 行くぞ、皆! 

 

 

『両チームがポジションにつき、熱い決勝の開始を告げるホイッスルが……今鳴り響いたァァァ!! 試合開始です!!』

 

 

 キックオフは世宇子からだ。ホイッスルが鳴り響くや否や、FWのデメテルは後ろのアフロディにボールを回す。パスを受け取ったアフロディは、ゆっくりと地面を踏みしめるよう、1歩ずつ、1歩ずつ歩き出す。それに対して最前線の修也と染岡が飛びかかる。まずはここでボールを奪って、俺達で先制点をもぎ取ってやる。

 

 

 2人が同時に仕掛けた、その時だった。アフロディが指を鳴らしたと思ったら、気付いた時には2人を抜き去り、俺の目の前にヤツがいた。そして突風が巻き起こり、修也と染岡は大きく吹き飛ばされる。

 

 

「一体どんなカラクリだ?」

 

「ふふ、何も細工なんてないよ。これこそが神の御業さ」

 

 

 勝手に言ってろ。どんな手を使いやがったか知らないが、2人が抜かれたなら俺が抜かれなければいい。1歩目から最速でアフロディとの距離を詰める。伸ばした脚がボールを捉えた。

 

 

ヘブンズタイム

 

 

 アフロディがその名前を口にし、先程と同じように指を鳴らす。そうしたら、ヤツの姿は俺の視界から消え、気配が背中で感じられた。恐る恐る振り返ると、こちらに背を向けたアフロディがそこにいた。

 

 

 一切動きを察知出来ず、一方的に抜かれていた。その事実を受け止めかねていると、俺とアフロディの間に先程と同じ突風が巻き起こる。あまりのことに唖然としていたのが悪かった。俺はろくに受け身することが出来ないまま打ち上げられ、地面に叩き付けられた。

 

 

「ガッ……!?」

 

 

 クッソ、何が起こったのか分からない。ただ1つ確かなのはアイツが指を鳴らした途端、俺は抜かれていて突風に打ち上げられたことだけ。反応する余裕が一切なかったがために受け身すら取れなかった。背中から思い切り叩きつけられたせいで肺の中の酸素が一気に押し出され、身体の自由が効かない。

 

 

「僕達は、人間を超越した存在なのさ」

 

 

 再びアフロディが指を鳴らす。2人がかりで抑えにいった鬼道と一之瀬は、先程の俺と同じく突風に吹き飛ばされ、地面に落ちる。

 

 

「怯えることを恥じることはない。自分以上の実力を前にした時──」

 

 

 軽やかな音が鳴り、重く鈍い音が響く。

 

 

「──当然の反応なんだ」

 

 

 壁山と土門をも抜き去ったアフロディは、急ぐことなく、散歩でもしているかのようにゆっくりとゴールへと歩いていく。それを止められる者は誰一人としておらず、アフロディはその長い髪を揺らしながら守が構えるゴール前まで到達する。

 

 

「来い! 全力でお前を止めてみせる!!」

 

「天使の羽ばたきを聞いたことがあるかい?」

 

 

 そう守に語り掛けた瞬間、アフロディの背中から純白の羽根が伸びる。美しい。一瞬そう思ってしまった。だが、そんな綺麗な感想とは真逆に近い畏怖のようなものが瞬時に脳に巡る。アフロディから感じるパワーは、俺が今まで見てきたどの選手よりも強力で、壮大で、圧倒的なもの。あのシュートを打たせるのはまずい。そう思い何とか身体を起こすが、全く走れそうにない。

 

 

 アフロディが天を仰ぐと同時に、羽根は更に伸び、ボールを包むエネルギーが一気に増幅する。そしてそのボールを軽くも重々しい蹴りで送り出す。

 

 

ゴッドノウズ!! 

 

 

 "神のみぞ知る"。そう称されたシュートは数十メートル離れているこちらにまでその圧が伝わってくる。

 

 

ゴッドハンド!! 

 

「本当の神はどちらかな?」

 

 

 神と神。守のゴッドハンドが迫り来る脅威に真正面から対抗する。だが、その力の差は残酷なまでに明白だった。ボールに触れた瞬間、黄金の神の手はバラバラに打ち砕かれ、威力を一切削がれることなくシュートは守に突き刺さり、巻き込みながらもゴールネットを揺らす。

 

 

『恐るべきシュート!! ゴッドノウズが雷門ゴールに炸裂!! 世宇子中先制点だ!!!』

 

 

 木戸川との試合の後、考えていない訳ではなかった。守のゴッドハンドは、世宇子の本気のシュートには通用しないのかもしれないと。そしてそれは無情にも現実となってしまった。世宇子の圧倒的な力を俺達全員一瞬にして理解させられる。何人かは青ざめている。だが、試合が始まったばかりなのに弱気になってなんかいられない。

 

 

 先程の余波で震えている脚に喝を入れ、しっかりと地面を踏みしめる。まだまだ試合は始まったばかりだ。

 

 

「まだ試合開始数分、先に点を取られたならここから取り返せば良いだけだ!! 行くぞ皆!!」

 

 

 先制点は許したが、次は俺達が取り返せば良い。こちらのキックオフから試合再開だ。後ろに回ってきたボールを受け取ると、前にいる染岡と修也は一気に駆け上がる。それに追従する形で俺もゴールへと走り出す。だがそれに対し、世宇子が行く手を阻んでくることは無い。余裕たっぷりだな。だったらお望み通り──

 

 

「1点もぎ取ってやる! 轟一閃"改"!! 

 

 

 ボールを踏み抜く。雷がボールの内側から迸り、その威力はそれを起こした俺が痺れる程までに膨れ上がる。一際強い輝きを放った瞬間、閃光の如き蹴りで撃ち抜く。轟音が鳴り響き、真っ直ぐにゴールへと雷が墜ちる。相手キーパーのポセイドンは腕を組んだまま。あれでは反応が間に合わない。

 

 

「いけェ!!」

 

「……退屈なシュートだな」

 

 

 もらった、そう思った。だが現実は甘くなかった。ポセイドンは俺の轟一閃を必殺技無しで、しかも片手で受け止めた。……俺は現実を受け止めきれていないが。

 

 

 すると、ヤツはボールを染岡の足元に転がし、指で撃ってこいと挑発してくる。それを見て染岡は憤慨する。轟一閃をノーマルキャッチで受け止める化け物だ、俺と染岡、修也の3人で出せる最大火力をぶつけるしかない。

 

 

「らぁッ!!」

 

「ふんッ!!」

 

雷龍一閃・焔!! 

 

 

 染岡が蒼龍を使役し、修也が炎を吹き込む。紅に姿を変えた龍は火を拭きながらゴールへ迫る。そしてその後を追い、脚に宿した雷を龍に叩き込む。すると、炎と雷を纏いながら龍が己が敵へと牙を剥く。当の本人は、少し力を溜めてボールに拳を叩き込む。するとボールの勢いは完全に殺され、龍はその姿をかき消される。馬鹿な……俺達のシュートの中でもトップクラスの威力だぞ。連携技をいとも簡単にキャッチするとは、海神の名は伊達じゃないってことか。

 

 

 ポセイドンはまたこちらにボールを投げ渡してくる。俺達のシュートが止められているのを見て、一之瀬、土門、守がこちらに上がってきている。

 

 

「頼むぞお前ら!」

 

「おう!」

 

 

 思いとボールを一之瀬に託す。3人はそのままトップスピードで駆け上がり、アスタリスクを描くように1点で交わる。描いた軌道から炎が猛る。更に勢いを増した炎は徐々に形を作り、やがて不死鳥が姿を現す。大きく羽ばたいた不死鳥が支配しているボールに対し、3人が同時に蹴り込む。

 

 

「「「ザ・フェニックス!! 」」」

 

 

 こればかりは簡単に止められないだろう。さあ、どう出る? 

 

 

ツナミウォール!! 

 

 

 ポセイドンが両手を地面に叩きつけると、ゴールを覆うように津波の壁が姿を現す。炎のフェニックスはそれに触れた瞬間、あっという間に制圧されてしまう。一切打ち消し合うことなく、一方的にだ。必殺技は使わせたが、ザ・フェニックスすらも簡単に止めるか。化け物め。

 

 

「クソが……どうしろってんだ!!」

 

「落ち着け染岡……まだやりようは幾らでもある」

 

 

 焦りを見せる染岡を落ち着かせる。簡単に先制点を取られ、シュートも止められる。絶望を感じずにはいられな状況だろうが、我を失ったところで勝てる相手じゃない。まだ試合は始まってから10分経つか経たないかくらいなんだ。こんな所で燻っていられるか。

 

 

「必ず点は取る……そして勝つ!」

 

 

 まだまだ、勝負はこれからだ。

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

『な、なんということでしょう……』

 

 

 前半25分。試合が始まるまではあれだけ盛り上がり、熱気に満ちていたスタジアムは、それが嘘のように沈黙に支配されていた。いや、沈黙というよりはその凄惨な光景に言葉が出ないと言った方が正しいのかもしれない。

 

 

 雷門の選手はたった1人を除いて全員倒れ伏している。意識こそあるものの、動かねばという意思に身体をが従おうとしていない。必死に戦っていたその1人も、今膝をつき……その場に倒れた。その男は味方が倒れても、相手に蹂躙されようとも何度も立ち上がり、雷が如くフィールドを駆けた。だがそんな彼……加賀美 柊弥にも、他の者と平等に限界が訪れた。

 

 

 そしてそれを見届けた長髪の男は、余裕綽々にこう告げる。

 

 

「……チェックメイトだ、雷門中、加賀美君」

 

『雷門中の選手は、誰1人として動けないようです……前半終了を前に、雷門中が試合続行不可能! フットボールフロンティア全国大会決勝戦は、4-0で世宇子中の圧勝です……!』

 

 

 スコアボードには0-4の文字が刻まれている。4点を取られ、ボロボロになるまで追い詰められた雷門に抗う術は無い。審判がホイッスルを鳴らせば、今この場に雷門の敗北は決定する……はずだった。

 

 

「……ッ」

 

 

 その時、ある1人の身体が動いた。




The・絶望感を感じる文章って凄いですよね。あんな文が書けるようになりたいです。
次の更新はかなり近いうちに出来はずです。かなり。
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