Re:雷鳴は光り轟く、仲間と共に   作:あーくわん

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第38話 イナズマイレブン

『ここで試合終了!! フットボールフロンティア全国大会決勝!! 歴史に残るであろうこの試合を制したのは雷門中!! 優勝は、雷門中ですッッッ!!!』

 

 

 極限の疲労。全身ガタガタに震えてるし、視界は真っ白に染まってる。息はいつまで経っても整わない上、身体の中の最後の水分が汗として今地面に零れ落ちた。今からまた試合でもしようものなら、開始1秒でぶっ倒れるに違いない。もう立ち上がらないでこの場で眠りにつきたい。

 

 

 しかし、実況席から響いてくる大声に立ち上がる、いや、立ち上がらされる。優勝は雷門中、俺達。その宣言が何とか動く力を俺にくれる。

 

 

「─────ッ、勝ったぞォォォォォッッッ!!」

 

 

 感極まって叫ぶ。腹の底から大声を捻り出した。俺達は勝ったんだ、こんなところで死んでる場合じゃない。飛び上がるように起き上がり、皆がいる方へと走っていく。センターサークルの辺りで待つ皆の近くまで来たところで、脚が縺れて派手に転ぶ。

 

 

「ははっ!何やってんだよ柊弥!」

 

「ふっ、締まらないヤツだな」

 

「お前ら……最後の最後に頑張ったヤツにそれかよ!?」

 

 

 顔だけ上げて抗議の意を述べると、哀れに思った修也が起こしてくれる。守に鬼道……コイツらには人の血が通ってない。そのうち絶対泣かしてやる。

 

 

 そんなやり取りをしていると、ベンチの方から負傷で退場してた皆とマネージャー達も駆け寄ってくる。その後ろから監督がゆっくりと歩いてくる。

 

 

「柊弥先輩!!」

 

「春──がふェッ!?」

 

 

 春奈が凄まじいタックルに見間違うほどの勢いで突っ込んでくる。いや、俺が弱りすぎて受け止めきれていないだけだが。変な声を上げながら押し倒される形で倒れ込む。春奈は俺の胸に顔を埋めたまま何も喋らない。頭を打ったのかと心配になるが、一瞬で別の心配になる。体勢が色々まずい。周りの悪意ある視線と、1人の鬼のような視線が突き刺さる。

 

 

「あの、春奈さん?ここスタジアム……」

 

「あんなに心配掛けたんだから、これくらい我慢してください!馬鹿!」

 

「はいすみません」

 

 

 春奈の圧に萎縮してしまい、抵抗する気が消え失せる……というのも嘘ではないが、実の所は抵抗できる力が残っていないだけである。歳下の女子の拘束を振りほどく力すらも湧いてこない。確かこれ、全国に中継がまだ続いてるよな……?

 

 

「お前ら、良くやった!」

 

「監督!」

 

 

 響木監督が話し始める。流石に倒れながら聞くのは失礼が過ぎるので春奈に降りてもらって立ち上がる。降りてはくれたが、腕に組み付かれている。突き刺すような視線が和らぐことは無い。

 

 

「どれだけの力の差があろうとも、お前らは何度も立ち上がり、真正面から勝ってみせた!その姿はまさしくイナズマイレブンだ!」

 

「響木監督……!」

 

「「「ありがとうございます!!」」」

 

 

 イナズマイレブンである響木監督にこう言われると、正式に認められたような気がして胸が熱くなる。感極まって守なんかは涙ぐんでいる。壁山に至っては号泣しているしな。

 

 

 閉会式まで時間があるため皆とわいわい騒いでいると、こちらに近づいてくる人物に気が付いた。アフロディだ。

 

 

「加賀美君、その……」

 

 

 申し訳なさが滲み出ているような態度だ。おおよそ、試合を終えて自分達がやってきたことに耐えかねて俺達の元に来てみたものの、何と切り出せば良いか分からないと言ったところだろう。確かにコイツらがやった行為は様々な観点から許されることではないだろう。影山に唆されたとしても、そういうことをやってしまったというレッテルが一生剥がれることは無い。

 

 

 けどまあ、それを今責め立てる気にはならないな。

 

 

「ん」

 

「えっと……なにかな?」

 

 

 アフロディに手を差し出すと、訝しげな目線を向けられる。

 

 

「なにって、握手だよ握手。お互い全力で戦ったんだから健闘を讃え合おうぜ?」

 

「けど、僕は……」

 

「面倒臭いヤツだな。汚い手で戦っていたのはアフロディ。最後に正々堂々戦っていたのは……今のお前ってことでいいんじゃないのか?」

 

 

 そう声を掛けると、アフロディは少し迷った後、吹っ切れたように笑って俺の手を取る。その手はとても力強かった。

 

 

「僕の名前、亜風炉 照美って言うんだ」

 

「いい名前じゃないか。そのまま名乗れば良いのに」

 

「ありがとう。けど、これからも僕はアフロディという名と共に生きていくよ。己の間違いを忘れぬように、過ちを繰り返さぬようにと戒めを込めてね」

 

 

 良い目をしている。この試合の中で自分を取り戻せたようで何よりだ。見渡してみれば他の世宇子のメンバーも皆と話している。そこには険悪な雰囲気などは一切ない。これをきっかけに世宇子はもっと強いチームになるだろうな。優勝したからと言って俺達も油断している余裕はない。

 

 

「じゃあ、そろそろ行くよ。また会おう」

 

「おう、またサッカーやろうな」

 

 

 閉会式がもうすぐで始まるというアナウンスが入ると、アフロディ達はスタジアムを後にする。今度は最初から思い切り試合したいものだ。

 

 

「良かったですね、最後には分かってくれて」

 

「本当にな」

 

 

 ずっと隣にいた春奈がそう話しかけてくる。さも当然かのようにいたが、アフロディはもちろん他の世宇子のメンバーにもガン見されていた。春奈本人は何も気にしていないようだったが、俺はかなり気になっている。主にこれが全国に流れていないかが気になっている。

 

 

「春奈、もう離れても良いぞ?」

 

「嫌です」

 

「ほら、閉会式あるから……」

 

「隣にいます」

 

 

 聞く耳持たずとはこのことだ。言葉を投げた瞬間に返答が飛んでくる。脊髄反射で応対しているのか……?まあ何でも良い。いや、良くない。秋と夏未に頼んで何とか引き剥がしてもらう。流石に横にマネージャーが着いたまま整列する訳には行かないだろう。本人は「そんな決まりはありません!」と最後まで反抗していたが。

 

 

「加賀美」

 

「鬼道……無言で肩に手を乗せるな。冗談抜きで怖い」

 

 

 試合中より神妙な面で肩に手を置き、無言の圧を掛けてくる。ゴーグル越しでも分かるくらいにえげつない目をしている。春奈の兄である鬼道の立場からすれば色々物申したいのだろうが、春奈からやってきたことなのだから流石に勘弁してもらいたい。

 

 

「柊弥、兄とはそういうものだ」

 

「……そうなのか?」

 

 

 夕香ちゃんを妹に持つ修也が鬼道の肩を持つようにそう話す。いや、だからといってチームメイトに殺意剥き出しの目線を向けてくるのは流石にいかがなものだろうか……と言いたいところだが、言い訳しようものなら鉄の拳が飛んできそうなので黙っておく。これが世にいうシス……いや、何でもない。

 

 

「お前ら!始まるぞ!」

 

「守に諌められる日が来るとは……」

 

 

 鬼道も面食らったようで、すぐさまいつもの毅然とした態度に戻った。ような気がする。

 

 

 すると、スタジアムは一気に静まり返る。観客席の全視線がフィールドの真ん中に並ぶ俺達に注がれる。ここまでの緊張感は初めてだ。小学生の頃とは比較にならない。

 

 

『これより、フットボールフロンティア全国大会、閉会式及び表彰式を開催致します!優勝、雷門中学!!主将、円堂 守君、副将、加賀美 柊弥君は前へ!』

 

「「はい!!」」

 

 

 俺と守が呼ばれる。守にはトロフィー、俺には賞状が授与される。軽い紙切れに過ぎないのに、金属具のような重さに感じる。それだけこの1枚の価値、優勝の意味が大きいということだな。

 

 

『会場の皆様!!今一度大きな拍手をお願いします!!』

 

 

 拍手喝采が鳴り響く。おこがましいが、今この瞬間は俺達が世界の中心のようにすら感じる。

 

 

 

 ---

 

 

 

「俺達は!!」

 

「「「日本一だ!!」」」

 

 

 インタビューや写真撮影を一通り終え、あの天空のスタジアムから地上に降り、本来決勝が行われるはずだったフロンティアスタジアムの駐車場で優勝を分かち合う。トロフィーや賞状をそれぞれ手に持っては、感動に目を潤わせている。

 

 

「まさかここまで来れるなんてな、俺達最初は7人だったんだぜ?廃部廃部ってバカにしてたヤツもいたしな」

 

 

 染岡がそう口にする。そんな皮肉を向けられたのは夏未。当の本人は笑ってこう返す。

 

 

「あら、それを言ったら鬼道君だって最初は豪炎寺君、加賀美君以外気にかけてなかったわよ?」

 

「そういえばあの時、鬼道達は修也の他に俺にも用があったんだよな。あれって結局何だったんだ?」

 

「あの時は俺も総帥……いや、影山もお前の潜在能力を危惧していたからな。予想通りとんでもない化け方をされてしまった」

 

 

 そんな裏事情があったのか。結局何が目的だったのかハッキリとしていなかったから、少し気になっていたところがあったんだよな。まあ今となっては過去のことに過ぎないが。

 

 

「俺達の始まりは柊弥と豪炎寺が取った2点だったもんな!あれが始まりで俺達はここまで来たんだぜ?」

 

「ははっ、そうだな」

 

 

 思い返すと、あの始まりからここまで長いようで全然短かったな。この短期間で弱小を通り越した無名から日本一になれるとは。まあ、俺と守は最初からそのつもりしかなかったが。

 

 

「ん?西垣?」

 

 

 一之瀬の電話が鳴る。相手は木戸川の西垣のようだ。さっきの試合をリアルタイムで見ていたようで、色々落ち着いた頃合を見計らって幼なじみである一之瀬に電話を掛けてきたようだ。

 

 

「ごめん皆!俺と土門は西垣のところ行ってくる!」

 

「また明日にでもサッカーしようぜ!」

 

「おう!気をつけてな!」

 

 

 と言って2人は去っていった。それを見てか、修也がどこかそわそわしているのに気付いた。

 

 

「夕香ちゃんのとこ、行ってやれよ」

 

「……良いのか?」

 

「勿論。1番にお前の口から報告してやれ」

 

 

 俺がそう言うと、皆が背中を後押しするように言葉を続ける。ありがとうと短く告げて修也もこの場を去っていった。俺達はこれから雷門中に戻って、学校に報告するようだ。随分な長丁場だったため、余裕のある者だけでとのことだが、皆行くらしい。

 

 

「俺は遠慮しようかな。今立っているのもやっとだし、丁度母さんも来てるから」

 

「加賀美、今回の試合で1番動いてたもんな」

 

「そうだな。今日のところはゆっくり休めよ」

 

 

 俺のその呟きに風丸と染岡がそう反応すると、皆快く送り出してくれる。監督も無理しなくていいと言ってくれたため、それに甘えることにする。

 

 

「柊弥!」

 

 

 守が手を差し出している。

 

 

「お前がいてくれたから俺は、俺達はここまで来れた!ありがとな!」

 

「……ばーか、礼を言うのはこっちの方だっての」

 

 

 力強く握り締める。全国のてっぺんを取れたのも、あの試合を戦い抜けたのも皆のおかげだ。感謝してもしきれない。

 

 

「これからも、サッカーやろうぜ!!」

 

 

 これが俺に出来る最大限の感謝だ。

 

 

 

 ---

 

 

 

「凄い試合だったわね。お母さん感動しちゃった」

 

「本当に、最高の時間だったよ。あのチームで優勝出来て、俺本当に良かった」

 

 

 車に揺られながら決勝戦を思い返す。段々と眠気が強くなってくるが、それでも頭の中で何度もさっきの光景が浮かび上がる。今すぐサッカーしたい気分だが……やはり疲れた。瞼も重くなってきた。

 

 

「寝ちゃっていいわよ、着いたら起こすから」

 

「うん、そうする」

 

 

 言葉に甘えることにする。意識を保つのもやっと、といったところだからな。まあ、この分じゃ夢の中でもサッカーかな。

 

 

「……あら?あれ何かしら?」

 

 

 瞼を閉じ、今意識を手放そうとした時に母さんが何か言葉を発する。しかし、それに反応する気力も最早ないのでこのまま寝よう。そう思った時だった。

 

 

「───ッ!?」

 

 

 凄まじい揺れが俺を襲う。まさか事故ったか?と思ったがそういう訳では無い。急に轟音と共に強烈な揺れが襲ってきたのだ。地震、でもないな。まるで何かが落ちてきたような。

 

 

「どうしたの?」

 

「さっき紫色の何かがあっちの方に降って行ったのよ。……あれ?あっちって確か」

 

 

 母さんが指さした方を見るが、何も見えない。しかし、あることに気が付いた。その方向は確か、いや間違いなく雷門中の方だった。謎の物体、轟音、揺れ……何か嫌な、胸騒ぎがする。

 

 

「ごめん母さん、先帰ってて!」

 

「ちょっと、柊弥!?」

 

 

 母さんの静止を振り切って俺は走り出していた。疲労に身体が縛り付けられているような感覚に襲われるが、関係ない。さっきの揺れのせいで渋滞が起こっているが、歩き、或いは走りなら大丈夫。戸惑う人混みを掻き分けて走る。顔を上げた雷門中の方を見ると、黒い煙が立ち上っていた。

 

 

 途中転びながらも走る。数十分ほど走ってようやく雷門中に到着すると、見慣れた光景が出迎えてくれることはなかった。

 

 

「──なんだよ、これ」

 

 

雷門中、俺達の学び舎は、瓦礫の山と化していた




FF編、完結!!
4話くらい番外編を書いて次はエイリア編です!!
リメイク前と大きく変えて書くつもりなので、その時から見てくださってる方は是非そこも楽しんでいただければ幸いです!
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