Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第2話 キックオフは唐突に

「……!? 何処だここ……」

 

 

 光が晴れると、そこには見知らぬ風景が広がっていた。

 広いサッカーコートだ……周りには観客席のようなものが見えるということは、ここはスタジアムか? 

 視線を目の前に戻すと、先程の男に加えてまた知らない連中が増えていた。

 ……11人か。しかも1人だけ服装が違う。これではまるでサッカーチームのようだな。

 

 

「ここはお前がサッカーを奪われるのに相応しい場所だ」

 

「サッカーを奪われる……? お前はさっきから何を言ってるんだ?」

 

 

 こいつが何を言っているかだけじゃなくて、何で部室の前からこんな所に一瞬で移動させられたのか、何で空が暗いのか、そもそもこいつらは何者なのか……疑問は山ほどある。

 

 

「君にはこれから試合をしてもらう。サッカーのだ」

 

「試合? ますます意味が分からないな。俺は1人だぞ?」

 

「加賀美さん!!」

 

 

 男の発言の意図が一切掴めずにいると、また知らない声が俺の名前を呼んだ。

 その声の主はこちらに駆け寄ってきた。

 

 

「そいつらはサッカーを消そうとしているんです!」

 

「サッカーを消す……? その前にお前は……」

 

「あ、俺は松風 天馬(まつかぜ てんま)です! 説明は難しいんですけど……大好きなサッカーを守るためにきました! このままじゃ大変なことになるんです、信じてください!」

 

 

 大好きなサッカーを守るため、か。

 もう何から何まで意味が分からないが……こいつ、天馬の言うことは信じても良い気がする。

 よく分からないやつに敵対されて、よく分からないやつに味方されるなら大人しく助けてもらった方が良さそうだ。

 

 

「……分かった。何一つ理解できないが、とりあえずお前の言うことを信じるよ、天馬」

 

「えっ……信じてくれるんですか!?」

 

「自分から信じろって言っておいてそんなに驚くか? とりあえず、力を貸してくれんだろ?」

 

「……はい!」

 

 

 そう天馬は返事してくれる。話してて気分が良くなるやつだな、どことなく守みたいだ。

 さて、アイツらの望み通り試合をすることになるんだろうが……俺らは2人しかいない。どうするんだ? 

 

 

「大丈夫、いるよ」

 

「ん?」

 

「みんなサッカーが大好きな仲間です、一緒に戦ってくれます!」

 

 

 声の方向には緑髪のうさぎのような髪型をした少年がおり、その周りには同じような髪色の少年少女がいた。

 全員が赤と白を基調としたユニフォームに身を包んでおり、奴ら同様、サッカーチームのようなまとまりになっている。

 

 

「僕の名前はフェイ・ルーン。よろしくね」

 

「俺は加賀美 柊弥。よろしく頼む」

 

 

 と言って握手を交わす。外人……なのか? 

 

 

「あー、ユニフォームはどうすれば」

 

「心配いらないよ」

 

 

 フェイが指を鳴らすと、俺の制服はたちまち姿を消し、代わりに彼らと同じユニフォームがそこにいた。

 ……何でもありだな。喋る青いクマのぬいぐるみも後ろにいるし。

 

 こんなよく分からない流れで始まる試合でも形式には沿うようで、センターラインのあたりに整列する。

 すると、どこからともなく赤い帽子を被った男性が現れ、マイクを握りしめる。実況解説なのか? もうツッコまないぞ。

 

 

「さあ! 再びテンマーズ対プロトコル・オメガの試合だ!!」

 

 

 こっちはテンマーズ、あっちはプロトコル・オメガというチーム名らしい。

 天馬がキャプテンでテンマーズか。安直だがわかりやすい。

 

 

「ポジションはどうする?」

 

「君の好きなポジション、FWで構わないよ」

 

「よく知ってるな」

 

「有名だからね」

 

 

 有名なのか……? 確かに全国大会はテレビで放送されたから知ってる人がいてもおかしくないが……外国でも放送されたのか? 

 まあいい、この際あらゆる固定概念を取っ払うとしよう。例えあいつらが化け物に姿を変えたりしても俺はもう驚かないぞ。

 

 ……中学初の試合が、こんなよく分からない試合になってしまうとは。守とデビュー戦を飾りたかったが仕方ない。

 フォーメーションは4-4-2。俺とフェイのツートップで、天馬はMFだ。

 

 

「よし……サッカーやろうぜ!」

 

 

 守の口癖とも言うべきセリフを借りる。

 これによりチームの士気は上がった……のか定かではないが、みんなやる気みたいだ。心配ないだろう。

 

 

「キックオフ!! 試合の始まりだ!!」

 

 

 ホイッスルが鳴り響くと共に、とうとう試合が始まる。

 相手のキャプテン……アルファはボールを受け取ると、速攻でこちらに切り込んでくる。

 ……予想より速い! 自分の実力に驕りがあったわけじゃないが、こいつらかなりレベルが高い! 

 

 相手に徹底マークされたフェイと、何も出来なかった俺を一瞬で抜き去ると、アルファはあろうことか他のメンバーに対し、故意的にボールをぶつけ始めた。

 

 

「おい、何してんだよ!!」

 

「ぐッ……」

 

 

 メンバーが痛めつけられる度、マークされているフェイは何故か自分が攻撃されているかのように苦しむ。

 意味が分からない……けど、とにかく止める! 

 

 

「やめろッッ!!」

 

 

 無意識の内に身体が動き始めていた。

 そしてその速さは、自分が思っていたよりも数倍速かった。

 

 

「……ほう」

 

「サッカーは人を痛めつけるものじゃない……心と心でぶつかり合うものだろうが!!」

 

「発言の意図が理解できない」

 

「アルファ!! 加賀美さんの言う通りだ! ボールだってそんな風に使われて……きっと泣いてるよ!」

 

 

 ボールが泣いている……いい事言うじゃないか、天馬。

 だが、そんな言葉もアルファには1ミリも響いていないようだ。

 

 

「サッカーは滅ぶべき。よって加賀美 柊弥。お前がサッカーによって滅べ」

 

「速ッ──」

 

 

 一瞬でボールを奪われる。

 そしてアルファは少し距離を取り、シュートをゴールではなく俺に対して放つ。

 鋭いシュートだ。空気を切り裂きながら真っ直ぐ飛んでくる。

 ……けどな。

 

 

「ふんッ!!」

 

 

 真正面からアルファのシュートを蹴り返す。

 行き場を失った力は上に逃げることを選び、ボールは高く弾かれる。

 

 

「そんな心のないシュート……恐れるまでもない!」

 

「……イエス、これらを時空の共鳴現象と把握。加賀美 柊弥に対しての警戒を強めます」

 

 

 アルファは1人で何かを呟いているが、そんなものお構い無しだ。

 

 

「今度はこっちから行くぞ! 反撃だ!!」

 

「おう!! 皆行くぞ!!」

 

 

 中陣あたりに向かってパスを出す。だがそれは相手に阻まれてしまった。が! 

 

 

ワンダートラップ!! 

 

 

 次の瞬間、天馬が目にも止まらぬ速さでボールを奪い返した。

 ……やるな、天馬! 

 

 

「天馬! 上がるぞ!」

 

「はい! 加賀美さん!」

 

 

 天馬との一糸乱れぬコンビネーションで一気に駆け上がる。

 何だ……全身にいつもより力が漲っている。最初は速いと思ったアルファにも追いつけたし、天馬にも負けてない。

 

 

アグレッシブビート!! 

 

 

 相手が2人同時に天馬へと仕掛けるが、それすらも必殺技で難なく躱す。本当に何者なんだ……!? 

 

 

「加賀美さん!!」

「おう!」

 

 

 ボールはノーマークの俺へと渡る。キーパーとの一騎打ちか……いいね、燃えてきた。

 決めてやる、俺のシュート! 

 

 

「……来い!」

 

轟一閃ッッ!! 

 

 

 ボールのサイドを踏みつけるようにして回転を与えると同時に、身体を右に捻り右脚を引く。

 回転を始めたボールは雷を帯びながら空中へ浮き始め、やがて激しく放電する。

 最高まで力が高まったその瞬間を狙って、右脚を最速で振り抜くッ!! 

技術が未発達で必殺技を使う選手が少ない小学サッカー界の中で、中学でも通用すると言われた俺の必殺シュートだ。雷が落ちたような轟音が響くと同時に、ボールは一切ブレない真っ直ぐな軌跡を描きながらゴールへと襲いかかる。

 

 

キーパー……ぐッ!?」

 

 

 おそらく相手GKも必殺技で対抗しようとしたのだろう。

 だがそれよりも数段早く俺のシュートはゴールネットへと突き刺さる。先制点いただきだ。

 

 

「すごい! 流石加賀美さんだ!!」

 

「自分でも驚く威力だった。シュートだけじゃない、ドリブルもブロックも、いつもより明らかにキレが増している」

 

「時空の共鳴現象だね……詳しい説明は後でするよ」

 

「そうしてくれると助かる」

 

 

 そんな軽口を交わしながら俺達はポジションに戻り試合再開。

 プロトコル・オメガは1本ロングパスを通し、一気にこちらに攻め上がる。

 ……ヤツらの思いどおりにはさせない! 

 

 

「来るぞ!!」

 

シュートコマンド01!! 

 

 

 パスをすんなりと受け取ったアルファは空高く舞い上がり、回転と共にボールを蹴り込む。

 辺りの空気を巻き込みながら迫るそのシュートは、恐らくゴールネットを揺らすだろう。

 

 

「何……!?」

 

「加賀美さん、いつのまに!?」

 

 

 だがそうはさせない。自分でも驚く程の速さでボールとゴールの間に割り込む。

 先程は啖呵を切ったが、おそらくこのシュートを正面から受ければ無事では済まないだろうと冷や汗が頬を伝う。

 だが何故だろう。その現実とは真逆に、俺の全身には先程以上の力が漲ってくる。

 

 溢れんばかりの力を身体から解き放つ。

 そして俺は、無意識の内に()()()()()()()()

 

 

紫電の将 鳴神(ナルカミ)

 

 

 背中から影が溢れ、形となる。

 紫色の電光を伴いながら姿を表したそれは、刀をシュートに対して振るい、何事もなかったかのように受け止めてみせた。

 

 

「化身……!?」

 

「加賀美さんが……化身使いに!?」

 

 

 化身と呼ばれた圧倒的な力。今の俺なら何でも出来る、そんな慢心を抱かせる程には強大なものだった。




【紫電の将 鳴神】
紫を基調とした甲冑に全身を包み、背中には濃い紫色の外套をはためかせている。
一振の刀を携えており、行く手を阻むもの全てを斬り伏せる。
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