Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第36話 反撃の時

 柊弥が倒れて間もなく、アフロディの提案により審判から試合終了の合図が出される直前のことだった。円堂が意地と言わんばかりに立ち上がる。それを見た他のメンバーも次々と立ち上がる。1人では立てず、支え合ってようやく立ち上がっている者もいる。立ち上がったとしても、また圧倒的な力にねじ伏せられるのみだろう。

 

 

 だが、それでも雷門は、イナズマイレブンは立ち上がった。

 

 

「面白い……なら、もっと痛ぶってあげよう!」

 

(柊弥が1人で頑張ったんだ、俺達だって負けてられない!)

 

 

 彼らを動かしているのは単なるガッツではない。自分達が倒れている間もたった1人で世宇子を相手し続けたチームメイトの意思を無駄なものにしないための意地。どれだけ痛めつけられようと折れることは無い。

 

 

「来いッ!!」

 

 

 アフロディがセンターライン付近から加速体制に入り、それを見て全員が身構えた。その瞬間だった。

 

 

「──ッ!?」

 

 

 アフロディが、世宇子が、雷門が、いや、そのスタジアムにいた全員が異質な何かをその肌で感じ取った。全身を叩くようなおぞましい気配。ある者は震え、ある者は冷や汗を流す。その正体を見つけるのに誰も苦労はしなかった。全感覚に焼き付いた恐怖感にも似たそれを全身から放っている男が、今ゆっくりと立ち上がったから。

 

 

 その男──加賀美 柊弥は、全身を影に包みながら笑っていた。

 

 

「楽しくなってきた」

 

 

 所々に血を滲ませ、至る所に傷を負っていた彼は、確かに笑っていたのだ。放ったセリフに違わず、まるで楽しくて楽しくて仕方ないと言った表情で。その異様とも解釈できる光景に、鬼道は見覚えがあった。

 

 

(あの時と一緒だ……! 小学生大会の決勝と、帝国として雷門に試合を申し込んだあの時と!)

 

 

 彼がこの光景を見るのは2度目だった。いずれも敵として柊弥と対峙し、ギリギリまで追い詰めたところで目の当たりにした光景と全く同じものが今目の前に広がっている。鬼道にとってはもはやトラウマに近いものだ。何故ならば───

 

 

『まだ、これからだぜ?』

 

 

 ───それを見た直後、現実とは思えない圧倒的な力で全てをねじ伏せられたから。

 

 

「く、おおおおォォォオオオオ!!」

 

 

 アフロディはすぐさま標的を柊弥に切り替え、全力でボールを撃ち出した。その射線上にいた全員が、あまりの威力、風圧に怯まずにはいられない。ゴールに撃とうものなら確実に点を奪うようなシュートだった。もし人に当たろうものなら大ダメージは確実だ。

 

 

(この僕が恐怖している!? そんな、そんな馬鹿なことが有り得るはずがない!!)

 

 

 アフロディを凶行に導いたのはシンプルな感情、"恐怖"。他に向けようとしていた牙を瞬時に対象に切り替えざるを得ないほどの強烈なもの。彼の本能はすぐさまそれを排除することを選んだ。

 

 

 当の柊弥はと言うと、何をする訳でもなくただ真っ直ぐにそのボールを見つめている。徐々に双方の距離は近くなり、ボールが柊弥を抉る……誰もがそう思った。しかし。

 

 

「ナイスパス」

 

 

 柊弥の全身を包み込んでいた影が、突如爆発するように溢れ出す。柊弥を中心に燃えるような黒と青の炎は、迫り来る脅威を抑え、無力化する。勢いを失ったボールは音もなく柊弥の脚元へと転がり込んだ。

 

 

 柊弥はくるりとアフロディに背を向け、ゴールを見据える。ゴールに構えていたポセイドンは、まるで蛇に睨まれた蛙のように震え、恐怖し、戦慄する。

 

 

「まだまだ……試合はこれからだァ!!」

 

 

 柊弥の咆哮と同時に、炎は雷を帯びながらフィールドに波打つように広がる。それは、雷門には全てに正面から立ち向かえるような"勇気"を与え、世宇子には身体を縛り付けるような"畏怖"を齎す。そして、柊弥は姿を消した。いや、誰も視認できないスピードでゴール前まで移動した。柊弥が裂いた空気を埋めるように巻き起こった一陣の風は、その通り道にいた者全てを吹き飛ばす。

 

 

 ゴール前には柊弥とポセイドンの2人のみ。ポセイドンは己に課せられた役目を全うすべく、大きく息を吸い、その巨体を更に巨大に膨張させる。

 

 

ギガントウォォォル!!! 

 

 

 それを見た柊弥は、全身を液体にするかのような脱力の後、己の全てを身体の中で練り上げ、解き放つ。背中を突き破るようにして噴き出した影は、柊弥の背後に剣を持った巨人のようなシルエットを創り出す。それはまさに加賀美 柊弥という男の力の象徴。あまりに圧倒的存在感を放つそれに、全員が息を呑む。

 

 

紫電一閃

 

 

 ボールと影の剣に紫の雷が宿った。柊弥がボールを薙ぎ払うように蹴り出すと、巨人はボールに対して剣を奮い、斬撃がゴールへと襲い掛かる。

 

 

 ポセイドンはそれに対して拳を振り下ろしたが、触れた瞬間にさらに巨大のなったはずの身体は元に戻り、一瞬の抵抗も許されずにゴールに叩き込まれた。数十秒ボールとネットに板挟みにされ、ようやくポセイドンは地面に倒れることが出来た。

 

 

 柊弥から影が霧散したその瞬間、0は1へと変わる。

 

 

『わ、我々はとんでもないものを見てしまったのでしょうか!? 満身創痍の加賀美が凄まじい力を発揮し、0-4の劣勢を切り返す一手を打ちました!! ここで前半終了!! 1-4で後半に持ち越しだァァ!!』

 

 

 

 

 ---

 

 

 

 

「ッ……」

 

 

 放ったシュートが世宇子のゴールをこじ開けたのを見届け終えた直後、 全身を極度の疲労感が襲う。身体の中に溜められてた殆どのエネルギーをごっそり持ってかれたような気分だ。自分の脚で立つための力すら抜け落ち、その場に膝から崩れる。汗が止まらないし、いつまで経っても呼吸が整わない。

恐らく、というか間違いなくあれは化身の力だ。天馬達と出会って以来1度も発現することがなかったあの強大な力がギリギリの場面で出てきたのだろう。

もう一度出せるか•••と聞かれたら微妙なところだ。直後だからまだ感覚が残ってはいるが、如何せん消耗が激しすぎる。出せたとしてその後動けなくなるのは間違いないだろう。

 

 

「柊弥、大丈夫か」

 

「悪い、助かる」

 

 

 修也と支え合いながらベンチに戻る。すれ違いざまにアフロディがこう声を掛けてくる。

 

 

「君は一体、何者なんだ」

 

「ただのサッカープレイヤーだ」

 

 

 顔を合わせることなく短く返す。背中を刺すような視線を感じたが、お構い無しに俺と修也はその場を去った。

 

 

 ベンチに戻った俺を待っていたのはボロボロな皆の歓声だった。少し時間を稼いだとはいえ、やはりそこまでの回復は見込めなかったか。このタイミングで前半が終わったのは幸運としか言えない。

 

 

「本当に凄かったなあのシュート! なんかこう、メラメラとビリビリがゴールの俺まで伝わってきたぜ!!」

 

「円堂の擬音はともかく、確かに凄まじい何かを感じた。見ているだけの俺も、何故か強くなったかのような……不思議な感覚だ」

 

 

 守と鬼道がそう語る。皆も同じような感想らしい。皆が感じたものというのは、俺が身体から爆発させたエネルギーの余波のようなものだろう。

 

 

 そういえば、春奈達がいない。タオルやドリンクは用意されていたようだが……と思っていたら、スタジアムの中から何やら忙しない様子でこちらに走ってきた

 

 

「皆、聞いて!」

 

「世宇子中の力の秘密が分かったんです!」

 

 

 力の秘密だと? 影山が裏にいる時点で何かしら絡んでいるとは思っていたが、やはりか。 3人は怪我人の処置をしながら暴いた秘密を語り始める。ヤツらの力の正体は、"神のアクア"。軍事用の薬物を使用した、体力増強ドリンク。言ってしまえば、ドーピングだ。世宇子は、今まさにスポーツドリンクのような色をした飲み物を口にしている、あれのことだろう。

 

 

 大好きなサッカーをどこまで汚せば気が済む、と守が、皆が憤慨する。しかし、俺らが怒ったところでドーピング効果が消えるわけじゃない。この貴重なハーフタイムはしっかり休み、後半でこの怒りをパワーに変えてぶつけるしかないだろう。

 

 

「ん……? どうした、春奈」

 

 

 後半に備え、意識を澄ましてフィールドを見据えていると、背中を引かれる感覚に気が付いた。後ろを振り返ると春奈が立っていた。

 

 

「こんなにボロボロになって……私、これ以上柊弥先輩が傷つくところ、見たくありません」

 

 

 春奈は涙目になりながらそう告げる。

 

 

「けど、きっと先輩は止まらないし、この試合に勝つには先輩の力が必要なんだって分かります。だから、絶対に勝ってください」

 

 

 そう言って春奈は笑った。辛いものを堪えた、見ているこちらが苦しくなるような笑顔。それを見た時、俺は勝手に身体が動いていた。

 

 

「ありがとう、絶対に勝ってみせる。だから……待っててくれ」

 

 

 無意識のうちに春奈を抱き寄せていた。なんでこんなことをしたのか、自分でも分からない。けれど、何故か動いていた。

 

 

「……はい! 絶対ですよ!」

 

 

 すると春奈も俺の背中に手を回し、思い切り抱き締めてくる。俺はボロボロな上に、汗だらけだというのに。周りの目線を感じとって我に返り、凄まじい羞恥心が襲ってきたが、今なら何でもできる気がする。

 

 

「よし、行ってこい!」

 

 

 後半開始が目の前に迫り、響木監督が声を上げる。春奈から手を離し、フィールドへ身体を向ける。大丈夫だ、俺は負けない。こんなにも俺のことを思ってくれる人がいるんだから、負けられない。

 

 

 皆同時にグラウンドへ駆け込む。身体はボロボロ、体力だって正直半分も回復してない。けれど、皆勝つ気しかないといった表情。そうさ、俺たちなら勝てる。見せてやろうぜ、最後に勝つのは熱い魂だってことを。

 

 

「まだまだ行けるよな、柊弥」

 

「お前こそ。置いてかれんなよ、修也」

 

 

 センターサークルに2人で立つ。俺達の目の前には世宇子イレブンと、最奥には俺達が目指すべきゴール。現在の点数は1-4。ここから勝つには、あと4点を後半30分で取る必要がある。まともな人間なら出来るわけない、と諦めるかもしれないな。

 

 

 だが残念。俺達のサッカーにかける想いは少しまともじゃない。点は取る、試合にも勝つ。

 

 

『さあ! この決勝戦もとうとう後半突入です! 圧倒的優位を保って世宇子が勝つか、それを打ち破って雷門が勝つか! 一瞬たりとも目を離せません!!』

 

 

 実況の声が響き、前半では静まり返っていたとは思えないほどに観客達が手を叩き、歓声を轟かせる。そして、後半開始が宣言される。

 

 

「なッ!?」

 

 

 キックオフ。修也にボールを渡した瞬間、俺達の間を何かが通り過ぎる。気付いた時には突風に身体を包まれ、足元のボールは姿を消す。風が逃げていく方向に視線を向けると、そこにはアフロディがいた。

 

 

「もう前半のようなマグレは有り得ない。今一度、神の力を見せてあげよう!」

 

 

 そう言うとアフロディは再び風となる。鬼道が指示を出しすぐさま止めにかかるが、その行く手を誰も阻むことは出来ない。中陣、後陣はすぐさま崩壊させられる。コイツらの圧倒的な力は悪夢なんかじゃなく、紛れもない現実。俺達が前半より意気込んでもそれは変わらない。

 

 

 あっという間にアフロディはゴール前へと辿り着く。ついでと言わんばかりに周りの皆を蹴散らして。

 

 

「神の力は絶対なんだ! 君達人間風情に、太刀打ち出来るはずがないッ!!」

 

 

 そう叫ぶアフロディは、前半に見せた神々しさと、それと相反するような禍々しさを全身から滲ませる。やがてそれは白と黒の翼を形作り、アフロディを空へと羽ばたかせる。気の所為なんかじゃない。アイツは前半よりもパワーアップしている。例の神のアクアの濃度を濃くしたのか? それとも、単に激情によって潜在的な力が引き出されたのか? 

 

 

「円堂!!」

 

「キャプテン!!」

 

 

 皆もただならぬものを感じ取ったのか、1人ゴールに立つ守の名前を呼ぶ。守はというと、恐れも怖がりもせず、ただ真っ直ぐにアフロディを見据える。

 

 

「───守ッ!! 絶対ェ止めろッッ!!」

 

 

 フィールドの真ん中から後方の守に発破を掛ける、すると守はニヤリと笑って、アフロディに()()()()()()

 

 

 いや違う、アイツは背中を向けたんじゃない。心臓に右手を添えたんだ。エネルギーの中枢である心臓から100%伝えるために。その瞬間、守の全身から黄金の闘気が溢れ出す。渦を巻くように守を包むそのエネルギーは天にすら届く。

 

 

「何をしようと無駄だ!!」

 

 

 アフロディは喉が張り裂けんばかりに怒号を上げる。すると、更に光と闇が増幅する。翼が、ボールを包むエネルギーが更に大きくなる。

 

 

 けど大丈夫だ。アイツは止める、必ず。

 

 

はァァァアアアアアッッッ!! 

 

 

 アフロディが重々しい蹴りを叩き込む。数秒キックとボールが拮抗した後、閃光と暗黒が守に向かって堕ちていく。とんでもないシュートだ、今まで見てきたどのシュートよりも恐ろしく、強大。

 

 

 けれど、それが向かう先に構える守は、それ以上に頼もしく、絶対的。

 

 

「はァァァァァ!! マジン・ザ・ハンドォォ!! 

 

 

 守から立ち上る闘気は、形を作り、その背中に"魔神"を宿す。このギリギリの局面で完成させたか、守のお祖父さんしか使うことの出来なかったあの必殺技を! 

 

 

 神と魔神の戦い。絶望の化身と、希望の化身が対峙する。双方が触れた瞬間にそのぶつかり合いの余波がスタジアム中に広がる。ビリビリと肌を刺すような、凄まじいエネルギーがこちらまで襲いかかってくる。

 

 

 両手で風圧とエネルギーから身を守りつつ、その成り行きを見届ける。数十分にも感じられる長いぶつかり合いだった。勝ったのは──

 

 

「──よっしゃァ!!」

 

「そんな……バカな!?」

 

 

 守だ。

 

 

「行けッ!! 柊弥ァ!!」

 

 

 離れた俺に向かって守がボールを送り出す。俺はそれを受け取るべく走る。しかし、俺の前から鬼のような形相でアフロディが迫る。

 

 

「バカな……バカなバカなバカなァァァ!!」

 

 

 自信とプライドをズタボロにされたアフロディはまさに"鬼"。前半までのような優雅さを感じさせる振る舞いなんてもう欠片も残っていない。自分の存在を否定されないように必死、無我夢中という言葉が似合う顔だ。

 

 

 けどなアフロディ……そんな追い詰められたサッカーで、楽しくて仕方ない俺のサッカーに追いつけるはずないだろ。

 

 

「ふんッ!」

 

 

 俺とアフロディはほぼ同時に跳ぶ。しかし、俺はより速く、より高く空へと翔ける。アフロディは絶望の表情で俺を見上げている。悪いが、今の俺達は止められないぞ。

 

 

「鬼道!!」

 

 

 そのまま最初に視界に入った鬼道にダイレクトパスを送る。それが分かっていたかのように鬼道はボールを受け取り、すぐさま前線へと駆け上がる。当然それを見て世宇子は止めにいくが、合流した修也とのワンツーと、巧みな個人技でそれらを難なく躱す。間違いない、2人共明らかに動きのキレが違う。

 

 

 流れるように2人はゴール前。すると修也は、炎を纏いながら空高く跳んだ。それと同タイミングで鬼道は真上、修也が待つ上空へとボールを蹴り上げる。それに対して修也はファイアトルネードを真下、鬼道に向けて放つ。まさに阿吽の呼吸。落ちてきたファイアトルネードに対し、鬼道は真っ直ぐ脚を振り抜く。

 

 

「「ツインブーストF(ファイア)!! 」」

 

 

 これは俺達が世宇子のゴールを破るために考えていた、既存の必殺技を掛け合わせた新必殺技のうちの1つだ。難易度の高さゆえに今まで成功したことはなかったが、こちらもこの土壇場で完成した。

 

 

ツナミウォール!! 

 

 

 ポセイドンが両手を地面に叩き付けると、地を砕いて高い波がゴールを覆う。それにツインブーストFは飲み込まれてしまう……ことは無かった。

 

 

「な、バカな!?」

 

『ゴォォォル!!! 円堂が新必殺技で止め、加賀美が繋ぎ、豪炎寺と鬼道が世宇子のゴールを切り開いたァァァ!!』

 

 

 津波の壁を撃ち破り、ボールはこの試合2度目となるゴールを決めた。2-4。あと2点で追いつき、3点で追い抜ける。

 

 

「まだまだ行くぞ、皆!!」

 

 

 試合はまだまだ続く。世宇子のキックオフで試合再開。俺達前衛がすぐさまボールを奪いにかかるが、鋭いパス回しで難なく躱される。アフロディとデメテル、ヘラが3人同時に駆け上がる。

 

 

「円堂や豪炎寺達が頑張ってるんだ! 俺らも止めるぞ!!」

 

「おう!!」

 

「はいッス!!」

 

 

 それに対して風丸、土門、壁山がそれぞれの道を塞ぐ。ボールを持ったアフロディの前に立ったのは壁山。

 

 

ザ・ウォール"改"!! 

 

 

 これまでよりも更に強靭な壁を作り出し、見事にボールを奪い取ってくれた。そのボールは風丸が受け取った。

 

 

「風丸!」

 

「行くぞ加賀美! 雷門の双翼の力、見せてやる!!」

 

 

 万が一に備えて後ろまで下がってきていたため、風丸と合流する。徐々にスピードが上がっていき、俺は雷、風丸は風を纏いながらフィールドを縦横無尽に駆け回る。

 

 

「「迅雷風烈!! 」」

 

 

 トップスピードをさらに超えた俺達の速さは誰にも止められない。まさにその姿は風神雷神。2つの軌跡を描きながら前線へと駆け上がる。

 

 

「よし、行け!!」

 

「おう! 鬼道、修也!!」

 

 

 風丸に送り出され、先にゴール近くで待ち構えていた2人と合流する。ボールを鬼道に預け、3人で横並びにゴールへと向かう。最後に待ち構えいたDF達が突っ込んでくるが、今の俺達は止められない。

 

 

 余裕でそれを回避すると、鬼道は高くへとボールを蹴り上げる。するとそのボールは紫と黄の雷に包まれ、落雷のように俺達の元へと落ちてくる。それに対して3人で同時に蹴り込む。

 

 

「「「イナズマブレイク!! 」」」

 

 

 かつて無失点を誇っていた千羽山の無限の壁を破った俺達の必殺技が、轟音と共にゴールへと迫る。ポセイドンは俺のシュートに失点を許した時と同じ必殺技でそれを迎え撃つ。

 

 

ギガント……ウォォォォル!! 

 

 

 その身を巨人へと変え、迫る外敵に拳を振り降ろす。完全に潰しきれていないようで、地面と拳の距離は少し空いており、その隙間から雷が漏れ出している。ポセイドンは咆哮しながら更に力を込めるが、シュートの威力は一向に削がれない。やがてポセイドンの方が押し負け始め、荒れ狂うボールに吹き飛ばされた。

 

 

「ナイスシュート!!」

 

 

 俺達にボールを繋いでくれた風丸が駆け寄ってきたので、ハイタッチで返す。これで3-4。見えてきたぞ、世宇子の首が。

 

 

 再び世宇子のキックオフから試合再開。ヤツらは顔を真っ青にしながらもボールを動かすが、先程までの動きのキレがどこにもない。こんなもの欠伸をしながらでも奪い取れる。ノロノロとしたパス回しに割って入り、ゴールへと向かう。相手が戦意喪失しようが手を抜こうが、俺達は手を抜かない。全力で戦って、全力で勝ちに行く。

 

 

 ふと後ろに意識を向けると、一之瀬、土門、守が着いてきていた。そして俺の隣には修也。そうか、完成しなかったもう1つのシュートか。そうと分かればやることは1つ、起点となるアイツらにボールを渡す。世宇子はそれを奪おうとしてくるが、やはり動きは鈍く、誰もボールにつま先を掠らせることすら出来ない。

 

 

「最後の1秒まで全力で戦う!! それが──」

 

「「「俺達のサッカーだ!!」」」

 

 

 一之瀬を真ん中に3人は加速する。トップスピードでアスタリスクを描くように交差すると、その軌道から炎が溢れ出し、フェニックスを形作る。だが、これはザ・フェニックスではない。

 

 

「しくじるなよ! 柊弥!」

 

「お前こそ!」

 

 

 俺と修也が炎を纏いながらフェニックスが待ち構える上空へと飛び上がる。燃え盛る炎に身を焦がされそうになるが、そんなのお構い無しだ。俺と修也は全く同じパワー、スピード、タイミングでフェニックスが支配するボールへとキックを叩き込む。

 

 

「これが俺達の!!」

 

ファイナルトルネードだ!!」

 

 

 俺達の炎が全て注ぎ込まれる。するとフェニックスは比較にならないほどにその火力を上げる。凄まじいパワーに俺達の方が押し負けそうだ。だが、それでもな──

 

 

「やらなきゃ、いけねェんだよォォォォ!!」

 

 

 ダメ押しとばかりに腹から声を捻り出す。修也も普段からは想像出来ないくらいに咆哮する。すると、徐々に、徐々にボールは前へと進み出す。限界を超えた力を注ぐ。やがて、フェニックスが羽ばたく。

 

 

 強く雄々しく舞うフェニックス。太陽のような熱を放ちながらゴールへと向かっていく。それを受け止めるのが役目のポセイドンは、情けない声を上げながらゴール前から逃走。もはやその後は見届けるまでもない。背中を向けて自陣へと歩き出した瞬間、凄まじい放熱と共に得点を告げるホイッスルが鳴った。

 

 

「やった……同点だ!!」

 

 

 守が声を上げると皆もそれに同調する。残り時間を見ると、残り10分弱。決してすぐ終わる時間ではない。俺達はもう1点取らなければならないし、あと1点も取られてはいけない。勝負は最後まで分からない。

 

 

 が、そんな俺の想いは簡単に裏切られることになる。

 

 

「もう……ダメだ」

 

「俺達は、強くなったはずなのに……」

 

 

 世宇子の連中は揃いも揃って俯き、絶望を口にしている。アフロディに至ってはその場に膝をつき、もはや戦う気を一切感じさせない。

 

 

 それを見た瞬間、激しい怒りが俺の頭の中を支配した。アフロディの胸倉を掴み、無理やり立ち上がらせる。

 

 

「僕は神様になったんだ……力を手に入れたんだ……」

 

「──巫山戯るなッ!!」

 

 

 感情を抑え切れず、アフロディに向かって怒鳴ってしまった。近くにいた鬼道と修也が止めに入るが、押し退ける。

 

 

「キャプテンであるお前が勝負を諦めるな!! 俺達は今、全身全霊でこの試合に臨んでいるんだ!! ドーピングをしていようが、神様がなんだろうが関係ねェ!! 最後の1秒まで立って戦え!!」

 

 

 怒りをそのまま吐き出す。審判に止められるかとも思ったが、見ているのみで介入してこない。最初は止めようとしていた修也達も、何も言わずにこちらを見ているだけ。

 

 

「お前らも本当はサッカーが好きなんじゃないのか!? これ以上……サッカーを冒涜するなッッ!!」

 

 

 そう吐き捨ててアフロディを睨み付ける。一瞬アフロディの目が揺らいだのを、俺は見逃さなかった。

 

 

「……そうだ」

 

 

 アフロディが小さく呟く。

 

 

「僕達も最初はサッカーが好きで仕方なかった……! これ以上、そのサッカーに泥を塗るような真似は、したくないッ!!」

 

 

 怒りのままにシュートを放った時よりも硬い意思がその言葉からは感じられた。虚無しかなかったアフロディの目に、俺達と変わらない熱いモノが宿ったのが見えた。

 

 

「目は覚めたみたいだな」

 

「ああ。ありがとう、加賀美君」

 

 

 手を離すとアフロディは短く礼を述べてくる。すると、アフロディは後ろ、自分の仲間達の方を向き、声を上げる。

 

 

「皆!! 僕達は取り返しのつかないことをした!! けど、胸の奥には彼ら雷門中と同じサッカーが好きだという気持ちが残っているはずだ!! 今更こんなことを言う資格も何もない……けれど! それに気付いた今! 僕達には全力でサッカーに向き合う義務がある!!」

 

 

 世宇子イレブンが1人、また1人と立ち上がる。

 

 

「やろう!! 僕達のサッカーを!!」

 

「「「おお!!!」」」

 

 

 世宇子イレブンに炎が灯った。俺達に負けないくらいの熱い炎が。

 

 

「ふっ、敵に塩を送ったんじゃないか?」

 

「良いじゃないか。そうでなければ張り合いがない」

 

 

 修也と鬼道が少し笑いながらそう話す。修也が言った通りだ。俺達は全力でサッカーを楽しみたいんだ。その相手もこう熱くなってくれるならもっともっと楽しくなる。

 

 

「さあ、サッカーやろうぜ」

 

 

 どこかの誰かさんの口癖を、気付いたら口にしていた。




オリジナル要素が結構強いですが、これもオリ主がいる小説の醍醐味と思って楽しんでいただければ…

そうそう、番外編についてのアンケートなのですが、思いのほかGO2編の希望が多くてちょっと驚きました。オーガ編の希望もほぼ同じくらいの票数なのでどっちも書こうかなーって考えてます。もしかするとこちらの勝手な都合で順番前後するかもですが。

アレオリ編に関しても完全にいないわけじゃないのでそのうち書きます。とは言っても、オリオン編までやるとなると別の小説として書いた方が良さそうなのでアレス編だけになりそうですけど。

次回、世宇子戦決着
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