こちらはその中で1番票を得たGO2時空での番外編になります!
これを選択肢に入れた意図としては、本編の最初の方で天馬達と出会い、その影響を描写した以上もう少し掘り下げた描写をしてみたいなとか、そんなところです。
今回は導入です。後2話ほど書いてこの番外編は完結、その後また本編に戻ります。
1部捏造設定もあります、ご了承ください。
第1話 タイムジャンプはいつも唐突に
決勝戦前の合宿を終え、とうとう試合前日だ。雷門OBの方々が持ってきてくださったマジン・ザ・ハンド養成マシンを用いた特訓をしたものの、結局最後まで完成することはなかった。キーパーとしての能力は上がったようだが、あの必殺技を完済させられなかったのはやはり痛手かもしれない。
だが完成しなかったものは仕方ない。世宇子に点数を取られたら俺が、いや俺達皆でそれ以上の点数を取ってやればいい。俺達の秘策ともいえる必殺技の合体も上手くは行かなかったが、諦めなければなんとでもなるはずだ。俺達はいつもそうやって成長してきたしな。
明日は悲願の決勝戦というだけでなく、世宇子の裏にいる影山との戦いにもなる。修也に鬼道、土門と影山に因縁のあるヤツはウチには何人もいる。俺も危害を加えられたわけではないが、帝国との試合の前には春奈と鬼道のことで揺さぶりを掛けられたし、その礼もしてやらねば。あれがあったから修也との絆が深まったという側面はあるが。
「加賀美君、部室閉めるよ?」
「ああ秋、悪い」
そんなことを考えていると部室の外から顔を覗かせた秋に声を掛けられる。練習が終わり、その後の片付けも終わったから部室の鍵を閉めに来たようだ。荷物はまとめ終わっていたので速やかに外に出る。
「明日のこと考えてたの?」
「まあな。考えずにはいられないというか、なんというかな」
校門へと向かう。思えば秋と2人で話をするのは久々かもしれない。秋はこれから春奈と夏未と3人で夕飯を食べに行くようだ。
「加賀美君も来る?音無さんも喜ぶよ?」
「マネージャーの輪に男1人は違和感あるし、遠慮しておく」
そう返すと、周りに人がいないか確認してこう言葉を続けてくる。
「加賀美君って、音無さんのことどう思ってるの?」
「どうって……滅茶苦茶良い子だよ。野生中の時は必殺技のヒントをくれたし、いつも俺の事気にかけてくれてるしな」
当たり障りのない答えを返す。まあ、思っていることをそのまま言葉にしているだけだから何の問題もないが。本当は、何で俺にここまで良くしてくれるのか不思議に思っているが、俺の自惚れに過ぎないだろうからそれは心の内にしまっておく。
「そっか!……あんまり待たせちゃ可哀想だよ?」
「ん?何て?」
最後に付け加えた言葉がよく聞き取れなかったため聞き返すが、なんでもないと一蹴されてしまった。……最近はよく女子に聞き返すとあしらわれるな。
「じゃあ気をつけて、明日もよろしく頼むな」
「うん、加賀美君こそ明日は頑張って!」
校門まで到着し、互いに別方向なのでそこで別れる。特にどこかに寄る用事もないのでこのまま家に向かう。
明日のことを考えながら1人夜道を歩いていると、河川敷の土手に不思議なものを見つけた。淡く青の光を放ちながら浮遊している石だ。一瞬我が目を疑って目を擦り、再度視線を投げると確かにそこにそれがある。あんなもの見たことも聞いたこともない。
これを拡散すれば一躍有名人になれるかもしれない、そんな邪な思いを胸に階段を降り、その石に近付く。見れば見るほど不思議だ。自分で発行しているのはもちろん、浮いているし何よりこの時間に急に現れた。少なくとも朝ここを通った時はこんなものはなかったはずだ。
その石に触れようとした、その時だった。急に石が砕け、ブラックホールのようなものを形作る。ブラックホールのようなというのは比喩でもなんでもなく、実際に引き寄せられているのだ。まず頭をよぎったのは死のビジョン。ブラックホールに吸い込まれたものは無限の重力に押しつぶされ、宇宙の塵になるという話が聞いたことがある。これが本当にブラックホールなら吸い込まれたら間違いなく死ぬ。
「ふっざけんなよ!?」
本当にふざけた話である。不思議だと思って近づいた石がブラックホールになり、吸い込まれたら死ぬなんてマニア向けの死にゲーの中くらいの話だろう。当然吸い込まれないように抵抗しているが、段々と身体は引き寄せられる。
だがここであることに気付く。引き寄せられているのは俺だけだ。厳密には俺と俺が身に付けているもの。周りの草木や置き去りにされたボールなんかは一切微動だにしていない。じゃあこれはブラックホールではない……?と思ったが、そうなると尚更意味が分からない。明日は決勝戦なんだ、こんな得体の知れないものに吸い込まれて堪るものか。
「ぐ、おおおおおおお!!」
全力で抵抗する。その甲斐あってか少しずつそれとの距離が離れていく。と思ったその時。
「あっ」
脚が砂で滑り、派手に転倒する。すると顔から地面と衝突することはなく、脚から穴の方に引き寄せられる。視界は段々と青白い光で埋め尽くされていく。
最悪だ……せめて命は無事でありますように。と願っていたら、急に視界が開ける。どうやら俺は空中に投げ出されたらしい。そして下には……人工芝生?恐らく距離は10m程。落ちたら死ぬか重傷かの2択だな。うん、冷静に分析してる場合じゃない。
「うっそだろォォォォ!?」
急に知らない場所に飛ばされた上に大怪我なんて洒落にならない。かといって身を守る術なんてない。終わった。明日の決勝戦には100%出れない。皆にどう顔向けすれば良いんだ。
「──って、あれ?」
このまま地面に叩き付けられるかと思ったらそんなことはなく、ゆっくりと地面に落ちていく。まったく、驚いて損した。着地して感覚を確かめるが、特に違和感はない。だが1番の問題は、ここはどこなのかということ。見たところ室内サッカー場のようだが……
「加賀美さん!?」
「ん?」
急に俺の名前を呼ぶ声に振り返る。すると、そこには見たことのある顔があった。茶髪のくるくる頭……天馬だ。
「天馬じゃないか、フェイに優一、それに……ワンコ!!」
「ワンダバだ!!」
ワンコ……じゃなかった、ワンダバに力強く訂正される。申し訳ないとは思うが、クマの見た目で何で"ワン"なのだろうとも同時に思う。
「ええー!?小さい時の加賀美さん!?」
と、後ろを振り向くと見たことない2人がいる。どちらも天馬と同じジャージに身を包んでいることから、同じチームの仲間だろうと推察できる。
「えっと、お前らは?」
「俺は雷門中2年、
「僕は
同い年くらいにしてはやけに大人びた雰囲気なのが神童、少林と同じくらい小柄なのが西園というらしい。俺の予想は当たっていたようで、やはり天馬と同じく雷門サッカー部のメンバーだそうだ。
「加賀美 柊弥、何故ここに」
「お前は……アルファ」
また新たな声が増えたことに気付いてそっちの方を向くと、俺と天馬が出会う原因となった男、アルファとそのチームメイト……確かプロトコル・オメガと言ったか、ソイツらの姿があった。また天馬達と会えた衝撃と喜びに気を取られて全く気付かなかった。
「それに関しては僕も聞きたいな、一体どうやってこの時代に来たんだい?」
「それがな……」
フェイに事の顛末を説明する。すると、俺が触れた石は時空の歪みが原因で極稀かつ短時間出現するパラレルストーンと呼ばれるものの一種らしい。本来はその名前にある通りパラレルワールド、平行世界を触れた者に覗かせるに過ぎないらしく、それがどうして今回のように時空を超えることになったのかまではフェイもワンダバも分からないらしい。
そして今の状況について聞くと、どうやら俺の時のように歴史を修正しようとしていたプロトコル・オメガの前に天馬達が立ちはだかり、再び戦うことになったようだ。
そういうことなら話は早い。
「俺も試合に出してくれ。お前達には借りがあるからな」
「本当ですか!?でも、大丈夫なのかな?」
「時空を超えたことによる影響ならば問題ない。相手も我々や加賀美君と同じく違う時空から来ている。それならばこの時代、或いはその前後に影響を与えることはない!」
そう悩む天馬にワンダバが答える。決まったな。俺はどこからともなく出てきたこの時代の雷門のユニフォームに袖を通す。背番号は勿論15番だ。
「加賀美さんが僕達とユニフォームを着てるなんて……なんか感無量!」
「そうだな。俺達が見たことあるのは旧雷門のユニフォームと……」
西園と神童が後ろでコソコソと話している。何も堂々と話してくれて構わないのだがな。何かしらの形でこっちの時代の俺とも面識があるようだし、その辺りで気を使ってしまうのかもしれないな。
「こんな形で約束を果たせるとはな」
「はい、俺も驚きです!」
天馬と向かい合い、拳を合わせる。
「「サッカーやろうぜ!!」」
かくして、再び時代を超えてのサッカーが始まった。